戦姫絶唱シンフォギアGX ~破・壊・神・転・生~ 作:GGG@ハーメルン
前編はゴジラvsミカをお送りします。
最強の怪獣vs最強のオートスコアラー、果たして勝つのは!?
※本作では、【ゴジラ】シリーズおよび【戦姫絶唱シンフォギア】シリーズのネタバレやオリジナル要素を多分に含みます。
ネタバレやオリジナル設定、ゴジラの人間への転生などに抵抗のある方はご遠慮頂いた方が良いかと思われます。
「それでも良い!」という方は、駄文ですがお付き合い頂けると幸いです。
では、どうぞ。
OP:Exterminate
バトル時BGM:ゴジラ2000-ミレニアム-メインテーマ
『ガァアアアオオオォオォォォンッ!!』
海から突然現れ、聞くもの全てを震え上がらせる咆哮を轟かせた
【クリス】
「な、何なんだよ、あれは!?」
【緒川】
「アウフヴァッヘンを放つということは、あれも聖遺物なのでしょうか?」
【あおい】
「こちらのデータに該当するパターンはありません!」
【弦十郎】
「俺達の管理下に無い未知の聖遺物だというのか?」
【マリア】
「まさか、≪ネフィリム≫のような自律行動型?」
【フロンティア事変】で猛威を振るった、自らの意思で行動し他の聖遺物を喰らう悪鬼の如き完全聖遺物。
現れた謎の存在は、確かに≪ネフィリム≫と類似した部分が見られたが、次の藤尭の報告でその予想は覆される。
【藤尭】
「対象から生体反応を検知!」
【未来】
「じゃあ、あれも誰かが変身したシンフォギアなんですか!?」
【翼】
「触れれば切れるような殺気に、戦慄すら覚える底知れぬ怒り。これはまるで――」
【エルフナイン】
「僕の持ち得る知識の中にも、似たような事象があります」
【響】
「……暴走」
全員の視線が響に集中した。
響は、元々正規のシンフォギア適合者だったわけではない。過去のある事件で重傷を負った折り、当時の装者である天羽奏の≪ガングニール≫の破片と肉体が融合したことで生まれた特殊な適合者であった。
聖遺物との融合体となった響は、翼やクリスをも凌ぐ適合係数を叩き出した。しかし、それは同時に聖遺物の持つ闇の部分も引き出すことになった。
破壊衝動に突き動かされ、闘争本能のままに味方にも牙を剥く。赤黒い殺意の波動に包まれたその姿を、シンフォギアを知る者はこう呼んだ。
――暴走、と。
響は自分の胸に手を当てる。
親友の未来のお陰で聖遺物は取り除かれ、近い将来生きた聖遺物と化すという呪いは消え去った。
しかし、暴走に呑まれた時のどうしようもない怒りと哀しみは、今も胸の奥に楔となって残っている。
【響】
(……あなたも私と同じなの?)
