東方銀翼伝 ~超時空戦闘機が幻想入り~   作:命人

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ここまでのあらすじ

人間の里で口裂け女になり切る秦こころと対峙した矢先、ハクタク化した慧音に乱入され、そのまま彼女と戦闘を行う。

咄嗟に思いついたオカルト技「ナゴヤアタック」でどうにかこれを撃破し、オカルトボールを2つ入手するも、次のレーダーに表示された箇所は4つ。これでは数字が合わない。

何が起きているのかと訝しみつつ、次は守矢神社に向かうのだが……


第3話 ~山の要塞にて企むヤツら~

 人間の里を離れ、守矢神社のある妖怪の山へと向かう。まだ日の出まで時間があるようであり、鬱蒼とした森の中では月明りもほとんど届かない。

 

「当然と言っては当然ですが、何にも見えませんね」

 

 夜の幻想郷の光源といえば星々の弱弱しい灯りと、太陽の光を反射する月の光のみである。今宵は満月とはいえその光の強さは太陽に遠く及ばない。

 

「他に灯りといえば弾幕とかふよふよ飛んでるUFOとか……」

「ああっ、なるほど。弾幕ですね。特にUFOなんかは赤青緑と激しく輝いて……ってアズマさんっ!」

 

 迂闊であった。白蓮と言葉を交わしているうちに俺達は無数の光るUFOに取り囲まれてしまっていたのだ。

 

「こんな事するのは、もしかしなくても……ぬえですね」

「恐らく暴れている動機はさっきのお面の妖怪と一緒だろう。都市伝説が広まるなかでより効率的に人間を脅かすことが出来るってね」

 

 俺はギンと前方を睨み付ける。妖怪の山の麓、奇妙な左右非対称の羽を生やした妖怪が多数のUFOを引き連れていた。

 

「あの……出来ればでいいんですが、うちの子なのでなるべく危害を加えないで無力化出来ないでしょうか?」

 

 ふむ、ではオカルト技を試してみるか。いい具合に相手もUFOにインベーダーだし。

 

 さてと、危害を加えないで無力化させるには相手の戦意を奪えばいい。手っ取り早いのはさっき習得したばかりのオカルト技で逆にビビらせることだろう。

 

 こちらが臨戦態勢になったのを確認するや否や、ぬえは色とりどりのUFOをけしかけてきた。一つ一つの性能は大したことなく、時折正面に弾を吐き出す程度であるが、その物量が凄まじくまるで壁のように立ちはだかっていたのだ。それらがジリジリと左右に動きながら詰め寄ってくる。人海戦術でこちらを圧殺するつもりなのだろう。

 

 だが恐れることは何もない。俺は一気にUFOどもの前に躍り出ると、オカルト技の発動を宣言する。

 

「ナゴヤアタック!」

 

 思っていた通りだ。至近距離からの射撃はことごとくすり抜けて行ってしまう。避けたのを確認した後で強烈なツインレーザーをお見舞いしていく。そうやって迅速に左右に動き回りながらUFOを全滅させると焦ったぬえの目の前に今度は躍り出る。

 

 当然ながら弾幕を張って迎撃しようとするも至近距離に張り付いた俺を弾幕で撃ち落とすことは出来ない。

 

「なんで、なんで当たらないのよ~!」

 

 涙目になりながらも弾幕を発し続けるぬえに俺は一言。

 

「都市伝説の異変で混乱しているところに乗じているようだが、ちょっとばかりイタズラが過ぎたようだな。こともあろうに聖様に危害を加えようとするとは……。オカルトってぇのはこうやって使うんだよ。まあ、それを今更知ったところで……お前はここで終わりだがな!」

 

 さっきUFOを木端微塵にした時のようにアールバイパーの銃口を突き付けながら凄む。脅かすつもりが逆に脅かされたぬえは虹色に光るUFOに跨ると「ピエー!」と悲鳴を上げながらジグザグに飛行しながら逃げていった。

 

「白蓮、約束通りぬえには傷一つ付けなかったぞ。彼女はオカルトボールを持っていなかったようだからあれでいいだろう。……まあ、彼女の存在自体がオカルトっぽいが」

 

 思わぬ邪魔が入ったが、その後は順調に妖怪の山の麓までたどり着くことが出来た。オカルトレーダーに目をやるとやはりこの山の頂上で大きな反応を示しているのが分かる。

 

