東方銀翼伝 ~超時空戦闘機が幻想入り~   作:命人

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 地底のバイドは根絶し、イボルブバイパーを悪用してアールバイパーの名を貶めていた青娥の野望も潰えた。

 オカルトボールをめぐる一騒動も落ち着き、幻想郷に平和な時が流れる……筈だった。

 今もまた運命の歯車が狂い始めている。少しずつ、誰にも気付かれぬままに……。



東方銀翼伝ep6 ∀.C.E.プロローグ
∀.C.E.プロローグ ~龍神との邂逅~


 地上から遥か高く、雷雲の中で「それ」はゆっくりと蠢いた。黒い雲に紛れた「それ」は轟音と共に落ちる稲妻による一瞬の光でのみ姿を確認できる。

 

 細長い、細長い物体であった。いや、厳密には節々が細くなっており、まるで機械の蛇のように無数の関節を持っているものだと思われる。濃い紫色の長い体が特徴的であったが、頭頂部のトサカだけは黄金色に輝いていた。その威厳に満ちた姿はまるで龍であった。

 

 再び雷鳴が轟いた。その巨大な空飛ぶ龍と対峙するのは一人の少女である。赤く長いヒゲをなびかせた真っ黒い帽子をかぶり、フリルのついた薄赤色とも薄桃色とも取れる羽衣を身に纏う淑女。黒のロングスカートではその中身は分からないが、細長い脚を持っているのであろう。

 

 彼女の名は「永江衣玖」。雷雲の中を泳ぎ、とある天人に仕えるリュウグウノツカイの妖怪である。

 

「ま、まさか龍神様? いえ、そんな筈は……。では貴方は何者? 貴方からはこの幻想郷とは違う空気で満たされている」

 

 紫色の龍はよく見るとあちこちにキズを残している。その動きも機敏さを微塵にも感じられないものであり、手負いであることが分かった。

 

「怯えているのですね、追手から逃れてきたと言ったところでしょうか? ふふっ、驚きました? 貴方の醸し出す空気がそう私に語り掛けてくれたのです」

 

 眼前の少女が敵ではないと悟ったのか、紫の龍は衣玖に寄り添うようにとぐろを巻いた。そして再び落雷。今度は別の姿を映し出していた。

 

 巨大なカジキマグロ……いやミツクリザメだろうか? とにかく奴は頭部に鋭利なツノを持った空飛ぶ物体であった。敵意を持ってこちらに向かう影を見て、淑女はフウとため息を一つ。フリルの付いた羽衣が彼女の腕に巻き付き始める。先端が尖がる様な形で。それはまるでドリルのようであった。

 

「あれが恐らくは追手なのですね。いいでしょう、この辺りは龍神様や私の大切な人が平穏を生きる場所。その空を脅かすのならば、私は全力をもってして抵抗するまで。……いざっ!」

 

 一際大きな雷が落ちた。雷雲の中、二つの勢力が正面からぶつかり合う……!

 

 ミツクリザメ型の戦艦、その目玉からおびただしい弾幕が発せられる。丸い形のもの、細長いもの。戦闘が始まるや否や、紫色の龍は前方に躍り出ると、衣玖を庇うようにとぐろを巻き始める。

 

 その隙間から衣玖はドリル状に巻いた羽衣を手に、ミツクリザメの胴体に突っ込み、そのどてっ腹に手痛い一撃を喰らわせた。怯むミツクリザメ。だが、自慢の角を紫の龍に突き出しつつ、突き飛ばす。

 

 完全に孤立した衣玖に狙いを定めるミツクリザメ型戦艦であったが、この後意外な行動を取り始めたのだ。

 

 頭部と胴体、そして尾っぽが割れ始めると、彼女を三角形に取り囲むように単独で行動を始める。

 

「私を拘束するつもりでしょうか?」

 

 言葉はないが、すぐに行動として返事が返ってくる。3つに分離した敵戦艦はそれぞれを繋ぐように電撃を放ち、逃げ惑う衣玖を狙い撃つように弾を放つ。紫の龍が外から突撃するが、びくともしない。

 

「やはり、そういうことでしたか。あちらの大きい体を持った龍ならば確かに有効な攻撃だったでしょう。ですが、貴方の攻撃は幻想郷では通用しない。ええ、ここで流行っている『遊び』にあまりにそっくりなのです」

 

 静かに挑発する衣玖。それに腹を立てたのか、再び3つの分離体は合体をすると。その頭部を赤色の光らせ始めた。間髪入れずに赤色のビームが衣玖を覆わんと迫ってくる。

 

「この威圧的なビームは……っ! 速いっ、避けきれない!」

 

 だが、被弾するよりも早く紫色の影が、再び躍り出ると、その長い体を盾に極太レーザーを受け止めてしまった。紫色の身体がえぐれ、中身が少し見えてしまっている。

 

 ミツクリザメ型戦艦は仕留め損ねたことに腹を立てたようで、再び赤いビームを放つ。しかし、今度は紫の龍も何か考えがあるようで、砲台を敵に向け始めた。

 

「この音は……心臓の鼓動?」

 

 立て続けに「コン、コン、コン」と甲高い音が響く。それは恐らく紫の龍に流れる血潮の音。そしてミツクリザメ型戦艦の放つ赤いビームが直撃する寸前に、まるで槍のように鋭い強烈な光、つまりビームが爆ぜたのだ。

