しかも戦いの最中、洞窟が崩落し、ゆっくり霊夢とはぐれてしまう。
洞窟が崩落した後も、激しい戦いは続き、次第に追い詰められていく轟アズマ。
一瞬のスキを突いてはぐれたゆっくり霊夢を回収して反撃に出ようとする。しかし万全な状態の白蓮に対して、轟アズマに残されたのは魔力が不十分なオプションが3つのみであった……。
どうにかオプションを全て揃えるも、もはや魔力はほとんど残っておらず、白蓮の魔神復誦に正面から対抗する術はもはや残されていなかった。
そう、魔神復誦ばりの強力な攻撃をすることが出来ない状態。だが、分の悪い賭けにはなったが防御する手段は持ち合わせている事も意味していたのだ。
「魔操術『魔界神の大翼』……! この翼に見覚えがあるか? いいや、ある筈だな」
魔神復誦を喰らうまさにその寸前、俺は稼働できる3つのオプションを機体の後ろに縦方向に3つ並べて神綺さんの羽を再現したオーラを展開したのだ。
予想通り恐ろしい程の魔力を含んでいたらしい白蓮の弾幕を吸収してその羽は禍々しいほどに紫色に変色していた。
そしてその過剰なまでの魔力はアールバイパーに、そして俺自身にも牙をむく。
「ぐっ、とはいえ俺もいっぱいいっぱいではあるんだが……」
両腕に魔人経巻型の痣が浮き出て激しい痛みを発する。バイパーのディスプレイも七色に光る魔人経巻の模様が浮かび上がる。
『You got new……ガガガ……』
今までにない激しいノイズまじりのシステムボイスに俺は思わず耳を塞ぐ。駄目だ、神綺さんの羽で魔力を防いだはいいものの、俺の体……人間の肉体ではこれだけの魔力を受け入れる事は出来ないっ……!
「ちくちょう……!」
激しい頭痛と息切れに喘ぎながらも俺はどうにか意識を繋ぐ。アールバイパーが何か新たな兵装を手に入れたらしいというのに、この俺が動けなくては……!
「どうやら防御で精いっぱいだったようですね。今度こそ終わりです! 再び……大魔法『魔神復誦』!」
やはり、白蓮はまだ余裕しゃくしゃくと言ったところか。再びレーザーが来るっ! 今度こそおしまいか……!
「いや、こんなところで終われるかっ! 動けっ、俺の体! 俺は白蓮さんを……悲しい嘘に縛られた彼女を助けたいっ!」
俺の叫びに呼応するかのようにアールバイパーとそのオプションが激しく発光する。直後、魔神復誦のレーザーが銀翼を貫いた。
「あああっ……!」
口をその手で押さえむせび泣く厄神様、見てられないと両目を覆う河童。両手を組み安否を案ずる早苗さん……。あれ、俺はその姿を見ている。見えているということは……!
「そんなっ……どうして!?」
俺をあのレーザーから守ってくれたのはフォースフィールドであった。だが、俺の知っている青白いものでも輝夜のサラマンダーシールドを借りて展開した赤いものでもなかった。
それは紫色をしていたのだ。ただの紫色ではない。揺らめくような紫色は後ろに向かうと黄金色に変わり、そしてキラキラと燐光を散らしているのだ。
コクピットにも異常が見られた。その壁面には無数の魔人経巻の模様が照らされており、見上げるとその模様が左右に流れているのが分かる。
そしてこの異変が何であるのか、ディスプレイが示してくれていた。
『ガガ……ガ……。
Variable
Arsenal,
Jet and
Resistance for
Assault.
Earl Viper...VAJRA MODE!!』
バジュ……ラ? システムボイスは確かに「バジュラ」と呼称していた。それって金剛杵のことか? 後ろを見るとまるで金色をした蓮の花、その蕾ような形をしたオーラを纏ったオプション達が俺を取り囲むような陣形を取っている。これはまさしく……。
「俺だけじゃないんだ、命蓮寺の皆、魔界の神綺さん、その他大勢の意思が俺を突き動かしている。貴女を救うために! 皆で笑い合えた命蓮寺の日常を取り戻すためにっ!」
まるで自らが白蓮になったかのような姿を見せるアールバイパー。かつては「銀星『レイディアント・スターソード』」の名が刻まれていたものの、白蓮との絆が絶たれて失われていた「!」マークの部分、そこにはまた別の新たな兵装の名が刻まれていた。
……これだっ、これならいける!
