セキレイにジョブチェンジしたんだが、どうしよう…… 作:山賀志緒
あと、感想を書いていただいた方、ありがとうございます。励みになります。
人助けならぬセキレイ助けから1日経った。また野宿したよ。布団がマジで恋しい。
その間に悲しいことと嬉しいことがあった。
まず悲しいことに葦牙は手に入りません。
いやね、俺も頑張ったと思うよ。ここ新東帝都の北の端に
葦を見つけるだけなら、粘んなくてもすぐに見つかる。群生してるしな。でもな、葦牙って葦の若芽だろ?時期じゃない。こいつら成長スピードはんぱないから、すでに小学生の身長ぐらいの葦ばっかりよ。来年まで待てってか?
嬉しかったのは、川辺で頑張っている時に、美人なお姉さん(たぶん30歳ぐらい)が食べ物を恵んでくれたことだ。コンビニの惣菜パンとお茶だったんだけど、涙が出るほど美味かった。
ちなみに、そのお姉さんは
あと、お姉さんのおかげで、出雲荘の方角がわかった。あっちらしい。道案内をしてくださる気は無さそうで、指でさして教えてくれただけでした。割と豪快?大雑把なお姉さんのようだ。いやいや、感謝はとってもしてますよ、はい。何でも忙しいらしい。
葦牙探しを頑張れよと応援もしてくれたし、とりあえず彼女は命の恩人であり、いい人だ。もっとも来年まで葦牙はどうしようもないけどな。
お姉さんと別れてから、指し示された方角に向かって一直線に歩いているつもりなのだが、なかなか出雲荘にたどり着けない。
通りすがりのお姉さんが知っているぐらいだし、なかなかの名荘だと思うのだが、見つからない。
そうこうしているうちに、またしてもビル乱立地帯へ突入してしまった。ホントにどうしよう。
とりあえず、このあたりは物々しすぎる。野宿している身としては、補導か職質されないかと気が気でないのだ。なんか見られているような気もするし…
人目を避けつつ歩き続け、バス停を見つけたのでまたまた椅子に腰掛けた。そのうち全部のバス停の場所を覚えてしまうかもしれない。
空はこんなに青いのに、心はどんより曇っている。おい、ヘリ邪魔だ。雰囲気ぶち壊しだよ…
さっきのお姉さんのようなラッキーイベントなんてそうそう起きないだろうし、本格的に衣食住がやばい気がする。
ぼーっと空を眺めていたら、膝の上になにやら重みを感じた。いや、接近していることには気づいていたけどね。白い猫だ。結構美人である。いや、オスかメスかなんてわかんないけどさ。
おとなしく撫でさせてくれるらしい。ゴロゴロ言っているから、気に入ってもらえたようだ。
フワフワもふもふ、モフモフふわふわ…やべぇ、ちょーかわいい。
どれくらい撫でていただろうか。結構時間が経ったような気がする。胡散臭いと思っていたが、アニマルセラピーの力はきっとこのようなものに違いない。疑って悪かった。
心が回復してきたようだ。もう少し頑張る気がする。ありがとう、白猫。
「おーい、そこの髪の毛真っ白のやつ!その猫捕まえててくれ!」
なんか首にタグをかけたジャケットの青年が走ってきた。うーん、あんまり言いたくはないけれど少しダメな人間の匂いがする。あと、飼い主に見えない。
それに恩人ならぬ恩猫を俺は捕まえているわけではない。撫でさせてもらっているだけだ。少し猫と目があったけど、にこやかに送り出した。元気でな〜、車に気をつけろよ。
「ゔぉい、なんで逃がしやがった!こちとら頼まれて三日前から探してたんだよ!」
バカ言うな、俺は最初から捕まえていない。青年が勘違いしただけだ。
「ん?なんだ、変な感じがするが、お前セキレイじゃねぇか。しかも羽化はしてねぇな。」
ん?もしかしてこの人もセキレイか?今まで出会ったセキレイは美人しかいなかったから、美形しかいないと思っていたんだけど、なんかショックだ。
「ばっか、俺はセキレイじゃねぇよ。葦牙だ葦牙。ちょっと特殊な、な。」
んん?ちょっとびっくりワードが出てきたぞ、葦牙だと?葦牙って人のことなのか?この世界では、人間=葦牙なのか?いや、この人の名字が葦牙という可能性もあるか。
「いや、俺は瀬尾ってんだ。なんだ?お前セキレイのくせに、鶺鴒計画について知らないのか?」
セキレイ計画?どんな計画だよそれ?
