「松明の光」を目にしてしまったであろうフランドールが霧の湖まで飛び出して暴れはじめていた。さっそく迎撃する轟アズマであったが、霧の湖のような開けた場所では洗濯機を上から見たような激しい弾幕に対処しきれない。
そこで閉所に誘い込むべく、そして紅魔館の人々の安否を確認するべく紅魔館へと逃げ込む。どうやら美鈴とパチュリーは大した被害を受けていなかったようで一安心。フランの部屋を調べようとするが、このタイミングで部屋主が戻ってきてしまう。いくら閉所と言えどここはあまりに狭すぎるということで隠れてやり過ごそうとするも、あっさりバレてしまい結局戦う羽目に。
とはいえ閉所では弾幕は思ったほど脅威ではなく、リモートバーストとサンダーソードの組み合わせでフランに大ダメージを与えることに成功。しかしフランドールには奥の手があり、何もない空間を突然爆発させてみせたのだ。
逃げている間に合流した咲夜とレミリア曰く「きゅっとしてドカーン」というものであるらしいが……。
今も空間を次々と爆破させていくフランドール。こちらが接近しようとするとその目の前の空間を爆破させるので迂闊に手が出せない。今は俺に敵意を向けているからいいが、何かの拍子に他の奴、特に負傷している人を狙う可能性だってある。そうだ、レミリアが怪我をしていた筈。
「レミリア、ここにいると危険だ」
「私は大丈夫よ。それよりも咲夜を……」
横にいた咲夜に目を向ける紅魔館の主。俺もそちらに目をやると肩の辺りを赤く染めた咲夜がいるではないか。負傷したのか?
「アンタにナイフを投げた時に爆発がしてね、弾き飛ばされたナイフが刺さってこの有様よ」
「ああっ、咲夜さん!」
慌てた美鈴が飛び出すと咲夜のエプロンを取り、それで傷口をきつく縛った。
「応急手当です。あとでちゃんと傷を診ましょう。今は少しでも出血を抑えてください」
血の匂いに誘われたのか、今度はフランドールが咲夜に接近する。そうはさせまいと俺がレイディアントソードを振りかざし咲夜を庇う。攻撃を諦めたフランが離れていくのを確認すると、俺は咲夜を逆回転リフレックスリングで確保、コクピットの後部座席に座らせる。
「どうしてお前の十八番である時止めを使わなかった?」
他の皆には分かる筈もないが、超時空戦闘機であるアールバイパーに乗った俺ならば咲夜の時止めの影響を受けないので、能力を行使したかどうかがちゃんと分かる。あの場で時間を止めなかったのはあまりに不自然。痛いところを突かれたようで、咲夜は唸り声を上げながら顔をそむける。
「使えなかったんだな。あの懐中時計は壊されたんだろ? 能力の行使も戦闘も出来ない怪我人はただの足手まといだ。今は俺に命を預けろ。助けて貰った恩返しくらいはする。この戦いが終わったら治さないといけないな。時計も、お前自身も」
そしてお前との拗れきった関係も……な。
未だに釈然としない表情を見せるが、ひとまずは現状を受け入れてくれたようであり、咲夜は大人しくなった。
依然フランは空間を爆破させながら広間狭しと飛び回り、皆が防戦一方といったところである。雄たけびを上げながら拳を突き出し、正気に戻すにはやはり気絶くらいはさせないとならないことがよく分かる。
「咲夜、ヤツの能力のことをもっと詳しく教えてくれ」
爆風を避けながら俺は情報の提示を求める。何か弱点がある筈だ。
「フラン様の能力、正しくは『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』といって、対象となる物体が持っている弱点、通称『目』をフラン様の手の中に移動させるのよ。あとはその『目』をキュッと握り潰すと……ドカーンってね」
弱点を強制的にフランの手の中に移動させるってことか? 俺はバクテリアン軍残党であるゴーレムの目だけがフランドールの手の中に移動する様子を想像していた。ううむ、バクテリアンにとっては脅威以外の何物でもないな。きっとコアなんかも移動させてしまうのだろう。
「つまり奴の前では常に弱点を晒した状態になるってことで間違いないな?」
なんということだ、これが本当ならばどんなに頑丈な鎧を身にまとっていてもまったく意味をなさないことになる。つまり防戦一方になっているのはよろしくない状況だ。
何か、何かある筈だ。あの能力を突破する方法が……。そうやって手をこまねいていると漆黒の翼を羽ばたかせるレミリアが目の前に躍り出てきた。
「傷はもう大丈夫なのか?」
「吸血鬼の再生能力を甘く見ないことね。頭さえ残っていれば時間をかければ再生するのよ」
新たに標的が増えたことによりフランはより一層激しく空中を爆破させていく。何度も拳を突き出しながら。ん、拳……? そういえば空間を爆破させるとき、フランはいつも握り拳を作っていた。そして咲夜から教わったありとあらゆるものを破壊する方法……もしやっ!
