東方銀翼伝 ~超時空戦闘機が幻想入り~   作:命人

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ここまでのあらすじ

 月面で眠っている首領蜂隊の兵器の封印を解くために「衣玖」「ダークヘリオス」そしてエレメントドールの「朱理」と共に槐安通路を伝い月面を目指す「轟アズマ」と、彼の相棒である銀翼「アールバイパー」。

 槐安通路を使わせてもらえる代わりに永琳に頼まれていたおつかいを済ませるべく、さっそくここに避難している月の民と接触しようとするが、なんとそこを(つがい)のバイド「グリッドロック」が襲っていたのだ。

 恐れおののく月の民を2体のA級バイドから守りながら戦うは、たった1人の少女剣士「綿月依姫」。彼女を援護するために戦闘態勢を取るアズマであったが、不意を突かれてその体はバイド化してしまう。その際に大きな隙を晒したグリッドロックは依姫の一閃によって屠られ、さらに穢れを浄化する神様「伊豆能売」の力を借りた彼女によってバイド化した肉体を治してもらった。本来ならあり得ない現象にアズマはただただ驚くばかり。
 それと同時にそんな依姫ですら止められなかったシーマの強大さを思い知ることとなったのだ。

 ひとまずの脅威が去ったので、永琳に渡された薬を月の民に届けるべく、依姫の姉「豊姫」に月の民を呼び出してもらう。しかし広場に月の民が集結したタイミングで次元の壁を突き破り、ギンザメ型の新たなシーマ「ディメンションダイバー」が襲い掛かってきたのだ!

 その頃、地上では白蓮が蓮子の記憶、そして霊夢と紫の足取りを調査していた。白玉楼の幽々子によると霊夢も紫も冥界では見かけていない、つまり死んではいないことが明らかになった。幽々子も親友の行方が分からずに気が気でないのだ。彼女は月に与する勢力が怪しいから永遠亭を調査するようにと助言を与える。

 そして霊夢の足取りをたどる白蓮の存在を疎ましく思う存在の影も……!


第11話 ~逆転するホイールオブフォーチュン~

 先程までアールバイパーのいた場所に次元の壁を突き破り飛び出してきたのはギンザメのような姿をしたシーマ艦「ディメンションダイバー」。コイツは亜空間航行ユニットを搭載しており、亜空間に潜り込んだり出て来たりを繰り返す厄介な戦艦である。

 

 夢の中という普通の世界とは違う次元へ逃げ込んだ月の民に追撃を仕掛けるにはこれ以上ない逸材であろう。

 

 さて、こんな奴を黙って見過ごすわけにもいくまい。グリッドロック戦での汚名を返上するべく、アールバイパーを一気に接近させる。

 

「待つんだ轟アズマ。あのサメ野郎の傍に誰かいる!」

 

 なんだと? 後ろからかけられた声に反射的に引き留められ、銀翼は動きを止める。そしてディメンションダイバーの口周りをよく観察してみると……二つの姿が見えてきた。

 

 あろうことかディメンションダイバーの口に青色の何かが咥えられていたのだ。鎧のように鋭利なフォルムはシーマ艦の顎にしっかりとホールドされており特徴的な大きな一本腕を必死に振り回してもとても外れそうにない。

 

「あれはエンディミオンよ! それじゃあ、あの中に逃げ遅れた玉兎がっ……!」

 

 豊姫が叫び指差す先にはもう一つは真っ白い羽根を羽ばたかせている少女の姿もあった。エンディミオンを救い出そうとディメンションダイバーの顔面に弾幕を撃ち込んでいくが、びくともしていないようである。逆にシーマ艦が大きく頭部を振り回すことで白銀の羽を持った少女は地面に叩きつけられてしまう。

 

「近衛兵が……。ということは、最後まで月に残っていた筈の……」

「こいつ、羽が片方にしかないぞ!」

「ええっ、それじゃあやっぱりサグメ様なの!?」

 

 俺は地上で拾った妙なメッセージが込められていたオカルトボールのことを思い出していた。自分の星を助けてほしいと祈るようにお願いしてきた少女には鳥の羽が生えていたが、何故か片方だけであった。では地球に救難メッセージを送ったのはこのサグメと呼ばれた少女……?

