セキレイにジョブチェンジしたんだが、どうしよう……   作:山賀志緒

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なんとか一週間で次の話を投稿できた。
続きもコツコツ書いていこう。


第二羽 黒の鶺鴒

高美様のありがたいご助言により、北を目指しているつもりなのだが…

 

ダメでした。迷子になりました。

 

だってそうだろ?地図を見つけたけど、全体地図だよ。わかるわけないじゃん。

 

もっとも、ここが新東帝都であるらしいということだけは収穫だ。太った東京のような形をしている。

 

あとこの新東帝都、かなり物々しい。

 

ヘリコプターがバラバラ飛んでは行ったり来たりしているし、駅前には、メットを被った人たちが見回りをしている。テロでも起こったのかと最初は思った。

 

実際は、通行規制がかかっているらしく、名目上は帝都市民を守るためだそうだ。メットのおっちゃんに聞いたから間違いない。いずれにせよ、物騒である。

 

そんなこんなで、時折お腹が鳴りながら、路地をぶらぶら歩いていく。きっとこっちが北だろう。

 

ちなみに公園で水はたんまりがぶ飲みしといた。水がなきゃ人間死んじゃうし…まぁ、セキレイだけどさ。

 

 

アメリカの、太陽を浴びていれば最強の某ヒーローではないけれど、この素敵ボディは五感がかなり鋭い。

 

指を舐めなくても空気の流れを感じられるし、地上からヘリコプターのロゴがよく見える。ちなみにM.B.Iと書いてあった。パソコンあたりにそんな名前があったような…それはI.B.Mか。

 

他にも腹式呼吸であれば、辺り一帯の匂いという匂いが入ってくる。地下下水の臭いまでくらってしまうぐらいに…オェ〜。

 

そして、他の人の会話がかなり聞こえる。10メートルぐらいなら、周りの人の呼吸音まで聞こえるのだ。集音力半端ねぇ。

 

そんな素敵聴力が、「ザッ、ブシュ、ドッ。」という怪しげな音を捉えた。

 

多分こっちの路地だろう。さっきまで口論らしき会話もあっただけに、救急車的な展開かもしれない。

 

携帯電話を持っているし、助けが必要なら助けよう。これって普通の思考回路だと思う。そう考えた30秒ぐらい前の自分を諌めてやりたくはなったが。

 

 

路地を曲がってみてみれば、世紀末的な光景が広がっていた。いや、ちょっと違うけど、こう、あれじゃん。わかるだろ?とりあえずやばいんだ。

 

目がいっちゃってる刀持った姉ちゃん(でも美人)がいて、その足元には、おそらく切られた姉ちゃん(これも美人。でもツインテールは年齢的にどうよ)がピクピクと痙攣しながら、口半開きで瞳孔も開きかけてる。

 

ちなみに巻き込まれた奴もいたのか、隣の建物の上までピョーンとジャンプして去って行った。この世界のジャンプ標準はえらい高いんだなと思ったが、それよりびっくりしたのは、その跳び去って行った奴である。

 

パンツを履いていなかった。

 

モノホンの痴女だよ!脳内カメラ16連射ぐらいしてガン見してしまったぞ。目が良すぎるのも考えものだ。

 

そっちも驚きだけど、今は目の前に集中しよう。

 

昨日の電撃ビリビリファンタジーなんて比ではない。血の匂いはブワッ。殺気がひしひしどころかビリビリである。非日常ここに降臨。そして極まれりである。

 

今すぐUターンしたほうがいいのは分かる。警鐘もガンガン頭の中に響いている。しかし悲しいかな、俺の足は倒れた姉ちゃんの方へ向かっていく。

 

知らなかったら良かったのに、怪しげな音に気付かなかったら良かったのに…

 

「へぇ〜…君も闘るのかな?まだ羽化前みたいだけど…」

 

灰色の髪の毛以外、黒で統一した格好の美人が尋ねてくる。まだ目がいったままだ。

 

助けられる命は助けないと寝覚めが悪い。知らなければ世はこともなしなのに、気づいてしまっては手を出さざるをえない。

 

見て見ぬ振りは男がすたる?違うな。見ぬ振りをして次の日のうのうと暮らせるほど俺は強くない。

 

「いいねぇ〜ゾクゾクさせてくれよ…」

 

いってしまった目を閉じ、ニコニコしながら近づいてくる。納刀したままなので抜刀スタイルらしい。しかし、こいつ左で抜くのか?

