戦姫絶唱シンフォギアGX ~破・壊・神・転・生~   作:GGG@ハーメルン

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第4話になります。

遂に覚醒したシンフォギア版ゴジラ!!
ラスボス、キャロル率いるアルカ・ノイズ軍団を単身迎え撃つ。
原点にして頂点。唯一無二の怪獣王の力、刮目せよ!!

※本作では、【ゴジラ】シリーズおよび【戦姫絶唱シンフォギア】シリーズのネタバレやオリジナル要素を多分に含みます。
ネタバレやオリジナル設定、ゴジラの人間への転生などに抵抗のある方はご遠慮頂いた方が良いかと思われます。
「それでも良い!」という方は、駄文ですがお付き合い頂けると幸いです。

では、どうぞ。

OP:ゴジラのテーマ(vsメカゴジラVer)

戦闘BGM:平成メカゴジラのテーマ

ED:Rebirth-day


#04 革新‐Symphogear‐

【ゴジラ/轟】

「ガァァオオオオオオォォォオオオォォゥゥンッ!!」

 

 新たな姿を得て天高く咆哮するゴジラ。

 その後ろ姿を、響達は信じられないといった様子で見つめていた。

 

【響】

「轟くん、なの?」

【翼】

「この迸るフォニックゲイン……、やはりシンフォギアか?」

【クリス】

「だとしても変わりすぎだろ!」

 

 ゴジラの全身鎧姿は、クリス達の戦装束とは趣がまるで違う。

 クリスの言い分はもっともだったが、異なる姿に変わるという意味合いでは、轟の方がより『変身』と呼ぶに相応しいかもしれない。

 

【弦十郎】

『響くん、翼、クリスくん!』

【響】

「師匠!」

【翼】

「司令!」

【クリス】

「オッサン!」

 

 ヘッドギアを通して聞こえた弦十郎の声に、響達は三者三様の呼び名で応えた。

 3人の声を聞き、通信越しに安堵の声が漏れる。

 

【緒川】

『3人とも無事みたいですね』

【未来】

『響、本当に大丈夫?痛いところとか無い?』

【響】

「大丈夫だよ、未来。……でも、ちょっと疲れたっていうか、力が抜けちゃった感じ、かな?」

 

 響は拳を開閉した後、自分の胸に手を当てる。

 轟に触れられていた時の胸が熱くなる感じは収まっていたが、代わりに虚脱感のようなものが残っていた。

 

【藤尭】

『それにしても他者のフォニックゲインを奪うとは……』

【あおい】

『でも、吸収されたのがフォニックゲインだけで良かったわ。ネフィリムのように聖遺物ごと喰らうタイプだったらと思うとゾッとしないもの』

【マリア】

『そう言われれば、ギアの起動に聖詠を用いなかったわね。聖遺物を所持していた訳でもないというし……』

 

 安堵の後、指令室では改めて轟の変身についての疑問が上がる。しかし、そんな話を聞いている時間は無いようだ。

 轟の変身に動揺していたキャロルが、テレポートジェムから先程蹴散らされた以上の数のアルカ・ノイズを召喚してきた。その中には、怪獣のような体躯をした大型個体も混じっている。

 

【キャロル】

「……どうやらそれもシンフォギアらしいな。オレも知らない聖遺物の力……、どれ程のものか歌って聴かせてもらおうか!」

 

 キャロルの叫びに応え、アルカ・ノイズの群れが一斉に突撃を開始した。それを見たゴジラも、目の前から突っ込んでくる個体群目掛けて突進する。

 

 先手を取ったのはアルカ・ノイズ側であった。

 イモムシ型数体が身体を縦に回転させながらゴジラにぶつかる。解剖器官の刃が火花を散らすが、漆黒の装甲には傷一つ付けられなかった。

 それに対し、ゴジラは両腕を横に思い切り広げ、両側から胸の前に向けて一気に閉じる。

 密着していたイモムシ型は、プレス機にかけられたように赤い霞を撒き散らしながら圧殺された。

 

【ゴジラ/轟】

「グルァァァッ!!」

 

 ゴジラは唸りを上げ、新たな標的を見定める。次に挑んできたのは翼やクリスのギアを分解した武士型個体であった。

 武士型はゴジラの右前方から接近し、左腕のブレードによる刺突を繰り出してくる。それを見たゴジラも左腕を振るって真っ向から迎え撃った。

 