 

 そのことが頭をよぎった瞬間、俺は再び反射的に銀翼をフルスピードで前進させていた。

 

 片翼の少女を救出しようとディメンションダイバーの真下を高速飛行する俺。その俺の頭上で鉄クズがバラバラと落ちてきた。こいつまさか……!

 

「ひいいっ……!」

 

 エンディミオンを嚙み砕きやがった! 恐らくは搭乗していた玉兎ごと。その証拠に奴の口から赤黒い液体が飛び散ってきたのだから。その様子を間近で目にしてしまい、純白の羽を飛び散る鮮血で汚したサグメは声にならない悲鳴を上げていた。

 

「酷い怪我をしているじゃないか。羽がもげている。これでは動くこともままならない筈だ。さあ、アンタの命を俺に預けてくれ」

「いや、あの……そうではない。羽が片方なのは怪我ではなく……」

「無理をするんじゃない。それに随分と震えている。肉体的な損傷だけではなさそうだな」

 

 それだけ言うと俺は半ば強引に震えているサグメの手を取り、アールバイパーの後部座席に座らせた。その際に朱理を追い出す形になり、彼女から猛抗議を受ける。

 

「ちょっと、私がやられたら作戦は失敗するのよ? 分かっているのマスター?」

「お前は生身でも空飛んだり戦ったり出来るだろ。ちゃんと守ってやるから今は怪我人の保護が優先だ」

 

 何処か恨めしそうな視線を残しながらも朱理は承諾してくれた。さて、俺は今するべきことを進めていく。

 

「依姫、今度こそ助太刀してや……あれ、どこ行った?」

 

 恐らくはディメンションダイバーと戦っているであろう依姫の姿が見えない。ついでに言うとディメンションダイバーも姿を消してしまっていた。周囲を見渡しその姿を探す。

 

 次に俺の目に映ったのは月の民が我を失い右往左往するという阿鼻叫喚の地獄絵図であったのだ。

 

「ひいいっ、穢れがっ! 穢れがぁー!」

「殺される、殺されてしまう!」

 

 蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う月の民の中心が再び盛り上がり、ギンザメの頭が飛び出した。飛び出したかと思うとすぐに地面の下に消えて、時折背ビレを見せつけて亜空間を泳いでいることを知らしめている。

 

 しばらく顔を出したままと思ったら口から滴り落ちる血を見せつけて恐怖心を煽っているようだ。血生臭い湿った息がこちらにまで吹きかかってくる。

 

「こいつ、わざわざ一人ずつ喰らっている。恐れおののく我々を楽しみながら殺しているんだ、そうに違いない!」

 

 パニックに陥り、秩序を失った月の民。そんな右往左往する彼らにもみくちゃにされている依姫と豊姫の姿をようやく発見した。

 

「みんな落ち着けっ! 恐怖を抱いたらそれこそ奴らの思う壺……姉様っ、こいつらを大人しくさせてくれ!」

「そんなこと言っても、さっきぶつかったときに私の扇子を落っことしちゃって……」

 

 なるほど、今ので豊姫の言おうとしていた月の軍隊の弱点が分かった気がした。シーマという「穢れ」を恐れて司令官が逃げ出してしまうのだ。結局指示を出す者のいない中、玉兎達が散り散りになって戦っても結果は見えている。つまり月の民を司令官にした結果、規律は生まれたが、より穢れに弱くなってしまったという事だろう。普通の敵を相手するのなら気にならないだろうが、何せ相手は「(穢れ)を司るもの」である。

 