そうか分かったぞ。この能力を攻略する手立てがっ!
「フランはキュッとしないとドカーン出来ない! つまり拳を握らせなければいいんだ」
だがどうすればいい? 真っ先に思い付いたのはフランの両手をレイディアントソードで切断してしまう事。見た目は残酷だが、明らかに致命傷を受けていたように見えていたレミリアも短時間で空を飛ぶ程度に回復していることを考えればそこまで重く考える必要もない。
「あのー……。何やら剣を取り出しているけれど、一応私の妹だから両腕斬り落とすみたいなあんまり物騒な方法は……」
バレてた。そりゃそうだ、フランだって今回は被害者なのだ。進んで暴れているわけではない。ではどうやってアイツの両手を封じれば? だが、レミリアはそう俺に問われるのも織り込み済みだったらしく、すました顔でこう続ける。
「フランと取っ組み合いになればいいのよ。とはいえ吸血鬼と組み合ってマトモに勝負できるのいえば……」
地上でレミリアの様子を見ていた美鈴が飛び出そうとするが、まるでこうなる事を予見していたかのようにレミリアは腕を横に突き出し制止させる。それを見て美鈴が引き下がるのを確認すると、レミリアは犬歯をギラリと光らせ飛びかかっていく。まるで天狗のような素早さで一目散にフランドールにガッチリと組みかかった。
「同じ吸血鬼である私くらい! 可愛い妹の不手際だもの、姉である私が責任取るのは至極当然よ!」
「お嬢様、なんと凛々しいお姿……。お傍で力添えできず、とても心苦しい限りっ……!」
後ろで感動の涙でも流しているらしい咲夜。組み合った吸血鬼姉妹はお互いに一歩も引き下がらない。だが、両手を組み合うのに使っている今のフランは能力を行使できない。
「苦しまなくたっていい。これからレミリアの援護をするんだ。俺とあんたの手でなっ!」
膠着状態と思っていたが、フランが新たな動きを見せた。その胴体からデタラメに弾幕をばら撒き始めたのだ。今度は紫色の鱗のような形の弾を。それが全方位にばら撒かれるのでまるでフグ刺しのように見えた。
「ぐうっ!」
紫色の鱗がレミリアの肌を斬りつけはじめ、血が飛び散る。どうにか直撃を避けてはいるようだが、あのままでは持たないぞ!
弾幕を何とかしなくてはっ。真っ先に思い付いたのはレイディアントソード。これで弾幕を斬りつけながらフランの腕も斬り落とせば……、いや駄目だ。傍にレミリアもおり彼女にも被害が出てしまう。それに腕は切らないでほしいという彼女の思いを踏みにじることになってしまう。
「リモートバーストでピンポイントに防壁を展開する」
だが、10歳前後……いやそれ以上に幼い容姿の少女二人が組み合う間にバーストビームを撃ち込むなんてのは針に糸を通すような精密さを要する。俺は慎重に照準を二人の間に合わせ、ネメシス達を機体前方に配置し、リモートバーストの構えを取る。
もう少し右……いや左っ……行き過ぎたっ。そうしているうちに上にブレる。
駄目だ、二人とも微妙に動き回っておりとても狙えるようなものではない。しかし早く助けなくては……。
そう焦る矢先、俺は突然脳みそを手づかみで引きずり出される感覚を覚えた。こ、これはもしや……。間違いない、俺とアールバイパーとそして咲夜が一つに重なるイメージ。能力の間借りが成立した。
「咲夜、遂に俺に心を開いて……」
「私はお嬢様を助けたいだけよ。今は同じことを考えているから力を貸したいと思った、それだけ」
それでも構わない、結果は一緒だ。完全な時間停止とまではいかないが、周囲の時の流れが非常にゆっくりになっているようだ。恩に着るぞ、咲夜。俺は改めて二人の間に狙いを定め、バーストビームを発射した。その直後、時間の流れも元に戻ったようだ。仕方のない事だが長時間の維持は無理なのだろう。咲夜も疲労困憊といったところだ。
レミリアが体を張って道を切り開いた。咲夜が必死な想いを胸に俺とレミリアの手助けをした。ならば次は俺が頑張る番だ。
『You got a new weapon!!』
先程、次に取るべき一手が舞い込んできたのだ。フランドールが空間を爆破させる様子がアイコンとなりアールバイパーのディスプレイに刻まれていたのだ。新たな技を得ていたのだが、今こそこの一手を決める時だ。
フランのようにキュッと「
「レミリア、一気に離れろっ! デカいのぶち込むぞ!」
翼を翻しバック宙の要領でフランから一気に離脱したレミリア。よしっ、今だっ! 声高く宣言しよう。
