東方銀翼伝 ~超時空戦闘機が幻想入り~   作:命人

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ここまでのあらすじ

 マミゾウの賭け弾幕ごっこに付き合わされ、引っ張りまわされる毎日だったものの、マミゾウから今日は休みと言われ、久々の休日を楽しもうとする轟アズマ。

 そんなアズマのもとに霊烏路空が遊びにやってきた。どうやら地底でも都市伝説ブームが広がっており、突然現れた地底の「黄金の逆さピラミッド」を見に行こうと誘ってきたのだ。

 ところが地底に向かおうとした矢先、幻想郷で地震が発生。これによる被害は特に見られなかったものの、震源地である迷いの竹林ではお空が見たというピラミッドによく似た物体がせり上がっており、人里の人間達が一目見ようと迷いの竹林へと入り込んでしまうという事態が起きていた。

 妹紅と協力して迷いこんだ里の人間を人里に送るのだが、妹紅は途中でライバルである輝夜と出くわしてしまったらしく、狂ったように殺し合いを始めてしまう(蓬莱人なのでどっちも死なないけれど)。

 このままでは迷いこんだ人間達にも被害が及んでしまう。どうにか慧音先生と協力して二人を止めることが出来たが、妹紅も輝夜もどうして周りに人間がいるのに戦い始めてしまったのかをよく覚えていないのだという。

 唯一の手掛かりは二人の目の前で爆ぜた強烈な光……。

 アズマは新たな異変の前触れなのではないかと警戒しつつお空と別れ、命蓮寺に戻るのであった。


第3話 ~美しき緋の衣~

(アズマがお空と別れた次の日の夕方、霧の湖……)

 

 夕暮れの陽光を乱反射させる水をたたえた霧の湖。昼はその名の通り、濃霧が立ち込めるのだが、それも夕方になると晴れてきてこのように見通しがよくなる。それゆえ、衣玖をハラハラとさせている。彼女の視線の先は湖の水面。目を凝らしてよく見ると紫色の細長い龍がその中を泳いでいるように見えた。

 

 あれから紫の龍と衣玖は更に親睦を深めたようであり、今では衣玖が異変の前兆を知らせに各地に赴く時を除いて常に一緒にいる。紫の龍も優しく接してくれる彼女に心を開いたらしく、色々とコミュニケーションを取っているようだ。

 

「ダーク……ヘリオス? それが貴方の名前なのですか?」

 

 その過程で衣玖はこの紫の龍の名前も知ることになったのだ。相手を知れば知るほど、追手だけではなく、外来人に厳しい態度を取る幻想郷の住民にも見つかるわけにはいかないと悟るのであった。

 

 それで選んだのがこの霧の湖。昼は濃霧で、夜は闇で姿を眩ませることが出来るのだ。

 

 だが今はマズイ。ここも視界の良いタイミングがあるのだ。それが早朝と、この夕方である。

 

「ダークヘリオスさん、夜は闇に紛れることが、昼は霧に紛れることが出来るとはいえ、やはり朝と夕方は厳しいものがありますね。いいですか、今の貴方は湖の蛇です。決して水面から大きくはみ出してはいけませんよ?」

 

 流石にずっと水中にいるのは窮屈らしく、今は衣玖に見張られながら頭部だけひょっこりと出している。どうやらわかさぎ姫と談笑しているようだ。

 

 そう、衣玖がダークヘリオスの潜伏場所に霧の湖を選んだ理由はもう一つあった。それは大人しい妖怪達の手によって設立された「草の根妖怪ネットワーク」の存在。ここ霧の湖にはそのネットワークに所属しているわかさぎ姫の住まう湖でもあったのだ。

 

 衣玖が彼女にこの紫の龍の身の上を話すと、仲間入りを快諾してくれたのだ。今ではすっかり打ち解けている。

 

 太陽はその最後の光を照らしながらさらに沈みゆき、ひとまずはやり過ごせるだろうと安堵の息を漏らす衣玖。じきに夜の帳が降りてきてあの巨体を隠してくれる。

 