複雑な心境を抱いて、響はモニターを見つめる。咆哮を終えたゴジラは、低く唸りながら視線を巡らせていた。
まるで何かを探しているように。
そして、その視線がアルカ・ノイズとミカを捉えた時、
『ゴアァァァァ!!』
猛烈な敵意を込めた威嚇を放った。
【ミカ】
『な、何だ、コイツ!?こんなのがいるなんて聞いてないゾ!』
射殺すような視線に、
ゴジラは興奮した様子で尻尾を振り回し、体勢を低くする。そして、尻尾が抉れたアスファルトを打ち砕いたのを合図に、ミカとアルカ・ノイズに向かって猛然と突進を開始した。
【ミカ】
『コイツやる気か!?オマエら、先ずはアレから解体だゾ!』
ミカの命令に従い、アルカ・ノイズは壁のように隊列を組み、謎の存在を迎え撃つ構えを取った。
パイプオルガン型が最前列に並び、頭部の発射管から分解能力を持つ弾丸を斉射する。弾幕を躱すには上に逃げるしかない。
しかし、ゴジラは逃げる素振りを見せず、迫り来る弾幕に向かって驀進し続けた。
【マリア】
「避けない!?」
【エルフナイン】
「いくら暴走状態のシンフォギアでも、アルカ・ノイズの干渉破砕効果には耐えられません!」
エルフナインの言葉に、誰もが赤黒い暴走の鎧が剥ぎ取られる姿を思い浮かべた。
だが、その予想は大きく裏切られることとなる。
アルカ・ノイズの弾丸が命中すると、その部分が風に拐われる霞のように揺らめくも、すぐさま新しい影が被弾部分を覆い、被弾前と何ら変わらない状態に戻ったのだ。
【響】
「効いて、ない?」
【エルフナイン】
「そんな!?有り得ないです!」
アルカ・ノイズの力をこの中の誰よりも知るエルフナインにとって、目の前で繰り広げられた光景はまさに青天の霹靂だった。
謎の存在は、尚も全身を被弾しながらも全く怯まず、立ち並んで液晶ディスプレイのように光る異形の壁に激突した。
『ガァアアァアアアッ!!』
敵の布陣を突き崩し、周囲を埋め尽くす雑兵達を引き裂き、噛み砕き、踏み潰す。アルカ・ノイズも解剖器官による攻撃を繰り出すが、パイプオルガン型の時同様、全く効果がなかった。
複数の人型の個体が、腕を触手状にしてゴジラの首や腕、背鰭に巻き付け動きを封じようとする。しかし、ゴジラの怪力はそれらを容易に振り払うと、その場で身体を回転させ、長い尻尾を更に伸ばしながら振り抜いた。
風切り音を発しながら、尻尾はしゃがんだままの調の頭上を通過するようにアルカ・ノイズを残さず薙ぎ払った。
【藤尭】
「強い……!」
【弦十郎】
「アルカ・ノイズを全く寄せ付けないとは……」
突然の開戦から約2分。その僅かな間にこれまで苦戦を強いられてきた敵を殲滅したゴジラに、S.O.N.Gメンバーは舌を巻く。
だが、その瞳が調を捉えた瞬間、指令室に再び緊張が走った。
【未来】
「に、逃げて、調ちゃん!」
未来が叫ぶも、調は恐怖のあまり身体を震わせるだけだった。
アルカ・ノイズすら屠る存在に襲われれば生身の少女などひとたまりもない。ましてや、暴走により見境がない可能性が高いのだから尚更だ。
しかし、ゴジラは思いも寄らない行動に出る。
調の存在を認識したにも関わらず、襲いかかるどころかその場で反転、少し離れた所に立つミカと対峙した。……まるで、その背に調を庇うように。
【あおい】
「調ちゃんを……守ってる?」
【弦十郎】
「暴走状態なのに、意思があるとでも言うのか?」
【翼】
「……何にしても好機だ。二人の救出に向かうぞ、雪音!」
【クリス】
「えっ?お、おうっ!」
翼とクリスが強化型シンフォギアを手に指令室を出ていく。皆がその背中を見送る間も、響は自分と似て非なる存在から目を離さなかった。