「まじかよ、お前どんな調整を受けたんだ?こんな無知なセキレイに出会ったのは初めてだぜ。」
ん〜?調整ってなんだ?もはや訳がわからん。しかし、事情を知っている人に出会ったこの好機、逃してなるものか。教えてもらおう。
「は?いやだよ、なんで俺がそんな面倒くせぇことしなきゃならねぇんだよ。しかもセキレイとはいえ野郎に。どうしても教えて欲しければこれだな。」
指で輪っかを作って金を要求してきた。まじかよ、クズっぽい匂いに間違いなさげじゃないか。とりあえず、猫探しを手伝うことで手を打ってもらおう。
「ハァ〜、面倒くせぇ…いいか、一回しか言わねぇからな。…………」
説明中…
長かった。確かに面倒くさいというのがわかるレベルだった。瀬尾さん、クズっぽいとか思って悪かった。
要約すると、鶺鴒計画とは、108羽の鶺鴒によるバトルロワイヤルであり、嵩天という場所に至って願いを叶えるために、最後の一羽(セキレイの数え方は鳥の鶺鴒と同じように羽らしい。)になるまで闘うというものだそうだ。あのファンタジックなパワーは鶺鴒の固有能力らしい。やっぱり物騒な世界だった。
そして鶺鴒には羽化というものがあり、葦牙という鶺鴒を制御できる人間と粘膜接触をすることで起きるようだ。要はチューである。鶺鴒の安定した力を引き出すためには必要なものらしい。ただ、葦牙を探す意欲は激減したな。出会って間もない人にチューして魔法使いになってよみたいなこととかどんな無理ゲーだよ。恥ずかしすぎる。
先ほどの調整とは、羽化前の市井に送り出された鶺鴒が、今の世の中で生活できるように体を弄られることと一般知識を授けられることのようだ。
思い出したが、先日の高美様の話だと、俺は調整を終えたことになっている。ただ、覚えはないし、この素敵ボディは大丈夫だろうか…割と不安である。
その他、セキレイの闘い方や
そう問われた瀬尾さんはなにやら難しい顔をしていた。実際、能力については検証しきれていないのかもしれない。触ったことがあるのも女性だけという可能性もあるだろう。
何はともあれ、将来的に敵となる俺にこうして塩を送ってくださったのだ。しっかりと猫探しを手伝おう。
猫探しは、この素敵ボディによって楽勝だった。匂いと音で完璧に追跡できた。ホント素敵ボディ様様である。
とはいえ、瀬尾さんとともに行動しているせいか、俺もエネミー判定をくらったらしく、逃げる逃げる。なかなか捕まらない。というのも、さっき元気をもらった手前、俺としてはむんずと掴むのに気が引けて本気を出せなかったのである。できるだけ瀬尾さんの方に誘導はしていたのだが…
ようやく捕まえられたのは、第三者の協力を得てだった。偶然ぽかったが…
助けてくれたのは
最近知り合ったのか、佐橋君が瀬尾さんのことについて質問していた。瀬尾さんは、大学生でなんでも屋であるらしい。
「黒宮さんもセキレイなんですよね?」
唐突に質問された。もってなんだ、もって。ここにセキレイは俺だけだろ?
「あっ、いや、うちにセキレイの女の子が何人もいるのでつい…」
なんと佐橋君、現在三人のセキレイの葦牙らしい。押しに弱そうな感じだが、かなりのプレイボーイのようだ。しかし、一人で三人も抱えていたら、最後の一羽はどうやって決めるのだろう?身内で大乱闘か?
「あと、くーちゃんもセキレイですよ。」
!!なんとこんな小さな可愛い子もセキレイらしい。ってことはこの子と佐橋君は…いや、何も言うまい。生温かい目で見守るとしよう。
しかし、ますますこの鶺鴒計画とやらが闘いづらくなったな。こんな小さな子や美人らをフルボッコで機能停止か、服をひん剥いて鶺鴒紋に祝詞だろ?外聞が悪いし、犯罪臭もプンプンしている。そして、大問題なのが、現状、俺は相手をフルボッコにして機能停止にするしか取り得る手段がないということだ。祝詞の言葉がさっぱりわからない。羽化できれば頭に思い浮かぶのかねぇ。
視線を感じたので見てみると、くーちゃんとやらが、あどけない、無垢でつぶらな瞳を俺に向けていた。おぉ、かわいい…
「くーね。しーちゃん探してるの。しーちゃん知らない?」
しーちゃん?本名なわけないよな?いずれにせよ知らないなぁ。お兄さんこっちに知り合いがほとんどいないから分からんわ。ごめんな。
「そっかぁ…」
幻聴ではなく、リアルにしょぼ〜んという効果音が聞こえてきた。なんだろう…悪いことをしたわけじゃないのに罪悪感がやばい。とりあえず、しーちゃんとやらを捜索リストの筆頭に入れておこう。安心しろくーちゃん!お兄さん頑張るからな!
