校門の周りで桜が舞い、晴れ渡る春の日。これからの事で不安と期待を胸一杯に抱えて迎えた今日。生徒達の嬉々とした話し声が
「納得いきません!」
する中で一人の不満の感情が駄々漏れに声大きく叫んでいた。
「何故お兄様が補欠なのですか!?入試だってトップ成績だったじゃありませんか!!」
「まだ言うのか深雪」
「新入生総代は私ではなく、お兄様が務めるべきです」
よく聞くとそれは、ただの兄妹喧嘩だったようだ。兄より妹の方が優秀だったため、妹はそれが認められないようだ
「勉学も体術もお兄様に勝てる者などおりませんのに!魔法だって本当なら―」
「深雪!」
「それは口にしても仕方ないことなんだ。わかっているだろう?」
その兄妹の制服には男女の差以外に胸元と肩にあった。ここ、国立魔法科大学付属第一高校では八枚花弁のエンブレムを持つ一科生《花冠》エンブレム無しの二科生《雑草》と完璧な区別が存在するのだ。二科生は一科生のスペアでしかないのだ。
「も、申し訳ございません」
「お前は俺の代わりに怒ってくれる。その気持ちは嬉しいよ。俺はいつもそれに救われているんだ。お前が俺のことを考えてくれるように、俺もお前を思っているんだよ」
「お、お兄様。そんな急に“想っている”なんて」
そんな会話も口論から段々、兄の甘い言葉に照れる妹と兄妹か?と疑いたくなる内容に変貌していっていた。それから妹は答辞の練習のために兄を残して会場へ向かった。残された兄は入学式までの2時間どうしよか考えていた。
(どうやって時間を潰そうか…)
兄はどこか座る場所を探して歩き回る。そしてやっと見つけたベンチにはスーツ姿の男?が寝ていた
(これだけ回ったが近くはここだけか……空けてもらうか)
兄はベンチへ近ずいていき
「すみません。俺も座らせてくれませんか」
声を掛けるとその人は起き上がった。その人は、髪がお尻まで伸び、右目は前髪で隠れていて、くすんだ灰色の髪をしていた。他にも左側の髪は上に上げピンで止めていた。何より特徴的なのが屋外にも関わらずアイマスクをつけていた。
「ん。ああ、相席でいいよね」
その人はアイマスクを額に上げ、紅い目で兄を見た。
「はい。ありがとうございます」
その人は兄をじっと見つめて
「君。見たことないね。新入生?」
「そうですが」
「名前は」
「すみませんが、何者でしょうか」
「ここの教師。名前は」
「職員の方でしたか。お…自分は司波達也です」
「ああ、過去二人目の高得点を取った奴か。良かったな。歴代2位の入試成績だな」
「それは良かったのですが、実技が苦手で二科生に」
「そ。確か魔法理論と工学が満点だったな。暇つぶしに語ろう」
「先生ならば入学式の準備はいいのですか?」
「それ終わったから見回り。俺がここら担当。ただしサボり中だが」
「大丈夫なのですか?」
「問題ない。じゃあ去年にあった汎用的飛行魔法の実現のについて話そう。あ、知ってるよな」
「一応は」
「俺としては賢い奴がちょっと考えれば後少しで完成すると思う」
「何故ですか?」
「あんなの無駄に魔法かけてるだけだろ」
「自分もそう思います」
それから2人は飛行魔法から発展していき、色々な難問について話し合っていく。話に熱中して時間が過ぎるのを忘れていたようで
ピピッと達也のデバイスからアラーム音が聞こえた。
「む。時間か。何か相談したいことがあれば俺の所に来てもいいぞ」
「ありがとうございます。自分にとって、とても有意義な時間になりました。では、入学式が-」
「先輩!何でこんな所にいるんですか。もう会場に行きましょ。あら、隣の子は新入生ですね?あなたもそろそろ会場に向かった方がいいですよ」
「すみません。すぐ行きま-」
達也の視線は声を掛けてきた女子生徒の手首に捕らえていた
(あれはCAD…学内で常時携行していい生徒は……)
「?あっ。名乗っていませんでしたね。ごめんなさい。私は第一高校生徒会長 七草 真由美です。よろしくね」
達也はその名前にひっかかりを覚えた
(七草 真由美…“七”…数字付きか)
「自分は司波達也です」
「え!?あなたがあの司波くん!?」
(どうせ総代の兄なのにまともに魔法の使えない「あの」だろう)
「入試七教科平均96点!!特に受験者平均が60点代だった魔法理論と魔法工学で満点と取ったあの司波達也くん‼歴代2位の高得点に先生方は大騒ぎよ。ね?先輩」
今まで空気だった先生に話が振られる
「ん。そうだな。あの得点は本物だったよ。すごい」
「けど先輩は歴代1位じゃないですか」ボソッ
「ペーパーテストの成績です。実技がからきしでこの通り」
そう言って達也はエンブレムの無い左胸を指す
「ううん。少なくとも私にはこんな高得点は取れない。すごいわ!」
(苦手だ)ギュッ
「時間ですので失礼します」
達也は足早にその場を去っていった。
~先生(先輩)side~
(ふ~ん。呪力は結構多かったな)
「あ、先輩。見回りはどうしたんですか。サボって新入生と話してたらダメです」
「まあ、いいだろ七草。彼はおもしろかったよ」
「先輩がそう言うってことは、彼は期待大ですね」
「ん。まあ会場に行こうか七草」
「先輩!一緒に行きましょ」
「いつも言ってる。好きにすれば」
「はい!」
七草と先輩は並んで会場へ向けて歩き出した