緋弾とサヤビト   作:ビースト

8 / 12
ホントすいませんッッッ!!!

メッチャ遅れてしまってごめんなさい!!

用事やら研修やらで遅れて…


第七話

 

 

リヴィアとアリアのケンカから翌日、俺は探偵科(インケスタ)の専門棟いた。

 

「……『青海の猫探し』か」

 

報酬は一万で、0・1単位分か。探偵科(インケスタ)の掲示板に張り出されていた中で一番安く地味な依頼だな。ま、今の俺には丁度いい依頼だ。

武偵高では一時間目から四時間目まで普通の高校と同じような一般科目の授業を行い、五時間目以降、それぞれの専門科目に分かれての実習を行うことになっている。

 

「キンジ、お腹へった!」

 

探偵科(インケスタ)の専門棟を出たところで俺を待ち伏せしていたリヴィアの一言にずっこけそうになる。

 

「……お前はそれしかないのか?」

 

「私からそれ取ったらなにが残るのよ」

 

お前はそれでいいのか?

 

「で、どんな依頼受けたの」

 

「今日は猫探しだ」

 

「猫探し?」

 

「青海に迷子の猫を探しに行くんだよ。報酬は一万。0・1単位分の依頼だ」

 

ふーん、と言いながら俺のズボンの後ろポケットからサイフを抜いて歩き出した。って待てやコラ。

 

「ほら行くわよ。ファミレスが私を待っているッ!!」

 

誰も待っていねえよ。例え待っていてもお前はお断りだろうよ。

リヴィアに初めて会ったときにファミレスに食べにいった時はメニュー制覇したどころか食材全部食べて全てのファミレスに出禁喰らったバカだ。

俺はそのバカとモノレールで青海まで移動した。

かつて倉庫街だった青海地区は再開発され、今は億ションとハイソなブティックが建ち並ぶオシャレな街になっている。

俺とリヴィアはファミレスに当然のように門前払いを喰らい、仕方なくマックでギガマックセットを買って近くの公園のベンチに座ってマックの紙袋からハンバーガーを出して食べる。

 

「……微妙ね。45点」

 

と言って点数を付けてスケッチブックに絵を描くリヴィア。お前は美食家か。

まぁいいや、リヴィアには聞きたいことがある。

 

「おいリヴィア、アリアーーー」

 

「あのツインテールのことはもういいわよ」

 

リヴィアは言いたい事が分かったのか、俺の話しを遮った。

リヴィアはコーラを飲んで、マックの紙袋をゴミ箱に捨てる。

 

「キンジの言いたい事は分かってる。でも私はあれで妥当だと思ってる」

 

……あれがか?思いっきりアリアのヤツ戦意喪失てか茫然自失だったじゃねえか。

 

「ふん。あんなのまだ優しいほうよ」

 

あれで優しいって……あれよりまだ上があるのか。

 

「あと三回変身を残しているわ」

 

マジか。絶対見たくねえ。

そんなバカな会話しながら、夕方。ようやく迷子の猫を見つけた。

公園の端、ドブというか運河というかの水辺にいたのだ。

にぃ、にぃ、と弱々しく鳴いていた子猫は依頼の資料にあった通りの特徴をしていて、写真にあったちっちゃな鈴もつけていた。あの猫で間違いないな

 

「よーし。おとなしくしてろよー……」

 

運河に落ちたゴミ箱に入り込んでいた猫は、俺が近づくと最後の力を振り絞ってフーと威嚇するような声を上げてきた。

こらこら。俺は敵じゃない。後ろ?安心しろ、俺があの猫でも犬でも食べそうな食欲旺盛女から助けてやるから。

ガサガサと紙くずや空き缶の中にてを突っ込んで、毛を逆立てた子猫を取り出す。

 

「よしよし。良かったな。これで一安心だぞ」

 

「ちょっと待ちなさいなキンジ。誰が猫でも犬でも食べそうな食欲旺盛女ですって?」

 

おい。地の文を読むなよ。

食欲旺盛女ことリヴィアが接近したのがまずかったのか、子猫はにぃー!と鳴くと逃げようと藻掻いた。

 

「お、おい……おっ、うぉっ!」

 

「ちょ……!キ、キン、ぶふっ!」

 

ジャブン!