 木々が鬱蒼と茂る樹海を抜けていると、地上で何かがキラリと光るのを見つけた。

 

「大変っ! 人間が迷いこんでいます!」

 

 目を凝らしていた白蓮が光の正体を見抜いていた。なんだとっ、それは放っておくわけにはいかない。白蓮の後を追うように俺もバイパーを着陸させると今も足首をさすっている人間に手を差し伸べた。

 

 近くでよく見ると和服に身を包んだ婦人であることが分かる。そしてキラリと光ったものの正体が彼女のかけていた大きな眼鏡であることも。どうやらこの格好で山道に入り、足をくじいて動けなくなっていたようだ。

 

「アイタタタ……。日の出とともに守矢神社にお参りに向かおうとしたらこのザマじゃ。お主らが見つけてくれなければ今頃ワシは妖怪のエサといったところじゃろうか」

 

 随分と無茶なことをするご婦人だ。挫いた足も気になるし、一度人里に返してお医者さんに診て貰ったほうがいいだろう。俺はアールバイパーのキャノピーを開き、彼女を乗せる準備を始める。

 

「いいえ、私が人里まで送りますよ。アズマさんには他にやるべきことがあるでしょう?」

 

 白蓮の提案に俺は頷いた。そうだった、俺にはオカルトボールを集めて消えた星の謎を解き明かすという使命があるのだ。

 

「ほほほぅ、よく見たら命蓮寺の住職サマじゃあないか。まさか神様ではなく仏様に助けてもらうとはのぉ。ではお言葉に甘えて背負っておくれ」

 

 ころころと笑う大きな眼鏡の目立つご婦人は白蓮におぶられて人里へと消えていった。

 

 さて、俺もオカルトボールの調査を続けなくては!

 

 妖怪の山もここまで進んでいくといよいよ天狗の縄張りである。迂闊に入り込むと哨戒の白狼天狗にすぐに見つかって囲まれてしまう。そう、今まさに俺が置かれているこの状態のように……。

 

「くせものー! もう逃げられないぞ」

「見るからに怪しげな鳥の妖怪め、ここで成敗してくれる!」

 

 そうやって引くも進むも出来ずに困っていると、上空から真っ黒い翼が近づいてきた。あの快活な声は忘れたくても忘れられない。鴉天狗の射命丸文のものだ。

 

「ストップ、ストーップ! アズマさんは、天狗の里を2度も救ったアズマさんは顔パスだって前に説明しませんでしたか?」

 

 どうやら前にバイド汚染された「クレイジーコア」を撃退したり、天狗の里を壊滅一歩手前まで追い詰めたアールバイパーの偽物「バイオレントバイパー」を撃破したこともあり、鴉天狗達に英雄扱いされているようだ。

 

 あくまで職務に忠実な白狼天狗達は納得がいかないと言わんばかりに文を睨み付けているが、それとは別の方向からやってきたどこか苦虫を噛み潰したような面持ちをした見覚えのある白狼天狗(確か「犬走椛」だったか)がやって来てからはまた状況が一変した。

 

「『天狗の里を未知の侵略者から守り抜いた戦士轟アズマは丁重にもてなせ。追い返したり危害を加えるなどもっての外』って上からの指令です」

 

 よかった、これで無駄な戦闘を行わずに済む。そう胸をなで下ろした俺であった。

 

 手のひらを返したかのように白狼天狗達の態度が変わる。外敵を排除せんとこちらに向けられていた剣や盾は今ではまるで俺達を守るかのように外側に向けられているのだ。

 

 このまま護衛されながら俺達は天狗の里を抜けていく。

 

「ですが、どうして妖怪の山へ?」

 

 盾を構えながら前方の様子に神経を集中させながらも、顔なじみの白狼天狗である椛が俺に話しかけてくる。

 

「紫色の玉を探しているんだ。オカルトボールといって何かしらの異変の元凶になっている。この辺りにあるらしいことまでは分かっているんだが……何か情報はないか?」

 

 そうやって問うてみたが、彼女はボールなど持っていないし、答える声もどこか力がない。

 

「いえ、私は何も。文様やはたて様も奇妙なボールについて調べて回っているそうですが、あまり芳しい結果は残せていないようです。あ、でも……」

 