佐橋君と瀬尾さんが会話をしていたが、瀬尾さんは人のセキレイの数がわかるようだ。何かにつけ敏感な葦牙なのだろう。俺、未だに相手がセキレイかどうか分からないんだけどな…この素敵ボディに何も反応ないし…
ちょっとがっかりしていると、「瀬尾〜!」と上から声が降ってきた。しかし、この世界は高さの概念がホントにゆるい気がする、でっかい建物いっぱいあるのに。
目を向けると、なんと!いつぞやのビリビリファンタジーのお二人さんだった。今日もSM衣装である。大丈夫かな、この人たち。というか、瀬尾さんのセキレイのようだ。となると、彼女たちの衣装は彼の趣味という可能性がある。やはり、付き合い方を考えるべきかもしれない。
なるほど、上から降ってきたのは、まずい奴、セキレイに追われているからのようだ。ということは、このままいくと「そこの男!!邪魔だ、退け!!」はい、またまた上からの参上です。そして、上を向くとまた美人(短いスカートでパンツ丸見え)が、佐橋君に突っ込んでいった。ごめん、佐橋君。くーちゃんの保護を優先しちゃったわ。
てかよ、俺の会ったことのあるセキレイって露出が激しすぎないか?SMにミニスカワンピース、短いスカート、鴉羽さんもパンツだからいいかもしれないけど、ショート過ぎて絶対領域的なものがあったし、もしかすると、大半のセキレイは衣装がいかがわしい感じなのかもしれない。俺の服(上から下まで真っ黒)が地味だけど露出がなくて助かったわ。
そんなことを考えていたら、ここであったが100年目みたいな感じで、佐橋君が殺されそうになっている。なんで?そして、今度はお水のファンタジー。彼女の周りに結構な量の水が渦巻いていた。こりゃあれだな、そのうちロ○ア系のセキレイが大集合するに違いない。
しかしよ、佐橋君。セキレイとはいえ幼いくーちゃんに庇ってもらうのはどうよ。あと、やっぱりお水のセキレイさんに幼子まで毒牙にかけたのかって突っ込まれている。渋い顔をしているけど佐橋君、ぱっと見、みんなそう思うよ。
抹殺されそうになっているところを止めたのは、SMビリビリファンタジー。あたし達が先約だ、とのことらしい。逃げていた割に態度がでかい。と思ったら、二人していきなり瀬尾さんとベロチューしだした。慌ててくーちゃんの目を俺が塞ぐ。佐橋君がグッジョブと親指を立てていた。なに、当然のことをしたまでよ。
お水のセキレイさんは顔を真っ赤にしながら、ナニしておるかと怒鳴っている。意外と初心らしいが、何が、ナニっぽい感じになっていたから、これがどういった行為なのかは知っているみたいだし、興味はあるようだ。
瀬尾さんの説明でわかっていたが、これがセキレイの闘い方の一つである。葦牙と粘膜接触することで祝詞を唱えて強力な力を発揮するらしい。うん、羽化しないと使えませんね。
「「我らが誓約の
やっべぇ…………何がやばいって、祝詞って
「「
おぉすっげぇ、どんどん
焦げ臭い匂いとともに、煙がはれると結構な範囲で穿たれた道路が……これ賠償金がやばいことにならないか?次は外さん、覚悟しろ的な感じでお二人さんがドヤ顔しているけど、お金のこと考えた方がいいと思うよ。
ピンチと思ったのか、少し苦し紛れに水柱を飛ばすお水のセキレイ。サッとお二人さんは避けて、奥にいた瀬尾さんの顔面に水がぶっかかった。結構威力があったのか、抱えていた猫を放してしまった瀬尾さん。もちろん猫は逃亡…あぁ〜あ。
当然、三日前から探していたんだから、瀬尾さんがキレた。お水のセキレイさんに顎をクイっとやってどう落とし前つけてくれんだ、あぁん?となっている。理由はわかるが、美女に絡んでいるチャラ男にしか見えない。羽化して奴隷にしてやろうかとか言っているし…
お水のセキレイが動けないところを見ると、瀬尾さんの葦牙としての特殊な力が働いているんだろう。やっぱ女のセキレイ限定なんじゃね?とはいえ、これ以上は心が傷む、ここらが止め時だろう…
止めようとしたら、なんと、佐橋君が瀬尾さんに割って入った。しかし、放せの理由が俺のセキレイだからって何よ。セキレイってものじゃないじゃん。って、よく見るとお水のセキレイも頬を染めて、まんざらでもなさそう。なんでやねん。
一方、瀬尾さんは、ビリビリファンタジーのお二人さんに目の前で浮気するとはいい度胸だと修羅場に突入していた。そりゃそうだ。セキレイとはいえ、目の前で他の女性に目移りしていたように見える。なんとか言い訳しようとしていたが、問答無用で電撃を浴びていた。ご愁傷様。
ふと隣りを見ると、くーちゃんがふるふると震えている。ん?どうしたよ?
