東方銀翼伝 ~超時空戦闘機が幻想入り~   作:命人

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ここまでのあらすじ

「博麗霊夢」を出し抜き、無理やり魔界に突入したという知らせを聞きつけ、何かよからぬことを企んでいるに違いないと「霧雨魔理沙」がパンデモニウムまで襲撃してくる。

 これを迎え撃つのは轟アズマと彼の相棒である「アールバイパー」。
しかしパワーではどうしても魔理沙に競り勝つことが出来ず、どうにかマスタースパークは退けるものの、オプション3つの不完全なαビームでは魔理沙の大技「魔砲『ファイナルスパーク』」の火力に押されてしまう。

 火力がある上に細かい制御も可能なこの最大最強の技を前に三度アールバイパーは屈してしまうと思ったその時、アズマは魔理沙も自分と同じく魔界の空気から魔力を取り込んでいることを発見する。そう、向こうもいっぱいいっぱいだったのだ。

 アールバイパーはオプションから神綺の羽を象ったオーラを展開し、空気中の魔力を集めていく。そして魔理沙のファイナルスパークを喰らい、その魔力が一気に自分に流れ込む瞬間を狙い、アズマはαビームを発射するべくトリガーを引く。

 魔力の流れが逆転したことにより「バーストカウンター」が成立。魔理沙自慢のパワーが全て金色のバーストビームとして自分自身に返り焼き尽くす。そう、遂にアズマは雪辱を晴らすことが出来たのだ。

 その後、アズマが魔界に向かった本当の目的を聞くと、魔理沙は神綺に人形復活のアイデアを提案、それが功を奏してネメシスは90回目の儀式にて遂に復活を遂げたのだ。

 改良されたネメシスを手に、アズマは地上へ戻る。

 今もなおアズマに敵意をむき出しにする白蓮の暴走を止めるために……!


第23話 ~アズマ VS 白蓮 余儀なき戦い~

 睨み合うこと数分間。いや、もしかしたら数分だったのかもしれないし、わずか数秒だったのかもしれないが、今の俺にはそれを知る由もない。

 

 確かなのはただ一つ。この時間がたとえ1秒だけだったとしても、まるで永遠のように長く感じられたという事だ。

 

 明確な敵意、それもあまりに強大な力を前にコクピット内に「WARNING!」とアラートが鳴り響く。今回はそれだけではない。今の状況をアールバイパーの人工知能と思しきものが察しているか、その下に「NO REFUGE(回避不能)」とも記されている。ああ分かっている。とうに覚悟は出来ている。

 

 そして「その時」は唐突にやって来た。同時だったのかもしれない。アールバイパーが白蓮に突っ込むのと、同じく白蓮が俺に突撃するのは。

 

 白蓮は手にする金剛杵から光の刃を展開し、斬りつけてくる。負けじとこちらもレイディアントソードを展開して応戦。青色と金色の刃が幾度となくぶつかり合い、光を散らしていく。剣術そのものは妖夢ほどではないとはいえ、白蓮の場合は純粋にパワーが桁違いだ。どうにか致命的な一撃を防いでいるものの、明らかに俺の方が劣勢。このままでは押し切られてしまう。

 

 近距離戦が不利と見ると、乱暴にレイディアントソードで白蓮を軽く突き飛ばし、宙返り。一気に距離を取った後、オプション4つを高速回転させる。

 

「ならばこれならどうだっ! 重光龍『ドラゴンレーザー』!」

 

 光の点にすぎないオプションの光が連なって高速回転することで、光の線となり風切り音も甲高い龍の咆哮のようなものに変わっていく。そうして生まれ出でた光の龍が白蓮へと喰らい付く。

 

 かなりの大技なのでオプションを一度格納して魔力の回復を待たねばならないが、火力も高く追尾性も高いこの光の龍ならそんなコストに見合った活躍をしてくれる筈だろう。

 

「超人『聖白蓮』!」

 

 いいや、そんな甘い話ではなかった。彼女には身体強化の魔法があった。先程の剣術でも恐らくその魔法を使っていたのだろう。今度はその力でスピードを限界まで上げたらしい。

 

 ジグザグに飛び回り、ドラゴンレーザーを振り切っていく。しかもただ回避しているだけでなく通った先に弾を残してそれらがゆっくりと広がっていくのだ。まさに攻防一体。一方のこちらは大技を繰り出した直後でオプションへの魔力供給に手一杯であり、まともに動くことも出来ない。

 

 ゆっくりと広がる弾がこちらにまで迫ってきてもアールバイパーは回避行動がとれずにいた。このままでは被弾する……! そう観念した矢先、1つのオプションが勢いよく銀翼から飛び出していった。あれはゆっくり霊夢の!

