外の世界の夢を見た少女は相棒の名前である「メリー」以外をすっかり忘れてしまっていた。幻想郷に迷い込み彷徨っているうちに命蓮寺までやって来たようだ。白蓮は彼女に「蓮子」という仮の名前を与え、保護する。
その幻想郷はというと、各地で海洋生物型巨大戦艦群「シーマ」が暴れている最中であった。霊夢も紫も姿を現さない中、命蓮寺でもサンキャクイワシ型戦艦「トライポッドサーディン」が襲い掛かる。轟アズマも白蓮や一輪と協力し交戦するも、倒しても倒しても襲い掛かるシーマの大軍にとうとう押し切られそうになる。
その時、突然色とりどりの戦闘機が降り立ち、あっという間にシーマを退ける。その正体は「ゴットヴィーン・ロンゲーナー大佐」が率いる「
しかし「首領蜂隊」をもってしてもシーマを宇宙空間まで退却させるのが限界であり、ここから戦局を動かすには更なる作戦が必要であった。それは月で封印されている兵器を目覚めさせ、シーマを挟み撃ちにするというもの。大佐の作戦に参加することになったアズマは封印を解くカギとなるエレメントドール「朱理」と月を目指すことになった。
出来る事ならシーマを撃破することなく事態を解決させたいと考えるダークヘリオスとその理解者である永江衣玖、突然現れたロンゲーナー大佐に疑念の意を抱く東風谷早苗、そして今も記憶のない蓮子……。
様々な思惑が交錯し、それらの意志がひたすら前へ前へと突き進む!
記憶を失った(恐らく)外の世界からやって来た少女「蓮子」、狂気をもたらす松明の光、その光に導かれたシーマ、そのシーマの軍勢を宇宙にまで後退させたロンゲーナー大佐率いる
色々なことがありすぎて正直俺の体は全く休まらなかった。まだ日も昇らないうちに目が覚めてしまった俺は、白みかけた空の下で、ひんやりとした空気を思い切り吸い込む。もう起きちゃおう。深呼吸をしたりストレッチをしたりして体のスイッチを入れていくと、その姿を誰かに見られているような気がして周囲を見渡した。
「どうした早苗、随分とまあ早く来たじゃないか」
緑色の長い髪の毛に、青色の瞳。傍らには「
「なんだか全然眠れなくって……。それで来ちゃいましたっ」
「お前もか。実は俺もいま目を覚ましたところだ。あれだけ色々なことがあった後だもんな」
事は急を要するとはいえ、こりゃいくらなんでも早すぎだ。とはいっても追い返すわけにもいかないので白みかけた空を二人で眺めながら時間を潰すことにした。
「この前のオカルトボールの異変でアズマさんは外の世界、見てきたんですよね? 何か面白そうなシューティングゲームはありましたか?」
「いや、大々的には宣伝されてなかったよ。過去の名作をリブートして現代に甦らせようみたいな気運は高まっているんだけどね」
彼女にとって一番気になるところはやはり外界のゲームの話であった。その後もゆっくりとしたペースでいろんなことを語り合う。早苗とこうやってのんびりとお喋りする機会は意外と少ないのでまあ話題が尽きない尽きない。
「彼ら、いったい何者なんでしょうね? 諏訪子様は新手の妖怪くらいにしか考えていないようですけど、でも彼らどう見ても……ねえ」
「ああ、早苗みたいな理解者が幻想郷にいたのは本当に幸いだったよ。シーマやロンゲーナー大佐……いいや、その前にはバクテリアンやバイドも幻想郷に姿を現していたよな。新手の妖怪の一言で片づけられるようなヤツらじゃない」
二人で見る空はみるみる橙色が混じってくる。とてもきれいな暁時だ。
「どこから来て、そして何しに来たんでしょうね? 侵略者だけではなく、味方もいましたし」
「普通に考えると外の世界で忘れられて幻想入りした……。だけど、あのインパクト抜群のロンゲーナー大佐が皆に忘れ去られるとはそうそう思えないし、バイドやバクテリアンもまた然りだ」
いつの間にかそれが当然と言わんばかりに、俺はSTG世界からやって来た侵略者を銀翼「アールバイパー」で屠ってきた。時には幻想郷で親睦を深めた仲間や、同じくSTG世界からやって来た友好的な勢力と力を合わせることもあった。だが外の世界で忘れ去られたにしてはあまりにペースが速過ぎないか?
