偽銀翼異変も落ち着いて平和な幻想郷。
平和ではあるが退屈な時間が流れる中、命蓮寺で居候を始めた「マミゾウ」は都市伝説と弾幕ごっこを組み合わせた新しい遊びで金儲けを企んでいるようだ。
だが、そんな平和な日々も少しずつ狂いが生じてくる。
永江衣玖は予言じみた不吉なことを言い出すためだけにアズマの前に姿を現し、存在しない筈のオカルトボールからはどこかから救いを求めるテレパシーが流れる。
そしてそんな幻想郷の様子を笑いながら眺める影の存在も……。
色々と気になることもあり寝付きも悪かったが、そろそろ起きる時間だ。起床して朝食を済ませ、一息つく頃にマミゾウが俺を呼びつけてくる。その筈だった。
「今日はお休みじゃ。ワシは他に何か面白い商売に繋がるものを探してくる。あんな調子では、この商売もそろそろ引き上げ時かもしれんからのぅ」
どうやら久しぶりに自由な日が来るようだ。マミゾウの言う新しい商売とやらも物珍しさを重視する弾幕ごっこでなければアールバイパーを駆り出す理由はなくなるしこれでようやく羽を伸ばせる。
そうだ、久しぶりに白蓮と過ごすことにしよう。折角仲直りできたのに、何だかんだで慌ただしくて昼に二人きりになる機会というのはなかなか来なかった。
そう思い立った俺は廊下を歩み彼女の部屋を訪ねようとした。
ところが、縁側を歩いていた時に、何やら不可解な大きな力が俺の背後から突っ込んできて、俺は思い切り転倒してしまった。
なんだなんだ? もがいていると真っ黒い羽毛が少し飛び散っているのに気が付いた。天狗か、天狗の仕業か?
しかしその相手は文でもはたてでもなかった。
「お、お前は……!」
ボサボサな黒髪、大きな緑色のリボン。そして胸に光る真紅の八咫烏。地獄鴉のお空のものであった。
「アズマ、アーズマっ♪ やっぱりアズマだー! んにゅ~♪」
本人はこちらに顔をスリスリさせて甘えているつもりなのだろうが、なにぶん相手は核融合を操るパワフルな妖怪。何かのはずみで俺が怪我をしてしまうかもしれない。
「ぐ、ぐるじい……」
ジタバタともがくが、なかなか振り払うことは出来ない。そんな彼女の暴走を止める別の声の存在があった。
「まあ、どうしたのですか? それよりもアズマさんが困っていますよ?」
その一言に我に返った地獄鴉は俺から離れると、にこやかな笑顔であいさつを交わす。
「こんにちは、住職サマ! 今日はね、えっとえっと……なんだっけ?」
必死に思い出そうとウンウン唸る地獄鴉に助け舟を出す白蓮。
「アズマさんに用事があったのではないですか?」
「そう、そうだったわ! ねぇアズマ、今空いてる? 地底に面白いものが出来たから一緒に見に行こうって言おうとしたの!」
折角の申し出だ。無下には出来ないし、その面白いものとやらにも興味がある。
「アズマさん、せっかくのお友達のお誘いですし、行ってきなさいな。私は今日も忙しいので、代わりにお土産をよろしくね♪」
なんだ、白蓮は今日忙しいのか……。
「ええ、何か用意しときますよ。それでお空、その面白いものって何なんだ?」
そう俺がお空に問いかけると、人差し指を下唇にあてながらうーんと唸りつつ空を見上げる。もしかしてまた忘れてしまったのだろうか?