人里から少し離れた崩れ落ちた洞穴跡。そこに雷のようなものが落ちた。いや、落ちたのではないし、このおびただしい光も雷のものではない。そもそも今は晴天だ。
……互いの全力がぶつかり合う。その魔力の余波が光の柱となり空へと打ち上げられたのだ。当然周囲を襲う衝撃も尋常なものではない。衝撃波が早苗さん達を吹き飛ばさん勢いで拡散する。
「こ、これは……!? あの銀翼とやらはここまでの潜在能力を秘めていたのか?」
「それよりも飛行しているのはどちらか1人。あのシルエットはまさしく……!」
あまりの出来事にただ見ているしかなかった神子と布都が今になって騒いでいた。
そう、最後まで空にいたのは俺であった。白蓮は力を失い墜落していく。俺は白蓮さんに勝ったのだ。いや、俺だけじゃない。神綺さんに魔理沙、雛に早苗さんに幽香さん、色々な人の想いを乗せた俺の魔神復誦が白蓮の凍り付いた心に打ち勝ったのだ!
だが勝利の余韻に浸っている時間はなかった。白蓮が地上に叩きつけられそうになっているではないか。
こちらも満身創痍であったが、機体を急降下させて重力に引き寄せられる白蓮を追いかける。バジュラモードとやらはいつの間にか解除されていた。
「届いてくれっ、逆回転リフレックスリング!」
ヨーヨーのように突き出されたリング状のトラクタービームが魔法使いの腰を掴み、そのまま引き寄せた。が、アールバイパーもいよいよ限界だったらしくこちらも墜落していく。どうにか操縦桿を操り、軟着陸させる。
「白蓮っ、白蓮っ!」
足がもつれる中、コクピットから飛び降りると、ぐったりとする白蓮に駆け寄る。
俺が近寄ることに気付いたのか、ゆっくりと両目を開いた。その柔らかな瞳からはもはや敵意は感じない。
「感じましたよ。アズマさんの、そして貴方が出会ってきた皆さんの気持ち。バイド化したんじゃないかって心配だった、青娥さんが言うように本当は侵略者で私のことなんて全然考えていないとも思った……。貴方が傍にいなかったから……不安な気持ちを抱いてしまった……!」
そうか、俺がずっと白蓮に会えずに辛い思いをしていたように、彼女もまた同じ気持ちを抱いていたのか。
「白蓮っ、俺はここにいる。片時も貴女のことを忘れることなんてなかった。命蓮寺を、白蓮を救うために命を張ってきたんだ。こうやって再び抱きしめる瞬間の為に……!」
涙、だが今度は嬉しさからの涙だ。周囲の目など気にせずにただただ再会を喜び抱き合った。
「やっぱりアズマ君の傍には住職サマってのが一番しっくり来るわね。寂しくなるけど……またこれで仕事に集中できるわ」
「どうにかミッションコンプリートですね。お疲れさまでした……」
ねぎらいの言葉をかける厄神様と巫女よりも少し遠目で見ていたのが道教勢。
「私もこうしてはいられないな。すぐに力を付け直してあの二人に追いつかなくては。今度は正々堂々と……な」
「太子様には我らがついてます。力を合わせればすぐに追いつけますよ!」
口々に祝福やねぎらいの、はたまた己を鼓舞する言葉をかけていく皆。雛達や神子だけでなく、そんな俺達を祝福するかのように他の誰かが拍手しているようだ。パチパチパチと頭上から手を叩く音が……頭上だと?
俺達を見届けているのは今は皆地上にいる。早苗に神子達に雛。これで間違いないはず。
まさかと思いつつ俺は頭上に目をやると……!
「ぱちぱちぱちぱち……。離れ離れの二人がようやく再会。とっても泣けますわね」
とんでもない「邪悪」が高見の見物をしていたのだ。俺や命蓮寺の皆だけじゃない。自らの操り人形にしたイボルブバイパーを、そんな銀翼に滅茶苦茶にされた永遠亭や太陽の畑を、そして仲間であるはずの神子が率いる道教組すら不幸に陥れた……いや、それだけじゃない。ネメシスのことも酷く傷つけてきた、まさに諸悪の根源。
スイッチが入ったかのようにアドレナリンが分泌される。俺は空を見上げて吼えた。
「青娥ぁー、許さねぇぞ! お前のせいでどれだけの人が不幸になった!?」
クスクスと笑いながらゆったりと地上に降り立つ。
「あらあら、そんなに声を荒げないで頂戴な。結果的にアールバイパーはとーっても強くなりました♪ これは嬉しい事ではなくて? もちろん、嬉しいのはわたくしも一緒……。だってわたくしのお仲間ですものね」
「黙れ! 俺が貴様の仲間だと? ふざけるなっ、寝言は眠ってから言え!」
それだけ啖呵を切ると、不意に青娥は俺につかみかかってきた。