海上自衛隊基地敷地内――
【調】
「……私を、守ってくれるの?」
眼前に背を向けて立つ謎の存在に、調は思わず呟いた。聞こえたのか、赤黒い影は肩越しに振り返り、視線が交錯する。
底知れない畏怖を感じさせる黄色い瞳。でも、自分に対して抱いているものが敵意では無いことだけは、調にも理解できた。
話せば通じるかもと思い、震える身体に渇を入れて口を開こうとした時、視界の隅に赤い光が映る。
【調】
「危な――」
『ガッッ!?』
叫ぼうとした時には、既に赤い光がゴジラの側頭部に命中していた。派手な音を立てて落ちた物体は、ミカの主要武器である高圧縮カーボンだった。
【ミカ】
「余所見してると狙い撃つって言ったはずだゾ~?」
ミカは熊手のような手をわしゃわしゃと動かしながら、相変わらずの調子で宣った。
しかし、頭部に命中したにも関わらず、ゴジラは軽く頭を振る程度でダメージを負った様子は無かった。逆に、自分に手を出した愚か者を鋭い目付きで睨み付ける。
【ミカ】
「オオッ!オマエ丈夫だな!それでこそ遊び甲斐があるゾッ!」
ミカは楽しげに笑いながら両手からカーボン弾を連射した。
ゴジラは調を庇ってか、その場を動かず攻撃をひたすら受ける。殆どダメージは無いが、流石に顔面に当たった際は、鬱陶しそうに唸りながら首を振る。
その僅かな隙を狙い、ミカはカーボンを乱射しながら近付くと、
【ミカ】
「ウリャァアァァ!」
切歌を倒した時のように、腕を突き出しながらパインバンカーの如く高硬度のカーボンを至近距離で射出した。
直後、何かが割れるような嫌な音が辺りに響く。
ミカは、自分の攻撃が相手の顔面を粉砕したと思い、嗜虐的な笑みを浮かべる。……しかし、その笑顔はすぐに引き攣ることになった。
完全な不意打ちにも関わらず、ゴジラは放たれた一撃を口で受け止めていた。そればかりか、歯に相当する赤黒い霧がカーボンに食い込み、大きな亀裂を走らせている。
【ミカ】
「ナニャッ!?」
驚くミカの前で、ゴジラはギアすらも破壊するカーボンを強靭な顎で噛み砕いた。
接近戦は危険と判断し、ミカは後ろに飛んで距離を取ろうとするも、それを見透かしたゴジラはカーボンを吐き捨てながら距離を詰め、右腕を叩き付ける。
【ミカ】
「ヌギッ!?」
間一髪、ミカは攻撃を受け止めた。ゴジラはすかさずもう一方の腕を叩き付けるも、戦闘特化型というのは伊達ではなく、ミカはもう一方の攻撃も熊手のような手で受け止める。
ゴジラとミカは互いの手を組合せ、力比べの格好になった。ミカは渾身の力で捩じ伏せようとするが、ゴジラの前では
体格でも大きく勝るゴジラは、上から思い切り力をかけ、ミカを捻り潰そうとした。
【ミカ】
「ギギギギギ!?……なぁんつって!」
押し込まれ苦しげな表情を見せていたミカが、突如邪気に満ちた笑みを浮かべた。
直後、ミカの両手から炎が噴き出し、密着していたゴジラの身体を大火に包んだ。
【ミカ】
「ニハハァッ!引っ掛かったゾ~!このまま骨まで黒焦げにしてやるゾ~!」
【調】
「そんなっ……」
自分を助けてくれた存在が炎に包まれ、調は悲痛な声を漏らす。しかし、彼女に助ける術はなく、ただ黙って勢いを増す炎を見ていることしかできなかった。
自分の炎に焼き尽くせぬものは無い。ミカは勝利を確信して大声で笑い出した。
……だが、彼女は知らなかった。自分が相手にしている存在が、どのようにして生まれたのかを。
【ミカ】
「アハハハハ、は……あ?」
笑っていたミカは、何かがひしゃげるような音に首を傾げた。直後、掌から放射していた炎の勢いが急に弱まる。