「姉様の能力で安全な場所に瞬間移動させてよ!」

「安全な場所ってどこよー? 急に言われたって困るわー! あっ、扇子あった……って、いたぁい! 誰か私の手を踏んでるわよー!」

 

 ダメだ、綿月姉妹は逃げ惑う月の民に翻弄されて(そしてディメンションダイバーからの攻撃から彼らを守らなくてはならなくて)とても戦闘どころではない。

 

 確かに依姫ならシーマと互角以上に戦うことも出来るだろう。だが、彼女がここで思い切り力を振るったら月の民が巻き添えになるのは火を見るよりも明らか。強すぎる力が逆に足枷となってしまっているのだ。

 

「ここはマスターの出番ね。蜂の巣にしてやりましょ!」

 

 ならば月の民は同じ月の民に任せて、俺は外からやって来た侵略者を叩くことに集中する。

 

「ネメシス、コンパク。流れるように仕掛けるぞ。朱理も後に続いてくれ」

 

 月の民を襲おうと再び間合いを詰めるディメンションダイバー、奴の行く手を阻むようにオプションを展開して横切る。フォーメーションはトレースだ。新手の敵に気付いたギンザメはこちらに注意を向けた。今だっ、グラビティバレット!

 

 横滑りするような形で銀翼をギンザメ野郎の鼻っ面の前に躍り出ると、すかさず疑似ブラックホール弾を撃ち込む。バイパー本体、ポッド、ネメシス、コンパク、そしてゆっくり霊夢と次々と発射し、そしてすべて着弾した。怯んだところを朱理がオレンジ色のレーザーで追撃を仕掛ける。放つ光線と同じ鮮やかな色をしたオーラが彼女の全身を包み込んでいた。

 

 ふいにディメンションダイバーの頭部が消える。いや、あれは亜空間に身を隠したんだ。慌てずに俺は振り向いた。やっぱりそうか、頭だけ俺達の背後にワープしてだまし討ちを仕掛けようとしていたのだ。

 

「そんな小細工は通用しないんだよっ!」

 

 宙返りして青い剣を展開する。今度はレイディアントソードによる斬撃を浴びせた。三枚おろしにしてくれるっ! 斬りつけられて再び怯んだディメンションダイバーはまたしても頭を引っ込めて逃げ出そうとしていた。

 

「追い払えたか?」

 

 魔力レーダーに目をやると、ディメンションダイバーと思しき大きな反応がみるみる離れていくのを確認できた。シーマはあくまでクラウンピースの炎によって操られた被害者。なるべくなら破壊しないでおきたい。

 

「そのようですね。このことを皆にも伝えましょう!」

 

 安堵の息を漏らす衣玖を尻目に、今ももみくちゃになっているであろう依姫たちを救出しようと先程の広場まで戻ることにした。

 

「シーマなら追い払いましたよ。少し痛めつけたら逃げていきました! しばらくはここにも来ないでしょう」

 

 ありったけの声を張り上げて広場の依姫達に報告をする。ひとまずの平穏を得たことを知り、暴徒と化した月の民が落ち着きを取り戻していく。

 

「やるじゃないか轟アズマ、地上人にしては上出来だ。そこらの玉兎よりも根性もあるし腕は確かなのだろう」

 

 衣服の乱れをパパッと直しながら月の剣士から賞賛の言葉を貰う。

 

「俺達はこれから奴らを無力化するために月面に向かう。作戦が成功すれば月の都も奪還できるだろう。だからあともう少しだけ、ここの民を守ってあげて欲しい」

 

 それだけ告げて集落を抜けようとした矢先、いつになく鋭い声を突き刺してくるのは依姫の姉であった。

 

「待って、さっきのサメさんはどっちへ逃げていったの?」

 

 ん? 今になってどうしてそれが気になるのだろう?