 

 赤いビームを切り裂いたは金色に光るビーム。金色の槍がミツクリザメを正面から貫き、そして爆散させた。

 

 追手である敵戦艦を轟沈させたことを確認すると紫色の龍は力なく墜落していく。今のビーム攻撃で力を使い果たしてしまったのだろう。それを追いかける衣玖。何に巻き込まれてしまったのか、何が起きようとしているのか、見定める為に……。

 

 鳴り響くは雷鳴ではなく地響き。あれだけの巨体が地面に落ちたのである。その衝撃は計り知れない。

 

 衣玖が降り立つもその巨体の姿は見えない……かと思ったら傍の洞穴の中で瞳が光っていた。

 

「そんなに怯えなくても、もう安全ですよ」

 

 一緒に洞窟の中に入っていくと、紫の龍の頭部に寄り掛かる。真っ暗闇な筈であったが、その金色のトサカが目立っており、さらに眼光もあるので、洞穴の中は意外と明るい。衣玖はそんな龍の頬を優しく撫でる。

 

「そうだ、そういえば怪我をしていたのですね」

 

 今も苦しげな唸り声を上げる紫の龍。そういえば先の戦いで胴体が抉れてしまっていたことを思い出すと、衣玖は懐から小さな果実を取り出した。

 

「天界の名物、桃ですよっ……というより桃しかないんですけどね。総領娘様が私の為にってくれたものなのですが、食べ続けると身体能力が上がるとかなんとか。お口に合うか分かりませんが、怪我にも効くかもしれません」

 

 その巨体にはあまりに小さな果実。だが、臆することなく衣玖は龍の口の中に桃を投げ入れる。ゆっくりと咀嚼。幾分苦しげな声が和らいだ気がした。

 

「気に入っていただけました? 足りないようでしたら総領娘様に頼んでまた貰ってきます。えっ、総領娘様ですか? ちょっとヤンチャですが、本当はとっても優しい子でして……。ああ、天界についての説明もしなきゃいけませんね。天界はとても安らかで平和な所で、だから総領娘様にとってはちょっと退屈らしいのですが、このような平穏ってのは実はかけがえのないもので……」

 

 長々と語りかける少女に紫の龍は嫌がるそぶりを見せず、まるで耳を傾けるようにしっかりと聞きこんでいるように見えた。

 

 そんな中、紫の龍も心を許したのか、あちら側から今度は語り掛けてくれた。しかし、その内容は驚愕するべきものであったのだ。

 

「えっ……? 今何と言いました? ええ、もっと詳しく」

 

 突然紫の龍が先程とは全く別の声質で衣玖に語り掛けてきたのだ。その声は唸り声にしか聞こえないものの、衣玖にはそれが何なのかどうやら理解できているようだ。

 

 驚きながらも、すべてを聞き終えた後……。

 

「なんと……! それでは新たな異変がこの幻想郷を!? 先の魚の形をした戦艦はその前触れですって!?」

 

 危機が迫りつつある。こんな時に衣玖が取る行動は一つ。

 

「伝えなくては……。迫りくる脅威に対抗するべく力が必要。私達だけでは太刀打ちできない。巫女や魔法使いに伝えなくては!」

 

 一人で再び雷雲轟く幻想の地を飛び回る。しかし、回れども回れども、霊夢の姿は見つからない。それでも魔理沙との接触には成功したようだが、果たして真剣に受け止めたのかは疑わしいと言ったところ。

 

「博麗の巫女がどこにもいない。こんなにも異変が進んでいるというのに。嫌な予感がするわね。他に頼れるところといえば……命蓮寺の轟アズマくらい!」

 

 使命に燃えるリュウグウノツカイは今も偽りの平和を謳歌した幻想郷を縦横無尽に飛び回る。幻想郷に迫りつつある脅威を伝えるべく……!




※こちらは東方銀翼伝の原作にあたる作品に対して「エンダー・ヴァリー」氏が投稿した非公式の次回予告となります(それに対して筆者がビッグコアとして返答をしているという形式です)。
本人からの許可をいただいたので、この場をお借りして(一部修正して)掲載しております。



次回予告(偽)
衣玖「早くアズマに異変が迫っていることを伝えなければ……。」
妖夢「アイツに頼むんですか?実力はともかく中身はロリコンのド変態だからオススメしませんよ。私で良ければ話を聞きましょうか?」
咲夜「見る目が腐ってるわね。あんな幻想郷の癌みたいな奴に頼んだ所で、事態は悪化する一方でどうにもならないわ。あんなのに頼るくらい困ってるなら私が話を聞きましょうか?」
衣玖「彼は一体何をしてきたんですかぁ!?」

うどんげ「次回、東方銀翼伝∀CE第1話!そして、どうにもならなくなってこの私に泣きつくんですね。全く仕方ない。話だけなら…」
衣玖「こっちは何故か調子に乗ってるし……」



ビッグコア「相変わらず自機組からの印象が最悪……。衣玖さんは外の世界に関する異変だと分かっていたので、外来人である主人公を頼ろうとしているのです。その前に霊夢や魔理沙とコンタクトを取ろうとしたのは……やっぱりあの二人は特別なんでしょうね」
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