貞操観念が逆転したインフィニット・ストラトス   作:コモド

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Q.箒はもう出ないんですか?

A.元売りスレのアイドルにして大人気アニメISの非公式マスコットキャラクターモッピー


    _/⌒⌒ヽ_
   /ヘ>―<ヘヽ
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と、深夜アニメの歴史を塗り替えた大人気原作覇権アニメ『インフィニット・ストラトス』の黒髪、幼馴染、巨乳、ポニーテール属性を持ちヒロインレースの勝利が約束された大正義メインヒロイン篠ノ之箒ちゃんは別人。

なので箒は出ます。モッピーは出ません。



Q.この世界のシャルってどうなってるの? 原作を逆転すると擁護不可能になると思うのですが……

A.作者も何も考えてないので安心してください。




人という字は鈴ちゃんの尻の割れ目に似ている

 春だが夕暮れ時ともなれば肌寒さを感じることもある、そんな日の放課後に、ぼくと鈴さんは中庭のベンチに並んで腰を下ろしていた。

 鈴さんは心なしか緊張しているように見える。ぼくとの間に30cmほどの距離が空いていた。

 鈴さんを元の世界の童貞少年、それも長い間片思いを続けてきた純情な十五歳に置き換えて、それがある日突然みんなの憧れの美少女にお誘いを受け、『まさかそんなわけない』と思う一方、思春期的期待を捨てきれず意識してしまう状況にあると仮定する。

 すると、異性に興味津々だけど、異性という未知な生き物との接触におっかなびっくりで何をしたら分からないでいる、その期待と不信の折衷案があやふやな現在の距離感30cmであることが窺える。

 

 まぁ、元の世界でぼくが鈴さんに誘われて同じ状況になったら、今の鈴さんのようになるだろうから、気持ちは痛いほど理解できた。

 だから、どうして欲しいのかも察しがついたので、ぼくは身を寄せて距離を詰めた。

 心理的余裕を保てる距離が0になり、鈴さんは小さくギョッと身を竦めた。ぼくは自身で把握できる限り、この上なく柔らかい笑顔を浮かべた。

 

「少し肌寒いですね」

「そ、そうね!」

 

 上擦った声で一瞬だけ目を合わせから、明後日の方向を向いて鈴さんが答える。

 返事のわりに、ぎこちない表情で固定されている頬は赤みがさしていた。口の端はほんの少し上を向いていて、喜んでいるのが隠し切れていない。

 こういうスケベな内心を必死で隠そうとする姿は微笑ましくてかわいいと思う。きっと女の人が童貞の男の子をからかうのも、今のぼくと同じ理由だろう。

 

 ――ここまで来ておいて今更だが、幼気な少年的反応を見せる鈴さんを見て、ぼくの中に躊躇いが生まれてきた。

 ぼくの尊敬する父は、今のぼくを見たらきっと顔を覆って嘆くんだろうなとか、似たようなことをやって箒さんに執着されるようになったばかりなのにまた繰り返すのかとか、本気で好いてくれているセシリアさんをどうするのかとか。

 これまで培われた価値観が、異性を手玉に取って愉悦しようとするぼくを強烈に阻んで、それでいいのかと問いかけていた。

 けれども、目の前の鈴さんはとてもかわいかったので、妥協案として世間話を切り出すことにした。

 

「一夏と鈴さんは幼馴染なんですよね? どういう経緯で知り合ったんですか?」

「一夏? うーん、あんまり良い思い出じゃないんだけど」

 

 共通の話題が一夏とISくらいしか思いつかなかったため、二人の出会いについて質問してみると、鈴さんは気の進まないようだが話してくれた。

 

「あたしが転校してきたばかりの頃、中国人だって理由で虐められててね、そんな時にいじめっ子に『お前らダセェよ』って言って、助けてくれたのが最初かな」

「へえ……」

 

 ぼくは心から感心してしまった。今の女嫌いな一夏が女の子を助けるのは想像もつかないけれど、一夏は気が強かったりするし、男勝りならぬ女勝りな姿は想像しやすい。セリフだけなら言いそうだ。

 鈴さんは気恥ずかしそうにしながら、それでいて嬉しそうに話す。

 