 

俺は猫を抱っこして、ひっくり返しかえりそうになり咄嗟にリヴィアの肩を掴むが、リヴィアもバランスを崩して一緒に派手にひっくり返ってしまう。

 

「ちょっと何してくれてんのよ!ずぶ濡れじゃないの!」

 

「お、おい!み、水をかけるな!猫にかかるーーー「にぃー!」あっ!?逃げた!リヴィア追いかけろっ!!」

 

鬼ゴッコならぬ、猫ゴッコの末、一時間後に俺達はやっと依頼を完了する事ができた。

 

 

 

 

翌日、メールで呼び出しておいた同じクラスの理子の所へ向かった。

理子は女子寮の前の温室にいた。温室とはつまりでかいビニールハウスで、いつも人気がなく、秘密の打ち合わせには便利な場所だ。

 

「キーくぅーん!」

 

バラ園の奥で、理子がくるっと振り返る。

(みね)理子はアリアとリヴィアと同じくらいチビだがいわゆる美少女の部類に入り、そして探偵科(インケスタ)ナンバーワンのバカ女だ。

二重の目にはキラキラと大きく、緩いウェーブのかかった髪はツーサイドアップ。ふんわり背中に垂らした長い髪に加えて、ツインテールを増設した欲張りな髪型だ。

 

「相変わらずの改造制服だな。なんだその白いフワフワは」

 

「これは武偵高の女子制服・白ロリ風アレンジだよ!キーくん、いい加減ロリータの種類ぐらい覚えようよぉ」

 

「キッパリと断る。ったく、お前はいったい何着制服を持ってるんだ」

 

そう言われて指を折り折り改造制服の種類を数え始めた理子を見下ろしつつ、俺は鞄から紙袋で厳重に隠したゲームの箱を取り出した。

 

「理子こっち向け。いいか。ここでの事は誰にも話すなよ。秘密だ。」

 

「うー!らじゃー!」

 

理子はキヲツケの姿勢になり、両手でびびっと敬礼(?)ポーズを取る。

俺は苦い顔で紙袋を差し出すと、理子は袋をびりびり破いていった。ふんふんふん。荒い鼻息。まるでケモノだな。

 

「うっっっわぁーーーー!!『しろくろっ!』と『白詰草物語』と『妹ゴス』だよぉーー!」

 

ぴょんぴょん跳びはねながら理子が両手でぶんぶん振り回しているのは、R-15指定、つまり15歳以上でないと購入できない、いわゆるギャルゲーである。

ーーー服装から分かる通り、理子はオタクだ。

しかし世間一般のオタク女子と違うことには、こいつは女のくせにギャルゲーマニアという奇特な趣味の持ち主なのだ。中でも特に自分と同じようなヒラヒラでフワフワの服を着たヒロインが出てくる物に強い関心を示す。

もちろん理子も15歳以上なのでこれらのゲームを買うことはできる。

しかし先日、理子はゲームショップも兼ねている学園島のビデオ屋でR-15のゲームを売ってもらえなかったとぶちぶち言っていた。バイトのお姉さんが理子の身長を見て中学生と判断したらしい。

そこで代わりに俺が買ってきてやったというわけだ。

こんなものを買うのは死ぬほど恥ずかしかったし店員のお姉さんにあらぬ誤解を受けてしまったに違いないが、これもアリア対策のためだ。

 

ーーーアリアはなぜ、俺たちをドレイにしたがるのか?

 

まぁ、昨日のアリアを思い出せばアリアも諦めるかも知れないが、念のためだ。

何か明確な理由があるのなら、それを一刻も早く取り除かねばならない。

で、その理由をアイツが教えてくれない以上、こっちでアイツのことを多角的に調べ、推測して対処するしかない。武偵同士の戦いは、まず情報戦と相場が決まってるからな。

 

「あ……これと、これはいらない。理子はこういうの、キライなの」

 

ぶっすぅー、と膨れっ面で理子が突っ返してきたのは『妹ゴス』の2と3、続編だ。

あれ。全て理子好みのパッケージだったハズなんだが。

 

「なんでだよ。これ、他と同じようなヤツだろ」

 

「ちがう。『2』とか『3』なんて、蔑称。個々の作品に対する侮辱。イヤな呼び方」

 

………ワケの分からないヘソの曲げ方をしやがるな。

 

「まぁ……とにかく、じゃあ続編以外のそのゲームをくれてやる。そのかわり、こないだ依頼した通り、アリアについて調査したことをきっちり話せよ?」

 