自分の意思に反した事態に目を見開き困惑の声をあげようとするが、炎の中から現れたものを見て大口を開けたまま固まった。
目の前にいたのは、変わらず赤黒い影に全身を覆われた謎の存在。しかも、炎が効いている様子が全く無く、逆に規格外の握力でミカの腕を握り潰していた。
核の炎にさえ耐え抜き、その放射能で不死身の肉体を手に入れたゴジラにとって、錬金術が生み出した戦闘兵器の火炎も
『グルゥアァァッ!』
ゴジラは、壊れた人形のように口をパクパク開閉させるミカの両腕を引き寄せ、腹部に強烈な前蹴りを見舞った。
【ミカ】
「ゲフェアアァァァァアァ!?」
悲鳴に至るまで奇抜な人形は、両腕をもぎ取られ、本体もゴロゴロと転がりながら自分が破壊した施設の残骸に突っ込んでいった。
『ガァアアアァァオオォォォオオゥゥンッ!!』
ゴジラはもぎ取った機械の両腕を放り捨てると、天に向かって勝利の咆哮を轟かせた。
【調】
「勝った、の?」
調はにわかには信じられなかった。
自分と切歌が協力して挑んで軽くあしらわれた強敵に、力任せの肉弾だけで完勝してしまった。暴走を差し引いても、自分達とはまるで比較にならない。
【切歌】
「調!」
目の前の存在は、本当に自分達と同じ人間なのかすら疑問に思っていると、傷付いた身体をおして切歌が自分の元に駆け寄ってきた。
辿り着くなり、切歌は調を抱き締めながら両目から大粒の涙を溢れさせる。
【切歌】
「調……、調~!」
【調】
「切ちゃん……?」
【切歌】
「良かったデス……、無事で。もう、ホントにダメかと思ったデスよっ」
【調】
「……うん。ゴメンね、切ちゃん」
自分の為に泣いてくれる親友に、調も涙を浮かべながら、互いに生あることを確かめるように、抱き合った。
ミカを撃破したゴジラは、最早興味は失せたと言わんばかりに鼻を鳴らすと、後ろで抱擁を交わす二人の少女の方へ身体を向けようとする。しかし、半身が後ろを向きかけたところで、何かを感じたように動きを止め、蹴散らした人形が埋まる瓦礫の方へ向き直った。
すると、突然瓦礫の山が宙に舞い上がった。瓦礫を巻き上げたのはで緑色の竜巻で、吹き荒れる風と音に調と切歌の二人は驚いて身体を固くする。
ゴジラも最初は空中に注目していたが、やがて何かに気付いたように竜巻の中心に目を向けた。
視線の先、竜巻の中心部には、地べたに座り込むミカと舞踏家のようなポーズでスカートの裾を摘まみながら剣を掲げる新たな
【ファラ】
「任務が終わって気になって来てみれば、何だかとんでもないことになっているわね」
現れたのは、ロンドンで翼を襲った
【ミカ】
「……助かったゾ」
【ファラ】
「情けない。……と言いたいところだけれど、成る程、アレは想定外ね」
ファラはミカを一瞥すると、自分達を鋭い視線で射抜く赤黒い影に目を向けた。
【ファラ】
「ミカ、アレは一体何?」
【ミカ】
「……そんなの、こっちが聞きたいゾ」
【ファラ】
「でしょうね。あなたがそこまでやられるなんて、只者では無いのは確かでしょうけど」
『グゥルゥゥゥゥ……』
今にも飛び掛かってきそうな謎の存在の様子に、ファラは懐から
【ファラ】
「悪いけれど
【ミカ】
「……分かったゾ。おいっ、オマエ!次会ったら、必ず解体してやるゾ!」
捨て台詞の後、ファラはテレポートジェムを足許に落とした。2体の人形のいる場所が赤く発光し、空間転移のゲートが開く。
逃走を図っていることに感付いたゴジラは、2体に襲いかかろうとするが、転移の間際、ファラは巻き上げていた瓦礫をゴジラに向けて飛ばした。
ゴジラは迫り来る瓦礫を尻尾を振るって叩き落とす。しかし、全ての瓦礫を排除した時には、既に2体の