「大丈夫だよ、今度はちゃんと覚えてるよっ! だって今流行のオカルトな感じだもの。あのね、地底に世にも奇妙な黄金の逆さピラミッドが出てきたの。ねっ、不思議でしょう?」
「凄いな、地底でも都市伝説ブームが続いてるんだ……」
前の異変でもこいしが電話を使ったオカルトを持ち出して戦っていたことを思い出す。お空も何かオカルトめいたものに興味を抱いたのだろう。肯定的な感情を抱いたのを知るや否やお空は俺の腕を引っ張り命蓮寺を出ようとする。
「ねっアズマ、はやく行こっ♪」
「待って待って、生身で旧地獄はキツい。ここはアールバイパーに乗ってから……」
その直後であった。ガタガタと地面が揺れ始めたのだ。最初は少し揺れたかな……程度のものであったが、次第に勢いを増していき、遂には立っていられないほどの大きな地震となっていた。俺はお空と一緒にしゃがみ込むと近くの柱にしがみつき、揺れが収まるのを待ち続ける。
「……揺れが収まったようですね。皆さん怪我はありませんか?」
幸いにも倒れるような重たい家具も様々な小物の置かれた棚も傍になかったために怪我らしい怪我はしていない。
「久しぶりに揺れたな」
命蓮寺でも大きな事故が起きていないことを確認すると、今度こそ地底に向かうべくアールバイパーの格納庫へと向かおうとする。……が、異変が起きていた。
「聖様っ、アズマっ、大変です! 人里で……」
一輪のあの慌てようはもしや……。あれだけの大地震だ。どこかで火の手でも上がったに違いない。こんな時に火事にでもなったら大惨事だ。
「聖様もアズマもバケツを持っているようだけど火事じゃないわ。だけど人里の人間が……」
どうやら村人たちが一斉に「迷いの竹林」へと向かっているのだそうだ。怪我人でも出たのだろうか? だが、人里にだって診療所くらいはある。永遠亭に頼るという事はよほどの大怪我でもしたのだろうか?
だがそれでは自力で竹林へ入るのはおかしい。どの道あんなところに土地勘のない者が迷いこんだら下手したら生きて出てこれない。
「白蓮、里の様子を見てくる。お空、すまないがまた今度に……」
「私も行くっ! お仕事早く終われば遊べるもんね♪」
そんなすぐに終わるようなものではないが、まあ邪魔にはならないだろう。むしろ力仕事になってきたら彼女のパワーが役立つはずだ。俺は急ぎ銀翼に乗り込むとお空と一緒に人里へとかっ飛ばした。
程なくして人里に到着。あれだけの大地震があったが、思っていたよりも被害が小さい。少なくとも建物が倒壊している様子は見られないし、火の手が上がっているのも俺の見える範囲では全くなかった。
それではどうして里の人間達は竹林へ向かうのか? というか直接聞けばいいんだ。一輪は妖怪なのであまり人間と話をしにくかったのだろうが、俺はまじりっけなしの人間なので銀翼から降りれば何ら問題はない。
姿を見られると大騒ぎになりそうなお空をアールバイパーの中で留守番させると、俺は村人たちに話を聞いてみる。
「竹林の入り口に何か面白いものがあるらしい」
「なーに言うさ? ありゃ神様だべ。キラッキラしてて綺麗だっていうぞ」
「大きな地震とともに現れたにちげぇねぇ!」
どうやら大地震は迷いの竹林で発生したものらしい。彼らが言うには地震によって何かが出てきたという。みんなそれを確かめにあんな危ない場所へ向かっているんだ。しかし彼らの話ではイマイチ何が起きたのかがつかみきれない。
とにかく俺も迷いの竹林に向かってみよう。停めていた銀翼に再び乗り込むと竹林を目指す。
「な、なんじゃこりゃ~!?」
程なくして俺は竹林で起きた異変を発見した。「それ」はさも当然と言わんばかりに周囲に点在する多くの竹のように地面から生えていたのである。
黄金の光沢の眩しい大きな三角形。いわゆるピラミッドの形をしたものが竹林に忽然と姿を現していたのだ。
「どっひゃぁ……」
恐らくあの大地震で黄金のピラミッドが姿を現したのだろう。傍にいたであろう妹紅は驚きのあまり声を失って尻餅をついていた。この竹林を目指す村人たちはこれを一目見ようとしていたのは明白だ。はっ、こうしてはいられない。迷いの竹林に住まう彼女の力を借りなくてはならないんだ。
「妹紅、人里から多くの人間が迷いの竹林へ入っていった。恐らくそのピラミッドを見ようとしているんだ。このままでは遭難者が出てしまう。追い返すなり道案内するなりで対処をしてほしい」
俺はこの謎の物質の調査をしなくてはならない。妹紅が面倒くさそうに竹林の奥へと入っていくのを確認すると、低空をゆっくりと飛行して妙にツルツルとした黄金の三角形を凝視する。ううむ、特に切れ目や継ぎ目というものはなく綺麗な四角錐である。これだけ近づいてもピラミッドは特に動き出す気配もなく、周囲に何か影響を及ぼしている形跡も見られない。それが逆に不気味であった。
「あーっ!」
「おわぁっ!? なんだよ、急に大声出して?」
背後からの大声でいきなりつんのめってしまう。全体を見られるようにもっと距離を取ってくれとお願いされたので、言われたとおりに遠くからピラミッドを眺める。それをしげしげと観察するお空であった。
「やっぱりそうだ。地底に出てきた逆さピラミッドにそっくりなの!」
「これは逆さではなくて正しい向きのピラミッドだけどな」
ひとまずは特に動きもなく不気味ではあるが何か害を及ぼしている感じもないので俺は調査を打ち切ることにした。
一応は警戒するべくアールバイパーに座標を登録した上で命蓮寺に帰ろうとした矢先、事件は起きた。
突如目の前に妹紅が飛び出してきたのだ。飛び出したかと思うと突然爆発を起こし、そして気が付くと俺の真上で浮遊をしていた。リザレクションでもしたのか? だがどうして?
