セキレイにジョブチェンジしたんだが、どうしよう…… 作:山賀志緒
エノクと言う人物を知っているだろうか。
この人、聖書の中で、モーセやエリヤのような劇的な何かがあったわけではないのに、神様と共に歩み、神様が天に連れ去ってしまった人である。
重要なのは、神と共に歩いているうちに、神に連れ去られてしまったというところである。
なんでこんなことを言っているのかというと、今体験していることが割とそんな感じに近い。
今、神と共にいるわけではないが、さっき歩いているうちに周りの景色が欠落した。あたり一面真っ白である。
歩きながら本読んでいただけなんだけどなぁ…
パニックに陥るわけでもなく、歩き続ける。
歩く、歩く、そして歩く。
そうしているうちに、古めかしい台座が見えてきた。
なんだろうかと見てみると、本が開いたまま置いてある。
そのページには、
「ここは岐路。
右に行くか、左に行くか。
ただし、戻りは許されない。
戻れば終わり、眠りが待つ。
右に進めば狭き道。足元見ずに光へ向かえ。
左に進めば広き道。悩み惑いて突き進め。されど力は与えよう。
共に終わりは光の門。
さぁ、選ぶはあなた。何を選び、何を捨てるか。
わたしはあなたを待っている。この選びの先に待っている。
進め、進め、さぁ進め。」
と書いてあった。
他のページには何もない。ペラ紙一枚でもよかったのではと思う。
とはいえ、どうするか。
いや、どうするか以前に、自分のことを考えると選択肢は一つだ。
広い道を通るしかない。ずっと光だけを見ることなんて俺には無理だ。
フラフラしながらゴールに向かってへ行こう思う。
とりあえず、左だな。
左に向かって少し歩いた時に、ふと後ろを振り向いた。
なんというか予想通り、そこには何もなかった。台座は消えていた。
選択したと見なされたらしい…
またしばらく歩いていると、今度は光の玉が五つばかり浮いていた。
左からそれぞれ、光の玉は語りかけてくる。
「私はあなたを修羅へ誘う。
振り返る時あなたは見る、数多の
あなたは必ず後悔する。それでも道を選べるか。」
「私はあなたの背中を押す。
ただし、あなたの胸に穴があく。実感を得ない。己が道を選んだか。
それでも自分で選んだと、言えればあなたは門の前。」
「私はあなたを顧みない。
力を授け、あとはそのまま。そしてあなたは見失なう。選ぶことを、選ばないことを。
選ぶことを思い出す時、あなたは私の前にいる。」
「私はあなたに背負われる。
されど、私は軽すぎる。振り落さぬよう気をつけよ。落とせば元には戻らない。
落とさず選べ。落とさず進め。あなたの道は明るいぞ。」
「私は何も与えない。与えない、与えない。
しかし、あなたが倒れる時、私はあなたを背負って歩こう、あなたが再び歩くまで。
共にいる。共にいる。私はあなたと共にいる。」
そして、五つの玉は黙りこんでしまった。えっ?説明は一度だけかよ。
とりあえず、一つ目と四つ目はないな。修羅は耐えられないだろうし、四つ目は良さそうだけど、一度しくじれば終わりだ。
となると、一番良さそうなのは三番だな。二つ目と最後のやつは、なんか見えざる手のようなものにすがってしまいそうだし、己の強度が下がるような気がする。
真ん中のやつに手を伸ばした時、光の玉はスゥッと俺の中に入ってきた。
胸の中に入ってきたが、別に何かが劇的に変わったわけではないような気がする。
胸へ追ってた視線を戻すとやはり、他の玉は消えていた。
もう一度、歩き始める。持っていた本を読みながら、ひたすらまっすぐに。
何ページぐらい読んだところだっただろうか、気づくと喧騒が戻っていた。立ち止まってしまった。
周囲にはビル群、人の往来が激しい。
立ち止まった俺を不思議そうに見ながら、周りの人は過ぎ去っていく。
不思議体験もさることながら、頭の中は、「ここどこだ」である。人に聞くのも変だし、とりあえず地図を探すことにする。
しばらく歩いていると、米袋を持った目つきの悪いコスプレイヤーがいた。まぁ美人だけど。
ジロっと見られたので、じーっと見つめ返す。
また足が止まって、注目の的になってしまった。
「あたし達も運がいいね。羽化前のセキレイがふらっと現れるなんてさ。」
セキレイ?鳥だよな、あの可愛い声で鳴くやつ…昆虫じゃないし羽化なんてしないぞ。
頭が残念な姉ちゃんたちかもしれない。
そんなことを考えていたら、準備運動しだして、服を脱ぎだした。残念どころか痴女だった。なにこれメイドからSMショーばりの衣装になったぞ。
えーっと、どうしよう。知り合いって思われたくないしスルーして人ごみに入るか。
そんな決意をして、歩き出そうとしたら見てしまった、彼女らが帯電しているところを…
なにこれ、ちょーファンタジーじゃん。これ政府のお偉いさんが見つけたら人体実験送りじゃね?