「けんか だめなのー!」
と、くーちゃんが涙目になりながら叫んだ。すると、手に持った鉢植えの芽がぐおっと一気に成長して瀬尾さんたちを拘束した。ついでに俺にも襲いかかってきた。どうして攻撃対象に俺が入っているんだよ。俺なんもしてないじゃん、守ってあげたでしょ?ていうか、セキレイの攻撃って、敵味方お構いなしの範囲攻撃しかないの?まぁ、全部避けたからいいけどさ。
植物の成長が止まると、くーちゃんはけんかを止めましたとばかりに佐橋君に向かってドヤ顔している。佐橋君も佐橋君で、すごいやくーちゃんとばかりにぐっと拳を掲げていた。いや、とばっちりを受けた俺に何かないの?
瀬尾さんは植物から抜け出そうとジタバタしている。でも、放せゴラと幼女に迫るのはどうかと思うよ。くーちゃんがまた泣きそうになっているし。
佐橋君はお水のセキレイと会話中。責任取れだのプロポーズしただの問答になっていた。ちなみにこのお水のセキレイは
結局、押しに弱そうだった佐橋君がまさに押されてチューされていた。月海さんの羽化である。羽化というものを初めて見たが、正直思っていたより、神秘的で綺麗な光景だった。背中から羽のようなキラキラしたものがパァーっと出ていた。わぁ〜お。
しかし、月海さん、汝を殺して良いのは我だけじゃって激しすぎる告白文句だな。あと、
だと思ったら、月海さんから
くーちゃんがとてとてと歩み寄って佐橋君に抱きついていた。これはくーのだぞと言わんばかりに…いや、くーちゃん…先に瀬尾さんたちを解放してあげようよ。
くーちゃんの行動にイラッとしていた月海さん。ちびっこだから大目に見ようとしたようだが、「
そうだよね、結婚したと思ったら、旦那が他に三人も女を囲っていたなんて納得できるわけがない。佐橋君、甘んじて水柱(この技は
やっと解放された瀬尾さんたち。一度彼のセキレイたちに襲われているからどうしたもんかと思ったが、彼女たちはもう疲れたらしい。ついでに瀬尾さんも猫探しの続きはもうしないそうだ。
これからどうするよって尋ねたら、なんと出雲荘に向かうとのこと。今日の俺、運が良すぎる。ちなみに、佐橋君は出雲荘に住んでいるらしい。瀬尾さんはどうして?と尋ねると、飯をたかりに行くようだ…マジで付き合い方を考え直した方がいいかもしれない。
和気藹々と歩くセキレイ六羽と葦牙二人。もっとも、佐橋君のセキレイ達が彼をもみくちゃにしながら騒いでいるだけである。周りの目が痛い。少し離れて歩こう。
瀬尾さんは頭の中がご飯のことでいっぱいなのかそっけない。仕方がない。こちらも格好的に近づきたくはないが、ビリビリファンタジーのお二人(
「うるさいよ」と顔を赤くしながら返された。そうだよね。好きでこんな格好しているわけがないわ。ちなみに、この洋服、M.B.Iからの支給品だそうだ。まじかよ、御中社長が変態なだけじゃねぇか…あぁ、まんま変態か。
そうこうしているうちに出雲荘に着いた。
なんと、何回も通り過ぎた場所だった。仕方ないじゃん、もっと豪華な名荘だと思ったんだよ。しかも表札は塀の中の玄関の前にしかないし…
騒がしいのを聞きつけたのか、布団叩きを持った割烹着を着た和服美人が出てきた。大家の
自己紹介が始まり、月海さんが妻だというくだりで一悶着が起きていた。あと家の奥にもう二人、住人がいるようで、何やらむふふと覗きながらしゃべっていた。あまりお近づきになりたくない部類の人たちかもしれない。
妻の座をかけて結ちゃんと月海さんが勝負しそうになる段階で、大家さんが出雲荘での暴力沙汰は許しません、と二人の頭を布団叩きで叩いていた。いや、あなたが叩くのはいいんかい…そうですね。大家さんは神ですもんね。
ついでにこの大家さん、えらい雰囲気があるお人で、詳しく言うと、お話がOHANASHIである。先の二人がすごすごと引き下がっていた。
そして鶺鴒計画についてご存知のようだ。俺の入居も認めてもらえるかもしれない。ちなみにM.B.Iに勤めていた旦那がいるようだ。過去形なのが少し気になるが…