「……やはり異常だ。外の世界ではSTGはすっかり過去のゲームジャンルになっているとはいえ、今でも愛好家たちはそれなりにいた。だからこれは自然な幻想入りではなく、誰かが仕組んでいる」
「誰なのかも分かりませんし、そもそも何の為なのかもわかりませんけどね」
こんな事をするのは紫だろうか? いや、違うだろう。だとしたら俺をいきなり殺しにかかったりはしない筈だし、そもそも今はどこにいるかもわからない状態。彼女に限ってそれはないと思いたいが、既に死んでしまっているということも絶対にありえない話とは言えないのだ。
「今はそれを考えるのは無駄かもしれないな。だけど、その恩恵を受けている人もいる。俺や早苗がそうだな。特に俺はアールバイパーがなければここまで戦うことなど出来なかった」
今は迫る脅威を退けよう。決意を新たに二人で朝日を拝む。振り向くといつの間にか起きていたのか、白蓮が様子を見ていたようだ。
「早苗さん、もう来ていたのですね」
「みんなこの幻想郷を守りたくてウズウズしてるんだ。もちろん俺も」
そして陽も昇り切った後、次々と「戦士」達が命蓮寺に集う。衣玖さんとダークヘリオスが広間にやってくると、まるでそれを予見したかのように朱理も目覚める。蓮子は白蓮に懐いているようで彼女の隣でちょこんと立っていた。
「皆さん集まりましたね? 私たちは大きく二つに分かれて困難に立ち向かっていく必要があります。一つは首領蜂隊と連携し海洋生物型巨大戦艦群『シーマ』を叩くこと。これはアズマさん、朱理さん、衣玖さん、そしてダークヘリオスのチームが担当します」
これこそがシーマ打倒のメインとなるチームだが、隠密作戦ゆえにあまり大人数では向かえない。俺と月の封印を解除するカギとなる朱理は外せないし、衣玖さんの(厳密にはダークヘリオスの)秘めたる思いを無下にすることも出来ないので、この二人も月へ向かう作戦に参加させるのが道理というものだろう。
「そしてもう一つは地上、幻想郷からこの一連の異変を解決するための手掛かりを探すというものです。ここまで大がかりな異変になってしまったのに、いまだに姿を現さない霊夢さんと紫さんはどこにいってしまったのか、それに記憶を失ってしまった蓮子さんも異変に何か関連しているかもしれないので彼女の情報も探していかないとなりません。こちらは私と早苗さん、そして蓮子さんが受け持ちます」
いよいよ異変に対する反撃が始まる。明らかに戦闘が付きまとう俺達を心配そうな面持ちで伺うのは白蓮。俺は俺で地上部隊を案ずる。行方不明になった幻想郷の要たちについても心配ではあるが、外の世界により精通した俺としてはロンゲーナー大佐の一件の方がより気になって仕方がないのである。
「早苗、そっちは任せたぞ」
唯一事情を知っているであろう早苗にボソリとそう告げると、俺は朱理と共に格納庫へと走った。
(その頃、月面近く……)
宇宙空間を悠々と泳ぐマッコウクジラ型戦艦「グレートシング」が無数の「蜂」にたかられている。そう、今まさにシーマの戦艦と首領蜂隊がぶつかり合っているのだ。
個々の戦力では圧倒的優位に立っているグレートシングではあるものの、数では首領蜂隊が圧倒している。しかもこれらの戦闘機は火力だけは巨大戦艦並みにあり、小さく機動力もあるものだから、このように多数で群れられるとさしものグレートシングもひとたまりもない。