 ブレードと裂爪が激突する。

 だが、そこに僅かな拮抗も生まれることはなかった。ゴジラは力のままに腕を振り切り、武士型は腕ごとブレードを切り裂かれその場に倒される。

 ゴジラはトドメを刺そうと武士型を見下ろすが、後方から10体を超える人型アルカ・ノイズが触手状の解剖器官を伸ばし、ゴジラの身体に巻き付けた。

 援護を受けた武士型個体は素早く立ち上がると、残った右のブレードをゴジラの胸に突き立てようと振りかぶる。

 

【翼】

「あのままではマズイ!雪音、援護――」

 

 劣勢に陥ったと思った翼は、クリスと共に人型の群れを排除しようとする。しかし、ゴジラにそんな必要はなかった。

 

【ゴジラ/轟】

「ガァァァァァァッ!!」

 

 ゴジラは持ち前の怪力を発揮し、解剖器官の触手を引き千切った。その内の何本かを右腕で掴むと、前方に向かって投げ飛ばす。

 投げ飛ばされた人型は前方の群れに激突し、突きを繰り出してきた武士型も振り下ろした右腕に巻き込まれ地面にめり込む。

 そこへゴジラは左足で容赦のない蹴りを放ち、めり込んだコンクリートごと蹴り飛ばされた武士型は、仲間に衝突してもろとも破裂した。

 

【クリス】

「なんつー馬鹿力……ゴリ押しにも程があんだろ!」

 

 無茶苦茶な戦い方に思わず突っ込むクリスの前で、ゴジラは全身を捻って身体を回転させた。

 回転に連動して身長以上の長さを誇る尻尾が唸りを上げる。

 尻尾は関節部を伸ばして更に長さを増しながら振り抜かれ、自身を中心に半径10mの敵を全て薙ぎ倒した。

 

【あおい】

『黒いシンフォギア、エネルギー出力上昇!』

【藤尭】

『歌わずに出力を上げるなんて……』

【キャロル】

「嘗めてくれるな、(ケダモノ)が!」

【ゴジラ/轟】

「グッッ――!?」

 

 近くの敵を蹴散らしたゴジラに、キャロルは右腕でダウルダブラの斬糸を振るい、左腕で弦を奏でて光の矢を乱射した。

 鋼糸はボディーに当たって火花を散らし、光の矢は数本が顔面にヒットしてゴジラを僅かに怯ませる。

 

【キャロル】

「解剖出来ぬのならば、その鎧、力づくでブチ砕いてやる!!」

 

 キャロルの声を合図に、パイプオルガン型アルカ・ノイズが頭部の発射管から『赤い』砲弾を斉射した。

 解剖器官は効果がないと知りながら繰り出した一手に、響達は首を傾げる。

 

【エルフナイン】

『違います!あれは――』

 

 唯一キャロルの狙いに気付いたエルフナインの声は、戦場に轟く爆発音に掻き消された。

 パイプオルガン型の放った砲弾、それは解剖器官を内包した物ではなく、爆発性の高い炎魔法を凝縮した物だった。

 地面やゴジラに当たった瞬間、砲弾は激しく炸裂し、熱と衝撃がゴジラを襲う。

 

【ゴジラ/轟】

「ギャァゥゥゥゥッ!」

 

 炎と煙の中にその姿が消えても、アルカ・ノイズの砲撃は止まなかった。

 

【響】

「轟くん!」

【翼】

「待て、立花!今飛び込んだら巻き添えを食う!」

 

 いてもたってもいられず飛び出そうとした響を翼が押さえた。

 響達が何もできずに見ている間も、キャロルが手で制すまで砲撃は続いた。

 

【キャロル】

「逃げもせずにまともに食らうとは。耐えられると思ったのか、それともこの程度の攻撃も避けられない程鈍重なのか……。何れにせよ無傷では――」

 

 確かな手応えにキャロルは笑みを浮かべていたが、最後まで言葉を言いきる前に固まった。

 視線の先、黒煙の向こうで何かが揺らめく。

 キャロルは「まさか……」と呟くと、風の魔法で煙を吹き払う。黒い帳が消えた跡に現れたのは、僅かに砂埃を被っただけのゴジラの姿であった。

 

【弦十郎】

『あれで無傷、だと?』

【エルフナイン】

『有り得ないです!あの魔力はキャロルが自らインストールしたものなのに』

 

