ネメシスの修理も上手くいかない中、神綺は轟アズマが別の悩みを抱えていることに気が付く。
そう、邪仙に何かを吹き込まれて、アズマと敵対してしまっている白蓮のことである。
白蓮は頑固な性格ゆえに普通に説得するだけでは上手くいかないであろうとアズマは神綺に告げられてしまった。
そこで彼女が提案したのは弾幕勝負をすること。神綺いわく、想いを込めた弾幕は相手の心すら動かすらしいとのこと(不良二人が河川敷でタイマンの殴り合いの喧嘩の末に、友情を深めるという事例を例えに出して)。
だが、実力差が大きすぎる。アズマはネメシスの修理の傍らで、神綺の修行を受けることに。
修行の末にアズマは並みの魔法使い並みに体内に大量の魔力を宿す体質であるものの、それを一気に放出する術を持たないという事が判明。
魔力を消費することの出来るアールバイパーに搭乗した上での魔力の収束の修行をしていると、地上から魔理沙が襲撃してきた。
どうやら霊夢からアズマがとんでもないことを計画していると聞かされたらしいが……
騒ぎを聞きつけて早苗達も戦闘の行く末を見守っている。神綺さんに手出し無用と言われているようで、こちらに上がってくる気配はない。いや、それでいい。彼女とは、霧雨魔理沙とは俺一人で決着をつけなくてはならない。
思えば前に魔理沙とはネメシスをめぐって激突していた。今回もネメシスが関連するところがまた因縁深い。
いよいよ戦闘が開始される。そんな中、俺はこんなことを考えていた。
どうしていつも俺はパワーもスピードも拮抗している筈の魔理沙に負けてきたのか。幽香さんのアドバイスを思い出す。確か魔力の効率的な流れを意識せずに攻撃を放つからどうしてもその分で火力にロスが発生するから……だったな。
これだけオプションを装備しているのだから、決してパワーでは負けていない筈だ。流れ、流れ……。
「悪いけど、こっちも遊んでいる暇はないんだ。あんな泣きべそかいてる霊夢を見ていたらな、こっちもハラワタが煮えくり返りそうなんだぜ!」
スッとミニ八卦炉を取り出すと何の前触れもなく、レーザーを放つ。かなりの弾速だが、アールバイパーの機動力をもってすれば回避は容易だ。だが、連発してくるので止まることが出来ない。仕方なく武装をハンターに換装すると、逃げ惑いながら魔理沙にチクチクとダメージを与えていく。
「ええいチョコマカと……。三度、私のパワーに屈するといい! 恋符『マスター……」
来たか! 両手でミニ八卦炉を構えたかと思うとそれが激しく発光し始めた。それを確認した俺も機体を魔理沙に向けて、オプション達を高速回転させる。
「
魔力をアールバイパーに集中させ、銀翼が青いオーラで包まれる。こちらが仕掛ける直前に魔理沙はマスタースパークを放ってきた。
「……『αビーム』!」
遅れることコンマ数秒、蒼い光線が白い光線とぶつかり合う。パワーとパワーのぶつかり合い。勝った方が、負けた方を飲み込んで突き進んでいく。
本能的に魔理沙も何が起きているのかを察知したのか、雄たけびを上げながらマスタースパークに追加で魔力を送り込んでいるようだ。もちろん、それは俺も同じ。
「うおぉぉぉぉ!」
拮抗していたビーム合戦であったが、わずかにマスタースパークが細くなった気がした。
俺がそれに気が付いた頃には白い光線はみるみる勢いを失っていき、αビームが勢いを増して魔理沙に迫っていく。
「俺の勝ちだ! 霧雨魔理沙、自慢のパワーとやらで屈する気分はどうだ?」
それでも諦めきれない魔理沙はもう1本マスタースパークを放つ。
「恋心『ダブルスパーク』!」
だが、無意味だ。慌ててもう1本マスタースパークを放ったところで、最初のマスタースパークの威力を得たαビームに勝てる道理はない。一緒にばら撒かれる星型の弾幕ごとαビームは喰らっていき、さらに勢力を増していく。
「無駄だ。余計に自分の首を絞めることになるぜ?」
2本目のマスタースパークもその力を吸い取られ、4倍ほどに太くなったαビームがそのまま魔理沙を貫く。やったぞ! 元々マスタースパークよりもパワーのあったαビームが更に自らのマスタースパーク2発分のパワーを増したのだ。ひとたまりもない筈である。
光が収まると、跡形もなく消し飛んでいたのが分かる。死体も残らず吹き飛んだのだろうか? 向こうから手を出してきたとはいえ、ちょっとやりすぎたか?