マッコウクジラからまるで角のようなドリルのようなミサイルが発射されると、1機の戦闘機が黒いレーザーを発する。レーザーは周囲の弾幕ごとドリルミサイルを粉砕し、そのまま戦艦本体に着弾。頭を撃ち抜かれたグレートシングはそのまま爆炎を上げて轟沈していった。
「ヒュー! 大物を仕留めたぞ」
「馬鹿言え、トドメはこの俺のレーザーだ」
「お前らが隙だらけの攻撃を放てたのは俺のサポートがあったからだぞ。お前ら、後ろから狙われてたの知らなかったろ?」
そんな難攻不落の戦艦を落としたことで祝賀ムードであったが、それも長くは続かない。
「うっ!? い、息が詰まる!」
「機体を損傷したのか? いや、俺は無傷だ。だというのに……ぐわぁぁぁ!」
何の前触れもなく2匹の「蜂」はもがき苦しむ。しばらくもがいていたかと思うとすぐに動かなくなった。
「応答しろっ! ……駄目だ、二人とも事切れている。一体何が起こったんだ? とりあえず首領に報告を……!」
僚機を2機も喪失し……いや、厳密には中にいたパイロットだけが死に絶えてしまい、顔面蒼白の生き残りはこの異常事態をロンゲーナー大佐に知らせるべく、撤退しようとする。しかし、そんな彼の前に立ちはだかったのは先程のグレートシングよりも圧倒的に小さい女性のものであった。
「こんなところに人間……いや、人間が宇宙空間にいる筈がない。エレメントドールか?」
反射的に敵と認識した首領蜂隊の生き残りは銃口を向けてあらん限りの弾丸を撃ち込む。だが、効いているのかいないのか、涼しい顔をしたままであった。
……ぬんっ!
彼女の手から炎が発せられ、それを両手で囲うと、最後の戦闘機乗りももがき苦しみ、そして息絶えた。
さあ嫦娥よ、いくら兵を増やしたところでこんな調子では悪あがきにもならぬ。
お前自身が姿を現さないとさらに犠牲者が増えるぞ?
誰もいなくなった戦場で、軍師の女性は一人高笑いを続ける。後ろからは新たなマッコウクジラ型の戦艦がゆっくりと姿を現していた。
(少し後、首領蜂隊母艦……)
「なんだと、あの精鋭3人が? クジラと刺し違えたのか?」
偵察機と思われる機体が首領蜂隊の母艦に戻ると大佐に宇宙空間での戦闘について報告を行う。マッコウクジラの反応は消失していたものの、それの討伐に向かった筈の3機の反応も同じくロストしたというものである。
「何、クジラに倒された形跡はなく、機体は無傷。無傷であるがパイロットは全員事切れていた……だと?」
無言で大佐は左を振り向くと、待機していた兵士がせわしなく走り去る。
「何らかのウイルスか、あるいは他の生物兵器が用いられたか……。とにかく機体を回収し、死亡した兵士の解剖を急げ。磯臭いシーマどもめ、姑息な手を使いよって……!」
ほどなくしてマッコウクジラと戦った戦闘機と、死亡したパイロットが母艦に運ばれる。そして解剖されたのだが……。
「ウイルスも毒物も検出されず、死因は突発的な心臓麻痺だと!? そんな馬鹿なことがあってたまるか!」
それだけ怒鳴り散らすと偵察兵は慌てて大佐の部屋から逃げ出していく。一人残された大佐は頭を掻き毟りながらブツブツとつぶやく。イライラしているのは明白だ。
「奴らめ、一体何を使ったのだ? 機体に損傷を与えず、パイロットのみを殺害した。手段は何だ? 目的は何だ? 機体が残っていたことから鹵獲を試みたわけでもなく……ブツブツ」
そして大佐は気付く。偵察隊が撮影した写真にマッコウクジラ型の戦艦の残骸の背後に移る女性の影を。
「宇宙空間に人? シーマではなさそうだが、エレメントドールなのか? それとも……」
