「はあぁぁ」
陽は高く昇っているちょうどお昼時。足を重そうに運ぶ達也、それとは対称的に軽やかな足運びの深雪が並んで歩いていた。
「どうなさったの、お兄様?生徒会長からお昼のお誘いなんて楽しみですね」
深雪は深く溜め息をついている達也を不思議そうに見ていた。
ほどなくして、達也たちは生徒会室に着いた。
「1-A司波深雪と1-E司波達也です。失礼します」
達也が扉に手を掛け、開けた先には4人の女性がたたずんでいた。
「ようこそ。生徒会室へ。さっ、遠慮しないで入って」
七草が明るく2人を迎えた。
「失礼します」
一歩前に出て、深雪は礼をした。それは、育ちの良さが一目瞭然だった。それは優雅で美しく、ただの礼で七草たちが見惚れるほどだった。
「ご丁寧にどうも。ランチは自動配膳機があるのでお好きなメニューを選んでね。お話はお昼を食べながらにしましょう」
それぞれが昼食を持って席に着き、自己紹介を済ましていた。…なぜか、七草のみんなに対する渾名まで紹介していたが。
「あっ渡辺先輩。そのお弁当はご自分でお作りになられたのですか?」
「そうだが。意外か?」
渡辺は意地の悪い笑みを浮かべる。
「いえ、少しも。普段から料理をしているのはその手を見ればわかりますから」
渡辺は自分の手を見られて、恥ずかしそうに手を机の下に隠した。
「あの…会長はお食べにならないのですか?」
七草の手元には未だ手がつけられていない、女性が食べるには大きいサイズの弁当箱があった。
「ああ!私はまだ食べないわ。だって、このお弁当は私のじゃないもの」
「えっ?では、それはど…」
深雪が七草に質問しようとした所で生徒会室の扉が開いた。
「遅くなった?」
何故か疑問系の言葉を発しながら、相変わらずのアイマスク姿で誑揶が入ってきた。
~誑揶side~
「もう先輩!遅いですよ!」
七草が文句を言ってくるが、結構こういう事があるので気にしない。慣れてなくても気にしないが…
俺は沙稀の弁当と一緒に包んだ弁当を取り出して、七草の前に置いて、七草の前にある弁当を持って生徒会室を出ようとする。…が、七草に手を掴まれた。
「せっかくだし、先輩も一緒に食べましょうよ~」
七草がなんか頼んでくる。しかし、俺には職員室の独身どもに見せつけながら、昼を食べる使命が。
「先輩に使命なんてものは、ありません」
…心が読まれた…違うな。前、そんな話したな。まあ、いいか。司波…じゃあ差がないな。今度から下で呼ぼ。達也の隣に腰を下ろし、弁当を置く。先に小さい七草の方から食べよう。
「いつも通り」
「先輩のお弁当も美味しいですよ~♪私の自信を粉砕するくらい」
七草の弁当の感想。最初は文句を言ってきたが、今はこれだけで喜んでるっぽい。そして後半でいっきにテンションを落としているが。何人かは感想それだけかという視線を送ってくる。そして沙稀の重箱に移る。
(こっちもいつも通り)
「!!」
達也と深雪は開かれた重箱の中身を見て驚愕する。なんとも鮮やかに彩られたおかずの数々。それでいてしっかりとボリュームもある。
「…ごちそうさま」
~side out~
((はやっ!))
達也と深雪は同じ思いだった。なにしろ誑揶は、一番遅くに来たのに、誰よりも早く食べ終わっていた。深雪はふと思い付いたように
「そういえば、不知火先生は何故、アイマスクをされているのですか?」
深雪は誰しも誑揶を見たなら、1度は考えることを言った。授業もそのままで行っているのだから。
「なんとなく。暗い方が落ち着くから」
「先生は普段、何も問題なくお過ごしになられていますが、どうやって周りを見られているのですか?」
「幼い頃からすれば、気配みたいなのが流石にわかるようになる」
「そうなんですか……」
質問をした側からしたら納得のいく返答ではないだろうが、誑揶はいたって真面目に答えていた。もう話が終わったと思ったのか誑揶が立つ。
「まだ時間はありますが、もう行かれるのですか?」
達也はまだ何か聞きたそうなのを隠して聞く。
「…早くしないと学食でデザートが…」
(まだ食べるのかっ!)
あれだけの量を食べていたのに更に食べに行くというのだから達也の驚きはもっともだろう。
「先生はよくお食べになられるのですね」
「お腹いっぱいにならないからね。…それに食べても太らないし」
深雪も驚きつつも誑揶に言うと、七草と渡辺が口を開こうとするが、先に誑揶が言いきってしまった。誑揶は振り返らずに生徒会室を去る。中にはズンと重い空気が滞り、女性陣は誑揶が言いきった時のドヤ顔を見て下を向いていた…………
「先輩はズルいんですー!」
…誰かの声が響いたそうな。
達也は一人気まずそうに息を殺していたとかいないとか…