セキレイにジョブチェンジしたんだが、どうしよう……   作:山賀志緒

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セキレイが完結していたことを二週間前に知りました。


第一羽 俺セキレイ

エノクと言う人物を知っているだろうか。

 

この人、聖書の中で、モーセやエリヤのような劇的な何かがあったわけではないのに、神様と共に歩み、神様が天に連れ去ってしまった人である。

 

重要なのは、神と共に歩いているうちに、神に連れ去られてしまったというところである。

 

なんでこんなことを言っているのかというと、今体験していることが割とそんな感じに近い。

 

今、神と共にいるわけではないが、さっき歩いているうちに周りの景色が欠落した。あたり一面真っ白である。

 

歩きながら本読んでいただけなんだけどなぁ…

 

パニックに陥るわけでもなく、歩き続ける。

 

歩く、歩く、そして歩く。

 

そうしているうちに、古めかしい台座が見えてきた。

 

なんだろうかと見てみると、本が開いたまま置いてある。

 

そのページには、

 

「ここは岐路。

右に行くか、左に行くか。

ただし、戻りは許されない。

戻れば終わり、眠りが待つ。

右に進めば狭き道。足元見ずに光へ向かえ。

左に進めば広き道。悩み惑いて突き進め。されど力は与えよう。

共に終わりは光の門。此方(こなた)へ着くを望めばなり。

さぁ、選ぶはあなた。何を選び、何を捨てるか。

わたしはあなたを待っている。この選びの先に待っている。

進め、進め、さぁ進め。」

 

と書いてあった。

 

他のページには何もない。ペラ紙一枚でもよかったのではと思う。

 

とはいえ、どうするか。

いや、どうするか以前に、自分のことを考えると選択肢は一つだ。

広い道を通るしかない。ずっと光だけを見ることなんて俺には無理だ。

フラフラしながらゴールに向かってへ行こう思う。

 

とりあえず、左だな。

 

左に向かって少し歩いた時に、ふと後ろを振り向いた。

 

なんというか予想通り、そこには何もなかった。台座は消えていた。

 

選択したと見なされたらしい…

 

またしばらく歩いていると、今度は光の玉が五つばかり浮いていた。

 

左からそれぞれ、光の玉は語りかけてくる。

 

「私はあなたを修羅へ誘う。

 

振り返る時あなたは見る、数多の(かばね)に自分が立っていることを。

 

あなたは必ず後悔する。それでも道を選べるか。」

 

「私はあなたの背中を押す。

 

ただし、あなたの胸に穴があく。実感を得ない。己が道を選んだか。

 

それでも自分で選んだと、言えればあなたは門の前。」

 

「私はあなたを顧みない。

 

力を授け、あとはそのまま。そしてあなたは見失なう。選ぶことを、選ばないことを。

 

選ぶことを思い出す時、あなたは私の前にいる。」

 

「私はあなたに背負われる。

 

されど、私は軽すぎる。振り落さぬよう気をつけよ。落とせば元には戻らない。

 

落とさず選べ。落とさず進め。あなたの道は明るいぞ。」

 

「私は何も与えない。与えない、与えない。

 

しかし、あなたが倒れる時、私はあなたを背負って歩こう、あなたが再び歩くまで。

 

共にいる。共にいる。私はあなたと共にいる。」

 

そして、五つの玉は黙りこんでしまった。えっ?説明は一度だけかよ。

 

とりあえず、一つ目と四つ目はないな。修羅は耐えられないだろうし、四つ目は良さそうだけど、一度しくじれば終わりだ。

 

となると、一番良さそうなのは三番だな。二つ目と最後のやつは、なんか見えざる手のようなものにすがってしまいそうだし、己の強度が下がるような気がする。

 

真ん中のやつに手を伸ばした時、光の玉はスゥッと俺の中に入ってきた。

 

胸の中に入ってきたが、別に何かが劇的に変わったわけではないような気がする。

 

胸へ追ってた視線を戻すとやはり、他の玉は消えていた。

 

もう一度、歩き始める。持っていた本を読みながら、ひたすらまっすぐに。

 

 

何ページぐらい読んだところだっただろうか、気づくと喧騒が戻っていた。立ち止まってしまった。

 

周囲にはビル群、人の往来が激しい。

 

立ち止まった俺を不思議そうに見ながら、周りの人は過ぎ去っていく。

 

不思議体験もさることながら、頭の中は、「ここどこだ」である。人に聞くのも変だし、とりあえず地図を探すことにする。

 

 

しばらく歩いていると、米袋を持った目つきの悪いコスプレイヤーがいた。まぁ美人だけど。

 