(幻想郷、永遠亭前……)
俺が、アールバイパーが月に向かう為にはこの地球の大気圏を突破しなくてはならない。しかし高温に弱いアールバイパー単体ではここを突破することができない。そこで俺が頼ることになるのは永遠亭のお姫様である。
彼女の宝物の一つに「サラマンダーシールド」なるものがあり、過去にこれを用いて宇宙に出たことがあるのだ。
それを借り受けるために永遠亭までやって来た。ここもシーマに襲われたとあって建物外部に損傷が見られるが、恐らくはいち早く首領蜂隊が駆けつけたのか、紅魔館ほど酷く荒らされているわけではなかった(そもそもあそこが荒れていたのはフランが暴れていたのが一番の要因だったが)。
銀翼から降りて(衣玖さんと朱理は外で待機させる)診療所を突っ切り奥へと進むと彼女はいた。そういえば輝夜とは長く顔を合わせていなかったな。
「轟アズマ、本物ね! やっぱり本物は違うわー」
恐らく偽銀翼異変での出来事を言っているのだろう。ここもバイオレントバイパーに襲撃されていたのだ。そう言いながら人懐っこい笑みを浮かべて頬をスリスリとしてくる。随分と懐かれているようだ。この調子では話が出来ないので、しばらくこうさせておいて、落ち着いたころを見計らい俺から切り出す。
「それより輝夜、俺がここに来たのは……」
「それは出来ないわ」
用件も言わないうちに断られてしまった。
「サラマンダーシールドでしょ? ここを襲ったでっかい魚を倒しに月まで行くんでしょ? 無理なのよ」
代わりに彼女が手渡したのは古めかしい望遠鏡。装飾が派手であり言われないと万華鏡と間違えてしまいかねない。どうやらこれで空を見ろという事らしい。
言われたとおりに望遠鏡で空を覗き込むと、今もシーマの巨大戦艦と首領蜂隊が一進一退の戦闘を繰り広げていた。
「あんなにドンパチやってるところに行ったら傷ついてしまうわ。あくまで熱に強いだけで、物理的なダメージにはあまり強くないのよ」
確かに宝物に傷をつけてしまうよな。俺はここにきて自分の考えがいかに浅はかか思い知ることになった。
「壊れちゃったらアズマも地球に帰れなくなるわ。そんなの嫌だもん!」
何よりもの宝は俺という存在らしい。この辺りが彼女を人格者たらしめているところであろう。どんなに見た目が幼くても、どんなに変な噂が蔓延っていても、やはり人の上に立つものは相手を気遣うということに秀でているのだ。
ううむ、俺の完敗だ。そう言われるとこの作戦はナシだな。諦めて他の手段を模索するとしよう。俺は輝夜の部屋を後にする。後ろでは輝夜は申し訳なさそうな顔を浮かべていた。
「あらあら、姫様に振られちゃったわねアズマ君」
永遠亭を後にしようとした矢先、こちらを心配してるのか、おちょくっているのか、落ち着いた声が俺を呼び止めた。
「永琳さん、聞いていたんですか?」
「丁度前の患者の診察が終わったからね」
診療室を見ると塗り薬を受け取って今まさに帰ろうとしている蛍の妖怪(確かリグルとかいったか)の姿が見えた。腕に包帯を巻いていた彼女、恐らくはシーマの戦艦に襲われたときに怪我をしてしまったのだろう。この戦いを一刻も早く終わらせるべきだと俺は強く感じた。
「月の都に行きたいのでしょう? 何も直接向かうだけではないのよ」
月に向かう方法を何か知っているようだ。俺は足を止めて本格的に話を聞く体勢に入った。
「月に向かう夢を見ればいいの。ウドンゲも使った『