いや、全然そんなことなかった。悠々と魔界の空をホウキで飛行している魔女がいるではないか。
「馬鹿な、あれだけの火力を喰らって無事な筈がない」
「あんなノロすぎるビーム、わざわざ撃ち合う必要ないって気が付いたんだぜ」
しまった、パワーで打ち勝てないと悟って、あの場を離脱していたんだ。確かにαビームは光学兵器にしては速度がだいぶ遅い。被弾する前に逃げることも魔理沙の機動力なら可能だろう。折角の火力も当たらなければ意味がない。
「さて、お前の手の内も明かされたことだし、反撃と行くか。轟アズマ、私のパワーがこの程度だと思うなよ? ここは魔力もたっぷりあるし、最大最強、とっておきの『アレ』が使えるぜ」
三度ミニ八卦炉を両手で構え始める魔理沙。またマスタースパークか? だが、あの異様な自信は何だ?
二重三重に八卦炉を中心に魔方陣が描かれる。そして俺がサンダーソードを放つときのようにバチバチと魔力がスパークを起こし、そして空気を揺るがしていた。ヤバい、アレからは何かとてつもなく恐ろしいものを感じる。
「魔砲『ファイナルスパーク』!」
トレーサーの役目をする細い光線がアールバイパーめがけて照射される。慌ててその場から離脱すると、そこには先程の巨大化したαビームに負けない太さを持った白いレーザーが発射されたのだ。危うくかすってしまうところだったが、どうにか回避できた。
だが、様子がおかしい。光線が傾いてこちらに向かってくるのだ。馬鹿な、マスタースパーク級の高火力の技は、あふれ出るエネルギーの制御で精いっぱいでこんなに自由に振り回せるものではない。
俺も「重銀符『サンダーソード』」を使うからその辺りのことは分かる。オーバーウェポン状態のレイディアントソードは俺には振り回すことが出来ない。
ではアレは何だ? 恐らくはマスタースパーク以上の火力を誇る光学兵器。とても振り回せるような代物ではない筈だが、確かの俺の目の前でビームは薙ぎ払うように、俺を狙うようにその照射方向を変えてきている。それは紛れもない事実だ。
どういう事かと魔理沙を観察していると……。
「分かったぞ、一緒に放っている星型の弾幕か!」
よく見るとファイナルスパークと一緒に星型の弾幕を放射状に放っているのだ。あれ一つ一つも撃つたびに反動があるタイプの弾だった場合、それぞれの星型弾の出力や角度を微妙に調節すれば、自らの体を回転させるくらいは可能だろう。そうやって角度を変えてきたんだ。
もちろんファイナルスパークを撃ち終わればそんな面倒なことをせずに的確に俺に狙いを定めてくる。迫る星型弾をレイディアントソードで斬り伏せていると、次の大技が飛んできた。
あんなのを何度も撃ち込まれたら、ひとたまりもない。もう一度αビームで押し返そうと画策するが……。
「クソッ、魔力の回復が間に合っていないか……」
いいや落ち着け俺。ここで神綺さんから学んだことが活きてくるのだから。魔力の豊富な空間、俺は先程のように背中に翼が出来て、そこから魔力を取り入れるようにイメージをする。
「なんだって!? その羽は……」
出来た、あれほど苦労していたのに切羽詰っていたからか、発想を少し変えることでスンナリと出来てしまった。何もないところに翼を生やそうとするから上手くいかないのだ。だが、俺は一人ではない。アールバイパーもまたそうだ。オプションという頼れる味方がついている。
オプション達がアールバイパーの後ろに縦に3つ並び、いつものオレンジ色の魔力のオーラではなくて、コウモリのような翼の形をした白いオーラを纏っている。今はオプションが3つなので合わせて6枚の羽根が展開されている。
そしてディスプレイを見ると新たなオプションのフォーメーションであることを表示していた。