 しかし、ダークヘリオスはというと上空を一瞥すると、いきなり湖から飛び出してしまったのだ。

 

「ちょ、ちょっと! もう少しだけ待ってくださいって!」

 

 慌てて制止する衣玖の声を無視して、その紫色の巨体をさらけ出すと、ものすごい速度で衣玖とわかさぎ姫を包み込むようにグルグルととぐろを巻いた。

 

「何のイタズラなのっ? これじゃあ何も見えないわ!」

「隠れなきゃいけないのは私達じゃなくて貴方でしょう!」

 

 そうやって二人がとぐろを巻いたダークヘリオスから脱出しようともがく。その途中、空にまばゆい閃光が走ったのか、ダークヘリオスが覆い隠す「外側」が一瞬だけ光り輝く。まるで光から二人を守る様に。閃光が去るとダークヘリオスも二人を解放し、空を睨みつける。

 

「また別の追手がやってきたのですか? 今の光が?」

 

 黙り込んだまま、ダークヘリオスはグルルと唸り声を上げながら空を睨み付けたままである。

 

 霧の湖を横切った謎の光の正体とは!?

 

 

 

__________________________________________

 

 

 

(同じ頃、命蓮寺では……)

 

 不思議なメッセージに奇妙なピラミッド。妹紅と輝夜を殺し合いに駆り立ててしまった謎の光。俺は白蓮に立て続けに発生する異常事態の報告を行ったが、やはりそれぞれの関連性が見えない。別々の異変なのだろうか?

 

 今は卓を囲んで命蓮寺のメンバーで集まり、この事態について話し合っているところである。雲山はこの場にいないが、それはあちこちで偵察を行っているからだ。その体を限界まで薄め、大きく広げることで広範囲の様子を調べることが出来るのだ。もっとも薄い体ではちょっとした風で飛ばされてしまったり、そもそも雲山が一度にすべての場所を見られるわけではないので(複数の場所を一気に見ることが出来たとしても雲山がこんがらがってしまうだろう。スーパーコンピューターじゃあるまいし……)思っていたよりも効率が良くないのであるが……。

 

「この中で特に緊急性が高いのはその妹紅さんと輝夜さんを戦いに駆り立てた謎の光とやらですね。原因は分かりませんが、これからこの光が各地で発生したら……」

 

 光によって闘争心を煽られた人たちが増えて、衝突を続けていたら最終的には戦争が始まってしまうだろう。ううむと唸っていると、空中で桃色の霧が濃くなってくる。雲山が戻ってきたようだ。

 

「……そう、ありがとう。やっぱり人を狂わせる光ってのは存在するみたいね。人里では一時的に発狂して暴れ回っていた人間の話が出てきたり、小さい松明を持った妖精の群れがあちこちで整列しながら飛んで行ったり……」

 

「あの頭の弱い妖精たちが?」

 

 妖精は本来、統率の取れた行動を取らない。このような動きを見せるのは異変によって興奮しているときか、あるいは誰かの命令を受けて動いているかだ。……いや、奴らが命令を忠実に守るとは考えにくい。誰かに操られている可能性もあるぞ。

 

「ならば人里に向かい発狂した者と謎の光について詳しく聞き込みを……」

 

「待ってアズマ! 奴らの次の目的地なんだけど、雲山が目星をつけてるみたい」

 

 アールバイパー格納庫へと走ろうとする俺を制止したのは一輪。ボソボソと喋る雲親父に耳を傾ける一輪。一通りそれが終わると……。

 

「次の目的地は紅魔館なんじゃないかって。例の妖精が今までにない物量で霧の湖に急接近しているらしいの」

 

 なんだと!? 紅魔館といえば吸血鬼に時間を止めるメイド、大魔法使いの住まう館だ。もしも彼女達が発狂して暴れ始めたら大惨事は免れないだろう。すぐに向かわなくては!

