それからというものの、僕は日常的にミスディレクションを使わなくては学校生活が送れない程に状況は最悪の一途を辿っていた。
「僕がやりました。」
認めた時の赤司君の表情は忘れられなかった。今にも泣きそうで、怒鳴り散らしそうなあの顔。
「黒子、お前っ」
「やめて赤司君っ。」
口を開き何かを言いかけた赤司君を止めたのは泣いて蹲っていた坂城さんだった。勿論、涙を拭う様に鼻から下を覆い隠すその手の下にはいびつに歪むあの笑みがあるのだろう
「酷いこと言わないで…お願い」
赤司君の裾にしがみつけば瞳を伏せ呟いた。
結局、赤司君から下された僕の処分は部活動停止。
即刻辞めさせようとした赤司君を止めたのは坂城さんだったらしい。
一体何が狙いなのか、それすら分からないままにクラスメイト、同学年、後輩、全生徒から 見つかれば理不尽な暴力を受ける…という生活を繰り返していた。
余りに磨り減った精神は次第に身体にも影響を及ぼし体調を崩した僕は幼馴染み、和成君に久しぶりに電話を掛けた。
~ ♪ ~
ツーコール、スリーコール …
まだ学校から帰ってきていないのだろうか。切ろうと受話器を離しかけた時。
「あ、やべ。切れちった?」
「切れていませんよ、和成君。お久し振りです。」
「あ!テッちゃん!?久しぶりだな!」
焦ったような懐かしい声に笑いを堪えながら答えればあの時と変わらない賑やかで人懐っこい声が耳を通り抜けてゆく。
「まだ暇だろ?公園で話そうぜ!」
学校を休んだことを伝えれば珍しいと驚かれそれから楽しそうに彼は笑った。
和成君ならばきっと本当の話を信じてくれる。そう、信じて。
「テッちゃーん!」
一足先に公園のベンチに腰掛け、待っていれば彼はこちらに手を振りながら駆け寄ってきた。
「お久し振りです。」
「相変わらず固いなーテッちゃん!!」
立ち上がり少し頭を下げればケラケラと笑いながら肩を叩く。彼は1度笑い出すと暫く止まらないので1人先にベンチに座り直し彼の笑いが収まるのを待った。
「あー笑った。んで?何があったんだよ。」
既に電話を終える時点である程度の内容を話しておいた。流石に最後の結末まではまだ伝えられていないのだが。
「誤解しないで聞いて欲しいんです」
昔から変わらない、真っ直ぐな瞳。
確り彼が頷くのを視界の端に捉え今までの経緯を話した――
「んだよそれ!」
話し終わるや否や足をバタバタとさせ不満を表す彼の行動に呆気に取られ落ち着くのを待った。
「何が、ですか?」
彼の行動も、発した言葉の意味もあまり分からず首を傾げながら尋ねれば がっしりと両肩を掴まれ見透かす様に至近距離で覗き込まれればその瞳の中に僕がいた。
「全体的にだよ!テッちゃんはそれで納得してんの?バスケは?まだ好きか?」
バスケットと離れはや数日…学校から帰り自室でぼんやりとする時間がほんの少し楽だった。
納得しているのか、と問われれば僕は横に首を振るだろう。バスケが好きか、という問いには まだ答えられなさそうな自分がいた。彼らは僕の光だったのだ。
影は光なしでは存在することすら出来ない。光なしでは影としてすら輝くことも出来ない…
しかし、これだけは言える。
「好きかどうかは…分かりません。でも嫌いではありません。」
出来る限りの笑顔で伝えたそれは、彼にどう響いたのだろうか。
和成君は嬉しそうに笑った。
「んなら、いいや!高校で戦うって約束だもんな!破ったら承知しねぇぜ、テッちゃん!」
何故こうも彼は輝かしいのか。
まるで春の太陽みたいで、僕は彼が居る限りバスケットを一人でもいい。練習し続けようと心に決めたのだった。
それから随分の間お互いの事を伝え合い気づけば相当な時間となっていた。
「テッちゃん!約束だかんな!何かあったらすぐ連絡しろよ?」
お揃いの機種の携帯を掲げれば来た道を大きく手を振り彼は帰っていった。
楽しい時間はあっという間で、しかしとても勇気をもらえた。どんなに辛く厳しくても学校へ通い続けようと思えた。
(明日も頑張ろう。)
そう思い彼の笑顔を思い出しながら気がつけば眠りについていた。
そんな決心など、一瞬で砕かれる出来事に遭遇するとは夢にも思わぬまま
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