 

「お姉様、彼奴の戦い方ならもう覚えたわ。もみくちゃにされながらも観察してたから。今度ここを襲ってきても不意打ちは絶対喰らわない」

「そうじゃないの。本当に逃げただけなのか確信が持てないのよ。今からでもわかる?」

 

 何か考えがあるらしいが、ええっとどっちだったかな……?

 

「あの魚野郎なら北の方へ逃げていってたわ」

 

 こういう時にロボットの記憶力は役に立つ。そして方角を知ったうえで豊姫は何か確証を得たようである。

 

「あのサメさんは決して逃げたわけではない。ここから北の方角といえば……分からないの依姫?」

 

 少なくとも俺や衣玖にはさっぱりわからない。依姫も首をかしげているのみ。皆が何のことか考えていると、弱弱しい声で後ろから答えが聞こえてきた。

 

「ドレミーだ……。奴の狙いはドレミー・スイート。この槐安通路の管理者である彼女を直接叩いて、この夢の世界ごと我々を消そうって魂胆なのだろう」

 

 なんだとっ! 豊姫の嬉しそうな反応を見る限りそれで正解なのだろう。だが、どうすればいい。いくらアールバイパーが素早いからといってディメンションダイバーみたいに瞬間移動の出来るような奴には追いつけるわけがない。せめてこちらもワープとかできればいいのだが、あいにくアールバイパーにそんな機能はない……。

 

「そうよ正解。さすがサグメ様。だけど、私達を敵に回したのが運の尽きといったところね。さて、目的地もハッキリしたことだし、あのサメさんのところまでアズマ君を一瞬で案内してあげるわ」

 

 何処からか取り出した桃をかじりながら得意気になる豊姫。もみくちゃにされていた時に瞬間移動がどうのこうのと言われていたが、彼女の能力なのだろうか?

 

「なるほど、豊姫もワープの使い手なんだな? ならば話は早い。この俺をギンザメ野郎のところへ……あれ、どこいった豊姫?」

 

 気が付くと綿月姉妹の姿はなく、大きなギンザメ型戦艦に睨まれた少女の姿が目の前に飛び込んできたのだ。

 

「うわあああっ! まだ心の準備が出来てないし、サグメが乗っかってるまんまだし! せめてワープするタイミングを教えてくれよぉ!」

 

 大口を開けて食らいつかんと飛びかかるディメンションダイバーをどうにかレイディアントソードを振るって奴の体を思い切り弾くことで凌いだ。先程のことが頭をよぎったのか、サグメはふるふると震えている。

 

「安心しな。あんたのことも、ドレミーとかいう子もちゃんと守ってやる。さあ、すぐに片を付けるぞ!」

 

 普通にやり合うのでは分が悪いと判断したのか、ディメンションダイバーは大きな口をこちらに向けてきた。その大口を開けて赤い光を収束させ始める。ビーム合戦を仕掛けるつもりだな。いいだろう、受けて立ってやる。

 

「ネメシス、コンパク、ゆっくり霊夢、ここはワイドフォーメーションだ! 魔操術『魔界神の大翼』を決めるぞ!」

 

 銀翼本体の後ろを包み込むように3つのオプションが並ぶ。そしてそれらから純白の羽が生えた。この羽が周囲の魔力を吸収していくと紫色に変わっていくのだ。溜め込んだ魔力を用いて全力のαビームを放つ。それがシーマの用いるβビームへの対抗策として最善なのである。

 

 だが、奴はまるで俺がそうすることを予見したかのように、尾ビレだけを亜空間に潜り込ませた。

 

「……っ!」

 

 どうやらその尾ビレでアールバイパーの真後ろに陣取っていたネメシスを薙ぎ払ったらしい。フォーメーションが崩れて魔界神の羽が維持できなくなる。弾き飛ばされたネメシスは朱理がキャッチしてくれたものの、大きな隙を晒してしまったことには変わりない。

 

「βビームが来るわっ! エネルギーが足りていない、避けることを推奨するわ」

 

 そしてこの小さな事故は奴にβビームを撃たせるには十分すぎる隙となったのである。仕方あるまい、朱理の提案通り一度回避するか?

