東方銀翼伝 ~超時空戦闘機が幻想入り~   作:命人

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 クラウンピースの松明の力で狂わされてしまった「シーマ」の軍勢が幻想郷全土を襲撃し始める。

 命蓮寺を襲ったシーマ艦「トライポッドサーディン」はどうにか退けたものの、今でも守矢神社をはじめ幻想郷各地で戦闘が続いており、幻想郷そのものが数で圧倒されつつあった。

 そんな窮地を救ったのは赤色がまぶしい戦闘機。アズマはこの赤い機体に見覚えがあるようだが……。


第8話 ~「蜂」の羽音~

 突然トライポッドサーディンに襲い掛かった赤き戦闘機。アレはシルバーホークではない。俺の知る限り、あの紅の羽は「鷹」のものではなくて、獰猛な「蜂」のものだ。

 

 俺は奴らを知っていた。まるで働き蜂のように首領(ドン)の命令に忠実に従う精鋭部隊。通称「首領蜂(どんぱち)隊」だ……。

 

 やかましいジェットの羽音をまき散らしながら飛び回る赤き蜂。誰もが唖然とする中、空中に巨大な映像が浮かび上がる。どこから投影しているのかはわからないが、人里かその周囲の竹林の辺りからと推測できる。とにかく空中にはデカデカと軍服を身にまとった長い白髪を持った厳つい壮年の男性の姿が浮かび上がってきたのだ。

 

 

浅ましくもこの星を喰らわんとする海洋生物どもを駆逐せよ!

 

 

 時折ノイズの走るホログラムに映し出されたのはやたらとガタイのいい壮年の軍人。あいつは首領蜂隊を率いる「ゴットヴィーン・ロンゲーナー大佐」で間違いないだろう。首領の号令を皮切りに命蓮寺の上空に新たなシーマ艦が急速接近してくる。あのシーマ艦は青いメンダコのような形をしている。恐らくは火炎ではなく電撃を放つタイプの「エイトフィートアンブレラ」であろう。

 

「あっ……ああっ……!」

 

 どうやら彼女はあのシーマ艦(あるいは赤い方のエイトフィートアンブレラ)に追い回されたか何かでトラウマになっているのだろう。だがそれよりも速く、その巨大なメンダコに近づいたのは緑色のヘリコプターと青色の前進翼を持った戦闘機。それらが激しく広範囲のショットを乱射して反撃する。周囲の被害など考えていないだろう。

 

「白蓮も早くここを離れるんだ。巻き込まれるぞ!」

 

 地面にも弾丸が着弾し、あちこちで砂煙を上げている中、白蓮に庇われていた少女が声にならない悲鳴を上げている。俺は彼女に接近すると逆回転リフレックスリングで無防備な少女を保護する。そして細心の注意を払いつつアールバイパーの後部座席に座らせた。

 

 まったく危ない奴らだ。その直後青色と緑色の弾丸がこれでもかと降り注いできたのだから。この銃弾の雨あられから白蓮も無事に脱出しているようで俺は安堵の息を漏らした。

 

「あのっ、この戦闘機たちは……?」

「『首領蜂(どんぱち)隊』と呼ばれる精鋭部隊だ。どういうわけか今は幻想郷を守ろうとしてくれている。ここは彼らに任せよう」

 

 他の場所が気になる。助けを求めていた守矢神社と天界が……。まずは山の頂上にある守矢神社に向かおう。天界への道にもなっているからな。

 

「早苗っ、大丈夫か!?」

 

 白蓮と黒帽子の少女を引き連れながら守矢神社に向かう俺。反射的に俺は友人たる少女の名前を口走っていたが、そこにはシーマ艦の残骸が残るのみであった。

 

「これは……」

「『首領蜂(どんぱち)隊』か?」

 

 もはや危険がないと判断した俺はアールバイパーから降りて早苗とコンタクトを取る。後ろでは手負いの神奈子さんがじっと座っており、先の戦いで受けたであろう傷を癒しているところであった。

 

「それでは命蓮寺にも? はい、突然ロンゲーナー大佐の顔が空中に浮かび上がったかと思ったらどこからか赤青の戦闘機と緑色のヘリコプターが守矢神社にたくさんやって来て……」