 何かを続けようとした椛であるが、再び口をつぐんでしまった。オカルトボールの件との関連がないとでも思ったのだろうか。

 

「何か変わったことがあったのか? もしかしたら異変解決の糸口になるかもしれない。どんな情報でもいいから教えてくれ」

 

 真剣なまなざしで俺は彼女の赤い瞳を直視し、情報を乞うた。

 

「わ、分かりました。では……私見たんです。河童達に大きな建物を作らせている山の神様の姿を。そして厳重に梱包された『何か』を運び込むところも見ました。それが貴方達の探しているボールなのかまでは分かりません……」

 

 白狼天狗は非常に目がいい。見間違いという事はないだろう。何かロクでもないことを計画している気がしてならない……。よし、これで次の目的地は決まった。

 

「守矢神社に向かうつもりだったが……予定変更だ。椛、その建物とやらに案内してくれ。これも命蓮寺の本尊を救い出すためだ」

 

 白狼天狗達に導かれて怪しげな建物が俺にも見えるくらいの距離までたどり着いた。椛達が異変にかかわっていないのなら巻き込むわけにはいかない。俺は白狼天狗と別れるまで、しばらく建物の前で息をひそめていた。

 

 あの建物の中から大量のオカルトボールの反応が見られる。そしてよくよく見てみるとそれが増えているように感じるのだ。

 

「まさか、オカルトボールの工場……?」

 

 それじゃあオカルトボールをばら撒いて幻想郷を混乱に陥れた黒幕は……。

 

 こうしてはいられない、すぐに潜入してオカルトボールの生産を止めないと! このまま彼女達の恐ろしい計画を野放しにしていたら取り返しのつかないことになる!

 

 俺は銀翼を最高速度で飛ばし、工場に突っ込もうとした。しかし、上空から攻撃の気配。慌ててアールバイパーを止め、上方からの攻撃に備える。

 

「アズマさん……。まさか貴方が来てしまうとは」

「オカルトボールは人類の手に余るヤバいブツだ。早苗、それを量産することは許されない」

 

 ジリジリと睨み合いが続く。何とか隙をついて早苗さんの後ろにある工場に侵入しなくてはならないが……。

 

「そうです、ヤバいからこそ止まるわけにはいかないのです。私もアズマさんとは戦いたくない。さあ、何も見なかったことにしますからすぐにここから離れてください」

「悪いな、そういうワケにはいかねぇんだ。オカルトボールの異変、そのせいでうちの本尊がどこかに消えてしまった。これ以上お前達を、オカルトボールを放っておいたら更なる惨劇が起こる!」

 

 一瞬の隙、早苗さんが一瞬だけたじろいだその刹那、俺は急発進させ工場へと突っ込んでいった。中枢を破壊して無力化させよう。

 

「あっ……。だから入っちゃダメですってば! こうなっては相手がアズマさんだとしても仕方ありません。東風谷早苗、侵入者を排除します!」

 

 背後からものすごい勢いで大きな魔力が近づいてくる。もしかしなくても戦闘騎(ライディングバイパー)「ガントレット」に乗り込んだ早苗さんだろう。まずい、このままだと追いつかれるぞ。

 

 射程内に入られてはたまったものではない。犬同士の戦いでも戦闘機同士の戦いでも相手に背後を取らせることは非常に致命的であるのだ。加えてこの通路は非常に狭く、逆に背後を取るのも一苦労である。

 

 となればこのまま最高速度で通路を突っ切り、広い場所に出てから体勢を立て直すのが最適解だろう。

 

 グインと速度を上げつつ、背後の敵を邪魔するバリア「菊一文字」を展開する。細かい操縦で手いっぱいなのでこれくらいの抵抗で精いっぱいなのだ。

 

 ぐっ、やはりこちらの手の内を知られているだけあって、菊一文字が大して役に立たない。ビームの隙間をかいくぐられてしまった。ついに早苗さん側からも仕掛けてきた。何の変哲もないオレンジ色のショットであったが、対処法も逃げ道もないこの状況ではかなり危険なものだ。

 

 操縦桿を微妙に傾けながら背後からの銃撃を避けていくが、そちらに気を取られてしまい、右側の翼が壁を激しく擦ってしまう。急激に速度を落としたことによる衝撃に、俺は機体の中で大きく前につんのめった。

 

 一方の早苗さんは速度の落ちたこちらを狙うべく、四角錐のワイヤーフレームを向けてきた。いかん、これは「フリーレンジ」の前兆……!