「一夏って女の子に人気あったから、それ以来いじめがぱったり止んでね、でも友達はできなかったんで一夏にお礼を言いに話しかけてみたの。そしたらあいつ、あたしをジロジロ見て『本当に同い年なのか? 年下じゃなくて』よ! アッタマ来て怒鳴ったら、『それだけ言い返せるならもういじめられないな』とか言い出すし、変なやつよね~」

 

 ……話だけ聞いていると、一夏が物凄くかっこいい男の子なんだけど、どうしてこんな少年漫画のイケメン主人公のような子供だった一夏が女嫌いになってしまったのだろうか。

 まぁ、置き換えると男勝りの女の子なのだけれど、一夏に似ている女性は、元の世界でもあまり見かけなかった気がする。ブラコンかつ男嫌いなのに、それを間近で見せられても辟易しないオーラや人徳が備わってるというか、化粧や演技で雲がかかっていない素顔が感じられて嫌味が全く感じられないのであった。

 自称サバサバ系女子とも姉御肌の女子ともちがうのである。この辺は説明しづらい。ぼくとしては行動に嫌悪感を抱かないとだけ言っておく。

 さて、思い出話ならぬ惚気話を聞かされたぼくは、ありったけの笑顔で言ってやった。

 

「それで鈴さんは一夏を好きになっちゃったんですね?」

「そうそ……は、はぁ!? そんなわけないでしょなにいってんのばかなのしぬの!?」

 

 得意げな顔で同意しかけた鈴さんは、真っ赤な顔で捲し立てた。ぼくは微笑みを崩すことなく続けた。

 

「えー、ほんとうですかー?」

「ホントに決まってるじゃない! だいたい一夏みたいな超がつくシスコンで女が苦手なめんどくさいヤツ、好きになるような物好きいないって」

「じゃあ、ぼくはどうですか?」

「へっ?」

 

 ぼくの限りなく自然に発したあざとい質問に鈴さんは呆気にとられた。ぼくはぶりっこになりきった嫌悪感を愉悦で抑えて平静を装っていたけれども、鈴さんは目に見えて取り乱した。

 

「え? あ、唯くん!? えっと、唯くんがカレシになってくれるなら文句なしというか……あ、いや、唯くんをカレシに出来る子は幸せだなって思うわよ」

「本当ですか!? 嬉しいです、ありがとうございます」

 

 可憐な笑顔を意識して、顔を傾ける。気分は男をブヒらせるアニメのヒロインだった。内面は裏表の激しい腹黒ヒロインだった。

 しかし効果はてきめんで、鈴さんの顔からみるみる余裕がなくなり、目まぐるしく様々な誘惑と期待と否定が自己主張しているのが見てとれた。

 ぼくはクスっと短く吐息をこぼした。

 

「なーんて。ふふっ、冗談です。本気にしましたか?」

「な……なんだ、冗談なの。もー、唯くんやめてよ。ちょっと本気にしちゃったじゃない」

 

 鈴さんは一瞬固まったが、すぐに持ち直して場を取り持つ笑顔を浮かべた。少し残念な内心が見て取れた。

 ぼくなら女の子に同じことを言われたら、「もしかしてこのコ、ぼくのこと好きなんじゃないの」と自惚れる。同時にからかわれているんじゃないのかとも疑う。

 そういう期待と疑心暗鬼に苛まれたところで否定されれば、残念だと思う一方で安堵が生まれるのだ。本人の口から冗談だと告げられて、でも態度が友好的なら嫌われてもいないし、むしろ好かれている部類に自分がいると確信するから。

 現にからかわれたと言われても、鈴さんは悪いように思っていないようだし、心理的な距離感は目に見えて縮まった。

 ほくそ笑みつつ、話題を変える。

 

「だって鈴さん、凄くエッチな人だって聞きましたから。付き合ったらどんなことされるか考えたら、少し怖いですし」

「ちょ、一夏ね、それ言ったの! しないから、普通にお付き合いするし、相手の気持ちも尊重するから! 無理やりエッチなこととかは、その……しないわよ!」

 