「えっと、シーマの『アブソリュートディフェンダー』だっけ? そいつをぶっ壊してくれたのさ。あの風貌からすると軍人さんのようだね。山のてっぺんから様子を見る限りだと他にも色々な場所に降り立ってシーマと戦っているらしい」

 

 信じがたい事態だがどこからか幻想郷に現れた首領蜂(どんぱち)隊はシーマの脅威から幻想郷を助けようとしている。それは紛れもない事実だ。間もなくあちこちで煙を吹きだしているダークヘリオスと共に衣玖さんが守矢神社にやってきた。

 

「天界に踏み込んできたシーマはええっとアールバイパーの親戚なんでしょうか? とにかく色とりどりの鳥の妖怪達が追い払ってくれました。あの空にいた厳ついおじさんが呼んでくれたんでしょうか?」

「色とりどりの鳥の妖怪じゃなくて首領蜂(どんぱち)隊の戦闘機ね。あとアールバイパーとは別に親戚じゃない」

 

 この調子なら他の場所でも奴らがやって来てシーマを追い払うなり倒すなりしているだろう。ひとまずはシーマの脅威から遠ざかった。

 

 さて、目の前の脅威がひとまず一区切りついたとあれば他にも気になることが出てくる。黒帽子の少女が怯えながら俺達に声をかけてきた。

 

「あのっ、私には何が何だかさっぱりで……」

 

 そういえば成り行きでここまで連れてきてしまったが彼女が何処から迷い込んできたのかを聞いておかなくてはならない。恐らくは人里のどこかだろうが……。

 

「驚かせてしまったね。すぐに里まで送るよ。どのあたりに住んでいたんだい?」

「……?」

 

 俺はなるべく聞き取りやすく、なおかつ恐怖心を与えないようにゆっくり優しく聞いてみた筈であった。だが、不安げな表情で周囲をキョロキョロすると黙り込んでしまう。

 

「きっとパニック状態に陥っているんですよ。あれだけ奇妙で怖い目に遭ってきたんですから無理もありません。それではもっと簡単なことを聞きましょう。貴女のお名前を教えてください」

 

 今度はニコリと微笑みながら白蓮は背中を撫でながらまるで子供をあやすように問いかけている。やはりこういったものは住職サマの方が上手だ。

 

「名前……私の名前、分からないの」

 

 白蓮の腕の中で縮こまりながら少女は消え入りそうな声で答える。つまり記憶喪失ってやつなのか? そのままゆっくり抱き締めながら、背中を撫で続ける。

 

「そう、覚えていないのですね。大丈夫、無理に思い出さなくても構いませんよ。それでは何か覚えていることを教えて頂戴な」

「……一つだけ覚えているのは友達の名前だけよ。メリーっていうんだけど、途中ではぐれちゃってどこにもいないの。早く探さないと……」

 

 その後も黒帽子の少女は自らに残った記憶を洗いざらい話してくれた。メリーと電車に揺られとあるパワースポットを調べに行ったものの、メリーが謎の黒い手に浚われてしまいはぐれてしまうという怖い夢を見たこと。気が付くと診療所のようなところで寝かされていたこと、外に出るとタコのお化け(シーマ艦の「エイトフィートアンブレラ」で間違いないだろう)に追いかけまわされたこと、竹林のピラミッドから赤い戦闘機が出てきてタコのお化けを倒してくれたこと、そして命蓮寺まで迷い込んだこと……。

 

 電車の夢を見るくらいだから外の世界の出身であることは間違いない。外来人が突然幻想郷に入り、しかも侵略者であるシーマに襲われたとあってはマトモな精神状態にはなれないだろう。

 

 白蓮はギュッと抱擁しながら、彼女の話を聞きながら「うんうん」と頷いていく。

 

「今頃メリーも一人ぼっちで震えているに違いないわ。ねぇ、お姉さん。メリーは大丈夫だよねっ? ねぇっ!?」

 

 自分の名前を忘れてまで記憶に残った友の名前。彼女にとってそれだけ大切な存在だったのであろう。

 

 メリー……か。名前からして女性なのだろうが、あいにくそんな名前の知り合いは俺にはいない。もちろん彼女の安否も知る由もない。それは紛れもない事実。

 

 だけど、今の彼女に必要なものは事実ではなくて希望だ。ゆえに白蓮が答える前に俺が無意識に口を挟んでいた。

 