「叢雲『コンプレッションバースト』(※1)! 爆ぜろッ!!」
これぞ新たに惑星トキオが会得したテクノロジー。「ジェネシスシルバーホーク」の制御システムと「ネクストシルバーホークバースト」のバースト機関を融合したハイブリッド機たる「ムラクモシルバーホークバースト」の最大最強の兵装。
俺がわざわざネメシス達をアールバイパーの傍でバーストビームを撃たせたのはコレを行使するためであったのだ。無数の鱗が、そしてその中心にいた吸血鬼が一気に吹き飛んだ。撃ち込んだバーストビームのエネルギーを圧縮しながら溜め込んで一気に爆発させたのだ。これはひとたまりもない筈だ。
「ひかりが……きえて……」
力なく墜落するフラン。誰よりも早く反応したレミリアがすっ飛んでいき、地面に叩きつけられる前にその小さな体を抱き留めた。
「おねえ……さま……」
姉に抱かれ、光を取り戻した瞳を向ける。安心したのか、フランドールは眠るようにその瞼を閉じた。そんな妹を優しげなまなざしを向けるレミリアはただただ抱き締めた。
「轟アズマ。認めたくはなかったけれど、少しは骨のある人間のようね。私が思うほどの外道ではないって分かったわ」
フランとの戦闘が終わった後、大怪我をしていた咲夜は美鈴に連れられる形で医務室へと向かいながら、余計な一言を最後に残しつつも俺のことを認めてくれた。
レミリア達と違って人間の身体なのだからしっかり治療した方がいいだろう。そんな彼女も意識を失った妹を抱えて美鈴の後へと続く。
松明を持った妖精も退治したし、フランもひとまず正気に戻った。ヤツとの戦いでこの広間の天井に大きな穴が開いてしまい、星空が見えているが、これも怪我を治した咲夜さんやメイド妖精たちの手によっていずれは元に戻るであろう。
「これでひとまずは俺達がここでやれることは全てかな?」
残されたのは俺と衣玖さん。ダークヘリオスと合流して俺も撤収しよう。それにしても星空が綺麗だ。そう思いながら一息つこうとした矢先……。
「アズマさんっ、伏せて!」
不意に星空が強く光を帯びた気がした。その前に衣玖さんが叫んだので俺は思わずコクピットの中で耳を塞ぎながらうずくまった。その直後、激しい光が周囲を襲う。
「何があったんだ!?」
「分かりません。ですが、ダークヘリオスが私達から庇ったあの光によく似ている。似ているけれど、あの時とは比べ物にならないほど強烈です!」
光が止んだ。甲高い笑い声がかすかに聞こえる。明らかに友好的な存在ではない。何者かと夜空を見上げる。
そこにはフランの部屋で見かけた妖精達が手にしていた松明、それよりもずっと強力な炎を放つ大きな松明を手にした妖精がいた。うむ、妖精で間違いないだろう。妖精特有の虫の羽のようなものが背中についているのだから。
だがその姿は今までに見かけた妖精とはあまりにかけ離れていた。まるで星条旗を思わせるような派手な色遣いのタイツに服装。頭にはサーカスで見かけるピエロのような先端があちこちにねじれた帽子。まるで「道化師がアメリカの自由の女神の真似をしてみました」と言わんばかりの風貌でなのである。
「一目見てピンと来た。お前だな、幻想郷に狂気の光をばら撒いた張本人は!?」
「きゃははは! だいせいかーい♪ 松明の光を皆におすそ分けしたのはこのあたいこと『クラウンピース』ちゃんでーす!」
自分の手にしている松明の光をいつも目にしているんだ。こいつが一番狂ってる、そうに違いない。
「いたずらに人の心を狂わせて、何が目的だっ!」
「目的ぃ? 直接の目的は地上にまでやってきた『迷子』を連れ戻すことよ。あたいの『友人様』に頼まれてね。だけどおかしいなぁ、この赤ヒゲ帽子の傍に居た筈なんだけど……」
衣玖さんを指さして首をかしげている。アイツの言う「迷子」ってのはダークヘリオスで間違いないだろう。そしてただ連れ戻すだけではないことは明白だ。あの異様に統率の取れていた妖精のようにダークヘリオスを狂わせた上で「友人様」とやらに引き渡すのだろう。
「んでっ、次の目的は変な鳥の妖怪を操るコイツをここ紅魔館から動けなくなるようにすること。異様に正義感がある上に無駄にお節介焼きな男だから、ここに困ってる人を作りましたーっ! そしたらさ、幸運にも二つの目的が同時にやって来るんだもん。あたいってばウルトララッキーね! きゃはっ♪」
許せねぇ、フランドールは道具扱いか。レミリアや咲夜が命を張って止めたんだぞ。だというのにっ……!