 なぜ断言するのに間があったのかは訊かないであげよう。男とはそういう生き物だからだ。

 しかし、彼女の心情が痛いほど理解できていながら、ぼくは暗い優越感に浸っていた。

 たとえるなら、女装して美少女のふりをしたぼくの生足に欲情する男を、「馬鹿だな」と思いながら眺めているような気持ち。

 イケないことだと分かっていても道を踏み外したくなる。してはいけないと熟知していればいるほど、その誘惑は強くなるのだ。

 こういう道を誤りそうになったとき、いつもぼくのまぶたの裏には父の背中があった。

 父の言うことはいつも正しかった。たぶん今のぼくを見つけたらぶん殴ってでも止めたと思う。

 

 だけど、この瀬戸際でぼくが咄嗟に思い浮かべた父の背中は、寝転がりながらワイドショーを観てせんべいを齧る、所帯じみたおっさんだった。

 こんなにも蹴りたい背中はない。ぼくは誘惑に負けて、いじわるな少女になりきった。

 

「ほんとうですかー? 二人きりになったら我慢できなくなって、押し倒したりしないって誓えます?」

「当たり前でしょ! そんな自制できない連中といっしょにしないでもらえる?」

「でも、鈴さんは何回もぼくの胸に顔を埋めてきましたし……」

「あ、あれは事故だって! 唯くんも分かってるでしょ!?」

「ほかにも、太ももに手を置いたとき、触ってるのに気づいてからも感触を確かめるように数回揉んだり……ISの授業中にも」

「ごめんなさい。あたしが悪かったです。自分が変態だと認めます。だから許してください、何でもします」

 

 凄まじい変わり身の早さで非を認めた鈴さんは、矢継ぎ早に謝罪の言葉を平身低頭に口にした。

 あ、やっぱり悪いとは思ってたんだ。触られたのは気づいてたけど、直後にセシリアさんが引き剥がしにきたから誤解かもしれないと思ってカマをかけただけなのだが。

 この世界の女子は所々で男性らしいせせこましさを感じる。事故で触れてしまったけど、事故なんだからもう少し触ってもバレないだろうという浅はかな考え方は、実に男らしい。

 ぼくは目の前に垂れていた鈴さんの頭に手を置いた。びくりと震えたが、構わず優しく撫ぜた。

 

「だいじょうぶ、怒ってませんよ。女の子なんですから、そういうこともしたくなりますよね。今度から我慢しましょう。ね?」

「う、うん……」

 

 答える声と表情はしおらしい。借りてきた猫のよう。首根っこ抓まれた猫が適切な表現かもしれない。

 完全に優位に立ったぼくは、思案する素振りをして口を開いた。

 

「女の子といえば、鈴さんはエッチできれいなお兄さんが好みらしいですけれど」

「ギャーッ! やめて! お願いだからこれ以上あたしを辱めないで!」

「あぁ、落ち着いてください。鈴さんのことを責めてるつもりじゃないですから。ただ、女の人がどういう男の子やシチュエーションで興奮するのか気になっただけです」

 

 悶える鈴さんの肩と手にさりげなくボディタッチをして語り掛ける。すると暴れるのをピタリと止め、鈴さんは信じられない様子でぼくを見つめた。

 

「え……そんなのが気になるの……?」

「変ですか?」

「いや、だって男の子が女のそういうことに興味があるなんて、聞いたことないから……」

「男の子だってエッチなことに興味ありますよ」

「そ、そうなんだ。ふーん」

 

 自分の口走った言葉に全身がむず痒くなったが、鈴さんは違ったようだ。頬を赤らめ、ぼくの体を目移りさせている。

 まんまクラスメートの女子がエッチなことに興味津々と知ってやに下がった男子の反応だ。下心がかわいらしい顔に如実に表れているのがちょっと滑稽に映る。

 

「だから、鈴さんの好みのタイプやシチュエーションを教えてほしいなぁ、って」

「あはは……唯くんがそんなことに興味あるなんて意外過ぎてびっくりだわ。あたしの好みなんて参考になるかしら」

 

 後ろ髪を掻き、照れ笑いをしながら鈴さんが言う。これは間を置いて冷静になろうとしているな。

 瞬時に心理状態を見て取ったぼくは、すかさず追撃の言葉を放った。

 

「鈴さんはどんなオカズでオナニーしてるんですか?」

「――ぶはっ!? お、オナ!? ななな、なに言ってるの唯くん!?」

「教えてくれてもいいじゃないですか。みんなには秘密にしますから……ね?」

 