【切歌】
「終わった、デスか?」
アルカ・ノイズも既に一掃され、基地を自分達を襲う脅威は去った。……目の前の存在が、本当に自分達の味方であるのなら。
調を庇った姿は切歌も見ていた。しかし、相手がシンフォギアの暴走体の可能性がある以上、安易に近付くのは危険極まりない。
迷った末、切歌は調の手を引き、静かにその場を離れるため立ち上がろうとした。
その時、自分達に背を向けて佇んでいた存在に変化が起きた。身体を覆う赤黒い霧のような物がザワザワと蠢き、まるで空を覆い尽くす規模の編隊を組んだ鳥のような動きで、膨張と収縮を繰り返す。
そして、その形が丸い球体状になった瞬間、赤黒い霧は粒子となって四散した。
赤い粒子が輝きながら舞い散る。そんな美しい光景が繰り広げられる中、調と切歌はある一点を見て硬直した。
赤黒い影が立っていたまさにその場所。だが今そこには、明らかに人間と思われる浅黒い肌をした白髪の男性が立っていたのだ。……しかも、着衣を一切纏わぬ全裸の姿で。
【切歌】
「な、な、な、な……!?」
恥ずかしさのあまり、切歌は顔を真っ赤にして声にならない音を漏らし、調に至っては絶句している。
全裸の男は彼女達の方へ振り向くと、ゆっくりと歩み寄ってきた。
切歌は手で顔を隠しながらも、時折チラチラと指の間から男の方を覗き見る。男は調達の前に立つと、獣を思わせる瞳で二人をジッと見下ろしてきた。
【調】
「――ッ!あ、あの……?」
漸く我に返った調は、胸や下半身を隠しながら声を上げる。すると、突然男は身を屈めると、胸を隠していた調の右腕を掴み、自分の方へ引っ張った。
【調】
「あっ!?」
【切歌】
「な、何するデスか!?」
非力な調ではまるで抵抗できず、息がかかるくらいの距離に引き寄せられる。戸惑いながらも切歌が抗議の声を上げるが、男は調の顔を凝視したまま離さない。その様子はまるで観察をしているかのようだった。
程なくして、無表情だった男の顔には焦りの色が浮かんだ。信じられないと言った様子で調の顔を見回し、更には掴んだ腕に顔を近付け、クンクンと鼻を鳴らす。
【調】
「~~~ッ////」
切歌はどうしていいか分からずアワアワと狼狽え、調は羞恥に震え涙目になりながら顔を背ける。しかし、男は尚も納得のいっていない様子で、今度は調の顔に自らの顔を近付けようとした――
【クリス】
「ぬぁにやってんだ、このすっとこどっこい!!」
【???】
「ガァッ!?」
突然の怒声が異様な空気を切り裂いた。直後赤いブーツが男の顔面にめり込み、その身体を吹っ飛ばす。
地面を転がった後、動かなくなった男を見て切歌と調は唖然としていた。
その二人の間に、復活したイチイバルを纏ったクリスが降り立った。
【調】
「クリス、先輩?」
【切歌】
「強化型シンフォギア、完成したんデスね!?良かっ――」
【クリス】
「バカッ!!」
切歌の安堵の声はクリスの怒号に掻き消された。ビクッと肩を竦ませる二人を、クリスは怒りに満ちた目で睨み付ける。
【クリス】
「お前等!勝手な真似しやがって!」
捲し立てる勢いのまま手を上げる姿に、調と切歌は目を固く瞑った。しかし、直後に二人が感じたのは叱責の痛みではなく、優しい温もりだった。
恐る恐る目を開けると、肩を震わせながらクリスが自分達を抱き寄せていた。
【切歌】
「あ、あの……?」
【調】
「せん、ぱい?」
【クリス】
「心配させんなよっ。……本気で、もう、ダメだって思ったんだぞ?間に合わないって、……くっ」
【翼】
「……だが、無事で何よりだ」