 

「人里の方は囮だ。あっちは大した被害も出ていないようだし、紅魔館へ急ぐぞ。惨劇を未然に防がなくてはならない。白蓮さん、行ってきます!」

 

 そうと決まれば行先はハッキリした。今度こそ俺はアールバイパーの格納庫へと走る。徒党を組んでいるとはいえ相手は妖精。アールバイパー1機があれば動きを封じるのは難しくない。今は立て続けに各地で異変が発生している。命蓮寺だっていつ脅威にさらされるか分からないのだから、ここは寺で一番足の速い俺が一人で向かうべきだろう。

 

 薄暗い格納庫は前方のシャッターが開くことで明るさを取り戻す。琥珀色の夕暮れの弱弱しい光ではあったものの、仮にも太陽光だ。コクピットの所までたどり着くと、えいやっと飛び乗る。

 

「また大きな異変が起きようとしている。頼んだぞ、相棒……!」

 

 操縦桿を軽く撫でた後、銀翼を起動させる。我が相棒のエンジンが徐々に回転速度を上げていく。さあ、出撃だ! 爆音とともにアールバイパー、発進!

 

 目的地は霧の湖に集いつつある奇妙な光を携えた妖精の軍団。その理由は分かりかねるが、人を狂わせるような奴らを野放しにするわけにはいかない。全速力で湖へと翼を進めると……おお、いたぞいたぞ。あからさまに怪しげな松明を持った妖精の大軍を。

 

「グラビティバレット!」

 

 数が多すぎる。一人一人相手にしていたのではキリがない。ここはまとめて小型ブラックホールの餌食になってもらおう。アールバイパーから放たれた紫色の弾丸が、妖精達の目の前で炸裂、黒い爆風を展開した。この一撃で数体を撃破。狙われていることに気が付いた妖精の群れは散開し、逃げようとする。

 

「無駄だ無駄だ! ハンターからは逃げられない」

 

 兵装をハンターに換装、この間にオプションも4つ呼び出し、大量の青い球体を放った。球体はすばしこく回り込むと妖精達へ着弾していく。よし、全滅させたか?

 

「いや、まだいるな」

 

 どうやら妖精という種族はか弱い代わりにその肉体を滅ぼしても「一回休み」というインターバルを挟み再び復活できるらしい。コイツらはどういうわけか、たちどころに復活すると、生き残った妖精から松明の炎を分けて貰い、また多くの光を携えた軍団として復帰してしまうのであった。

 

「一気に攻撃して全滅させるほかないな」

 

 それを実現させられるのは「重銀符『ブラックホールボンバー』」くらいだろう。オプションをアールバイパーの周囲で高速回転させ、オーバーウェポンの準備に入る。

 

 だが、突如湖の水が盛り上がる。何かが迫ると思い、とっさに回避行動を取った。案の定、湖から不意打ちをかけようとした存在を確認。そしてその姿を見て俺は驚愕することとなったのだ。

 

「ダークヘリオス! それにお前は確か……永江衣玖!?」

 

 なんということだ、あの紫色の細長い体を見間違うはずがない。奴はリュウグウノツカイ型のベルサー艦「ダークヘリオス」だ。そして奴を操っているであろう少女は前にマミゾウの金儲けを邪魔していた衣玖であることは明白であった。

 

 これでハッキリとしたぞ。どこかで人を狂わせる光を調達した衣玖は、あちこちで暴動騒ぎを引き起こし、幻想郷がすっかり混乱し切った時を見計らいこのダークヘリオスで、水棲生物で幻想郷を滅亡させようとしているのだ。

 

 その証拠に狂気を孕んだ光を携えた妖精達への攻撃をこうやって邪魔してきたではないか。「幻想郷は空から降り立つ無数の水棲生物に押しつぶされて滅亡する」そんな妙な予言を残していたが、これは予言でも何でもない。永江衣玖による犯行声明、宣戦布告、俺に叩きつけた挑戦状……!