ジロっと見られたので、じーっと見つめ返す。

 

また足が止まって、注目の的になってしまった。

 

「あたし達も運がいいね。羽化前のセキレイがふらっと現れるなんてさ。」

 

セキレイ?鳥だよな、あの可愛い声で鳴くやつ…昆虫じゃないし羽化なんてしないぞ。

 

頭が残念な姉ちゃんたちかもしれない。

 

そんなことを考えていたら、準備運動しだして、服を脱ぎだした。残念どころか痴女だった。なにこれメイドからSMショーばりの衣装になったぞ。

 

えーっと、どうしよう。知り合いって思われたくないしスルーして人ごみに入るか。

 

そんな決意をして、歩き出そうとしたら見てしまった、彼女らが帯電しているところを…

 

なにこれ、ちょーファンタジーじゃん。これ政府のお偉いさんが見つけたら人体実験送りじゃね?

 

もしかして、最近はこれが普通なのか?田舎暮らしで世間に疎くなりすぎたかな。

 

「いくよ、(ひびき)!」「うん、(ひかる)!」

 

うおっ!電撃飛ばしてきやがった。

 

でも金属ジャラジャラした女の人が脇を通ったので、そっちに電撃が行ってしまった。

 

やばいと思ったので、足を伸ばして電撃を受ける。あれっ?俺こんな速く動けたっけ?

 

そのまま足をコンクリへズドン。

 

めり込んだ足から電撃が出て行ったのを感じた。ちょっと痺れたけど。

 

周りに迷惑かかるし、こりゃ、逃げるが勝ちだ。さっさと退散しよっと。

 

姉ちゃんらに視線を戻すと、彼女らは彼女らで、目を点にしていた。なんでだ?

 

「響、今外れてやばいって思ったんだけど、そしたら一瞬であいつ移動したよね。」

「うん、自分から受けて、コンクリ粉砕しちゃったよ。シングルナンバーじゃないと思うけど、かなりできるやつっぽいね。本気出さないとやばいかも。」

 

うーん、ガチになられるみたいだ。早いとこ退散だ…

 

ちょっと足に力を入れて、反対側の歩道に行こうと思ったら、ビルの上まで飛んでしまった。えっ、マジで…世界記録なんてめじゃないじゃん。

 

考えるのを後にして、このスーパーボディを駆使してビル群を走破していく。まぁ〜て〜っと後ろから聞こえるが、無視無視。

 

 

チャチャっと撒いて、とある公園へ。ベンチに座って思索に耽る。

 

流れからして、俺はセキレイとやらで、素敵ボディを持っているらしい。軽く手を振ったら遠当てができた。割と大きな木が折れてマジやべぇ…

 

そして、羽化というものがある。羽化がどんなものかはわからないが、羽化すると電撃を出せるようになるのかもしれない。とりあえず保留。

 

これからどうするか。これが割と切実。お腹は空くし、寝るとこないし。お金もなさげ。ホントどうしよう…

 

こめかみを押さえていたら、ポッケが振動した。振動元を探ると何やら見たことない携帯電話。いつの間に…

 

液晶を見ると、高美様と書いてあった。名前であっているよな?つーか様って…

 

おっかなびっくり出てみる。ポチッとな。

 

黒宮(くろみや)!やっと出た。あんた今どこにいるの?調整終わってたからいいけど、もうちょっと常識詰め込んでから出したかったのに。」

 

どうやら、俺は黒宮というらしい。どうしたらいいでしょう。

 

「とりあえず、葦牙(あしかび)を探しなさい。そうすれば自分が何なのかわかるはずだから。それと困ったら、北に出雲荘っていうところがあるから、そこを訪ねてみなさい。美哉(みや)が助けてくれるわ。」

 

早口でまくし立てられてる。とりあえず出雲荘を探せばよさそうだ。寝床は重要である。

 

「今廃棄ナンバーを捜索しているから忙しいし、また落ち着いたら連絡するわ。それまで元気にしてるのよ。じゃね。」

 

結局、俺は一言しか話さずに終わってしまった。

 

とはいえ、向かうべき場所は決まった。あとは、葦牙を探せばいいのだろう。葦牙ってでも葦の若芽だよな、こんな都会にあるのか?

 

とりあえず、わかったことを確認しよう。

 

俺は黒宮。そんでもって、

 

セキレイである……

 

 

 




自分が読みたいなと思えるものを書いていこうと思います。

エタらず、頑張っていこう、うん。

一週間に1話ぐらいをめどに…

表明することは大事だよな。
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