 誰もが驚愕する中、ゴジラは首を左右に捻りゴキッゴキッと鳴らす。

 ダメージとしては効いていなくとも、絶え間なく浴びせられた音と光がゴジラの神経を逆撫でしてしまったようだ。

 

【ゴジラ/轟】

「―――ギンッ!」

【キャロル】

「――ッ!?」

 

 強く瞬いた黄色の瞳が自分を捉えた瞬間、キャロルは自分の心臓が痛い程にを脈打ったのを感じた。

 胸に響く鼓動、それは防衛本能が命の危機を報せるものだ直感する。

 

【藤尭】

『黒いシンフォギアから今までにない高エネルギー反応!』

 

 藤尭が報告したのとキャロルが目の前に障壁を展開したのはほぼ同時だった。直後、ゴジラが大きく息を吸い込むように身体を仰け反らせる。

 

 3列の背鰭が青白い光を放ちながら激しく明滅した後、頭部装甲の口部分(クラッシャー)が展開し、装甲(マスク)の下の人間の口部が露になった――次の瞬間、

 

【ゴジラ/轟】

「ガァァアアアアァァアアアアアアアッ!!」

 

 凄まじい咆哮によって、開口したクラッシャー前面に生じた力場から青白い光が撃ち放たれた。

 

≪放射熱線≫

 

【キャロル】

「これは――ッ!?ぐああああああああっ!!」

 

 熱線はジェット機のような轟音を上げながら一直線に空を駆け、キャロルの展開した障壁に直撃する。

 キャロルは魔力を集中して跳ね返そうとするも、熱線の威力を殺すことは出来ず、障壁は激しい爆発起こし、キャロルも近くの建物の中へ叩き落とされてしまった。

 

【ゴジラ/轟】

「ガァァァオオオオォォォォォンッ!!」

【切歌】

『な、……なん、デスか、今の?』

【調】

『きれい……』

 

 目の前で起きたことが理解できず、切歌は茫然自失といった様子で呟き、調は圧倒的光景に心奪われていた。

 翼や弦十郎といった永きに渡りノイズという異形の存在と戦い続けてきた古参の者達も、言葉を発することが出来ないでいる。

 ゴジラ最大の武器は、実際の威力もさることながら、歴戦の戦士の心にまで衝撃を与えていた。

 

 アルカ・ノイズは主がいなくなったことで、統制が乱れつつあった。ゴジラはそれを見逃さず、先程の礼とばかりにパイプオルガン型の集団に向かって熱線の第二波を放った。

 集団の左端に着弾するや否や、首を巡らせ熱線を右方向へ薙ぎ払う。

 熱線の直撃を受けた個体は赤い塵すら残さず焼滅し、そのまま地面に当たった熱線によって引き起こされた爆発が他のアルカ・ノイズも誘爆させていった。

 

【クリス】

「なんて火力だよ……。まるで≪カ・ディンギル≫の荷電粒子砲じゃねぇか」

 

 着弾点が熔岩の流れた跡のように燃え爛れる様を見て、クリスは【ルナアタック】事件の首謀者であるフィーネが建造した超兵器を想起した。

 

【あおい】

『……威力、熱量ともにクリスちゃんのイチイバルを遥かに上回っています!』

【マリア】

『そんな攻撃をほぼチャージ無し、間隔(インターバル)も殆ど空けずに連射できるなんて……』

【エルフナイン】

『最早、シンフォギアシステムの範疇を逸脱しています』

 

 クリスの呟きを大袈裟と否定する者は誰もいなかった。

 有り余る熱線の威力によって、アルカ・ノイズは怪獣や巨人を思わせる大型個体と少数の小型個体を残すのみとなってしまった。

 最早勝負あったと思われた時、突っ込んだ建物を吹き飛ばし、キャロルが舞い戻ってきた。

 

【キャロル】

「……お前のような者にオレが土を付けられるとは――!」

(オレの計画に、こいつは邪魔だ。何としても今日この場で葬り去る!)