 

「アズマさんっ、ですがここで避けたら後ろの集落にビームが着弾することに」

 

 なんだとっ……! 衣玖の指差す先には月の民の集落。あそこには綿月姉妹がいるとはいえ、流石にこんな遠距離からのビーム攻撃には対処できない筈だ。

 

 俺はかつて地底で流体金属のバイド「Xelf-16」との戦闘で、奴のビーム攻撃を許してしまったせいでジェイド・ロス提督の艦隊が壊滅状態に陥ったことを思い出していた。このまま逃げてしまっては同じような悲劇が引き起こされてしまう!

 

 ではどうするべきだ? 残されたもう一つのオプションで羽を展開してそれで受けきるか? いや、シーマ艦のβビームを羽で全て受け止めてしまっては俺の体がもたなくなる。

 

 何よりも既にβビームは放たれている。猶予が全くない。ええい、一か八か、今からでも魔界神の羽を展開して、魔力を補充しながらこちらも撃つしかない!

 

「全無『αビーム』!」

 

 温存していたポッド型のオプションを展開すると同時に、ディメンションダイバーから放たれた赤いビームに比べるといささか控えめな太さの青いビームを放つ。

 

「なるほど、受け止めながらエネルギーの補充をするんですね!」

「その諦めぬ闘志……これは勝てる!」

 

 事情の知らない衣玖とサグメは今のαビームで打ち勝てると確信しているようだが、俺とあと朱理は絶望的な表情を浮かべている。

 

「マスター、あのビームを跳ね返す程のエネルギーを賄えないのは明白よ。やっぱり避けて!」

 

 ちくしょう、やはり魔力の供給が間に合わないか。このままではαビーム分の魔力も奪われてより強力なβビームが俺達を、そして後ろの集落を襲うことになる。

 

「ダークヘリオス! このままだと俺は負けちまう。バーストリンクだ。お前のバーストも撃って加勢してくれ!」

 

 必死に呼びかけるのだが、ダークヘリオスは動こうとしない。

 

「同族に引導を渡すことに躊躇っているんです。あの時と同じで……」

 

 何度かバーストを放とうとはしているのだが、その途中で二の足を踏んでいるようである。そうしているうちにアールバイパーから放たれたαビームの勢いが減衰していく。もうダメなのか……!

 

「えっ、αビームが勢いを取り戻した? どういうこと?」

 

 信じられない現象に朱理が目を丸くしていた。今にも消え入りそうだったαビームがみるみる勢いを取り戻していくのだ。それだけではない。気付くとディメンションダイバーのβビームを飲み込まん勢いでビームが成長していたのだ。

 

「ダークヘリオスか? ついに決心をして?」

「いいえ、彼は何もしていないようです」

 

 衣玖が言う通り、ダークヘリオスは臨戦態勢ではない。それではどうして? ええい、理由は後で考えればいい。今は目の前の敵を倒そうではないか。勢いを取り戻した青い光線はギンザメ型戦艦を貫き、そして爆破させた。飛び散る閃光に俺は思わず目を覆う。

 

「ああ、私はなんて恐ろしいことを。今のビーム合戦に勝てたのは私が口に出してしまったからだ」

 

 ディメンションダイバーの残骸を目にしながら声を震わせるのは後ろに座らせているサグメのものであった。どうやら彼女、起きている現象に関して何か口にすると、その運命を逆方向に加速させてしまうという凄いのだけれど制御のきかない能力を持っているらしいのだ。

 

 つまりあのままだと俺はディメンションダイバーに負けていたところをサグメが何かコメントを残したために、その運命が逆方向に働いたということらしい。確かに急にαビームの勢いが増していた。

 

 しかし同時にディメンションダイバーは助かるという運命までもを逆転させてしまい、今は残骸となっているというわけだ。妙に無口なのはそれが原因だったのか。

 