「原理はよく分からないが、是非とも頼みたい!」
「渡りに船」とはまさにこのことだ。だが、永琳はどこか含みを持たせた笑みを浮かべている。さすがにタダでは使わせてくれないようだ。俺がそれを察した時、彼女は床に置かれている無数の小瓶が詰められていた箱を指さした。
「ならばおつかいを頼まれて欲しいの。恐らく月の民もここに避難している筈なんだけれど、あそこにあまり長く居続けると精神に異常をきたしてしまうのよ。ずっと夢を見ている状態だからね。というわけで、その症状を緩和する薬を届けてほしいの。いつまであそこにいなくてはならないか分からないから……ね」
仕方あるまい。幸い大きな寄り道をするわけではないので俺はその申し出を飲んだ。永琳は「そう言ってくれると思った」と嬉しそうにしている。
「ああそれとね、アズマ君にはもう一つ渡したいものがあるの」
何故か周囲をキョロキョロと見渡しながら、永琳は屈みながら懐から何かを取り出す。手渡されたのは巾着のような形をしたお守り。あの月の頭脳と名高い女医である永琳がお守りを渡してくるなど意外である。
「これは?」
「月の民は穢れを恐れる。もしもそれが原因で困ったことがあったらこのお守りを頼りなさい」
手にしてみると小さな瓶が仕込まれているような気がして、俺は中を覗いてみた。案の定何かの薬が入っている。
「それは『
こんな便利なものまで贈呈してくれるとは。俺はさっそく未来予知能力を目当てに薬を飲もうと瓶の蓋を開けようとするが、永琳に止められる。
「だから困った時用よ! その『紺珠の薬』が持つ穢れを祓う効果は実は予期していない副作用で、しかも効果は制御がきかない上に強力。下手したら穢れに満ちた地上で生きられなくなるかもしれないの。だから使うのはあくまで非常事態の時にして!」
お医者さんに怒られてしまった。やはりそう楽は出来ないか。だが、手にしているだけでも心強い。是非とも有効に活用したいところだ。
「ありがとう、永琳さん。月を、幻想郷を守り抜いて見せる!」
「例の通路は妖怪の山にあるわ。アズマ君がたどり着く頃には許可も下りている筈。幸運を……!」
決意を新たに俺は永遠亭を出て妖怪の山へと向かう。
「妖怪の山に向かうぞ。そこから特殊な通路を使って月へ殴り込みをかける!」
こうして俺達は妖怪の山に潜伏していた月のウサギ(いつもお団子をモグモグ食べていた)と接触し、いよいよ「槐安通路」へと突入した。
槐安通路は人の見る夢と関連のある通路と永琳は言っていたな。だが、このヒヤリとした空気に周囲に「
「まるでR-TYPEの逆流空間だな」
「あーるたいぷ?」
ああそうだった、ここに早苗はいないからそんなこと口にして誰も理解できない。衣玖さんも首をかしげてる。永遠亭での「取引」を終えた俺は衣玖さんとダークヘリオス、そして今もバイパーの後部座席にチョコンと座っている朱理と共に槐安通路を突き進んでいる。どこかに月から避難した住民がいるらしいのだが、その姿はどこにも見えない。
「退屈だわ。早く出てこないかしら、魚野郎」
好戦的な朱理がそう口をこぼしているが、こんなところで出くわしたらむしろ困る。ここにシーマがいるということは避難している月の民が襲われていることを意味するのだから。
「月に到着すれば嫌というほど相手できるよ。それよりも永琳さんに頼まれた薬を運ばなくては……っ!」
前方で異様な魔力を感じる。何か大きい勢力が近づきつつあるのか?