 

 ゴジラ必滅を決意したキャロルは、ダウルダブラで四肢と触角が生えたナメクジのような怪獣型を吊り上げ、ゴジラに向けて投下した。

 20mはあろうかというナメクジ型は、小型個体とは比較にならない重量と解剖器官でそのまま巨大な質量兵器と化し、ゴジラにのし掛かる。

 だが、ゴジラはその巨体を片腕一本で受け止めると、もう一方の腕で腹部を突き上げ、背部まで貫通する大穴を穿った。

 

 ナメクジ型は雨のように赤い塵を撒き散らして消える。消えた先にあるのは、戦場には似つかわしくない青空……のはずであった。

 ナメクジ型の消えた上空、そこには無数の小さな黒点と巨大な白い塊が浮遊していた。

 

【あおい】

『飛行型アルカ・ノイズ、横須賀基地上空に集結!その数……1万以上!?』

【弦十郎】

『迎撃に出た空自はどうした!?』

【藤尭】

『厚木から急行した先遣隊は、全機撃墜された模様です!』

 

 レーダーに映った敵影の数に、あおいは驚愕の叫ぶを上げた。

 藤尭の報告にあった通り、政府の要請で緊急発進した空自の航空部隊は、アルカ・ノイズの物量の前にろくな戦果も挙げられずに敗北していた。

 巨大な空母型の4つの孔からは、今もなお蝙蝠型の小型個体が排出され続けている。

 

【キャロル】

「炎が効かぬ貴様にも、1万を超える質量弾の雨に無傷ではおれまい?」

 

 自身の上空を埋め尽くした飛行型を仰ぎ見て、キャロルはほくそ笑んだ。

 内心、これだけの数で圧しても倒せるとは思っていない。だが、僅かでも綻びが生じれば、そこに自分の最大火力を叩き込む算段をつけていた。

 

 創造主の意を汲んだ有翼の殺戮者達は、地上に立つたった一つの目標に向かって降下し始めた。

 蝙蝠型の群れは[[rb:楔型 > アローヘッド]]に並んで突っ込み、目標を射程に収めると翼で胴体を包んだドリルのような形態となって特攻した。

 

【ゴジラ】

「ガァァァッ!?ガァォォオオォォォンッ!!」

 

 ゴジラに直撃、或いはその周囲に着弾した蝙蝠型は、玉砕しながら路面を抉り、装甲表面で火花を散らした。

 地震のような断続的な震動が続く間も、蝙蝠型はシャワーのように絶え間なく降り注ぐ。

 

【緒川】

『これは、流石にまずいのでは?』

【弦十郎】

『藤尭、援護だ!殲滅できなくて良い!逃げられるだけの間隙を作れ!』

【クリス】

「先輩ッ!」

【翼】

「ああっ、私達も!」

 

 弦十郎は艦の垂直発射装置(VLS)からアルカ・ノイズに向けてミサイルを射出、翼とクリスも地上から光刃と小型ミサイルを放って蝙蝠型を撃ち落とす。

 爆発と吹き荒れる爆風により蝙蝠型の隊列が乱れ、僅かだが特攻に間隙が生じた。

 

【響】

「今だよ!轟くん、早くにげ――」

 

 チャンスを見逃さず響が叫ぶ。しかし、その言葉の途中で、ゴジラはまた背鰭を青く発光させ始めた。

 

【切歌】

『さ、さっきのをまた撃つつもりデス!?』

【エルフナイン】

『確かにあの攻撃は強力ですが、あの細いビームで飛行能力を持つ敵を殲滅することは不可能です!』

 

 エルフナインの言う通り、熱線の発射体勢と見て取った飛行型個体は隊列を解き、散開を開始していた。

 確かに、熱線で一匹一匹撃ち落とそうと思えば、ゴジラの方が先にガス欠になるだろう。

 

【調】

『……ちがう』

【未来】

『調ちゃん?』

【切歌】

『どうしたデス、調?』

【調】

『……さっきと違う。光っている時間が長い』

 

 全員がゴジラの背鰭に注目する。

 調の言う通り、先程は発光後間もなく激しく明滅していた背鰭が、明滅せずにずっと発光を続けていた。

 いつまでも攻撃が来ないのを見たアルカ・ノイズは、散開を中止して再び特攻の雨を降らせようと動き出す。

 

 そのタイミングを待っていたかのように、ゴジラは身体を反らし、背鰭を先程以上に激しく明滅させた。

 

【ゴジラ/轟】

「ゴォォォォアアアァァァァァァァァァッ!!」

 

 ゴジラは(さき)の2発と同じモーションで熱線を放つ。しかし、その規模は全く比較にならなかった。

 

≪ハイパー熱線≫

 