 

「やはり現れましたね轟アズマさん。貴方ならばここに向かうと思っていました」

 

「いったい何を企んでやがる? 迷いの竹林、人里に続いて今度は紅魔館に『狂気を孕んだ光』を持ち込もうとしている。確か予言、いや宣戦布告の時は無数の水棲生物によって幻想郷を滅ぼすとか言っていたな? 仲間はどこにいる!」

 

 何処か及び腰の衣玖、これはどうやら予定よりも早く俺が到着してしまったことで困惑しているに違いない。このまま押し切って奴の出鼻をくじけば、恐るべき計画もここでストップする筈だ。

 

「仲間……ですか。今、ダークヘリオスは一人ぼっちなんです。だから私が付いていないと……」

「黙れ! そいつはベルサー艦だ。前に人里で暴れたハリセンボン型の戦艦の仲間なんだぞ。あの時、道教の奴らに取り入るのに失敗して今度はお前に取り入って幻想郷を破壊し尽す魂胆だ。そう、お前はコイツに騙されている!」

「違っ……!」

 

 ええい問答無用! このダークヘリオスを生かしておけば奴を目印に他のベルサー艦も幻想郷にやってくるだろう。圧倒的な物量で幻想郷を攻撃されてはひとたまりもない。ここでコイツを破壊して野望を阻止する!

 

 衣玖を守るようにとぐろを巻くダークヘリオス。接近を試みようとするが、これでは迂闊に手を出せない。

 

 何故ならダークヘリオスの砲台は胴体の横側に無数に配置されているのだ。とぐろを巻きながら黄色い短いレーザーをこれでもかと乱射してくる。

 

「チッ、厄介な相手だ」

 

 突っ込もうとしていたところを宙返りして再び距離を取る。それならばとトリガーを引き、フォトントーピードを発射する。次々とダークヘリオスに突き刺さった鋭利なミサイルは爆発を起こし、装甲の内部からダメージを与えていくのだ。

 

 去り際に放った割りには随分と相手に損害を出せたようだが、次の一手が決まらずに右往左往している。そうしているうちに今度はダークヘリオスが突っ込んできた。機体を急降下させて突進をどうにかかわすものの、そのままの状態で今度は胴体からの砲撃。降り注ぐ黄色いレーザーの雨に晒されてしまった。

 

「ぐわああっ!」

 

 特に防御策もなくこんなのを受けてしまえば被弾するのは不可避だ。今度は鎌首をもたげたような体勢で動きを止め、ヒレをこちらに向けてくる。確かアイツのヒレは強力なレーザー砲台になっていた筈。銃口を動き回るこちらに向けると金色の太いレーザーで狙い撃ってくる。その間にも胴体からの砲撃も続くのでひとたまりもない。

 

「こりゃ胴体を一つ一つ潰していくしかないな……」

 

 逆を言えば胴体の砲台を無力化させればダークヘリオスの攻め手は少なくなってくるという事だ。ならばこちらも力の温存を考えるのはやめよう。オプションから魔力を吸い取り本体に収束させ始める。αビームで全てを焼き払う他ない。

 

「一気に行くぞ。オールナッシン……ぐえっ!?」

 

 ところが銀翼は突然大きく揺れると目の前の視界が大きくブレる。どうやら衣玖が羽衣をドリルの形に変形させてアールバイパーに体当たりをしたようなのだ。

 

「しまった!」

 

 魔力の収束が終わる前にオプションから大きく離れてしまったことによりαビームは不発。これを好機と取ったのか、ダークヘリオスはネメシスに狙いを定めて突進し始めた。これはまずいっ。このままではネメシスが、いや今回はコンパクやゆっくり霊夢までもが……!

 

「ネメシス、かわせぇっ!」

 

 そう叫んでみるが、サイズ差がありすぎてとても回避できる状態ではない。ちくしょう、魔力は未だにあっちに残されているってのに。こちらから近づこうにもあの紫の胴体からひっきりなしにレーザーを放つので迂闊に近寄れないのだ。

 

 何か、何かあのレーザーを遮断する何かさえあれば……!