『WIDE OPTION』
ワイドオプション。アールバイパーを後ろから取り囲むようなフォーメーションである。今は縦に銀翼を包み込むように配置されているようだ。恐らく魔理沙から見ると俺の後ろに縦三つに羽が並んでいるように見えている筈である。とすればあの驚愕っぷりも納得である。まさに神綺さんの羽そのもののようにその翼を広げているのだから。
「アズマちゃん、遂にできたのね! そう、その羽は空気中の魔力を効率的に吸収して銀翼に蓄積させるわ」
後ろで俺の意思とは関係なく、6枚の羽根が微妙に角度を変えている。白い羽根をよく見るとまるで血管のような紋章のような印が中心、つまりオプション本体に直結しており、魔力を流し込んでいるのが分かる。溜めこむたびに純白の羽は禍々しい紫色へ変色し、印も赤黒く目立つようになった。見てくれだけじゃないぞ、本当に神綺さんの羽みたいだ!
「あの魔界神と同じ翼……。なんだかヤバいぞ、コイツを地上に出したら大変なことになる!」
再びファイナルスパークの構えを取る白黒の魔法使い。だが、今度は避けることなどしない。フォーメーションをローリングに変更すると、神綺さんの翼のようなオーラは虚空に消える。
「ならばこちらもαビームで対抗する!」
再び始まるビーム合戦。だが、今度は魔理沙の方が優勢だ。みるみる青いビームが勢いを失っていく。恐らくは全身全霊のスペルだろう。流石に魔力では勝てないか。いや、足りない魔力は魔界の空気から……。
俺は再びワイドフォーメーションを取り、魔力を溜めこもうと画策する。だが、勢いを増したファイナルスパークを前にそれは焼け石に水であった。
まずい、喰らうっ……! 俺はビームの撃ち合いをやめてとっさに回避行動を取った。翼型のオーラがファイナルスパークを受ける。
「ガハァッ!?」
なんだ? 背中をもぎ取られるような強烈な衝撃が襲った。例えるならむき出しの痛覚をそのまま握りつぶされるかのような強烈な痛み。思わず俺は背中を確認するが何ともなっていない。
「大丈夫、アズマちゃん? それよりもファイナルスパークを受けた翼を見て」
言われるがままに翼を確認すると、片方の翼だけが紫色に変色していた。もしかして魔力の塊である弾幕を受けることで魔力を回復させたというのだろうか?
「その翼は魔力を取り入れるもの。理屈では確かに魔力を用いた弾幕を翼に受ければアズマちゃんの魔力も回復するわ。だけど、忘れないで。貴方は魔力を溜めすぎると……!」
そういうことか。弾幕を嗜む少女達は時にはわざと敵弾幕に接近することがある。もちろん当たりにいっているのではなくギリギリで弾幕をかする「グレイズ」というのを狙っているらしく、ギリギリをかすることでテンションを上げたり、当たっていないアピールをして相手をイラつかせたりするらしいが、アールバイパーには何故かそれが不可能であった。
だが、神綺さんの羽を装備することで俺にも似たようなことが出来るようになった。しかも魔力を回復させるだなんて嬉しすぎるオマケつきだ。
もちろん、神綺さんに忠告されたように、魔力の溜めすぎは俺の身を滅ぼすことに繋がる。闇雲に魔力を蓄えればいいわけではないのがまた難しいところだ。
「ちょっと外したけど、今度こそど真ん中に命中させるぜ。喰らえっ、正真正銘の最後のファイナルスパーク!」
これで何度目だろうか? ミニ八卦炉が激しく発光し、周囲の空気を揺るがしている。αビームで迎撃するか? いや、そんなことをしても先程と結果は一緒だ。