 長い溜めを経て放たれた熱線は、通常の熱線の3倍以上の太さを誇り、発射の反動で周囲の瓦礫片が吹き飛ばされる。

 極太の熱線に呑み込まれた飛行型アルカ・ノイズは、赤い塵すら残さず消え去り、僅かに掠めただけの個体も炎を吹き上げながら墜ちていく。

 2発目同様、ゴジラは熱線を横方向に薙ぎ払い、小型個体を一掃すると、最後にそれらを生み出す空母型に熱線を向けた。

 

 飛行船以上の巨体に灼熱の蒼き奔流が襲いかかる。

 大型種の中でもトップクラスの体躯を持つ空母型の身体は、ひび割れるように崩壊していき、最期は空に巨大な炎の花を咲かせた。

 

【あおい】

『……飛行型アルカ・ノイズ、反応……消失(ロスト)しました』

【弦十郎】

『……何という』

 

 レーダーにひしめいていたアルカ・ノイズを示す光点が、僅か数秒で影も形も残さず消え去った。

 上空を映し出したモニターは、昼間の晴天下とは思えない炎と黒煙に覆い尽くされている。

 あれだけの数、万全な状態の装者達も総力戦を強いられるだろう。それを一撃で殲滅した破壊力は、一国家の軍事力に匹敵する。弦十郎はそう推察し慄いていた。

 

 煩わしいハエのような敵を排除したゴジラは、大きく息を吐くと次の敵へ向かおうとする。

 その身体を、四方から張り巡らされた極細の糸が縛り上げた。

 

【ゴジラ/轟】

「グゥッ?」

【キャロル】

「油断したな。あれだけのエネルギーの放出、そうそう連射は利くまい?」

 

 キャロルの言う通り、ハイパー熱線は絶大な威力と攻撃範囲を誇る反面、エネルギー消費が激しくチャージに時間を要するため連射が利かない弱点があった。

 更にキャロルは、ゴジラの装甲にダウルダブラの『斬撃』は効かないが、身動きを封じる程度は可能であるとこれまでの手合いで見切っていた。

 事実、不意を突かれたゴジラは、自らを拘束する鋼糸を振り払えずにいた。

 

 これを好機と捉えたキャロルは、残存のアルカ・ノイズをゴジラに向けて突撃させた。

 人型、イモムシ型、武士型等見慣れた個体が多い中、最も目を引くのが首の無い胴体に顔があるような異形の巨人型3体。体高10mと怪獣型に比べて見劣りするが、二足歩行で突っ込んでくる様は大きさ以上の迫力があった。

 

【キャロル】

「遠近共に破壊力絶大。だが、身動きが取れぬ今は格闘戦能力半減だ!」

【ゴジラ/轟】

「……フゥゥ」

 

 キャロルが叫んだ直後、ゴジラは背鰭を発光させ、熱線の発射準備に入った。

 

【キャロル】

(やはりそう来るか。だが、それくらい想定内だ。身動きが取れぬ以上、お前の切り札は真正面にしか吐けまい!デカブツ1体を捨て石に、他の個体で蹂躙してやる!)

 

 キャロルは手元の鋼糸を引きながらアルカ・ノイズが腕を、刃を振り上げるのを口許を吊り上げて見ていた。

 ゴジラは、キャロルの見立て通り首を巡らせることが出来ずにいた。……だが、もし首が自由に動いたとしても、ゴジラには熱線を吐くつもりはなかった。

 この時、キャロルはもっと疑うべきであった。――熱線を吐くにしては、あまりにも敵を引き付けていたことに。

 

【ゴジラ/轟】

「ガァァァァァァオオオォォォゥゥンッ!!」

 

 アルカ・ノイズの攻撃がヒットする直前、ゴジラはクラッシャーを()()()()()天を仰いで咆哮した。

 

≪体内放射≫

 

 熱線の時同様、背鰭が激しく明滅する。だが、ゴジラが放ったのは自身を中心に放射状に発する衝撃波であった。

 

【キャロル】

「なにっ!?」

 

 熱線が来ると思い込んでいたキャロルは完全に不意を突かれる形となった。

 全身から発せられた衝撃波は、ゴジラの立つ場所をクレーターのように陥没させる。そして、身体に巻き付いていた鋼糸をズタズタにし、至近距離まで近付いていたアルカ・ノイズ群を吹き飛ばした。

 

 純粋な破壊の波動のみを放つこの技の前では、如何なる防御手段も意味を為さない。まさに、ゴジラの接近戦における切り札であった。

 