 

「むーしゃむーしゃ! これっぽっちの弾幕、オヤツにもならないもんね」

 

 そうだった。俺達のオプションは(1つを除き)ただの兵器ではない。そしてゆっくり霊夢には弾幕を食べてしまう能力があった。その勇気を称えて俺が「白鈴『大食い勇者アレックス』」と名付けたスペルである。

 

 どうにか俺が動けるようになるまでの時間を稼ぐことが出来たが、劣勢であることには変わりない。魔神経巻をブワッと広げた白蓮は紫色に光る蝶をこちらを囲い込むように飛ばし始める。そちらに翻弄されているとその弾幕の隙間をまるで瞬間移動するかのように白蓮が近づいてきた。

 

 あくまで接近戦でカタをつけるつもりらしい。確かにレイディアントソードやリフレックスリングくらいしか近接技のないアールバイパーだし、弾幕もゆっくり霊夢が食べてしまうとなれば必然的にこうなってしまう。

 

 だが、あまりに速すぎるのだ。先程の「超人『聖白蓮』」の時もそうであったが、ここまで素早く動かれるとハンターのようなホーミング系の兵装が役に立たない。

 

 狙いも定まらないうちに俺とゆっくり霊夢の目の前にまで白蓮の接近を許してしまった。再び光の刃を振りかざして一撃を放つ……と思ったが、どういうわけか振り下ろす直前で白蓮の動きがわずかに鈍る。かつての仲間に引導を渡すのに躊躇したのか? いいや、だとしたら最初に刃を重ねた時にはそういった雰囲気は感じなかった。あの時と違うものといえば……。

 

「そこを……どいてください。異変とは関係のない貴女まで傷つけてしまう」

 

 そうか、ゆっくり霊夢を巻き添えにしたくないのか。こういった隙を使うのは正直気が引けるのだが、相手はそうも言ってられない実力の持ち主である。トリガーを引きグラビティバレットを発射。そのまま距離を取る。

 

 ゆっくり霊夢を連れながら距離を離すと再びグラビティバレット。小型ブラックホールが白蓮の視界を奪う。ここで……。

 

「フォトントーピード!」

 

 光を散らしながら直進するミサイルを撃ち出す。視界を奪った白蓮にこれを避ける術はない。次々と着弾して爆発を引き起こす。モウモウと煙が上がる中、激しく動く影が一つ。やったかどうかすら確認する間もなく彼女はこちらに向かって跳躍。

 

「ちっ! 禁術『オーバーレイド・オーバーウェポン』!」

 

 ゆっくり霊夢の魔力を一気にオーバーウェポン用のエネルギーに変換。通常のレイディアントソードで太刀打ちできないのなら、オーバーウェポンを用いたサンダーソードで対抗する他ない。

 

 ポッド、ネメシス、そしてコンパクから魔力を吸い上げると、限界まで溜め込んだそれを突き出した青い剣に集束させる。バチバチと銀翼と剣がスパークし始める。

 

「サンダー……ソード!」

 

 そのデタラメな暴力をまともに制御できる筈もなく、まるでレーザーのように青白い刀身が伸びる。もっと引き付けてから使った方が効果的だったのだろうが、この禁術は俺の体にもアールバイパーにも高い負担がかかる。充填即発射しか選択肢はない。

 

 それでも三重に強化されたオーバーウェポンの火力はすさまじく、白蓮も直撃こそしなかったが大きく吹き飛ばされ、洞窟の壁に思いきり叩きつけられる。その衝撃で天井から落石。白蓮がその下敷きとなる。

 

 勝負あったな……。まずは白蓮を落ち着かせて誤解を解かなくてはならない。俺は白蓮を救うためにリフレックスリングを構えながら彼女が埋まっているであろう瓦礫の山に近づく。

 

「今引っ張り出してやる。ゆけっ、逆回転リフレックスリング!」

 