「あい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴族ぅ?……あのツインテールが?」

 

「らしいな。父親がイギリス人とのハーフでアリアはクォーター。イギリスの方の家がミドルネームの『H』家で、かなり高名な一族らしい。祖母はえっと…確かデイムの称号を持っているとか」

 

Dame(デイム)…王家が授与する称号じゃないの。ふーんアイツが貴族ねえ、似合わない」

 

俺は理子から聞いた情報をシュークリームを頬張っているリヴィアに話しているのだが……興味はあまりないみたいだな。

でもまさかアリアがリアル貴族だったとはな。かなりビックリだ。

強襲科(アサルト)ではランクはS。二年では片手で数えられるぐらいしかいないが、まあなんとなく分かってはいた。アリアの、チャリジャックの時の身のこなしは常人のレベルじゃなかったからな。

理子よりチビでリヴィアといい勝負のアリアは徒手格闘が上手く、流派はボクシングから関節技まで何でもありのバーリ・トゥード、イギリスでは縮めてバリツを使うらしい。

拳銃とナイフは天才の領域でどちらも二刀流のアリアは『双剣双銃(カドラ)』の二つ名を持っている。

二つ名とは豊富な実績を誇る有能な武偵には自然に二つ名がつく。

 

「武偵としての実績はアリアは14歳からロンドン武偵局の武偵としてヨーロッパ各地で活動していたその間、一度も犯罪者を逃がした事がないらしい」

 

しかも狙った相手を全て逮捕している。99回連続、それを全てたった一度の強襲で、だ。

 

「へーそうなんだ……むぐ、シュークリームうまー!」

 

リヴィアは手についたクリームを舐めながら新しいシュークリームを袋から取り出す。

………やはり今のリヴィアにはコンビニのシュークリームにしか興味がないらしい。

 

「ていうかキンジ、ツインテールのことばかり調べててもいいの?」

 

「アイツがなんで俺達をドレイとやらにしたがるのか調べて損はない筈だ。また来るかもしれないからな」

 

いやいやそうじゃなくて。と果たして何個目であろう新たなシュークリームを袋からだして頬張るリヴィアは何故か俺の後ろを指差す。ん?後ろ?なんか

 

「遠山クゥゥゥゥン……『武偵殺し』の件調べてくれたかなァ~?」

 

いた。いたよ。

 

「…………………………」

 

「あ。どうもです。お邪魔してます」

 

尋問科(ダギュラ)の教諭で危なかっしくニヤニヤ笑う綴 梅子と苦笑いのアレッシオがいた。

……マズイ。これはかなりマズイ。

神崎とかアリアとかアリアとかで『武偵殺し』についてまったく調べていなかった。ていうかいつの間にいたんだこの二人は。

 

「アレッシオ、シュークリームありがとねーうまー!」

 

コイツが買った憶えないシュークリームを食べてる理由が分かった……。

 

「遠山ァ……ま・さ・かぁ!調べてないとかないよなあ?」

 

ニタニタと嗤う綴は市販ではなそうなタバコに火をつける。

ど、どうする?俺が『武偵殺し』の件を調べてないことは綴にバレている……どうしよう?

綴は俺の顔に煙を吹きかける。やめろと言いたいがそんなこと言える立場ではない。

 

「あー疲れたわー……お前が神崎とイチャコラしてる間にコッチは『武偵殺し』の件調べてほんっと疲れたわ……なあ?アレッシオ」

 

「ええそうですね主人(アド)

 

「い、いや俺じゃなくてリヴィアのヤツが……って熱っ!?」

 

綴のヤツが俺の手のひらにタバコを押し付ける。

 

コイツ(・・・)のやらかした責任はお前……主人(アド)の責任だろうーが」

 

ぐっ…….た、確かにそうだが。

 

「神崎に目ェ着けられたのは御愁傷様って感じだけどーー不幸な事故だと思っとけ。お前はコッチが優先だ」

 

アイツは良くも悪くも有名だかんなと綴は新たにタバコを取り出して火を付けながら言う。

 

「まあ、武偵としてぇ?神崎に対して対策立てるのは悪かぁねえが今のお前は半分武偵じゃねえだろう」

 

フーッと煙を俺に吹きかける。綴は気怠そうに頬杖をつく。

 

「私達は『黒の守護神(プレティトーレ)』の人間なんだからよ」

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。