「貴様、人を何だと思っている? 何企んでいるかは知らないが、紅魔館の絆が断ち切られそうになっていたんだぞ! ああ、あとアールバイパーは変な鳥の妖怪ではないし、俺はコイツではなくて轟アズマだ、覚えておけ!」
おっと、今は激昂してはいけない。こいつ、俺達の動きを封じて何か別の計画とやらを進めているようなのだから。何とかして聞き出さなくては。
ジリジリと間合いを少しずつ詰めながら、奴がどうすれば動揺するかを見極める。ブチ切れたいところだが、我慢だ……。しかし、その思惑は脆くも崩れ去ることになる。
突然地響きが起きると、地下通路からダークヘリオスが飛び出してくる。その勢いのままにクラウンピースに頭突きを喰らわせたのだ。
「うんぎゃ!?」
フランの部屋で十分に休息を取っていたダークヘリオスは全ての兵装が復帰しているようであり、素早くクラウンピースをその長い体で取り囲むとギリギリと絞めつけ始めた。
「ダークヘリオス、凄く怒ってるようです。あんなことされたら……無理もありませんね」
「何か知っているのか衣玖? 教えてくれ!」
彼女は「来る時が来たか」といった神妙な面持ちでこちらを伺う。
「分かりました。私が聞いた限りの真実をお教えします。ただ、約束してください。どんな結果になろうと私もダークヘリオスも、幻想郷の敵にはならないということを信じてください」
「何か訳アリのようだな。……分かった、衣玖もダークヘリオスも仲間だ。何があったとしても」
それを聞いて安堵したのか、ポツリポツリと話し始める。
「ダークヘリオスには多くの仲間がいました。海洋生物のような姿をしており、皆この宇宙の平和を愛し、不和を憎むような仲間です。ところが、あのクラウンピースが松明で仲間を狂わせ、恐ろしいことに自らの指揮下に置いて……月の都と戦争を始めたのです。ダークヘリオスだけは命からがら幻想郷まで逃げ込んだようですけどね」
今もギリギリとクラウンピースを絞めつけるダークヘリオス。
「月の都は狂わされた海洋生物たちによって陥落寸前。そしてあの妖精の主が次にターゲットとしたのが……」
俺はダークヘリオスの動向に注意を向けながら話を聞いていた。締め上げられていたクラウンピースがその松明を手にダークヘリオスの目の前で思い切り光らせようとしていたのだ。
「まずいっ、フォトントーピード!」
ここでダークヘリオスまで奴らの傀儡にするわけにはいかない。俺は松明目がけてミサイルを放った。
「あっ……!」
急加速し、直進するミサイルは見事に松明に命中、爆風に煽られて取り落した松明の炎はそのままダークヘリオスではなく、クラウンピースの頭に落ちる。
「ぎゃああっ! 熱いっ!!」
瞬く間に全身に引火し、火だるまになってしまったクラウンピース。苦悶の表情を浮かべながらもその瞳は恐ろしい程にぎらついていた。
「かかったわね。ここであたいが殺されるのも計算のうち。火あぶりは予想外だったけど……」
火だるまになりながら口元からフフフと笑みをこぼしながらこちらにゆっくりと近づいてくる。俺はその姿に戦慄を覚えた。
「あんたたちが吸血鬼と遊んでいる間に、光による狼煙を幻想郷各地に用意していたのよ。あたいの身に何かあった時をトリガーに光の狼煙は一気に発動する。今更あたいを殺したってもう遅い! いずれ、月の都を滅ぼした『死を司る者』達がこの幻想郷に押し寄せる。たった1匹の裏切り者なんて気にならない程の大多数でねっ!」
みるみる焼け落ちていく妖精の身体。しかし空を掴まんという勢いで両腕を空に突き出しながら、声高らかに笑い声を上げる。ピエロがどんな時でも笑顔を絶やさないように。
「イッツ、ルナティックターイム! いずれ幻想郷は狂気の炎に包まれる。地獄で待っているわ。きゃは……
きゃはははははははははははははっ!」
一際大きな笑い声、ひときわ激しい火柱を上げて、クラウンピースは跡形もなく燃え尽きた。
「『死を司る者』、奴は確かにそう言っていたな? だとしたら厄介なことになるぞ。月の都を滅ぼし、次に幻想郷を滅ぼさんとする勢力に心当たりがあるんだ」
