(…あれは坂城さん)
静かに見詰め続けていれば彼女は狂気的な笑みを浮かべ僕を見つめ少しするとジャージをはためかせ屋上から姿を消してしまった。
体育館に目を向ければ青峰君が黄瀬君と赤司君の1on1に割り込み事情を説明しようとしている
今赤司君に説明をしてしまっては彼の洞察力ならば坂城さんの犯行だと気付いて何らかのペナルティを課すかも知れない。それは桃井さんの身を余計に危ぶめるだけになってしまう。
「…桃井さん、大丈夫ですか?」
未だ震えたまま僕に掴まる彼女をそっと撫でれば多少なりとも落ち着いたのかただ頷くだけだが反応を示してくれた。
「もーなんなんスか!?また1on1邪魔されたっス!…ッてどうしたんスかこれ!」
ぶつぶつと文句を垂れ流しながら現れた黄瀬君は植木鉢を踏みそうになる直前で存在に気付き慌てふためいていた。
青峰君は赤司君の前で事を整理している様に見える。止めるならば今しかない。
「黄瀬君、少し桃井さんお願いします。」
「桃っち!?大丈夫?」
「きーちゃん…」
「…大丈夫っスよ桃っち。」
手招きをすればすぐ様様子に気が付き 任せてくれ と言わんばかりに頷き宥めていた。モデルのそれは伊達では無く、桃井さんの顔色も少しばかり良くなっていた。
「青峰君、赤司君」
漸く纏まったのか今にも話しそうな青峰君とそれを静かに待つ赤司君を呼び止めると2人はこちらを向いてくれた。
「大きな音がしたがどうしたんだ。黒子。」
「だからその事なんだよ赤司!」
青峰君では拉致があかないと思ったのか僕に尋ねる赤司君を必死の形相で止める青峰君。
このままでは混乱が混乱を呼ぶだけに過ぎない…
「青峰君、桃井さんに付いていてくれませんか。今は黄瀬君が相手をしてくれています。…赤司君。明日の放課後の部活後お話があります。大丈夫ですか」
青峰君に外へ出るように誘導すれば少し不機嫌そうにしつつも頷き外の二人の元へかけて行く。
「…そこで全て話してくれるな?」
「はい。」
入部当初…いや、見初められた時から変わらない 真実と正当なる答えを導き出す瞳が威圧感を含んで僕を射貫く。
何度瞳を交えてもこの緊張感だけは慣れることが出来ない。
(やはり言わなくて良かった)
この時の判断を僕は後悔し、感謝する事になるなんて思いもよらなかった。
「じゃあ明日言うの?」
「はい。語弊の無いように、って…桃井さん、体調大丈夫ですか?」
今までの振り返りを終え長い話を飽きることなく耳を傾けた彼女の顔色は心なしか悪いようにも見えた。
大丈夫と呟くその呂律さえ少し危うい。
「帰りましょうか。送りますよ」
「ありがとう、テツ君」
―― 翌日 ――
朝練に来ると桃井さんは居らず普段通りに坂城さんがマネージャーの席で着席していた。
「赤司が急ぎの用で遅刻。桃井が体調不良にて休みだ。坂城、サポートを頼むのだよ。メニューは届いているから通常通りやる。ストレッチ開始!」
副部長である緑間君が号令をかけるといつも通り朝練が始まった。今日の放課後伝えるつもりだったのだが赤司君が急遽遅刻なんて珍しい。間に合うだろうか
桃井さんは、案の定体調を崩して休んでしまったらしい。側で騒ぐ黄瀬君をかわしながらボールを弄る青峰君が伝えてくれた。
「あの…黒子君。お昼休みに少し良いかな?」
ドリンクを飲みに1人キセキの皆から離れた時だった。
「坂城さん…いいですよ。」
いつも通りの笑顔。了承すれば微笑み呼ばれた緑間君の元へと歩いていった。