可能性の翼・外伝『絆を紡ぐ者~Connect~』   作:龍使い

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プロローグ

――そこは、言葉にするのも異様と言える『世界』の中。

――その場所で、一人の『少年』が『異形なる者』と剣を交えていた。

 

「……ったく、師匠から聞いてたが、ここまで胸糞悪いのは初めてだな…」

白き鎧を纏った少年は、西洋の剣を片手で構えたまま、目の前の敵を見据えて呟く。

「嘆きと慟哭、そして全てを憎む憎悪で、魂そのものが縛られてやがる。

 『安易な奇跡を求めし者の代償は、相応の無限獄を』とは良く言ったものだが……こいつはちぃと、酷過ぎるわな」

吐き捨てるようにそう言葉を紡ぐと同時に左手が光を放ち、その手には銃が握られている。

「とりあえず、もう暫く待ってな……。その魂を開放し、あんたの『本当の人生』を謳歌させてやるからよ!」

少年はそう叫び、武器を構え……。

 

――『翼』を広げ、異形へと疾駆し始めていた。

 

――――

 

八月某日のある日。

「……異世界の救助ぉ?」

夏も半ばが過ぎ、俺は師匠の突拍子も無い台詞に思わず聞き返す。

「本気で言ってんのか、師匠……?」

「うむ、至って本気じゃ」

そんな俺の態度とは裏腹に、師匠は真剣な表情で言葉を返す。

「いや、あのな……俺も大概師匠のチート性を知ってるけど、幾らなんでも無茶があるんじゃねぇか?」

この人のとんでもなさは今に始まった事ではないが、今回の件は無茶苦茶言ってるのは分かる。

「異世界や平行世界の荒事には、特例が無い限りは首を突っ込まない……それがあんたが『世界の壁を越える時の制約』だろ?

 確かに凪や蓮との交流はあるが、向こうの荒事は基本的に向こうの領分だし、俺らが首を突っ込んだって裏方が精々だっつったのは、師匠だぜ?」

「まぁの。じゃが、今回はその『制約』が適応されぬ事例なのでな……」

師匠は、そう言って緑茶を啜る。どーでも良いが、人の部屋の茶を勝手にいれて飲まんでくれ……。

「ふぅん……。けど、それで何で俺のところに来るんだよ?

 『制約』が適応されないなら、師匠自身の力で解決できるだろ?」

そう言って、俺は自分の机に向き直り、作業を再開する。正直、わざわざそれだけの為に報告しに来たって、俺にゃ関係ない。

この規格外師匠なら、俺なんかの所に来なくても、勝手に解決出来る事を知ってるからな。

「その場所が、『奇跡の乱用された世界』だと知ったら、お主はそう答えるかの?」

「……」

作業を再開した手が、再び止まる。

「……どう言うことだ、師匠?」

「言葉通りの意味じゃよ。奇跡を代価に、途方もない代償を払わせる『理』が存在する異世界を確認した……それだけじゃ」

そう言って、再び緑茶を啜る師匠。

「その世界の『理』は、一つの歪んだ輪廻を形成しておる。

 たった一つの願いの為に世界を閉ざし、数多の悲しみを生み絶望を生むにまで至った。

 そして、絶望の果てに『全ての救済』を願った少女によって、世界は輪廻から解き放たれる。

 少女その者が、『理』となることでの」

そう言葉を紡ぐ師匠の声色は、少しだけ悲しい声をしているのを、俺は感じた。

「この結末を、わしは間違っているとは言わぬ。じゃが、夢や希望の果てが絶望では、あまりにも救われぬ。

 ましてや、それを救うために、たった一人の少女が全てを背負う……悲しすぎるではないか…」

「……師匠」

師匠の言葉は、誰かが聞けば賛否両論である言葉だと思う。けど、俺は知っている。

誰よりも世界を愛し、誰よりも人を愛するこの人にとって、自身だけの力で紡げぬ物語の結末を望んでいる事を。

誰もが笑い、誰もが幸福となれる結末――ハッピーエンドと言う名の、夢物語を。

「……ったく、師匠がそこまで言ってちゃ、俺も動かない訳には行かねぇな…」

俺は、机においてある『グローブ』を掴み、利き手につける。多分、この時の俺は、この後の苦労なんて考えちゃいないだろう。

けど、普段から自由奔放で、修行の時はとことん厳しくて、人の事をこれでもかと言うくらいに溺愛して……それでも、何処か不器用な師匠(家族)がそこまで言うのなら、弟子(家族)として、動かないわけには行かない。

「良いのか、馬鹿弟子……?」

「良いも悪いも、初めっからそのつもりだったんだろ? だったら、久々に『家族』の我侭に振り回されてやるさ」

師匠の疑問に、俺は笑いながら答える。

「……ふふ、言うようになったのぅ、馬鹿弟子」

「これ位言えるようにならなきゃ、師匠の弟子はやってられないってな」

微笑み返す師匠に、俺はそう言って言葉を紡ぐ。

「じゃったら、直ぐに準備せい、馬鹿弟子。

 それと、行った後での戻ってくる時間は気にするな。幾ら時間が掛かろうと、お主の予定に響かぬ様に調整くらいは付けておくからの」

「そいつはありがたいね、ったく。んじゃ、あいつに頼んで調整つけてもらうとするか」

師匠の言葉にそう返し、俺は部屋を出る。

この選択が、俺にどう言う影響を与えるかはわからない。

けど、俺の胸の中には、ある確信が確かにあった。

 

――この選択は、決して間違いでは無い……と。

 

――――

 

「……わかっておったつもりじゃが、やはりお主は、《絆を紡ぐ者(コネクト)》の称号を持つ男じゃな…」

主のいなくなった部屋の中で、優しげに呟く女性。

「お主は、笑って否定するやもしれぬが……そんなお主じゃから、わしもあやつらも共におる事を望んでおる。

 お主が自然と結び、築いた絆が、今を紡いでおるんじゃ。じゃから……」

女性は、窓から見える蒼く澄み切った空を見上げて、言葉を紡ぐ。

「じゃから、かの世界で……お主の見据える『結末』を、『真の奇跡』を、紡いでくれぬか?」

 

――わしの一番の愛弟子、『真行寺修夜』よ……。

 




ある所で書いたわたしゃの感想を見た人から要望があったので、突貫工事ですがプロローグを仕上げてみました。
ただ、真に申し訳ありませんが、暫くは本編がメインとなるため、更新速度は殆ど亀だと思います(平伏
下手な同時執筆は、両方とも未完に終わる可能性がありますので……。
本編の執筆の合間に書ければと良い思うんですが……そこは正直その時次第です(汗

因みに、現時点で本編との時系列は不明ですが、今上がってる本編より後だと言うのは確かです。
多分、こっちを書く上での本編のネタバレなどもあるかと思いますが、そこは気にしないでいただけると嬉しいです、はい(汗
因みに、一夏たちIS側の原作メンバーの登場は今のところ未定です。
要望があれば、出すかもしれませんが……あまり期待しないでいただければ。

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