衣玖さんの予言、彼女と行動を共にする裏切り者のダークヘリオス、そしてオカルトボールに込められたどこかの星からの救難メッセージ。これらの異変の兆候が一つに繋がった。なんということだ、今までにない程の危機が迫っていることになる。
「『死を司る者』、惑星アムネリアの言語で『
俺は夜空を見上げる。星空が奇妙な程キラキラと輝いていた。いや、星空なんかじゃない。光はみるみる大きくなっていく。よく見ると海洋生物のような形を取っているものまでいるではないか。あれこそがシーマだ。
月の都に飽き足らず、幻想郷まで破壊せんとシーマが降り立つんだ!
魚影を目視できるようになってからは更に時が加速したかのように事態が急変していく。
突如紅魔館に降り注ぐ虹色の光線。あれはシイラ型の中型艦「ファーストキャプテン」のもの。光線が薙ぎ払われ紅魔館の柱を次々とへし折っていく。
「ここにいたら咲夜達に被害が及ぶ。迎え撃つぞ!」
銀翼を急上昇させると、多数の小魚どもにグラビティバレットを撃ち込む。ブラックホールに飲まれ、次々と魚群が消えていく。しまった、キャプテンどもに背後を取られたかっ。その体を錐もみ回転させつつこちらへレーザーを撃ち込んでくる。その弾速はアールバイパーのノーマルレーザー並みゆえに回避は不可能ではないものの、いつまでもこうしているわけにもいかない。
「このっ……アールバイパーの機動力を舐めるなっ!」
急上昇、いや宙返りをし、逆にファーストキャプテンの背後を取る。満月がこちらを照らした。太陽ではないので目は眩まない。
そのまま相手が旋回する前にオプションを展開しつつフォトントーピードを放つ。「ソリドナイト」と呼ばれる金色の装甲を頭部に装備している奴らなのでより背後からの奇襲に弱い筈。案の定、ファーストキャプテンは爆散した。
遠くでダークヘリオスと衣玖さんも奮戦していることもあり、この辺りのザコはあらかた片付けた。だが、再び異変が起こる。満月があり得ない速度で欠けていくのだ。
「月食? ですが、それにしてはあまりに速過ぎる!」
ほんの数秒で満月は消え去り、赤い月がこちらを照らす。皆既月食というやつか。いや違う、あれは月じゃないぞ。妙にテカっている。
目を凝らすとそれが巨大なフシギウオの稚魚が持つ目玉であることが分かった。デメキンのように飛び出した巨大な瞳にアールバイパーの姿が映りこんでいる。
「エクリプスアイ(※2)……」
舐められたものだな、こいつはあの大きな目玉を用いての偵察を主任務とする艦だ。いくら脅威的なシーマといえど、その戦闘力はたかが知れている。
とはいえ長期戦は避けたい。ならば高火力の兵装で一気に片を付けるべきだ。
その額からオレンジ色の散弾をこちらに目がけて発射する。その隙間を縫いながら、レイディアントソードを前方に構える。
「見ているのだろう? ならば、教えてやる」
オプションを回転させて剣に魔力を集中させた。すっかり魔力が溜まったところを一気に放ち、レイディアントソードを巨大化させた。おなじみ、重銀符「サンダーソード」である。
電撃を纏った青い刃がエクリプスアイの目玉に突き刺さり、剥がれ落ちた。反対側に回り、同じくレイディアントソードを構える。
「俺がこの幻想郷にいる限り、貴様ら侵略者の思惑通りには事は運べない。覚えておけ!」
もう一度サンダーソード。両目玉を削ぎ落してやると、エクリプスアイは大口を開けて小型ミサイルを乱射し始める。よし、とどめだ。ミサイルごと吹き飛ばしてやる。
「重銀符『ブラックホールボンバー・バースト』!」
リフレックスリングで強制的に範囲を固定したブラックホールボンバー。それがちょうどエクリプスアイの口の中で炸裂し、その体は内部から崩壊を始める。一度崩壊を始めると加速度的にその肉体は形を崩していき、内部から光の筋が漏れ出る。そして最後には大爆発を起こした。
「なんだかあっけない相手でしたね」
「今のは偵察機だ。他のシーマはもっと強い。あんなもんじゃない。それよりもすごく嫌な予感がする……」
こういった予感に限ってよく当たるのだから困る。コクピットの中に置いてあった宝塔型通信機が激しい光を発していた。命蓮寺に何かがあったのでは!?