 が、それがまずかった。今思えば限界まで重ねがけしたオーバーウェポンを使ったとはいえ、クリーンヒットしなかった攻撃であの白蓮を倒せる筈がなかったのだ。

 

 白蓮が生き埋めになったであろう場所が黄金色に輝き始める。そこにリフレックスリングを差し込んで白蓮を掴み上げると、その光の源が彼女本人であることに気付く。そしてこの時点で既に俺は手遅れだったと……。

 

「隙を見せましたね? 今ですっ、天符『大日如来の輝き』」

 

 あまりに穏やかなスペル発動宣言。俺がサンダーソードを当てて白蓮を倒したと思い込んでいたその時、確かに俺の心には隙が生まれていた。まさにその時を見計らい、白蓮はカウンターを仕掛けてきたのだ。

 

 手を合わせた白蓮から放射状に放たれた後光。神々しさと力強さを兼ね揃えた光の線はその一つ一つが強大な魔力で作られているようだ。

 

 まずい、この距離でこれだけの光、かわせるはずがない……! このままなすすべもなく弾幕をモロに受けてしまった。

 

 後光は洞窟をも強烈に照らし、そしてその壁も天井も吹き飛ばしてしまった。俺のサンダーソードでも洞窟を揺らすのが限界だったというのに、そのはるか上を行く火力を俺に見せつけたのだ。

 

「さすがは轟アズマ。この私に一撃を浴びせることになるとは……。やはり一筋縄ではいかぬ相手。更に身体強化を施します!」

 

 いつの間にか外は夜明けが近づいているのか、東の空が白みかけている。呪文を詠唱し、更に自らの肉体を強化させる白蓮は魔人経巻の七色に光輝き、神々しくも脅威的であった。

 

 だが、それ以上に心配なのは、ゆっくり霊夢とはぐれてしまったことだ。他のオプションは禁術の為に魔力が枯渇していたのでアールバイパーに格納していたが、健気に弾幕を食べてサポートをしてきたゆっくり霊夢は洞窟が崩落するときに見失ってしまったのだ。

 

「ゆっくり霊夢、大丈夫かっ!?」

 

 白蓮が更に身体強化を施すのを妨害するという手も残されていたのだが、これ以上オプションを失うなんてことはしたくない。いや、正確にはネメシスと同じような辛い目に遭わせるわけにはいかない。

 

「ネメシス、コンパク! もう動けるか? もし動けるのなら一緒にゆっくり霊夢を探してほしい」

 

 辛うじて動く程度に魔力が回復した二つのオプションを射出して捜索を手伝わせる。

 

 俺自身も瓦礫をショットで破壊しつつ、どこかで生き埋めになっているかもしれないゆっくり霊夢を探していたのだが、その間にとうとう白蓮の身体強化を許してしまったのだ。今も人命救助(人じゃなくてゆっくりだけど)にいそしむ俺の背部を白蓮は容赦なく光の剣で切りつけてきた。

 

「あがぁっ!?」

 

 咄嗟にレイディアントソードを取り出すも、白蓮は凄まじい動きで俺を翻弄し四方八方から打撃、斬撃、そして弾幕で痛めつける。

 

「仲間の心配より……」

 

 やっと白蓮の太刀筋が見えた! まさに懇親に一撃を思わせる大ぶりな動き。アレをまともに喰らったら致命傷は免れないだろう。俺はレイディアントソードを構えてそれを受け止める。

 

「自分の心配をしてはどうですっ!?」

 

 重力をも味方につけた上部からの斬撃をどうにか青い刃で受け止める。ギリギリ間に合った! だが今の白蓮は強化されたスピードの他に、元々脅威的だったパワーすらも強化されているらしく、剣で受け止めようにもどんどん押しやられてしまい、とうとう地面に機体が押し付けられてしまう。このままでは斬られるのが先か、地面と挟まれて押し潰されるのが先か……。

 

「ご忠告ありがとう、白蓮さん。だけど俺は知っている。あんたは俺の仲間には手を出さない」

 

 それはゆっくり霊夢を前に攻撃の手が鈍った白蓮を見たからだ。元を辿れば上海人形に半霊(っぽい何か)に饅頭の妖怪。いずれもアールバイパーと違って外の世界の技術とは何ら関係のない存在だ。この俺さえ居なくなれば幻想郷の脅威にはなり得ない。白蓮はそう考えているのだろう。だから安心して俺はネメシス達に捜索の手伝いを任せられた。