「大丈夫、お前が無事だったんだ。そのメリーって子も、きっとどこかで生き永らえている筈だ。人間ってのは案外しぶといものだからな」

 

 自らの過去と重ねて俺はこう告げる。俺は突然幻想入りして紫に敵視されるという絶望的な状況から足掻いて足掻いて、そして生き抜くことが出来た。白蓮のような協力者やアールバイパーという相棒がいたからではあるが、この子はたった一人な上に見たところ戦闘機の類も持っていない(普通は持ってないよね……)。

 

「アズマさんの言う通りです。決して最後まで諦めてはいけません。私達もついていますから。そうだっ、記憶が戻るまで何か貴女に名前を付けておかないとですね……。いつまでも『この子』とか『貴女』って呼ぶわけにもいきませんし」

 

「うーん」と唸りながら、白蓮は考えていく。

 

「では私の白蓮って名前から一文字を取って『蓮子(れんこ)』と名乗りなさいな。記憶が戻るまで貴女は蓮子です」

 

 なるほど、そりゃいいや。ついでにいつも「メリー、メリー」って「連呼」しているってシャレもきいているわけか。命蓮寺で保護したわけだし、彼女も白蓮と同じで白色と黒色の目立つ服装だ。蓮の名前を借りるのは良い考えだと俺も感じた。

 

「ありがとう、白蓮さん! 少しでも早く記憶を取り戻せるよう頑張ります!」

 

 さて、ようやく俺達が何をするべきなのかがハッキリとしてきた。一つは月の都すら陥落させてしまったシーマ達を撃破すること、そしてもう一つは蓮子のなくしてしまった記憶を取り戻すこと。

 

 とはいえシーマは強敵なうえに数も多い。首領蜂(どんぱち)隊の協力は不可欠だろう。そう思索を巡らせた矢先、藤色の三角形をした空中空母がこちらに近づいてきた。周囲に数機の戦闘機で護衛させており、物々しい。

 

 守矢神社の上空で不気味な沈黙を保つ藤色の三角形。そのまま空母から小型機が出てくると、そのまま降り立った。その中にいたのは他でもないロンゲーナー大佐である。あの大佐が自ら守矢神社に? 一体何をしに来たんだ?

 

 仏頂面のまま、周囲をギロリと見渡す。無言で何かを探しているようだが、その視線がアールバイパーの所でピタリと止まった。途中、ダークヘリオスにもその視線に向けていたような気がした。

 

 アールバイパーに視線を向けながら、大佐はツカツカと銀翼へ歩みを進めていく。その間にもまるで喋らない上に瞬きまでしないものだから威圧感が半端なものではない。

 

「君が轟アズマかね? 貴公の活躍はここ幻想郷でも度々耳にする。そしてこっちがかの超時空戦闘機アールバイパーか。ふむ、実物を見るのは初めてだ」

 

 実に興味深そうに銀翼を観察し始める大佐。そのままグルリと一周見て回った。わずかに口元が笑ったようにも見えるが、それでも細かい表情は推し量れない。

 

「あの……アズマさんとアールバイパーをご存知のようですが、貴方は一体?」

「ゴットヴィーン・ロンゲーナーだ。数多の働き蜂どもをまとめる者。人からは大佐だとか首領(ドン)と呼ばれている」

 

 軍隊の存在しない幻想郷で大佐と名乗っても今一つピンと来ないようで、白蓮は首をかしげている。

 

「うーん、前に命蓮寺にやって来たジェイド・ロス提督のような人なんでしょうか?」

「お互いに面識はない筈だが、軍人という意味では確かに共通しているな」

「そうなのですか? ですがジェイドさんと違ってこの人はなんだか近寄りがたいというかなんというか……」

 

 理性を残していたとはいえあのバイド艦隊よりも恐れられるとかこの大佐、どれだけ威圧感があるんだよ……。

 

「よし決めた。轟アズマ、私と一緒に来い!」

 

 とんでもないことを言い出した。まさかこの俺に首領蜂(どんぱち)隊になれとか言い出すのではないだろうか。

 

「貴方の指揮下に入るつもりはない!」

「そうですよっ! アズマさんは私達の仲間です」

 

 一斉に騒ぎ始める少女達をその眼力だけで一瞬で黙らせてしまう大佐。コイツ、一応人間だよね……?