俺は固唾を飲みながら、通信機に手を伸ばした。
「アズマさんっ! 命蓮時の上空に突然巨大な魚が……! きゃああっ!!」
一瞬だけそのように聞こえたかと思うと、ホログラムが乱れ、最後には通信が途絶えてしまった。くそっ、シーマが命蓮寺に……!
「シーマは幻想郷各地に総攻撃を仕掛けているんだ! こんなことされたらひとたまりもないぞ!」
衣玖の予言、それがそのまま現実のものとなってしまった。恐らくは永遠亭も白玉楼も、そして妖怪の山までもが同じ目に遭っているのだろう。
何せあの物量である。紅魔館から見上げた空の星々と見間違えるほどの多数の光、アレらが全部幻想郷を攻め入っているのだから。
「衣玖、天界にもシーマが押し寄せている可能性が高い。ダークヘリオスと一緒に迎え撃った方がいいだろう。ここでお別れだ、俺は命蓮寺に向かう!」
俺は衣玖さんに拳を突き出す。すぐさま拳が返ってきた。拳同士で軽く触れ合う。
「アズマさん、幸運を」
「お前達も……な」
それぞれの帰るべき場所へ、それぞれの守るべき場所へ……。ここが踏ん張りどころだ。何としてもシーマの、そして彼らを狂わせたクラウンピースの「友人様」とやらの野望を阻止しなくてはならない!
銀翼の向かう先、その空がわずかに白み始めた。夜明けは近い……!
(※1)コンプレッションバースト
ダライアスバーストCSに登場した「ムラクモシルバーホークバースト」の用いるバースト機関。
ある程度照射した後に照射を終えるとバーストインパクトを発生させ、着弾点を中心に爆発を起こして広範囲にダメージを与え、敵弾を消去する。
ダライアス版「きゅっとしてドカーン」とも言えるだろう。
ちなみにムラクモ機も真っ赤な機体であり、まさにスカーレット。
(※2)エクリプスアイ
Gダライアスの1面ボス。フシギウオの稚魚がモチーフで大きな目が特徴的。
Gダライアスのボスは全体的に耐久性が高く、αビームなしでは長期戦を強いられるが、さすがに最初のボスなのでコイツはそこまで頑丈ではない。
※こちらは東方銀翼伝の原作にあたる作品に対して「エンダー・ヴァリー」氏が投稿した非公式の次回予告となります(それに対して筆者がビッグコアとして返答をしているという形式です)。
本人からの許可をいただいたので、この場をお借りして(一部修正して)掲載しております。
・次回予告(偽)
シーマ艦隊の皆さん「なんだ!俺達最強じゃん!!」
アブソリュートディフェンダー「やったぜ」
トライポッドサーディン「強すぎて幻想郷と月の民の皆さんに申し訳ない……」
ディメンションダイバー「月と幻想郷全域に侵攻できたことで他の侵略者の立場がなくしてしまった。悪いことしてしまった」
グレートシング「次回『東方銀翼伝∀CE 第7話』では私達の更なる活躍をお見せしよう。いくら銀翼とその一味が強くても、先にほとんどの拠点を落としてしまえば、侵略は成功するということをな!」
ゴーファー「とか言いつつ、ベルサー含めて東方作品キャラに従ってるだけのクセに……」
グレートシング「あ゛ぁ!?」
ビッグコア「今度の敵はシーマ。何者かに操られているようですが……。いろんな拠点を制圧しても多数のシルバーホークの手によってどんどん奪還される場合もあるので油断は禁物」