「寝言? 寝言をほざいているのは貴方の方ではなくて? 銀翼のない貴方がわたくしに打ち勝つなんて、あり得ませんわ。そこの悪の大王サマは力を使い果たしてぐったりしているし、もう少し喧嘩を売るタイミングを考えるべきではありませんか……ねぇ!」
どす黒い球体を至近距離から撃ち込もうとする。いかん、銀翼のない俺はただの人間。これはひとたまりもない……。
万事休すの所、助け舟を出したのは早苗であった。低空を高速で移動させると至近距離で電撃を浴びせたのだ。
「ゼロ距離からのフリーレンジ、こんなの喰らってはひとたまりもない筈」
衝撃で狙いが外れ、ついでに俺も吹き飛ばされた。雛やにとりも遅れて戦闘態勢を取る。こうしてはいられない! 俺も負けじと銀翼に乗り込み応戦する。
「あくまで敵対するのですね。ですが轟アズマ、わたくしに牙を向けたこと、いずれ後悔することになるでしょう」
あんなこと言っているが多勢に無勢、青娥はかなり追い詰められている筈だ。
「ネメシスちゃんのこと、忘れたわけではないわよね?」
「こんなことの為に私に取り入っていたとはゾッとする。和を乱す者には相応の報いを受けて貰おう!」
雛と神子にも詰め寄られた青娥は案の定、すかさず簪で地面に穴をあけて逃げてしまった。
「逃がしたかっ!?」
いや、一度逃げてからの不意打ちだろう。追いつめられた奴が考え付きそうな作戦だ。俺は魔力レーダーに注目し、青娥の動きを追う。地中に姿を隠したつもりなのだろうがこちらからは彼女の魔力が丸見えである。その魔力が動きを止めて、その大きさを増していく。
「出てくるぞっ、雛の目の前だ!」
レーダーが指示した場所が一瞬だけ地面が盛り上がると再び青娥が現れる。雛は回転しながら弾幕を放ち、これを怯ませる。
「よしっ、これで終わりにしよう。行けるかネメシス?」
無言でコクリと頷く上海人形。俺はニヤリと笑みを浮かべつつ速度を上げて青娥に近づく。よしっ、今だっ。スッと俺は懐からスペルカードを取り出した。
「いい返事だ。行くぞっ! 操術『オプションシュート』!」
オレンジ色の光の弾丸となったネメシスは唸りを上げながら青娥に突っ込んでいく。無防備になった腹に強烈な一撃をお見舞いした。
「ぐはっ!」
だが、これでは終わらない。何度も折り返し体当たりを仕掛けていく。
「このわたくしがっ、この青娥が、この……」
「ネメシス、あらん限りの魔力を爆発させるんだ!」
これが最後の突撃、ネメシスは青娥にしがみつくと身に宿していた魔力を一気に大爆発させた。
「せいががあぁぁーーーー!!!」
拡散する魔力の波はさすがの邪仙の体も耐えられなかったのか、バラバラとはじけ飛び、そして溶けていった。幾多もの心を手玉に取った悪女の最期はあまりに呆気ないものであったのだ。
アールバイパーから降り立ち、魔力が切れて地面に転がっているネメシスを屈んで優しく回収すると、爆発で抉れ、今も煙がモウモウと立ち込める地面に目をやる。異変の元凶を完膚なきまでに撃破したというのに、なんだか気分がスッキリしない。
「終わった……な」
それでも異変は終わったのだ。幾多もの犠牲を支払いつつも、俺は何もかもを元通りにしたのだ。
全てが終わり、俺は全身から力が抜けていくのを感じた。ああ、意識が薄れていく……。
次に目覚めたのは命蓮寺の部屋の一つであった。懐かしい天井、懐かしい香り、そして懐かしい温もり……。
意識を失い倒れた俺の体を支え命蓮寺まで運び、そして一緒の布団で横になっている。それは他でもない白蓮であった。
「アズマさん、貴方はまたも自分の居場所を勝ち取ったのですね。自ら腕を振るい、多くの味方を導きながら」
そう、俺は取り戻した。名誉を、命蓮寺を、そして何より白蓮を……。終わったのだ、孤独に打ちひしがれる戦いはもう終わったのだ。だけど……
「いや、終わらせない。俺はこれからも歩んでいく」
戦いこそ終われど、この幻想郷で俺はまだまだ生きていく。大切な人の傍で、俺は銀翼に乗り込み幻想の世界を謳歌する。
とは言え、今は非常に疲れてしまった。だからもう少し寝てても……いいよね? 俺は今も微笑む白蓮に抱かれるように横になると再び眠りの世界へと落ちていった……。
白蓮戦は原作ではゲームブック風になっており、その結果によってさまざまな結末を迎えていました。
中にはαビームを使ってしまい、白蓮を完全に消滅させてしまうというエンドまで……。
作中で幽香がわざわざ魔法使いに使うと大変なことになるだろうと口にしてたのは本来はこのシーンでαビームを使わないようにするヒントだったり……。