 

「た、確かにあの子たちはアズマさんを倒した後で寺で引き取ろうとは思っていました。ですが、貴方はここで消えてもらいます! 貴方こそが外の世界から恐ろしい『侵略者』を呼び込む異変の元凶!」

「俺はその『侵略者』を屠ってきた側だぞ! ただの一度もアイツらに加担した覚えはない!」

 

 今も続ける鍔迫り合いであったが、白蓮がさらに力をこめる。ギシギシと銀翼がきしみ始めた。これ以上は機体がもたない!

 

 その矢先、俺の視界にネメシス達が入る。ネメシスとコンパク……コンパクがゆっくり霊夢を抱いている。よし、見つけたか! かなり空が白んでいる。日の出も近いのだろう。よし、随分と時間も稼いだようだし……ここから反撃に出る!

 

「禁術『オーバーレイド・オーバーウェポン』……からの陰陽『アンカーシュート』!」

 

 オプション捜索には使えなかったポッドから魔力を引き出し、逆回転リフレックスリングで白蓮を掴み上げる。

 

「いくら身体強化を施したところで白蓮は白蓮。その重さまでは大きく増やすことが出来ない筈だ!」

 

 今のは不意打ちだったのか、白蓮も反応が出来ていない。よし、このままリングから逃げられる前に振り回して投げ飛ばしてしまおう。

 

「ネメシス! 今から合流する。そこから動くなよ?」

 

 今の白蓮では大してダメージを与えられないだろうが、距離を離せればそれで十分。いや、すぐさま白蓮は地面を蹴って跳躍。凄まじい勢いで距離を詰めてくる。だが俺が向かう先、つまりネメシスが向かう先には……!

 

「うっ!?」

 

 よしっ、今まさに太陽が東の空から顔を出した。その陽光をまともに目にしてしまった白蓮は一瞬動きを止めて目を覆う。その隙に俺はオプション達と合流した。

 

「何度も小癪な手を……! かくなる上は最大最強の大技を……!」

 

 さらに呪文を詠唱すると蓮の花の形をしたオプションを4つ呼び出す。この構えはまさかっ!?

 

「大魔法……『魔神復誦』っ!!」

 

 白蓮本体が、背後に広がる蓮型のオプションが、激しく発光する! あれこそ白蓮の最大最強の大技。対する俺は先程ポッドのオプションの魔力を使い切ってしまったので残るオプションは3つ。

 

「対抗するおつもりですか? その魔力がほとんど残っていない3つのオプションで?」

 

 するに決まっているだろう? しなければ死あるのみ。そして白蓮もまた悲しい嘘に縛られたままだ。ああ大丈夫、魔力は少しあれば十分だ。

 

 だが白蓮は待ってくれない。蓮の花型のオプションから赤いレーザーと青い鱗弾を容赦なく発射し、その光に銀翼が包み込まれてようとしている。

 

 頼む、間に合ってくれ……!

 

 

 

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「さようなら、アズマ……さん」

 

 白蓮の放った「大魔法『魔神復誦』」のおびただしい光に思い切り晒されたアールバイパー。もはやその様子を確認できないほどにまで強烈な光である。

 

「そんなっ、こんな事って。彼女にとっても大切な人の筈なのに、悲しすぎるわ……」

「いくらアールバイパーでもあの火力をモロに浮けたらひとたまりもない。恐らくは亡骸一つ残すことなく……」

 

 圧倒的な力の応酬にただ見届けるしか出来なかった雛とにとりもアズマの死を予感して悲しみにくれていた。

 

 そんな中、光が収まっていく。完膚なきまでに叩きのめされたであろう銀翼。そのケシズミがわずかでも残っていればまだ良い方であるが……?

 

 だが、そこに銀翼の姿はなかった。代わりに紫色の球体がそこにあったのだ。

 

 禍々しい模様の球体は蠢くとゆっくりと広がり始める。朝日を受けて蕾が開花するかのように……!

 

「そ、その姿はっ!?」

 

 バサっと6枚の翼を大きく広げるは銀翼。これこそが轟アズマが魔界で会得した……!

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