その答えは今も恐ろしげな妹紅の眼光の先にあった。
長い黒髪を持った小柄な少女が宝石のついた木の枝を手にしている。あれは輝夜か。あちらもあちらで敵意むき出しの目つきをしている。どうやらお互いバッタリ出会ってしまい、それで喧嘩になっているのだろう。
「殺す、殺す、殺すっ!」
「死ね、死ね、死ねっ!」
二人とも物騒なことを口にしているが、お互いに蓬莱人。さっきの妹紅を見て分かる通り、死なない……というか死ねない。だからこの殺し合いはいつまでも決着がつかず、どちらかが疲れ果てるまで終わらない。こういうのは巻き込まれる前に足早に立ち去って関わり合いにならないのが定石である。だが、今回ばかりはそうはいかない。
「おい妹紅っ、竹林に残った里の人間を送り帰すんじゃなかったのかよ!」
そう、今も竹林のピラミッドを一目見ようと人里の人間が押し寄せているのだ。妹紅は彼らを人里に案内をしていた筈なのだ。だが、その途中で輝夜と出くわしてしまい、現在に至るといったところだろう。
俺の叫びなど耳に入ってこないらしく、今も周囲の状況にも気が付いていない二人は、狂ったように終わることのない殺し合いを続けていた。
「このままじゃ里の人間も巻き添えを喰らってしまう。俺の手で里に案内しよう!」
さすがに目の前でああやって殺気立った状態でドンパチされたら里の人間達も逃げ惑う。パニックに陥った人間の前に銀翼が降り立ち、散り散りにならないように誘導を始める。
「落ち着いて、落ち着いて! 竹林の出口はこっちです!」
アールバイパーに登録された人里への座標軸を頼りに、頭を抱え中腰になって進む人間達を案内する。
そうやって時折上空まで高度を上げて自分が正しい方向に進んでいるかを目視で確認しながらノロノロと脱出の手伝いをする俺。おっ、竹林の出口が見えてきたぞ。その先で待っていたのは慧音先生であった。人間が迷いの竹林へとどんどん入り込んでしまうので、この入り口で見張っていて里に帰るようにと呼び掛けているようである。
「いったい何が起きているんだ?」
「迷いの竹林に謎のピラミッドが出現。里の人間達がそれを見る為に竹林に入り込んでしまった。それで、妹紅に出口まで連れて行くように頼んだんだが、その途中でどうやら輝夜と出くわして……」
永遠亭の姫様の名前を出した途端、察しがついたらしい慧音はやれやれと額に手を当ててウンザリとする。
「あのバカ……。私は二人を止めるから、アズマは里の人間達を守って……おいっ、後ろ!」
何だ、レーダーが背後にとてつもない大きな魔力を観測。振り向くと今度は輝夜が地面に叩きつけられたらしく、地面を大きく揺るがしていた。そのすぐ傍で里の子供達が逃げ惑っている。
「きゃあっ!」
そしてその地響きで足を取られたのか、一人の女の子がその場で転んでしまったようである。そして上空では鬼のような形相をした妹紅が炎の翼を広げながら輝夜に狙いを定めていた。
「今度こそ死ねぃっ、輝夜! 『蓬莱「凱風快晴-フジヤマヴォルケイノ-」』っ!!」
大きめの弾が輝夜の周囲に降り注ぐ。ドカドカドカと爆風が吹きすさぶ。どうやら着弾後に大きく爆発するタイプの弾幕であり、素早い相手もこれで強引にダメージを与えることが出来るようである。あいつ、本当に何も見えてないらしい。すぐ傍で子供が転んでいるというのに!