どうすればいい? あれだけの高火力のスペル、並大抵の火力でどうにかなるものではない。というかαビームが負けた時点で正面から突破するのは無理って話。では背後から攻撃するか? いや、それもダメだ。星型弾は魔理沙の空中制御にも使用できるほどの反動を持つ、つまりそれだけ火力の高い攻撃。ファイナルスパークから逃げながら星型弾を対処するとなると防戦一方になってしまう。
考えろ、何かヒントがある筈だ。神綺さんは言っていた、教わった通りにやればいいと……。そしてあんな膨大な魔力を消費するであろうファイナルスパークを連発できる魔理沙もおかしい。何故そんなことが出来るのか? 貯蔵できる魔力は神綺さんに並の魔法使い並みと言われた俺と大差はない筈。
「つまり、魔理沙も空気中の魔力を取り込んでいる?」
そう、どうやっているかは知らないが、ファイナルスパークを放つ前に魔理沙は魔力を吸い込んでいる筈なのだ。そして吸引力が最も上がるのはあの極太レーザーが何かに当たり、そちらに一気に魔力が流れ込む瞬間。そうでなければあんな長時間のレーザーを放つ魔力が続くはずがないのだ。その一瞬だ、その刹那にわずかな隙が出来る。
「分かったぞ、俺がファイナルスパークを喰らう寸前にαビームを撃ち込めば……」
だが、魔理沙はいつ仕掛けてくる? それが全く読めない。いや、ここで魔力の流れを意識する、アールバイパーでも読み取れないようなわずかな魔力の流れを感じることが出来れば。
俺は魔理沙に向き合いながら、ゆっくりと深呼吸をし、空間の流れに意識を集中させた。今もバチバチと八卦炉に力が収束している。
…………
……
…
こ、この音は!? 今八卦炉からのスパーク音に紛れて何か違うものが聞こえたぞ。この音は魔理沙の心音だ。あの大技を仕掛けるべく、溜めこんだ魔力を八卦炉に流し込む音だ。目を閉じて俺は音だけに集中する。雑音の中、わずかに聞こえた赤い鼓動を聞き逃さないように。
コン、コン、コン……と心音が3度。今だっ!
「全身全霊の『αビーム』!」
八卦炉から白い光が爆ぜる寸前、俺はαビームを放った。ほぼ同時にファイナルスパークが放たれる。
打ち勝てっ……!
……………………
…………
……
ファイナルスパークの直撃を受けるまさにその時、光を切り裂くように銀翼から金色の光線が放たれたのだ。金色がファイナルスパークを切り裂きさらに輝きを増していく。
「これは……、ふははは! 決まったぞ、これぞ『バーストカウンター(※1)』!」
魔力の流れが逆転する。魔理沙がアールバイパー目がけて放った全身全霊のファイナルスパークは、その魔力の流れを反転させて発射した本人、つまり魔理沙を襲う。
「うわぁぁぁぁ!!」
跨っていたホウキが小さく爆発したかと思うと白黒の魔法使いは黒煙を上げながら墜落していった。
「勝った、勝ったぞ……! ついに魔理沙に勝ったぞぉぉぉーーー!!」
何度も辛酸を舐めさせられた魔理沙を遂に倒すことが出来た。俺は両手を上げて雄たけびをあげる。それが落ち着くと、墜落した先まで降りて魔理沙の様子を見るが、彼女は納得がいっていないようであった。
「いったい何があったんだよ……。ファイナルスパークを撃ち込んだと思ったら逆に私が撃たれていたなんて。催眠術か? 超スピードか? まさか咲夜みたいに時間を止めたってわけじゃないだろう?」
今も悔しそうに地面を拳で叩いている白黒の魔法使い。いまだに敗れたことを認めたくないようである。
「ちくしょう、霊夢の無念を晴らそうと思ったのに……」
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ダライアスバーストに登場したテクニック。
敵のバーストに当たる直前に自分もバーストを発射すると成立。
より強力な金色のバーストを発射できる。
金色のバーストは敵のバーストを無力化してしまうぞ!