―数ヵ月後―
見事に季節は流れ、僕は高校1年生となった。
入学式が終わった途端早々にも体育館へ訪れた僕を見慣れた顔が取り囲む。
『 入学おめでとう!黒子!』
僕、黒子テツヤは無事霧崎第一高校へ入学することが出来た。密かに部の一員として入学前から参加していた僕は先輩方に囲まれながらあの人を探していた。
「 黒子、花宮ならあそこだぞ。」
そわそわと落ち着きなく探す姿に山崎先輩が笑いながら指差した先にはいつも通りの笑顔で僕を待つ花宮さんが居た。
「 …遅せぇんだよ。おめでとう。」
皮肉混じりに褒めて貰う嬉しさに腕の中へ飛び込めば溜息をつく他の部員に何故かドヤ顔を向ける始末…。
「 早々に喧嘩はやめてくださいね。皆さん大好きですから。」
何気なく呟いたこの一言に僕を含む全員が顔を真っ赤にし暫く動く事は出来なかった…
同日、side高尾
「…やーやっぱ、あれっしょ。どう考えても…ねぇわ。」
あのテっちゃんがあんな恐ろしい事を言い出してから数ヵ月後。それなりに必死に勉強をしてまたバスケをする為に入ったはずのその高校には、言わずと知れた人物が前の席に着席していた。
長身に眼鏡。緑の髪に左手にテーピング。
「 どうした?初日だぞー」
早速仲良くなったクラスメイトに心配されるほど俺は混乱していた。
「わりぃわりぃ!大丈夫でっす☆」
今や挨拶替わりになっちまったウインクをかませばいつも通りだと笑ってもらう事は出来た…だけど
流石の俺でも 限界ってあんのよ?
「なぁなぁ 、帝光中の緑間だろ?俺 、高尾和成!宜しくな!真ちゃん♪」
「なっ。変な渾名を付けるな。気色悪いのだよ」
「ぶはっ。なのだよってなんなのだよー!」
初めての部活の日。
あれ程楽しみにしていたはずなのにやりにくいったらありゃしねぇ…。
―でも俺は決めた。―
「テっちゃんに連絡しねぇとなあ…」
―数日後―
ようやくクラスメイトに存在を知ってもらえた時には既に幻のシックスマン。闇としての僕が部活内で確立し始めていた。パスの内通者としてだけでなく、ラフプレーの合図役としても。
合図役に関してはまだまだ花宮さんに学ぶ事は多く練習試合で偶に使ってもらえる程度だった。それでも1人でも輝ける喜びに微かだった快感は大きく膨らんでいった。
「調子がいいな、それなら今度花宮にも使ってもらえるんじゃないか?」
「今度、ですか?」
「忘れちゃったのん?もうすぐ本戦っしょ。」
幼い子供のように無邪気に笑う原先輩と優しく撫でてくれる瀬戸先輩。
そうだ。待ちに待った、夢にまで見たあの日が着実に近づいている。そう思ったら今までに感じたことのないやる気が満ち溢れていた。
「変なこと吹き込むな。タイミングが崩れるだろーが」
先輩の後ろから現れた花宮さんが頭を叩けば痛そうに屈む2人の先輩…
丁度調子が良く、花宮さんはその状態を保ちながら本戦へ向かわせたかったらしい。
「ごめんってー…あ。それ何?」
いつも通り謝りつつ花宮さんの手にある紙を指差し首を傾げた。
「……あぁ、これか?」
実に嬉しそうな花宮さん。わくわくと3人して待つと少しの間のあと花宮さんはこう告げた。
「本戦の1発目、相手は黄瀬涼太の進んだ海常高校だ。」
―本日2回目の興奮を覚えていた。
side黄瀬涼太
海常高校の黄瀬涼太として部活動にも慣れて本格的にモチベーションを合わせていた時。
「集合!!」
いつ聞いてもまだ少しびびってしまうこの怒声の様な掛け声に首を傾げながら駆け寄れば笠松先輩の手には1枚の紙があった。
「笠松、何だ?休憩にはまだ早くないか?」
森山先輩が声を掛ければ 違う というように首を振る。
「本戦1発目の相手が分かった。霧崎第一高校だ。」
笠松先輩が発した途端部員はざわざわと話し始めた。俺だった聞いたことがある。ラフプレーを中心として相手校を薙ぎ倒す…出来れば当たりたく無かったんスけど…
「重要なのはここからだ!」
シンと静まり返る体育館。あたりを見回し頷くと笠松先輩は言葉を続けた。
「皆も知ってる通り、霧崎第一は花宮真によるラフプレーが中心のプレースタイルだ。しかし最近それが無くなったらしい。」
もうざわつく事はなくただ笠松先輩の言葉に全員が耳を傾けていた。
纏めると、今までのラフプレースタイルは花宮真が指示を出し行われていたはずのものが見えなくなったのだという。
「まるで見えないもう1人が居るみたいにな」
何処かで聞いたセリフ。
いやまさか…
その後の笠松先輩の指示が俺の頭に入ることは無かった。
お久し振りです。
遅くなってしまい申し訳ありません。
ここから場面展開が激しくなりいきなり新人戦本戦となります。語彙力の無さに項垂れる日々です…。温かい目でご覧下さいませ。