【ゴジラ/轟】

「ガァッッ!」

【キャロル】

「くっ、あああああっ!?」

 

 体内放射によって束縛から解放されたゴジラは、空中に漂う千切れたダウルダブラの鋼糸を掴むと力任せに引っ張り、本体を背負うキャロルを自らの後方に向かって投げ飛ばした。

 

【キャロル】

「がはぁっ!?」

 

 瓦礫の山に背中から落とされ、キャロルは息を詰まらせる。

 苦しみながら、追撃を警戒し直ぐ様身体を起こしたキャロルだったが、当のゴジラはキャロルに目もくれず、腕や足を千切り跳ばされながらも生き残っていた巨人型を屠っていた。

 

【キャロル】

「……オレなど眼中に無いとでも言うのか?」

 

 巨人型の身体を引き千切るゴジラの後ろ姿に、鬼の形相で絞り出す。

 プライドを傷付けられたキャロルは、今出せる最大の力で以てゴジラを殺す決意を固めた。

 両肩の弦を掻き鳴らし、魔力を爆発的に増幅させる。更にダウルダブラの鋼糸を、目の前で螺旋状に編み込んだ。

 

【キャロル】

「炎の破壊力と風の速度、そして鋼糸の切断力。その全てを束ねたこの一撃に貫けぬ物は無い……!」

「この一撃で、原形残さず分解(バラ)されろぉ!!」

 

 増大したエネルギーを感じたゴジラがキャロルに向き直った時、キャロルは錬成した魔力と鋼糸を解き放った。

 束ねられた鋼糸に沿うように風と炎が入り乱れる。風の力によって炎はより激しさを増し、鋼糸の切れ味を研ぎ澄ます。

 

 その様は、神をも穿つ滅槍の如し。直撃すればゴジラもただでは済まなかった。……直撃すれば。

 

【ゴジラ】

「グゥゥゥゥゥ……!」

 

 キャロルの最大破壊攻撃を前に、ゴジラも自身の最大の武器で応じようとしていた。背鰭を発光させ、エネルギーをチャージし、そこから更にエネルギーを一点に凝縮し始める。

 発射の直前、背鰭が激しく明滅するが、加えて今度は強烈な電撃(スパーク)も迸る。

 

 キャロルの滅槍がゴジラの眼前に迫った刹那、ゴジラは大きく胸を張り――

 

【ゴジラ/轟】

「ガァァァァァァオオオオォォゥゥゥンッ!!」

 

 咆哮と共に"渦巻く紫電"を纏った熱線を放射した。

 

≪スパイラル熱線≫

 

 完全に出遅れたタイミング。眼前まで迫った攻撃を押し返すことは本来なら不可能だろう。

 だが、螺旋を纏った熱線は、激突した竜巻の槍を瞬く間に綻ばせ、僅かな抵抗も許さず押し返していった。

 

【キャロル】

「ぐぅぅぅ!?ば、バカな……!」

 

 キャロルは更に魔力を込めるが、熱線の勢いが衰えることは無かった。逆にダウルダブラの方が負荷に耐えかね、弦が切れ、フレームがひび割れる。

 

【キャロル】

「ぬぅぅぅ――!?あああああああああっ!!」

 

 抵抗虚しく、キャロル渾身の一撃は儚く砕かれ、キャロル自らも紫電迸る蒼き閃光を浴び、激しい爆発に呑み込まれた。

 

 

 

【響】

「……勝っちゃった?たった一人で、あのキャロルちゃんに?」

 

 キャロルが爆発に巻き込まれたのを見て、響は呆然と呟いた。

 自分達が束になって手も足も出なかった相手を、轟は全く寄せ付けなかった。

 

 同時に1万を超える軍勢をも屠り去った力。

 だが響にとって、それは奇跡(エクスドライブ)のような神聖なものとは全く異質のものに思えた。

 

【ゴジラ/轟】

「――ッ!」

【藤尭】

『目標の反応、健在!』

 

 ゴジラが双眸を光らせたのと、藤尭が叫んだのはほぼ同時だった。爆発の煙が晴れ、視界が開ける。

 現れたのは、元の少女の姿に戻ったキャロルの姿だった。

 キャロルは左腕を押さえ、頭からは血を流している。

 