 

「ええい腹立たしいまでに喧しい! そんな傷ついた翼ではこれからの戦いを生き延びれないだろう? その銀の翼に修理を施そうというのだ。それに轟アズマとは個人的に話がある。だから私と一緒に来るがよい」

 

 皆が唖然とする中、俺は言われるがままに傷ついたアールバイパーと共に頭上の空母へと誘われる。その様子を見ていた衣玖はダークヘリオスと何か小声で会話をし、お互い頷いたかと思うと、衣玖も駆け寄ってきた。

 

「私も連れて行ってください! ダークヘリオスからシーマの秘密を色々と聞いているんです。きっと何かに力になりますから!」

 

 それだけ足早に口にすると、半ば強引についてきてしまった。そんな様子を横目でチラと見る大佐であったが、特に何もしない所を見ると容認しているという事らしい。

 

 まさか本当にこの空中空母に乗ることになってしまうとは。あの後本当にアールバイパーは俺と引き離され、今は他の色とりどりの戦闘機たちと一緒に修理や細かいメンテナンスを受けているところであろう。

 

 一方の俺達はというと会議室らしき部屋に通されポツンと待たされている。簡素なつくりではあったが、だからこそ壁に飾られているロンゲーナー大佐の肖像画が際立って見えた。

 

「しかしまあ、あの大佐にああやって直訴するだなんて随分と肝が据わっているんだな」

「えへへ、だってちょっと顔が怖いですけど、ただの人間のおじさんみたいですし」

 

 そりゃまあ人間ではあるだろうけどさ……。あと、軍人であるということが幻想郷の住民には理解が出来ないらしい。確かに大佐から軍人の肩書を取ったらただの厳つい顔したロン毛のおじさんに……いやいや、やっぱりならないよ! これは衣玖さんの肝っ玉がとんでもないだけだ。

 

 底知れぬ度胸を持つ少女に驚きながらも、更に待つこと数分……。ようやく大佐が部屋に入って来る。いや、大佐だけではなく金髪の女性も一緒にいるようだ。赤ぶちの眼鏡の似合う白衣の美女であったが、よく見るとその肌に不思議な模様が浮かび上がっている。彼女は人間ではない。ロボット……厳密にいうと「エレメントドール」で間違いないだろう。

 

「君の銀翼ならば何も心配することはない。エンジニア達によって丁寧にメンテナンスされている頃だろう。全ての工程が済めば、新品同様にピカピカになって貴公の元に戻ってくる。さて、ここに君を呼びつけた理由だが……」

「大佐、さっきも言った通り首領蜂(どんぱち)隊に入るつもりは毛頭ない」

 

 さっきよりも強い語調で拒絶する。それを見た大佐は俺から目を逸らし一言。

 

「ふむ、まっすぐな性格が見て取れる。君の事は事前に色々と調査させてあるのだが、まさにその通りだな。実に愉快である。そんな貴公の性格ゆえに今回は数あるエレメントドールの中でも『朱理』を連れてきた。君の好みに合致する筈だ」

 

 こいつまさか……俺がエレメントドールを『抱く』ように仕向けて懐柔するつもりなのか!? 白蓮、雛、そして今俺の横にいる衣玖……。確かに今までお世話になってきた少女は皆中々に大きいモノを持ってる傾向にあったがそんなところまで調査を?

 

「真っ直ぐな性格、冷静さの中に隠し持った攻撃性、過去の戦歴を重要視する……。これらはいずれも朱理の性質と合致する。いいコンビになれるだろう」

 

 実際は違った。そうだった、この男はどこまでも戦闘狂。そのような手段を取るのは考えづらいではないか。

 

「いや、君を首領蜂(どんぱち)隊に入るつもりはない。今後の作戦を考えるとむしろそっちの方が都合がいいのだよ。というわけで取引といこうではないか。あくまで対等な関係で我々と一時的に手を組む。それなら文句もあるまい」

「あくまで対等な……。分かった、取引に応じよう。幻想郷側だけではシーマを退けるのは不可能。あんた達の力が必要だ」

 

 一瞬だけ初めて大佐がニンマリと笑ったような気がした。いや、あくまで気がしただけなので今表情を伺ってもいつもの仏頂面であったが。

 