「もしや新手のシーマ……いえ、ダークヘリオスは同胞の気配はしないと言っていますね。ではこの不穏な空気の流れは一体……?」
ただ一人「強者と戦える」と喜ぶ朱理を除き、近寄りつつある絶大な力に皆が身構える。俺もバイパーの魔力レーダーに目を通し他に異変がないかと見ていると、大きな魔力の塊から、いくつか小さな魔力が放出されるのが見えた。
「構えて、何か攻撃してきたわ!」
俺は蒼い刃「レイディアントソード」を展開し、迎撃準備に入る。何が来る……? いや、心の底では実は分かっていた。だが、その事実は認めたくないものでもある。その思いとは正反対に最も想像したくなかった結末を迎え始める。
「マスの目から離れろ!」
小さな魔力はジグザグに移動している。そして魔力レーダーによるとまるでマスの目を描くような軌道をしているのだ。恐らくは槐安通路全体に敷き詰められている「
果たして小さな魔力の正体が目視できる範囲にまで近づいてきた。光のラインを伝ってホログラム状のピンクと水色の球体が近づいてくる。反射的に俺はレイディアントソードで全てを斬り伏せた。さっそく朱理が啖呵を切り始める。
「出たわね、磯臭い侵略者め!」
「違うっ、こいつは……シーマじゃない。バイドだ」
そんなっ、そんなっ……。こんなことある筈が……。俺は確かに地底でバイドを全滅させた筈だ。だけれど間違いない。この槐安通路にはバイドの「グリッドロック(※1)」が潜んでいる。
いや、バイドは本当に全滅していたのか? 幻想郷からバイドを全て駆逐した後も異相次元には相変わらずバイドがひしめいていて、ジェイド・ロス提督や俺がそこに閉じ込められていたではないか。俺はあそこから幻想郷に戻ることが出来たが、もしや他のバイドも同じ方法で幻想郷に現れていたのではないだろうか?
「あの、アズマさん。いい知らせと悪い知らせがありますが……」
「ああ分かっている衣玖。いい知らせは『月の民の避難所が見つかった』。悪い知らせは『そこをバイドが襲っている』。間違いないか?」
ちくしょう。ただでさえシーマを相手しないといけないというのに、ここにきてバイドの生き残りとやり合う羽目になるとはな。
「とてもいいわ、その凛々しい目つき。これがマスターが戦う時の面持ちなのね。ゾクゾクするわぁ♪ さっ、シーマ狩りの準備運動といきましょ?」
相手が
(※1)グリッドロック
R-TYPE FINALに登場したボス級バイド。デジタル生命体と呼ばれる存在であり、逆流空間のマス目に沿って移動する。
赤いのがオスで青いのがメス。
※こちらは東方銀翼伝の原作にあたる作品に対して「エンダー・ヴァリー」氏が投稿した非公式の次回予告となります(それに対して筆者がビッグコアとして返答をしているという形式です)。
本人からの許可をいただいたので、この場をお借りして(一部修正して)掲載しております。
・次回予告(偽)
菫子「どうして私とそっくりな外来人が出てきたのにアズマは反応しないのよー!」
蓮子「いや、記憶喪失で宇佐見って言ってないから仕方ないですよ。蓮子も名付けてもらったんだし」
菫子「えー、姿で『ん?』ってならないの~?」
蓮子「意外と似てなかったんじゃないですかねぇ」
菫子「ぐぬぬ。蓮子との繋がりがあれば私だって味方としての出番が……!」
蓮子「いや、どうでしょ?私たちの関係は決めるの大変だし、会わずに謎ってことで放置されて私達が帰っちゃう可能性も……」
菫子「」
蓮子「次回『東方銀翼伝∀CE 第10話』!次回は命蓮寺での戦略回かしら?かなり怪しい首領蜂隊とどうやってくのか、乞うご期待!」
ビッグコア「言うほど似てるかなぁ? 似てるのは名前だけど、宇佐見の姓は出てないですし、おっしゃる通り蓮子の蓮は白蓮の蓮なのでそこで関連性に気づくことはないでしょう。宇佐見の姓が出てくれば何かしら反応があったんでしょうがね」