【緒川】

『あの攻撃に耐えるとは……』

【エルフナイン】

『寸前に身を捻って直撃は回避していたみたいです』

【弦十郎】

『それでも、無事では済まなかったか』

【あおい】

『はい。アウフヴァッヘンが消失している点から見ても、彼女の聖遺物は恐らく――』

 

 あおいの推察通り、ダウルダブラは熱線のダメージで損傷、ファウストローブとして機能させることが不可能な状態になっていた。

 

【キャロル】

「……やってくれたな。ここまで俺を追い詰めるとは……ゴホッ」

 

 咳き込み膝を折りかけるキャロルだったが、何とか堪えると、口許に笑みを作った。

 

【キャロル】

「だが、お陰で目的は果たした」

【マリア】

『何を言って――ッ!?』

 

 キャロルが呟いた直後、基地全体を揺るがすような轟音が響いた。

 音の発生源はキャロルの後方――この基地の発電施設からであった。

 

【切歌】

『な、何が起きてるデスか!?』

【藤尭】

『発電施設の制御システム大破!送電停止しました!』

【調】

『まさか、さっきので?』

【あおい】

『おそらくね……。施設内で火災発生!防災装置作動しません!』

 

 何枚ものソーラーパネルを備えた施設は、各部から爆発や炎が上がっている。スパイラル熱線がキャロルに直撃しなかったことで、後方の発電施設にまで被害が及んでしまったのだ。

 ……勿論、キャロルはそこまでを見越した上で射線上に施設が来るポジションから攻撃をしていた。

 

【キャロル】

「……しかし、払った代償はデカかったか。これではそこの歌女(ウタメ)共の相手も出来ん。……今日のところは、大人しく退くとしよう」

 

 キャロルはそう言うと、懐からテレポートジェムを取り出した。

 ミカとファラが逃げた際のことを思い出し、キャロルが逃走を図ろうとしていることに気付いたゴジラは、逃がすまいと熱線の発射体勢に入る。

 

【翼】

「やめろ、黒銀!今撃っては――」

【ゴジラ/轟】

「グゥゥアアアァァァァッ!!」

 

 翼の制止に耳を貸さず、ゴジラは追撃の熱線を放った。

 基地敷地を抉りながら迫る青白い光を見て、キャロルはほくそ笑みながら手に持った結晶を砕く。

 

【キャロル】

「また会おう、黒き獣よ。次会う時は、必ずお前の正体を暴いてやる!」

 

 そう言い残し、キャロルは転移の光に消えた。

 直後、振り上げるように放たれた熱線はキャロルが消えた場所を通過、炎を上げる発電施設を1階から最上階まで駆け抜け、発電施設を完全に破壊・崩落させた。

 

【あおい】

『キャロル・マールス・ディーンハイムの反応、消えました』

【藤尭】

『周辺に敵残存勢力の反応も認められません』

【弦十郎】

『……終わった、か』

【ゴジラ/轟】

「ゴゥゥゥン……。ガァァァァオオオオオォォォゥゥンッ!!」

 

 キャロルを取り逃がしたことに納得はいかなかったものの、降りかかる火の粉を排除したゴジラは、廃墟然となった基地内で勝利の咆哮を轟かせた。

 

【クリス】

「ガオー、じゃねぇよ!お前!敵に勝っても、基地を守れなきゃ意味無ぇじゃねぇか!」

【翼】

「止せ、雪音!」

【クリス】

「止めるな、先輩!一発ガツンと――」

 

 殴りかかる勢いのクリスを翼が止めていた時、咆哮を終えたゴジラが、身体ごとゆっくりとクリス達の方を向いた。

 視線に気付いたクリスは騒ぐのを止めるが、ゴジラは彼女達の方へ歩み出す。

 

【クリス】

「な、何だよ!?」

【マリア】

『まさか、次は翼達を!?』

 

 クリス達は身構えるが、今までの戦いぶりを見せられた後では、到底太刀打ちできる気がしなかった。

 熱線を一発でもまともにもらえばそれで終わり。装者達の緊張が張り詰めるが、ゴジラは特段攻撃する素振りを見せなかった。

 

 響達が身動きが取れないでいる中、ゴジラは彼女達のすぐ近くで立ち止まった。尻尾がゆらゆらと揺れる以外、全くアクションを起こさず、戦慄するような殺気も怒気も消えていた。

 

【響】

「ご、轟くん?」

【翼】

「待て、立花!迂闊に近付いては――」

 