「それでは改めて今後の作戦を貴公らにも知らせておこう」

 

 目だけで朱理に何か指示を出す大佐。それを受けて眼鏡をクイっと上げながら、彼女は淡々とテーブル内に仕込まれたボタンを押す。ポチという音と共にテーブルから緑色のホログラムが展開された。真っ先に目についたのが二つの球体。それぞれ大きいものと小さいものであり、よくよく見るとそれが地球と月であることが分かった。

 

 それら二つの天体の間には何やら魚群らしき姿も見える。

 

「あらかじめ月を制圧したシーマはここを拠点として地球に向かっているのは知っているな? 地球に降り立ったシーマは首領蜂(どんぱち)隊の力もあり、一度は宇宙にまで退けることはできたが、奴らもかなりの戦力を持っているようで、腹立たしいことに、ここで膠着状態となっている」

 

 次に月のホログラムの一部が割れて中身が見えるようになった。

 

「しかし奴らも月を拠点にしたのが運の尽きと言ったところか。実は月には有事の事態に備えて私の獄滅極戮兵器群が多数封印されているのだ。それらを発動させ、シーマどもを挟み撃ちにしてやろうではないか。封印を解くのなら首領蜂(どんぱち)隊に所属していない貴公が望ましい」

 

 なるほど、大体分かってきたぞ。アールバイパーで月に向かい、そこで封印されている大佐の兵器を復活させてシーマを背後から襲えってことだ。

 

「封印を解くカギとなるのが、このエレメントドール『朱理』なのだよ。よって貴公は朱理と共に月へ向かい、私の獄滅極戮兵器群を目覚めさせてもらう」

「はい、全力で挑みます」

 

 その威圧感に押されて反射的に返事をしてしまったが、悪い作戦ではない。大佐との作戦会議が終わるころ、アールバイパーの整備も終わったらしく、俺は格納庫へと走った。

 

 そこにはかつてない程に綺麗にメンテナンスされた我が相棒の姿が見えた。だが、それを見ているのは俺と衣玖だけではない。しばしの間同じ戦火に飛び込む仲間が横にいる。彼女はいつの間にか白衣から赤いパーティドレスのような戦闘服に着替えていた。

 

「これからあの磯臭い侵略者どもを焼き払えると思うとゾクゾクするわ♪ 短い間だけどよろしくね、マスター」

 

 噂通りの好戦的な女性のようだ。それよりも握手を求めるべく手を差し出しているようなので、俺もそれに応じることにした。これから共闘する相手、少しでも円滑な関係にするべきだしね。

 

「ああ。サポート頼むぞ、朱理」

 

 ガッチリ握手を交わす。これがエレメントドールの手……ロボットとは思えない温もりと感触。挨拶も済ませると、彼女の興味対象はアールバイパーに移る

 

「これがマスターの翼?」

 

 しげしげとアールバイパーを見つめる。こうやって様子を見ながら細かいところを計測しているのかもしれない。

 

「銀翼『アールバイパー』さ。幾度となく俺の危機を、そして幻想郷の危機を救ってきた希望の象徴」

 

 朱理の手を取り後部座席に座らせると、俺はこの空母から発艦、衣玖さんと共に守矢神社へと戻った。地上に降り立つ頃には、藤色の母艦はどこかに姿を消してしまっていた。

 

 守矢神社に戻ると、正式に首領蜂(どんぱち)隊と連携を取ることになったこと、この後の作戦(月に潜入して封印された兵器を目覚めさせシーマを挟み撃ちにするというもの)についての情報を共有する。

 

「なるほど、それは素晴らしいですね。それで今回の作戦でアズマさんのお手伝いをするという……ええっと朱理さんでしたっけ?」

「(なんかペースが狂う人ね……)え、ええ。コホン、これから派手にドンパチやるのよ」

 

 今も大佐との話を詳細に語る中、決意を固めた表情の衣玖さん。

 

「その作戦ですが、私とダークヘリオスも連れて行ってください! シーマはクラウンピースに狂わされている被害者なんです。何か彼らの兵器を使わずにシーマを大人しくする手段がある筈です」

 