そして俺の想定しうる最悪の事態になってしまったのだ。あろうことか、爆弾の一つが里の子供目がけて撃ち出されてしまったのである。声にならない悲鳴を上げる子供。すっかり腰が抜けてしまい、あれでは到底立ち上がれないだろう。
「危ないっ!」
あんなのただの人間、それも小さい子供が喰らったらまず命はない。直撃はもちろん爆風に煽られただけでも致命傷になりかねないだろう。
俺はアールバイパーを急発進させ、リフレックスリングを構え……駄目だ、間に合わない! ならばオーバーウェポンからのブラックホールボンバーで……いや、今からフォーメーションを変えて魔力を収束させるのでは、やはり手遅れになる。だが、人の命がかかわる事態だ。このまま指をくわえて見ているわけにもいかない。こうなったら……!
「禁術『オーバーレイド・オーバーウェポン』!」
一つのオプションから一気に魔力をバイパー本体に移させるこの禁術を行使する他ない。急に血中の魔力濃度が高まり、激しい眩暈と吐き気に襲われる。幸いなのは今回は火力が欲しいわけではないので、重ね掛けしなくて済むという事、つまりこの一段階目で終わるという事である。
それにしたって俺や銀翼にかかる負担は並大抵のものではない。すぐに放たなくては。俺はぼやける視界の中、子供を襲う凶弾に狙いを定める。
「重銀符『ブラックホールボンバー』!」
出力ではなく攻撃範囲の強化されたグラビティバレット、通称「ブラックホールボンバー」が幼い少女の頭上で炸裂すると、弾幕だけを吸い込んで妹紅のスペルカードを無効化した。周囲の安全を確認すると、今度は逆回転リフレックスリングを放ち、腰の抜けてしまった子供を保護、そしてゆっくりと慧音先生に預ける。
「これでもう安心だよ」
「えぐっ……えぐっ……」
無事に助け出した子供の友達が慧音先生の傍に寄ってくる。あとは彼らが彼女の傷ついた心をなだめてくれるだろう。
流石に今ので事の重大さに気が付いたのか、輝夜も妹紅も喧嘩の手を止めたようだ。
「この大馬鹿者がっ! 里の人間に何かがあったらどう責任を取るつもりだったんだ!?」
妹紅と輝夜をその場に正座させると、強烈な頭突きを二人にお見舞いする。思い切り怒鳴られて、二人ともしょげかえっているようだ。
「ご、ごめんなさい……」
「すまない、慧音。ついアツくなっちまって……」
怒鳴り散らす慧音だったが、助けられた子供たちが先生に抱き付くと、表情を和らげる。さっきの女の子の頭を撫でながら続ける。
「まあアズマがいてくれたから、死人も出ずに済んだのは幸いだったが……それより妹紅、里の人間を竹林の出口まで案内する役をほっぽり出しちゃったようじゃないか」
それを指摘されると、妹紅はバツが悪そうに頭を掻き毟る。
「ああ、どうやらそのようだね。それは悪いことをしてしまった。だけど、今になってみるとどうしてあそこまでアツくなっていたのか分からないんだよ。確かに憎きアンチクショウの顔は見たさ」
そう口にすると、視線だけを輝夜に向ける。侮蔑の眼差しを向けられた輝夜はいきなり立ち上がると妹紅に殴りかかろうとする。これではまた喧嘩になってしまう。だが、こういった状況に慣れていたのか、慧音先生が再び大声で制止すると、再び二人とも大人しくなった。
「まったくもぅ、二人とも子供じゃないんだからもう少し堪えないか。それで妹紅、続きを頼む」
平静さを取り戻した妹紅はさらに続ける。
「まあとにかく輝夜を見かけたんだ。だけど普段なら仕事を、それも里の人間を案内している途中で喧嘩なんて仕掛けたりしない」
「蓬莱人や屈強な妖怪ならともかく、普通の人間を私達の戦いに巻き込むのはルール違反だものね。だけどどうしてこんなことになっちゃったのかしら……?」
いやいや、誰だろうと関係ない人を巻き込むなよ……。俺はそう注意したいところであったが、それどころではない情報が出てきたので黙っておく。なんと、そもそも戦いになった原因を二人とも覚えていないというのだから。
「なんだそりゃ? もう頭突きしないから本当のことを教えてくれ」
「うーん……そういえば妹紅の顔を見る前にものすごい強烈な光が一瞬だけ目の前ではじけたような……?」
「そうだったそうだった。私も輝夜の顔を見る前にものすごい光が……」
輝夜達の反応に困惑する慧音先生であったが、それ以上の答えに渋る二人。その反応からもはや偽ってないことは察したようだ。