 動揺しているところに柔らかく微笑む。鈴さんはもじもじと逡巡し始めた。

 指を突き合わせ、恥じらいながら上目遣いでぼくの様子を窺っている。

 

「う~……ひ、引かない?」

「引きませんよ」

 

 優しく言う。それを受けて、躊躇いがちに、けれども表情の何処かに秘密を打ち明ける解放感と異性に性癖を話す背徳感に舞い上がっているのが見て取れる顔で鈴さんは言った。

 

「あ、あのね……おにロリ……なんだけど」

「おにロリ……?」

「ああーっ! 引かないって言ったのにぃ!」

 

 耳慣れない単語に「なにそれ」と返事に困っていると、鈴さんは駄々っ子みたいに喚いた。

 

「ごめんなさい、どういうものか分からなくて……」

「あ、そうか。えっと、『おにロリ』はお兄さんとロリータと略で……年上の男の人が、年下の女の人に……その、エッチなことを教えてあげるジャンルなんだけど……えへへ」

 

 と、照れくさそうな口振りでこちらの顔色を窺いながら鈴さん。

 ああ、なるほど。おねショタの逆転バージョンか。つまり、お兄さんがロリ――幼女といかがわしいことをするわけだが……これだと犯罪的な絵面しか想像できない。

 いや、逆転してようがいまいが未成年に手を出すのは犯罪なのだけれど。

 

「それってメジャーな性癖なんですか?」

「うーん、巨チンとかチンチンゴムつけフェチみたいにメジャーじゃないかも……でもエロ漫画だとけっこう普及してるジャンルだと思う」

 

 そんなのが普及してるのか……女性の好みはよく分からない。でもおにロリの位置づけがおねショタに近しいのは当たっているようだ。

 

「お兄さんか……ということは、鈴さんは小さいコに感情移入してオナニーしてるんですね」

「えっ? あ、うん、そうだけど……」

 

 答える声は歯切れが悪かった。あれかな。ロリが可愛いのも大事とか、お兄さんが常に優位なのも重要とか、細かいこだわりを口にしかけたのかな。

 

「お兄さんはどういうふうに女の子としてるんですか?」

「……そういうのは作品によるから、一概には言えないんじゃないかなーって」

 

 目が泳いでいた。それだけは言いたくないらしい。ジャンルまでは言えるけど、具体的なプレイ内容となると理性的な部分が勝るのだろうか。

 そっちがそう来るのなら、こちらもそういう手段を取るだけなんだけど。

 

「えー、いいじゃないですか。教えてくださいよー」

 

 甘えるような声を出しつつ、露骨に媚びすぎないよう意識してしなだれかかる。

 触れた鈴さんの体はとても強張っていた。迷っているのに加えて誘惑にも抗っているから、頭も体も硬直してるのかな。

 やがて顔を真っ赤にした鈴さんは、喉から搾り出したような声で言った。

 

「あの、唯くん……それはちょっと、ホントに、恥ずかしいから……」

「……ふーん」

 

 目論見が外れたぼくはスッと目を細めた。何というか、ぼくの感覚だと男同士で性癖の話をするときは否応なくテンションが上がって、調子外れな話をしたり、安酒に酔ったようにはしゃぐイメージがあった。

 だから異性を相手にしても興奮も相俟ってテンションが上がると踏んでいたのだが、梯子を外された気分だった。

 だからぼく自身がもっと踏み込んでやろうと思った。

 

「あれですよね。お兄さんが鈴さんに『お兄ちゃんで興奮しちゃったんだ? 女の子だからしょうがないよね……もう、手間がかかる妹なんだから……』って言いながら、やさしくしてあげるんでしょう?」

「ふぁっ!? ななな、なんで知って――!」

 

 感情をこめて耳元で囁いた。鈴さんは耳まで真っ赤だ。ぼくは続けた。

 

「『だいじょうぶ、お兄ちゃんに任せて? お兄ちゃんも初めてだけど、がんばってみるから……』」

「……っ! あっ、だ、だめ……ああああ、あの唯くん、こういう悪ふざけは、あの……」

「『もうっ、動いちゃだーめ。お兄ちゃんがぜーんぶしてあげるから』」

 