もしかして、最近はこれが普通なのか?田舎暮らしで世間に疎くなりすぎたかな。
「いくよ、
うおっ!電撃飛ばしてきやがった。
でも金属ジャラジャラした女の人が脇を通ったので、そっちに電撃が行ってしまった。
やばいと思ったので、足を伸ばして電撃を受ける。あれっ?俺こんな速く動けたっけ?
そのまま足をコンクリへズドン。
めり込んだ足から電撃が出て行ったのを感じた。ちょっと痺れたけど。
周りに迷惑かかるし、こりゃ、逃げるが勝ちだ。さっさと退散しよっと。
姉ちゃんらに視線を戻すと、彼女らは彼女らで、目を点にしていた。なんでだ?
「響、今外れてやばいって思ったんだけど、そしたら一瞬であいつ移動したよね。」
「うん、自分から受けて、コンクリ粉砕しちゃったよ。シングルナンバーじゃないと思うけど、かなりできるやつっぽいね。本気出さないとやばいかも。」
うーん、ガチになられるみたいだ。早いとこ退散だ…
ちょっと足に力を入れて、反対側の歩道に行こうと思ったら、ビルの上まで飛んでしまった。えっ、マジで…世界記録なんてめじゃないじゃん。
考えるのを後にして、このスーパーボディを駆使してビル群を走破していく。まぁ〜て〜っと後ろから聞こえるが、無視無視。
チャチャっと撒いて、とある公園へ。ベンチに座って思索に耽る。
流れからして、俺はセキレイとやらで、素敵ボディを持っているらしい。軽く手を振ったら遠当てができた。割と大きな木が折れてマジやべぇ…
そして、羽化というものがある。羽化がどんなものかはわからないが、羽化すると電撃を出せるようになるのかもしれない。とりあえず保留。
これからどうするか。これが割と切実。お腹は空くし、寝るとこないし。お金もなさげ。ホントどうしよう…
こめかみを押さえていたら、ポッケが振動した。振動元を探ると何やら見たことない携帯電話。いつの間に…
液晶を見ると、高美様と書いてあった。名前であっているよな?つーか様って…
おっかなびっくり出てみる。ポチッとな。
「
どうやら、俺は黒宮というらしい。どうしたらいいでしょう。
「とりあえず、
早口でまくし立てられてる。とりあえず出雲荘を探せばよさそうだ。寝床は重要である。
「今廃棄ナンバーを捜索しているから忙しいし、また落ち着いたら連絡するわ。それまで元気にしてるのよ。じゃね。」
結局、俺は一言しか話さずに終わってしまった。
とはいえ、向かうべき場所は決まった。あとは、葦牙を探せばいいのだろう。葦牙ってでも葦の若芽だよな、こんな都会にあるのか?
とりあえず、わかったことを確認しよう。
俺は黒宮。そんでもって、
セキレイである……
自分が読みたいなと思えるものを書いていこうと思います。
エタらず、頑張っていこう、うん。
一週間に1話ぐらいをめどに…
表明することは大事だよな。