「まあ昔から犬猿の仲だというし、何か気に食わないことがあったり、何か虫が好かないとかあったんだろう。その『光』ってのが気になるけれど、それよりも随分と怪我人も出ているようだから、今は彼らを助けてあげないと」
こうして俺とお空と輝夜で怪我人を永遠亭に連れて行き、妹紅と慧音でそうでない人たちを人里に送ることになった。
迷いの竹林に散らばった人間達を全員安全な場所に送り終えた頃には既に夕方になってしまっていた。
「あー……一緒に遊びに行くはずだったのに面倒なことに巻き込んじゃってゴメンな」
今の今までお空を連れまわしてしまい、自己嫌悪に陥る俺。
「いいのいいの。なんか楽しかったし、黄金の三角形を一緒に見られたし」
それに対してあっけらかんと答えるお空。夕暮れの中、カラスが鳴きながら飛び去って行くのが見えた。
「あっ、カラスが鳴いたからもう帰るね。また遊ぼっ、アズマ!」
「今度はちゃんとした場所に連れて行ってやるからな」
って、お前もカラスじゃん……。そう思いつつも、俺はお空と互いに軽く拳をぶつけ合い、地獄鴉の少女と別れた。
さて、俺も命蓮寺に戻って今日あったことを白蓮に報告しておくか。竹林に現れた謎のピラミッド、周囲に人間がいてもお構いなしに殺し合いを続けた妹紅と輝夜、そして輝夜が口走った強烈な光……。
それだけではない。衣玖が口にしていた水棲生物が幻想郷を滅亡させるとかいうのも気になるし、オカルトボールの残骸らしき物体が発していたどこかの星のSOSも何か関係があるんだろうか?
何か今までにない大きな異変が、音もなく見えないところで蠢いているのではないだろうか。そんな言いようのない不安感が俺を押し潰そうとしていた。
幻想郷は決して平和ではない。「何か」が音もなく忍び寄っている。日常をぶち壊すような何か大きな災厄がすぐ目の前に迫っている。そのようにしか考えられないのだ。
迷いの竹林が夕闇に包まれる頃、黄金のピラミッドに腰掛ける影が見えた。突然ボウッと松明の光が灯る。
「うーん、途中までは良かったんだけどなぁ。今回はちょっぴり失敗だったかも。まさかあんな邪魔が入り込むなんてね。あたい一人じゃさすがに幻想郷は広すぎるわ。それならば……」
松明の炎が大きくなる。まるで明かりに群がる羽虫のように妖精たちがわらわらと黄金のピラミッドの前に寄ってきた。
「あたいの作戦を邪魔するような不届き者め、アイツの計画はこうやって狂わせるに限るわね」
強烈な光が松明を持つ少女の影を映し出す。ツノがあちこちにねじれ飛び出た奇妙な頭部の影が見える。大きな松明の炎を受け取った妖精たちは狂ったようにキャイキャイと喚き散らしながら、竹林から拡散するようにあちこちに飛び出していく。小さな狂気の炎を携えながら。
「さーあ、妖精達よ、もっとスピード、あげていこうよ!」
それを全て見届けると松明の主もピラミッドからふわりと浮かび上がる。
「イッツ、ルナティックターイム! 狂気の世界へようこそ! きゃは、きゃはははは!!」
自らも何処かへと消えて行ってしまった。再び迷いの竹林は静寂と暗闇に包まれた。しかしこれは嵐の前の静けさというものである……。
※こちらは東方銀翼伝の原作にあたる作品に対して「エンダー・ヴァリー」氏が投稿した非公式の次回予告となります(それに対して筆者がビッグコアとして返答をしているという形式です)。
本人からの許可をいただいたので、この場をお借りして(一部修正して)掲載しております。
次回予告(偽)
輝夜「うーん、酷い目に遭ったわ……」正座中
妹紅「私なんてこれまでもあんまし良い出番ないし踏んだり蹴ったりだ……」正座中
輝夜「それは妹紅がガサツで協調性がないからでしょうに」
妹紅「んだとぉ?そっちだってたまたまアズマに協力できる立場だったからって、基本は引きこもりの癖に調子に乗りやがって!」
輝夜「何ですって!?」
妹紅「やる気かぁ!?」
輝夜「今度こそ決着着けてや」
\ゴッ/ \ゴッ/
慧音「全く反省というものをしないんだから……」
お空「えーっと、次回は東方銀翼伝∀CE第3話だよ。私これからもアズマの手伝いができるといいけど……」
ビッグコア「ああ、それっぽい。それっぽいけど、妹紅と輝夜のやり取りが次回の予告というより第2話のおさらいみたいになってる……」