 白い喉が生々しく動き、生唾を飲む音がした。チョロいものですわ。

 主導権を握り、ぼくの掌の上でコロコロ転がされている鈴さんはたまらなく可愛い。

 ただ元の世界のエロ漫画のセリフを真似しただけなのにこの効果。童貞を殺すのって簡単なんだなぁ。

 いや、まあ、童貞を殺すと銘打ってる大半は、たいてい男だったら耐えられないものだらけな気がしなくもないけど。

 息を震わせながら鈴さんが言う。

 

「ゆ、唯くん……あたし、こんなことされたら、もう……」

「『唯じゃなくて、お兄ちゃんって呼んで』」

 

 

 

 

 

 ――いや、今のはないな。尋常じゃなくキモかった。

 調子に乗ってエロ漫画のお兄さんという役柄になりきっていたのだが、自分の名前を口にした拍子に、同級生にお兄ちゃん呼びを強要していることを客観視してしまい、自分の気持ち悪さに気づいてしまった。

 流石にそれはないわ。いくら何でもやりすぎだよね。お兄ちゃんはない。おにロリもないわ。

 これまでの所業に羞恥心が胸にわだかまって、胃を鷲掴みにされた気分になり、素面に戻った。

 

 けれども、鈴さんはちがった。息が荒い。何というか、獲物を前にして跳びかかる寸前の獣みたいな震わせ方。

 あら? ……どうしよう。

 

「お……お兄ちゃ――!」

 

 鈴さんがあらぬことを口走ろうとした、そのときだった。

 

「おーい、リーン! どこだーっ?」

 

 あまり離れていないところから一夏の声がした。鈴さんを探している。

 鈴さんは驚いた猫のように跳ね上がってぼくから離れた。ベンチの一番端に肩を縮ませるようにしてちょこんと腰を下ろす。

 ……一夏来なかったらどうなってたかなぁ。

 

「一夏ー、こっちー!」

 

 立ち上がって一夏を呼ぶとこちらに向かって走って来る。

 一夏は鈴さんを知らないか尋ねようとしたが、ぼくが無言でベンチを指さすと、見つからないよう小さくなっていた鈴さんを見つけて呆れた顔をした。

 

「なんだ、ここにいたのか鈴。山田先生が探してたぞ。クラス対抗戦が近いのにアリーナで練習してないから、どこにいるんだろうって」

「う、うん」

 

 鈴さんの声は何処となくぎこちない。いつもの快活さがないので一夏が表情に疑問符を浮かべた。

 

「そういや二人で何してたんだ、こんなところで」

「え、えっと……」

「一夏の昔話が知りたくて、幼馴染の鈴さんから聞き出してたんだ。ね?」

「う、うん」

「おいおい、そういうのやめろよー。なんか変な事しゃべってないだろうな、鈴。もし話してたら、オレはお前のもっと恥ずかしい過去を唯に吹き込まなきゃいけなくなるんだが」

「してないッ! してないからクラスメートに言い触らすのやめなさいよバカッ!」

 

 表面上、元気を取り戻した鈴さんは一夏に連れられて山田先生のところに行った。

 去り際、ぼくは一夏にバレないようこっそり、鈴さんに囁いた。

 

「がんばってね、鈴さん。勝ったらご褒美あげますから」

「――ッ!?」

 

 まあ、冗談なんだけど。セシリアさんに勝ったんだし、サボりや慢心で足を掬われたら困る。圧勝してもらわないと。

 

 

 

 

 

 ――それから、クラス対抗戦はつつがなく行われ、鈴さんが圧倒的な内容で一学年の部で優勝した。

 四組の……名前は忘れたけど日本代表候補生の人も奮戦していたが、機体性能の差は覆せず、順当な結果に終わった。

 ……観戦していて思ったんだが、やっぱりこういう場ではみんな同じ機体使わないと不公平じゃないですかね。

 いや、新型のテストやデータ収集を兼ねてるのは知ってるけど、国家不介入が有名無実化と化してるのが……うーん、難しいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 クラス対抗戦が終わってしばらくして、ぼくが誰とは言わないが意味深な視線を感じるようになった頃、またしてもこのクラスに転校生がやってきた。

 

 

 

「シャルロット・デュノアです。よろしくお願いします」

 

 彼女は自己紹介してから、ぼくを見てにこりと微笑んだ。

 




  シャル「俺が本当のあざとさを見せてやる」


              ――クソビッチと化した主人公に対して。
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