 沈黙に耐えかねた響が歩み寄ろうとするのを、翼が止めた。――その時、

 

【クリス】

「ッ!?先輩!」

 

 異変に気付いたクリスの声に、響と翼はゴジラに目を向ける。

 視線の先では、ゴジラが立ち止まったまま全身から青い光を溢れさせていた。

 

【弦十郎】

「さっきの範囲攻撃か!?3人とも、すぐに距離を取れ!」

 

 体内放射の予備段階と予測した弦十郎の叫びがヘッドギアから流れるが、既にゴジラの発する光は最大に達していた。

 退避は間に合わないと、響達は防御の姿勢を取る。――しかし、それは杞憂に終わることになった。

 

 激しい衝撃が予想された中、ゴジラを包んだ光は無数の粒子となり、光蟲のように四散していった。

 

 響達は、顔を庇っていた腕を退ける。光が消えた跡、そこにいたのは黒い鎧を脱ぎ去った青年の姿だった。

 

【藤尭】

『フォニックゲイン、及びアウフヴァッヘン、消失しました』

 

 指令室から藤尭の報告が入るが、女性陣の中で耳に入ったものは誰もいなかった。

 人間態に戻った轟の身体からは、キャロルから受けた傷はきれいさっぱり消えていた。しかし、治っていたのは身体『だけ』で、服は炎によって燃え落ちたまま、下半身が辛うじて隠れているだけであった。

 

【マリア】【調】【切歌】【未来】

『『『『…………////』』』』

【翼】

「な、ななな……ッ////」

【響】

「ぅ、うわぁ~///

【クリス】

「……お前は。また、んな格好になりやがって~~ッ!///」

【響】

「おおお落ち着いてクリスちゃん!////」

 

 年頃の少女達が皆顔を赤らめる中、羞恥に加えて怒りで顔を真っ赤にしたクリスは、轟に詰め寄りながら、拳を振りかぶった。

 響の制止も振り切り、生身の顔面に全力の右ストレートが炸裂!……かと思われたが、クリスのパンチがヒットする前に、轟は前のめりに倒れ伏した。

 

【クリス】

「あ、あれ?」

【翼】

「雪音!お前、また!」

【クリス】

「ち、違うって!当てる気だったけど、まだ当たってねぇよ!おいっ、しっかりしろよ!」

【響】

「轟くん!?」

 

 響と翼が駆け寄り、殴ろうとしたクリスも戸惑いながら屈みこむ。

 見た目無傷とはいえ、激しい戦いで身体が限界を迎えたと思った翼は、救護班を手配しようと通信を開く。

 

【翼】

「司令、至急救護班を!黒銀が意識ふめ――「ぐぅぅぅぅ~~~」――……い」

 

 切羽詰まった翼の声は、何とも間の抜けた音に遮られた。

 翼・響・クリスの3人はキョトンとした顔を見合わせると、視線をゆっくり、同時に下へとスライドさせる。

 半裸で横たわる謎多き青年は肩をゆっくり上下させており、加えて再度大きな音を発する。

 

 音は、彼の腹部から聞こえてきていた。

 

【弦十郎】

『……翼。念のため確認するが、黒銀の容態は一刻を争うものか?』

【翼】

「…………いえ」

 

 顔は見えずとも、弦十郎が額に手を当てる様子がありありと想像できた。姪の翼も、同じように眉間に指を当てている。

 

【エルフナイン】

『……そういえば、昨日から何も口にされていませんでしたね』

【マリア】

『生理現象なのだから仕方無い……仕方無いのだけど……ッ』

【響】

「あ、アハハ……」

 

 先程までの緊迫した空気は何処へやら。しかも、それを打ち破ったのが脅威の戦闘能力を見せた本人なのだから、皆笑うか頭を抱えるしかなかった。

 

【クリス】

「……こいつは、どこまで人騒がせなんだぁぁぁぁ!!」

【響】

「わああああっ!?クリスちゃん、抑えて!!」

 

 全身をぷるぷる震わせながら激昂するクリスを響が必死に押さえる。その間も、怪獣王の魂の器は、穏やかな寝息を立てていた。




第4話は以上になります。

本作におけるゴジラの設定は、後に投稿する設定集にて紹介させて頂きます。

次回は、ゴジラこと黒銀轟の謎に更に斬り込んでいきます。
説明を務めるエルフナインの出番が多めですので、彼女?のファンはお楽しみに!
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