 

「やむを得ないかっ。『ナゴヤアタック』!」

 

 瞬間、電撃が銀翼を襲うがスルリとそれらをすり抜け、早苗さんの背後に回ることに成功した。そこからショットガンを浴びせる。

 

しかしこちらのオカルト技を予定よりも早くお披露目することになってしまったのは痛手である。近距離からのフリーレンジなどまともに受けたらたまったものではないとはいえ、相手は外の世界でSTGに慣れ親しんできた早苗さんである。恐らくはこの技の性質をすぐに見抜いてしまっただろう。

 

 事実、今度は俺が早苗さんを追いかける形になっているものの、再び俺の背後を取ろうとするのではなく、グングンと距離を離していくではないか。追いつかんと速度を上げるが、鋭い青色のショットが行く手を遮った。

 

 しまった、ガントレットには背後を攻撃する手段がたくさんあるではないか。フリーレンジやハンターもそうだが、こういった細長い空間では単純にあの「バックショット」が極めて有効。見た目は貧弱だが、今被弾すれば致命的である。

 

 やはり、気付いているぞ。このオカルト技の性質に。そうでなければ距離を取って攻撃しようなどとは思わない筈だ。外界のシューティングゲームに精通した早苗さんは敵に回すとここまで脅威となるのだ。

 

 こちらに不利な状況はこれだけではない。早苗さんが通った後の通路からこちらを遮断するべくあらゆる方向からシャッターが下りてくるのだ。慌てて閉じているのか、完全に道が閉ざされることはないものの、ただでさえ狭い通路がさらに通りにくくなるのは問題である。

 

 そう、ドッグファイトとしては敵に後ろを取られるのはまずいのだが、早苗さんが前にいる状態は更にマズい。こうなれば距離を詰めなくてはならない。

 

「集中……集中……」

 

 焦る心を落ち着かせんとするも、機体が壁とこすれるたびに焦燥感が増していく。火花を散らしながらひたすら前へ前へ突き進んでいくと、ようやく早苗さんに追いついてきた。

 

「逆回転リフレックスリング!」

 

 標的をガッチリとホールドしておけば距離を取られることはあるまい。だが、近距離でのガントレットはより危険である。いつの間にかナゴヤアタックの効力は切れていたようだが、それでも……いやそれだからこそフリーレンジが怖い。

 

「やはり、貴方の都市伝説はシューティングゲームが由来なのですね。『名古屋撃ち』とはまた渋いチョイスだと思いますよ」

 

 チッ、やっぱりバレていたか。こちらは距離を離されないようにジグザグに動き回りながらレイディアントソードを振り回し、早苗さんは逃げようとしながら四角錐のワイヤーフレームを振り回してくる。

 

 そうしてもつれ合っているうちにこの先の通路が3つに分かれているのを発見した。

 

 俺が向かうべきはこの忌まわしきオカルトボール工場の中枢たる場所。どこがそこに繋がっているのか、それともどこを通っても繋がっているのかは見当がつかない。

 

 しかし俺はこのいずれかのルートを進まなくてはならないのだ。

 

 左側は何やら紫色のクリスタルがひしめいている洞窟のようなエリア。オカルトボールの原料となる鉱石を培養したり採掘したりしているところだろうか。

 

 中央はあちこちから炎が噴き出ているエリア。採掘した鉱石を高熱をもって加工する場所なのだろうか。

 

 右側は大きな植物に侵食されかけているエリアのようだが……んっ、何かオカルトボールをはめ込まれた大きな影が蠢いていたぞ。

 

 咄嗟に俺が視線を向けた先、そこには大小さまざまなクリスタルがひしめく洞窟のようなエリアがあった。恐らくはオカルトボールの原料となるクリスタルを採掘、あるいは人工的に培養する場所なのだろう。

 

 透き通ったクリスタルは光学兵器の軌道を不規則に変えてしまうだろうし、更には浮遊したクリスタルも行く手を阻んでいる。早苗さんもそちらへ逃げていった。よし、追いかけよう!




途中で分岐する3つのエリアはそれぞれ「グラディウス外伝」の3面、「R-TYPE III」の4面、そして「グラディウスIII」の8面(SFC版だと6面)になります。
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