瀬尾さんが、鶺鴒計画について知らないふりを佐橋君に対してしていた大家さんに意地が悪いなと話しかけたが、飯をたかりに来たことについてクズ呼ばわりされていた。後ろで光さんと響さんがすみませんと泣いている。かわいそうに…
「それで?こちらはどなたですか?」
ようやく、空気だった俺に会話の矛先が向いた。No.96 黒宮です。高美様の紹介で、こちらなら助けてもらえると参りました。寝る場所を貸していたでければ幸いです。二日も野宿なので…
「あらまぁ、そうでしたか。出雲荘へようこそ。ここは来るものを拒みません。詳しいことはまた中でお話しましょう。」
あ、ありがとうございます。ていうか、そんな簡単に決めていいのか?ちなみに俺、今一文無しなんだけど…まぁアルバイトはするけどさ。
「ここに来たことも何かの縁です。ここは誰であろうと拒みませんよ。ただ、そうですね。瀬尾さんみたいにならないように気をつけてください。」
ナチュラルに心を読まれました。とりあえず、今晩は布団で寝られそうだ。ホント良かった。しかし、瀬尾さん、あんたの扱いの酷さに同情するぜ…
「じゃあ御飯の支度をしましょうか。皆さんとりあえず上がってくださいな。」
どうやら、御飯も頂けるようだ。大家さん、お手伝いいたします。
「あらあら、それじゃあお願いしますね。」
ちなみに、奥で覗いていた人たちは、
台所へ行く途中、松さんと篝さんがこそっと会話しているのを聞いてしまったが、篝さんもどうやらセキレイのようだ。ついでに羽化していないセキレイは俺ともう一人いるらしい。篝さんは自分のことをなりそこないと言っていたが、どういうことなのだろうか…
月海さんがメイド服に着替えていた。よく似合ってはいるが、これから何をする気だろうか。ちなみに、203号室に住むうずめさんとやらの持ち物らしい。後で挨拶する必要があるとして、そんなもん持っている人とお近づきになるのは大丈夫だろうか?
どうやら着替えたのは買い物のお手伝いをするためらしい。ひらひらした月海さんの服では動きづらいだろうからと結ちゃん。いや、メイド服も大差ないよ…
M.B.Iの上限なしのマネーカードを出してお金はここからと月海さんが文句を言っていたが、このカードではここの家賃は払えんらしい。ていうか、そんなマネーカード、俺もらってないんだけど…
佐橋君の隣の席で食事をする権利につられ、結ちゃんと月海さんがダッシュで買い物に出かけて行った。大家さんは佐橋君がモテモテと評していたが、彼女たちが単純なだけではないだろうか。てか、ご飯の支度は買い物からなんですか?
「いえいえ、明日以降分の買い物ですよ。では、黒宮さん一緒にご飯を作りましょうか。」
そうですよね〜。明日以降のですよね〜。とりあえず、さっさと料理を作り上げよう。瀬尾さんも待っているだろうし。
その後、料理の手際が良いと大家さんに褒められ、料理も完成してみんなで食卓を囲んだ。まぁ、調理師免許を持っていたぐらいだからな、これくらいできないと。ちなみに、お買い物レースは結ちゃんが勝ち、佐橋君にあーんしようと頑張っていた。
瀬尾さんも美味しかったと言って満足したようである。三人で帰って行った。ついでにアルバイトを紹介してもらった。深夜で一回一万円以上のやつを。さすがなんでも屋、顔が広いようである。
あと、この出雲荘は一日二食の月五万円のアパートだそうだ。晩御飯の支度を手伝うことを条件に、月三万円にまでまけてもらえた。大家さん本当にありがとうございます。
とりあえず、204号室を貰い、風呂にも入って、布団を敷いた。いや〜、久々の布団ですよ。畳もいい匂いだし、虫も気にせず寝られます。
今日は色々あって疲れたが、心配事がかなり解消されたと思う。葦牙とは何かに始まり、セキレイの目的、セキレイの闘い方、寝床にバイト、ご飯まで。てか、自分の葦牙を見つけることと自分がどういったセキレイなのかについて以外、全部解決している。万歳。今日で運を使い切っていないことを祈りつつ、俺は布団に潜り込んだ。
おやすみ〜。
次回も一週間以内に…