獅子虎が書きたくてネタが無いか探してた時、そういえば映画のライアンって不憫だなー、とか思い至りまして、コレだー!となりました。
ライアンが演技してる設定(なにそれ)です。
アレとかソレとか指示語が多いかも。あと会話文。
ライアンがシュテルンビルドから発つ前日。
俺は行きつけのバーにライアンを呼び出した。当日だとバニーも来るかと思ったからだった。コイツにはちゃんとお礼を言いたいと思ったのだ。
感謝と謝罪。どちらを言えばいいのか悩んだ結果、感謝を言おうと決めていた。
「……ありがとな」
「だから気にすんなって。俺は条件イイトコに行くだけなんだからよ」
僅かな邂逅。コイツとちゃんと話したのはこれが初めてではないだろうか。相変わらずニヒルな笑みを浮かべてライアンは笑っていた。
「まぁ、ジュニアくんと仲良くな」
「あぁ。……なぁ、ライアン」
からん、と氷が音を立てた。
「ん?」
「お前、アレわざとだろ」
「……」
からん、と氷が音を立てた。からから、と隣から氷がかき混ぜられる音がする。
しばらくしてライアンはうーん、と唸ってから
「ばれた?」
得意げに言った。
アレ、というのはつまり全てだ。
「バレたの、おっさんがはじめてだよ」
「そうか」
「ファイヤーエンブレム辺りにはバレると思ったんだけどなぁ」
ヤツは愉快そうに笑った。俺はそれを見ながら呆れていた。
「おっさんすげぇな、勘良すぎだろ」
「こんなん大したことじゃねぇだろ」
「いやいや、おっさんしか気づいてねぇってマジで」
「そりゃどぅも」
馬鹿なことをするやつもいたもんだ。俺もお人好しだなんだと言われるが、コイツの方がよっぽどではないか。
「お前相当なお人好しだな」
「それ、言われたのあんたが初めてだ」
「そりゃ今までろくな付き合いしてなかったんだろ」
「そのとおりだな」
かちん、とどちらからともなくグラスを突き合わせた。ずいぶん軽い音がした。
「……なぁ、俺あんたに興味がわいた」
楽しそうにライアンが言う。なんとなく、溜息をつきたくなった。
「だろうと思ったよ」
素っ気なく返せば、笑われた。めっちゃおかしそうに。
何故。
「面白いな、オッサン。……俺、あんた好きだわ」
「だろうと思ったよ」
「ふぅん。なんで?」
「そんな目してる」
けど、それは錯覚だぜ。と言えば言うと思ったと返される。
不思議な会話だ。
「なぁ、俺そんなにジュニアくんみたいな目してる?」
「……」
なんだ、やっぱり知っていたか。
そう思った時、考えが顔に出ていたらしく、知ってるよ、と言われた。
「バーナビーとは違うな。お前は理性的だよ」
「ふぅん、そんでおっさんは?」
「あ?」
「おっさんはどっちを選ぶの?」
試すように流し目を送られた。
別にイケメンの流し目なんて嬉しくもなんともないのだけれど。
「どっちも選ばない」
「えー」
「俺には愛してる奴がいるからな」
「え?まじ?」
「まじ」
まじかぁ、それフェイクじゃないのかぁと落胆する声がした。勝手に落胆でもなんでもしていろ。俺は心変わりしない。
「……なぁ」
「しない」
「……なんでわかったんだよ」
「年の功ってやつだな」
ふん、と今度は俺が得意げに笑うと、ライアンはムスッとした顔をした。大方、思い出にとか言って俺を誘うつもりだったのだろう。が、そうは問屋が下ろさない。
ていうか、下ろさせない。
「まぁ、なんだ。次の相手見つけろよ。こんなおっさんじゃなくって」
「やだね」
「やだねってお前……」
子供か。
「俺はおっさんがいい」
「なに、お前酔ってんのか」
「酔ってない、俺酔ってない」
「ばぁか、信じらんねぇな」
「……じゃあ、酔ってる」
「尚更無理だな」
そう言うと、ライアンから恨めしげな視線を頂いた。
そんな目をしても無理なもんな無理だ。
「なぁ、おっさん」
「やだね」
「なぁ」
「いやだ」
「おっさん」
「むり」
「…………こてつ」
かん、とグラスをテーブルに置く。かららん、と氷が揺れた。
瞬間。
がばっ、とライアンが抱きついてきた。
……なんだこの状況。
「お前さぁ、」
「……やだ」
「おい、見られてる」
「どうせわかんねぇよ」
「俺顔バレしてんだけど」
「大丈夫。あんた結構変装うまいよ」
「そりゃどうも」
そこは素直に嬉しい。……が、今はそれどころではない。
「……おい」
「いやだ」
「……お前なぁ」
「おっさん、」
ぐ、とライアンが俺から離れて俺の瞳をのぞき込んできた。
「なん、」
「……俺じゃ、ダメか?」
じっ、と澄んだ瞳が俺を見つめる。その目は不安に揺れていて、酒のせいかちょっぴり潤んでいるようにも見えた。
はぁー、と嘆息して手を伸ばした。ライアンが目を見開く。……頬に俺の手が触れる。
……ぺちっ
「もっとイイオトコになったらな」
頬を叩いてから耳元で囁いた。
「は?な…、な、な、ななななっ、」
ぼぼぼっ、とライアンは顔を真っ赤にした。
なんだ、まだまだ子供だな。くくっ、と思わず笑うと、ライアンは顔を隠しながら唸った。
「くっそ、悔しい!」
「あっはは、かわいーとこあんじゃん、お前」
「アンタのがかわいーっつーの!」
「……お前今の状況見てから言えよ」
「う、ぐ」
くす、と思わず笑みがこぼれた。
どうやらこの後輩は結構表情豊かみたいだ。
「くそ、覚えてろよ……」
次こそは、と顔を拭うライアンは子供のようだ。可愛い、なんて思ってから、そんな自分に驚いて頭を振った。
あぁ、もしかして自分は思ったより酔っているのかもしれない。それとも、この雰囲気に当てられたか。
しかし、未だうーうー唸ってるライアンをやはり可愛いなどと思ってしまう。
カワイイなど、およそこの男とは無縁の言葉なのに。
「……次は、もっとイイトコ見せてくれよな」
そう、笑いながら言うと、驚いたようにライアンが顔を上げた。
ぐるぐると考えていたが、結局はめんどくさくなって考えを放棄した。
別に可愛いと思ってもいいじゃないか、と無理やり結論づけて。
そんな俺は自分の目元が少しばかり赤くなったのを、知らずにいた。
で、このあとケー番とか迫られて渡しちゃうんですね、わかります。
獅子虎いいですね。勿論兎虎もいいですけど。
妄想が広がりますね。