 

 その時、奇跡が起きた。いや、アールバイパーにではない。孤立したオプション達にである。ネメシスから発せられたのは細長い白いレーザー。ダークヘリオスの黄色いビームはその白レーザーに阻まれてこちらまで届いていないのだ。まるで傘のように。

 

 惚けている場合ではない。攻撃が止んだ今のうちにゆっくり霊夢達に噛みつかんとするダークヘリオスの目の前に躍り出ると、レイディアントソードを一閃。怯んだ隙にネメシス達を回収した。

 

「ネメシス、今のもう一度できるか?」

「(コクコク)」

「よし、俺が合図したら今のようにビームを撃ってくれ」

 

 今のは恐らく「αビーム」から派生した技だ。前にも相手の放った魔力をそのままこちらの火力に変えてカウンターするという「バーストカウンター」なる技を会得していたが、バーストといえばもう一つの役割があるのを俺は思い出していたのだ。

 

 そう、今のように弾幕に対する光の盾を形成する為に本体とは別の場所にバーストユニットを設置してこうやって撃たせる。火力自体は下がるが弾幕の防御にも使える便利なものであった。通称「設置バースト」。

 

 恐らくはネメシスとの長い付き合いが実現させたものだろう。十分に知能を成長させ、短時間ならオプション達だけでも運用が可能。ゆっくり霊夢が専用のスペルを得たように、これはネメシスのスペルになるだろう。ならばオプションのマスターである俺が名付けようじゃないか。ネメシス達の新たな必殺技の名を!

 

 再びダークヘリオスが胴体をこちらに向けて一気に砲撃してきた。よし、今だっ!

 

「操術『リモートバースト』!」

 

 ネメシスを切り離し、細いバースト砲を発射させる。俺とダークヘリオスの間を遮るように白い光が突き刺さる。思った通りだ、奴の攻撃がこちらに全く届いてこない。それならばと紫の巨体はゆっくりと動き、別の角度から砲撃を試みてくる。

 

「ネメシス、俺の動く方向と反対側を向くんだ」

 

 こうやって指示を与えればバーストを発する方向も変えることが出来る。もっとも変えている間は指示出しでいっぱいいっぱいなので本体が攻撃を行うことはできないが。

 

そして設置バーストに手間取っている間に俺はダークヘリオスの胴体にグラビティバレットを乱射。胴体の砲台を全て無効化してやったのだ。

 

「ダークヘリオスはもはや攻撃出来ない。勝負はついたようだな」

 

 トドメの一撃を喰らわすべくロックオンサイトにダークヘリオスの眉間を捉えるも、今度は間に衣玖が割って入ってきたのだ。

 

「だからこんなことをしている場合ではないんです! お願いですから話を聞いてください!」

 

 こちらを散々攻撃しておいて話を聞けだって? まあいい、もはや戦えないとあって降参したと考えよう。俺は戦闘態勢を解くと話を聞くことにした。

 

「ふう、ようやく落ち着いてくれましたね。ですから水棲生物が幻想郷の空に押し寄せてきて、滅ぼしてしまうんです! この子が教えてくれたんです」

 

 ううむ、やはり納得いかない。恐らくは水棲生物型戦艦……つまりベルサー艦のことを言っているのだろうが、今ここにいるダークヘリオスが他でもないベルサー艦である。だというのに衣玖とダークヘリオスはとても良好な関係を築いているようにしか見えない。

 

 ではダークヘリオスが衣玖を騙している? いやそれもおかしい。わざわざ幻想郷に危機が迫っていることなど教える筈がないからだ。ならばダークヘリオスが何らかの理由で裏切った? いやいや、それこそあり得ない。過去に幻想郷にやってきた外の世界からの住民は何をしてきた? バクテリアンもバイドも幻想郷を支配しようとしていたではないか。だとしたらベルサーも同じような考えを持っている筈だ……。ただ、ベルサーどもは侵略では飽き足らずに幻想郷を滅亡させようとしているらしい。

 

「分かった。いや釈然とはしないが他に答えが見つからないので、ひとまずはお前を信じよう」

 