嗚咽混じりに絞り出すクリスに続いて、空から言葉と共に降ってきたのは、生まれ変わった
【切歌】
「え、えと……?」
【翼】
「雪音。気持ちは分かるが、二人が困っているぞ」
【クリス】
「う、うるせぇな!今は、ダメなんだよっ!」
後輩に涙を見せまいとするクリスに、翼は呆れたような、それでいて優しい笑みを浮かべた後、調と切歌に向き直った。
【調】
「翼さん……」
【翼】
「……言いたいことは山程ある。だが、先ずは二人の無事を喜ばねばな」
そう言って、翼は調の頭に手をやる。
翼の手からもクリス同様、優しい温度が伝わってきて、二人が心から自分達を心配してくれたことを身に染みて理解した。
【調】
「……ごめんなさい」
【切歌】
「……デス」
シュンと俯いた二人を見て翼は手を離し、クリスも離れながら背を向けて目をゴシゴシと擦った。
【翼】
「さて、二人の無事は確認できた。……が、流石にやり過ぎだぞ、雪音」
翼は調と切歌から視線を外し、クリスが蹴り飛ばした男を仰ぎ見た。本気は出していないだろうが、生身の人間をシンフォギアを纏った状態で攻撃するなど、下手をすると相手を殺してしまいかねない。
自分を嗜める翼に、クリスは思い出したように苛立ちを滲ませた表情を浮かべる。
【クリス】
「当然の罰だろ。無抵抗な女に手を出そうなんて下衆野郎は――「……ぐっ?」――な!?」
くぐもった声を聞き、クリスは慌てて声のした方を見て目を疑った。
自分の蹴りをまともに受けた男が、よろめきながらも立ち上がったのだ。
【クリス】
「う、そ……だろ?」
【翼】
「アレを受けて立ち上がるのか!?」
クリスと翼が動揺していると、男は二人の方へ振り返った。
【???】
「ヴゥゥ……ガアアアアッ!」
男の視線は今度は調や切歌ではなく、クリスと翼を捉えると、興奮した様子で猛然と突進してきた。
【クリス】
「こいつ!?」
【翼】
「雪音、任せろ!――ハッ!」
アームドギアのクロスボウを構えたクリスを制し、翼は足のアーマーから短剣を取り出すと、突進してくる男へ向かって投擲した。
短剣は、全く意に介する事なく突進を続ける男の脇を通過し、地面に突き刺さる。だが、これはミスなどではなく、
【???】
「ガッ!?……ギ、ギ?」
男は走る姿勢のまま、不自然にその場で静止した。
忍法、≪影縫い≫。
その名の通り対象の影を縫い付けることで動きを封じるというものだが、シンフォギア固有の技ではなく、風鳴一族の守護を生業としている緒川家の編み出した術である。対象に影ができている必要があるため光源下でしか使えないが、その汎用性の高さから緒川に師事し習得した技であった。
【翼】
「これなら動けまい。この者のことは司令に任せ、私達は二人を――ッ!?」
常人にこの術を破ることはまず不可能。そう思っていた翼は、男の様子を見て目を疑った。
男は無理矢理短剣の楔から抜け出ようともがいていたのだ。筋肉質な身体に血管を浮き立たせながら徐々に身体が動き、刺さっていた短剣が地面から抜けかかる。
【???】
「うがぁぁあああああっ!!」
【翼】
「まずい!雪音!」
【クリス】
「チィッ!」
雄叫びと共に≪影縫い≫を強引に突破した男に、翼とクリスは瞬時に近寄ると、
【翼】
「破ぁ!」
【クリス】
「こんの、スクリューボールがぁ!」
刀の
【???】
「ガ、ハッ……!」
痛撃をノーガードで受け、男は流石に耐えられずその場に倒れ伏した。
【クリス】
「……何なんだよ……こいつ」
常軌を逸した男のタフさに、クリスは肩で息をしながら呆然と呟いていた。
前編はここまでとなります。
後編はミカ戦のその後を描きます。