 隣では紫色のベルサー艦が悲壮な決意に満ちた唸り声を上げている。俺は周囲を見渡し、朱理が白蓮との会話で手いっぱいなのを確認すると声を潜めるて答える俺。

 

 確かに、この作戦を遂行するということはシーマを、ダークヘリオスの仲間を殲滅することを意味するのだ。すっかりダークヘリオスと打ち解けている衣玖さんにとってもそれは耐えがたい事であろう。

 

「分かっている。俺だって出来ればシーマと交戦することなく終わらせたい。だが、もしも大人しくならないとしたら……分かってくれ、衣玖」

 

 連戦続きだった俺は今日は休息を取り、明日に作戦を決行することになった。そのことで白蓮と朱理が揉めているようだ。

 

「こうしている間にも私の仲間達はシーマと戦って……」

「朱理さん、アズマさんは人間なんです。貴女やアールバイパーのように機械の体だから疲れを感じないなんてことはありません。すぐに行動に出る事だけが戦術ではありませんよ?」

「うぅ……確かに」

 

 が、あっさりと丸め込まれている。あんなにしおらしい朱理を見られるなんて珍しい。とにかく、今日はもう休むべく命蓮寺に帰ることにした。新たに迎えた仲間「朱理」と記憶と行き場所のない少女「蓮子」を連れて。

 

「アズマさんっ、アズマさんっ!」

 

 皆が帰路につき(衣玖さんもダークヘリオスと一緒にいたいという理由で命蓮寺に向かっている)、あとは俺も帰るだけだと銀翼に乗り込もうとした矢先、小声ででもせわしなく俺を呼ぶ声が聞こえる。いつになく真剣な表情を浮かべるのは早苗さんであった。

 

「やっぱり何か怪しいです! シーマがここを襲撃してから首領蜂(どんぱち)隊が現れるってタイミングがあまりに良すぎますし、それにあのロンゲーナー大佐でしょう? 隙を見て『いよいよもって死ぬがよい』とか言い出すに違いありません!」

 

 早苗が心配する気持ちは俺にも痛いほど分かる。奴は自らの野心の為ならば味方にも平気で手を下すような男だ。この申し出は俺も胡散臭いとは思っている。だが大佐が何か企んでいる確証が持てないし、何よりも彼らの協力なしではシーマの進撃に耐えられない。

 

「分かっている。だが、まずはシーマの脅威を完全に退けないと、幻想郷がシーマに支配されてしまう。それに他にもなすべきことはたくさんある。明日、命蓮寺に来てくれ。俺達も複数に分かれて行動する必要があるだろう。また早苗の、守矢神社の協力が必要だ。よろしく頼む」

 

 そこまで言うと俺は右手を差し出した。ガッチリと握手を交わす外来人二人。全ては幻想郷を守るため、再び神道と手を組むことになった。やはり早苗とは息が合う。握手を交わしながら互いにニッと口元で笑った。




※こちらは東方銀翼伝の原作にあたる作品に対して「エンダー・ヴァリー」氏が投稿した非公式の次回予告となります(それに対して筆者がビッグコアとして返答をしているという形式です)。
本人からの許可をいただいたので、この場をお借りして(一部修正して)掲載しております。



・次回予告(偽)
菫子「どうして私とそっくりな外来人が出てきたのにアズマは反応しないのよー!」
蓮子「いや、記憶喪失で宇佐見って言ってないから仕方ないですよ。蓮子も名付けてもらったんだし」
菫子「えー、姿で『ん?』ってならないの~?」
蓮子「意外と似てなかったんじゃないですかねぇ」
菫子「ぐぬぬ。蓮子との繋がりがあれば私だって味方としての出番が……!」
蓮子「いや、どうでしょ?私たちの関係は決めるの大変だし、会わずに謎ってことで放置されて私達が帰っちゃう可能性も……」
菫子「」
蓮子「次回『東方銀翼伝∀CE 第9話』!次回は命蓮寺での戦略回かしら?かなり怪しい首領蜂隊とどうやってくのか、乞うご期待!」


ビッグコア「言うほど似てるかなぁ? 似てるのは名前だけど、宇佐見の姓は出てないですし、おっしゃる通り蓮子の蓮は白蓮の蓮なのでそこで関連性に気づくことはないでしょう。宇佐見の姓が出てくれば何かしら反応があったんでしょうが……」
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