 

こちらも腹をくくって脱力、そして素敵ボディを信じて進む。

 

アスファルトの地面がコツコツとなる。歩み寄る時間は引き伸ばされ、永遠にも感じられる。

 

お互いの領域が重なる前に俺が動いた。黒いのも動く。そして、交差は一瞬だった。

 

 

 

「…!」

 

 

 

カランカランと刀が落ちる。

 

交差はしていない。俺が刀を、というか、刀を持つ手を裏拳ではたき、抜く手を空いた手で押さえたからだ。

 

強そうだと思っていたが、ここまでとはね。うまくいってなによりだ。

 

「器用なことするねぇ。まさか刀を抜けないとは思わなかったよ…」

 

はたかれた右手が痛むのか、声が若干堅い。

 

いやいや、単なる初見殺しだ。目をつむって油断していたが故に、外の間合いから奇襲をしただけのこと…バトルジャンキーっぽい輩には初手で決めるに限る。某スキルがいっぱいある人ではないが、強さに自信を持っているがゆえの余裕は本当に命取りなのだ。

 

「…でも、こんな芸当ができるのなら、もっと傷を負わせることもできたんじゃないのかなぁ?」

 

バカ言え。殺人未遂とはいえ、美人をフルボッコになんてできるわけがない。それに傷に残ったら大変だ。責任取らされそうだし。

 

「…まぁ、そういうことにしておくよ。」

 

先ほどまでの殺気は霧散し、血の香りだけがここを満たす。

 

「ここは頼んだよ。その気だったみたいだしねぇ…」

 

刀を拾い上げ、背を向けて去っていく美人。

 

とりあえず、これで一安心だ。このツインテ美人の止血をちゃっちゃとしちゃおうかね。

 

おぉう、結構ヤバげ。はいはい、カームダウン。いつまでもピクピクしてなくていいから。目を閉じて安心しなさい。救急車も呼んであげるから。しかし、えらい血が出てるな。助かるのかね?心配になってきた。

 

「ねぇ?」

 

ちゃっちゃか止血をしていると後ろから声が掛かった。いや、近いよっ!びっくりした。さっき離れていってたじゃん。一瞬で戻ってきたんかい。

 

「君の名前を教えてよ。自分はNo.4 鴉羽(からすば)。黒の鶺鴒(せきれい)なんて呼ばれてる。」

 

No.4?なんかの四番目か?とりあえず、黒宮です。黒宮。黒がかぶってますな。

 

「ふぅ〜ん、黒宮ね、黒宮…覚えたよ。面白かったし、また会えるのを楽しみにしてるねぇ…」

 

今度こそ、去って行った。

 

 

よし!止血も終わったし、救急車だ。携帯を取り出し119。ポチッとな。

 

数回のコール音の後に繋がったが、

 

「やあ!No.96 黒宮くん、みんなの社長、御中だよ。元気にしているかね。No.38 蜜羽(みつは)を介抱してくれてありがとう。」

 

やたらテンションが高い人が出てきた。どう見ても救急のオペレーターではない。しかもビデオコールで相手の姿が丸見えだし、どうなってるんだ?

 

「No.38のことなら心配はいらない。今、こちらのものが向かっているから、彼らに預けてくれたまえ。」

 

白髪でメガネのおじさんである。椅子にふんぞり返って偉そうだ。服はひらひらで、センスがダサい気がする。マッドサイエンティストを意識しているのかね?

 

「あと、セキレイが闘いに敗れて機能停止になった時は、119じゃなくて、高美くんにでも連絡してくれたまえ。普通の病院じゃ見せられないんでね。」

 

高美様と知り合いらしい。

 

変なおじさんこと御中さんが何かと話しているうちに、バラバラとヘリが近づいてきたし、装甲車っぽいのも見えてきた。この道狭いから対向車きたらやばいんじゃね?

 

「じゃあ私はこれで失礼するよ。あとは彼らに任せる。君も早く葦牙(あしかび)を見つけたまえよ。」

 

ブツッと一方的に切られてしまった。しかし、また葦牙である。そんなにセキレイにとってあの葉っぱが重要なのか?

 

そうこう考えているうちにM.B.Iの人たちが蜜羽?だったかを連れて行ってしまった。めっちゃ手際良かったし、さすがプロ(たぶん…)です。お仕事ご苦労様です。

 

ちなみに、装甲車みたいなやつは、来た道をバックで戻って行った。運転上手だなぁ。

 

とりあえず、さっき手持ち無沙汰で携帯電話をいじくっていた時にわかったことがある。北がこっちだということだ。なんと、携帯電話に地図機能はなかったが、コンパス機能があった。どんな携帯電話だよ、ホント。そしてソーラーバッテリーで動くらしい…ハイテクなのかレトロなのかもうわかんね。

 

 

 

しばらく北に向かって歩いていたが、バス停の椅子に腰掛け、少し休憩。

 

お腹すいたなぁ〜、親切なばあさんとかいないかなぁ〜と考えながら、とりあえず、わかったことをまとめてみる。

 

セキレイとは、どうやら闘う存在らしい。負けて機能停止とはどう意味なのか、何と闘うのかはわからないが、もしかするとセキレイ同士で闘うのかもしれない。あんなバトルジャンキーがいるくらいだし……物騒なところに来てしまった気がする。

 

あと、葦牙とやらがマジで重要な可能性がある。高美様と御中さんが二人して言うくらいだ。本格的に水辺を探すのがいいかもしれない。

 

他には何かあったかな?

 

あぁ、そうか。セキレイには番号と称号がついているようだ。モルモットや競技者の可能性も出てきた。

 

とりあえず、俺は、No.96 黒宮…なんらかのセキレイである。

 

 




次も一週間後に…がんばろう、うん。
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