「ほっ。アズマさんなら分かってくれると思っていました。じきに幻想郷に降り立つらしいんですよ」

 

 今もダークヘリオスはどこか悲しげな目で空を仰いでいる。一体全体ベルサーはどうなってしまったんだ? ある時は神子や邪仙の手先になっていたり、ある時は何故か友好関係を築いていたり……。

 

 そう頭を抱えていると、突然紅魔館方面で爆音が鳴り響いた。

 

「しまったぞ、俺は見たものを狂気に走らせる松明の光を追いかけていたんだ! 衣玖、そのことについては何か知らないのか?」

「いえ、私は何も。ただ、それらしい光が横切ったときにダークヘリオスが私を庇うように……何か知っているのですか!?」

 

 血相を変えてダークヘリオスに問いかける衣玖。ダークヘリオスはどこか悲しげで、でも言いようのない怒りを秘めたような唸り声をグルルと鳴らした。

 

「なんですって……! その話、もっと詳しく!」

「いや、楽しい異文化交流は後にした方がよさそうだぞ。今は差し迫った危機を凌ぐことを考えよう!」

 

 すっかり日の落ちた霧の湖、紅魔館から虹色の翼が飛び出していた……!

 

「あの虹色はっ!?」

「なんということだ、俺の想定しうる最悪の事態が現実のものになってしまったようだ」

 

 無差別に弾幕を広げる虹色の翼。俺はアイツを知っている。レミリアには5歳違いの妹がいるそうだ。だが彼女の姿を見たと言う者は少ない。気の触れた恐ろしい奴なんだとか。俺も名前を知っている程度だ。奴の名は……。

 

「奴は『フランドール・スカーレット』だ。恐らくはあの松明の妖精軍団が彼女の部屋にまで押し寄せてきたんだろう。厄介なことになったぞ……」

 

 我を失って暴走しているようだ。

 

「大変です! これでは水棲生物が降り立つ前に幻想郷がメチャクチャに……」

「いや、奴に気付かれないように紅魔館へ向かおう。策もなしに今のフランに挑むのは無謀だ。生存者の救助を優先しよう。それに何があったのかを突き止めることもできるかもしれない」

 

 紅魔館には優秀な門番に大魔法使い、時を止めるという凄まじい能力を持ったメイドに見た目は幼いけれど強力な吸血鬼が住んでいた筈。彼女達を退けて紅魔館から飛び出してしまったフラン。どうしてこのような事態に陥ってしまったのか、そして彼女の安否を確認することこそが最善と判断したのだ。

 

「そんなこと言っても向こう側は戦う気満々のようですよ!」

 

 この場から立ち去ろうとする俺達に回り込むように動くフラン。ちくしょう、俺達だけで迎え撃たなければならないのか。どうにか怯ませて紅魔館へ向かいたいところだが……ええい、考えている暇はない。来るぞっ!




※こちらは東方銀翼伝の原作にあたる作品に対して「エンダー・ヴァリー」氏が投稿した非公式の次回予告となります(それに対して筆者がビッグコアとして返答をしているという形式です)。
本人からの許可をいただいたので、この場をお借りして(一部修正して)掲載しております。



次回予告(偽)
「「「「あっ、死んだな」」」」
咲夜「まさか、主人公に嫌がらせするってのは死亡フラグだったとは……」
美鈴「えー、私まだ何もしてない気がするんですが……」
パチュリー「いやいやいや、私は魔理沙が助けてくれるから大丈夫だから大丈夫だから」
小悪魔「こぁ達だけでも無事に逃がせればいいのですが。こぁ達強く生きるのですよ……」
咲夜「次回運が良ければ誰か一人くらい最後に一言残して死ねますかね。次回は東方銀翼伝∀CE第4話です。私たちの最後の活躍……」
レミリア「お前ら諦めるのがはえーよ!」
パチュリー「いや私は魔理沙が助けてくれるから……」



ビッグコア「果たして紅魔館はどうなってしまっているのか!? こうご期待! 毎度毎度いい次回予告だ」
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