 さて、今度は今の状況に着目しよう。あまりに大きな爆発だったのでこの夢の世界の壁を壊し、向こう側に行けるようになっていた。

 

壁の先には地球ではない全く別の星が見える。表面はクレーターだらけであった。そう、いよいよ俺達はたどり着いたのだ。シーマのウヨウヨいる月に。

 

「さあ、いよいよ敵の本拠地だ。気合を入れていくぞっ!」

 

 同胞を救えず何とも微妙な面持ちのダークヘリオスと彼の傍に寄りそう衣玖。しかし既に起きてしまったことはひっくり返りようのない事。そう割り切ったのか、二人とも俺の後に続いていった。

 

 

 

__________________________________________

 

 

 

(その頃の地上、迷いの竹林……)

 

 幽々子から「今回の異変は月に与する勢力が怪しい」という情報を得た白蓮と蓮子は永遠亭を目指すために、迷いの竹林へと入り込んでいった。

 

「迷子にならないようにしっかりと手を繋ぎましょう」

 

 伏し目がちになる蓮子は無言でコクンと頷く。元気がないのも無理はない。ここは蓮子がメンダコ型の戦艦に襲われた場所でもあるのだ。そのことに気が付いた白蓮は蓮子の背中を優しくポンポンと叩く。

 

「大丈夫、今度悪い奴がやってきても私が追い払ってみせます。だから蓮子さん、あんまり私から離れないようにね?」

 

 無言でコクリと頷く蓮子を気遣いながら竹林を進む。すると蓮子が短く悲鳴を上げた。

 

「今足元に何かチョロチョロとしたものが……ヒッ、まただ!」

「竹林なのですから色々な生き物だって住んでいます。ネズミでも通り過ぎただけでは……っ!」

 

 ネズミは普通空を舞ったりはしない。蓮子の足元をかすめていった物体は次に大きく飛翔すると二人の目の前にその姿をさらす。それはアリジゴクのような大きなアゴを持ち、サソリのような細長い尻尾を持った一つ目の怪物であったのだ。蓮子の脚をくすぐったものの正体は奴の尻尾である。

 

「そこの妖怪、今すぐに立ち去りなさい。蓮子さんに手出しするようなら容赦はしませんよっ!」

 

 虹色に光る巻物を広げ、戦闘態勢を取る白蓮。こんな状態でも、そしてこのような相手でもまずは戦わないようにすることを心がけるのが彼女である。しかし相対する妖怪の方はそのような考えを持ち合わせていないらしい。その大きなアゴをガチガチと鳴らし、仲間を呼び始める。次々と虫の妖怪が集まっていく。

 

「そちらがその気ならば仕方がありません。いざ、南無三っ!」

 

 妖怪といえど、奴らの大きさは人間に比べてもかなり小さい。ちょうど上海人形よりもちょっと大きいくらいのサイズである。それらが群がってきても既に身体強化の呪文を詠唱していた白蓮の敵ではない。あっという間に弾幕が、その拳が未知の妖怪をなぎ倒していく。数匹退治したところで、散り散りになって逃げて行ってしまった。

 

「見たことのない妖怪でしたが、一体何だったのでしょう……? 蓮子さん、私の後ろに隠れていてください。どうやら今の妖怪達の親玉が近づいているようです」

 

 戦う事の出来ない蓮子を庇うように両手を広げると、白蓮は近づきつつある敵に警戒を始める。

 

「ヒヒヒヒ、ここで会ったが百年目。俺様はまたまた地獄の底から蘇ってやったぞ!」

「あ、貴方は確か……ええっと誰でしたっけ?」

 

 大きな脳味噌に大きな一つ目。そこに2本の太い触手を持った妖怪が二人の目の前に現れる。奴こそがバクテリアン軍の生き残りである「ゴーレム」である。しかし白蓮は奴のことをまったく覚えていないようだ。

 

「ズコー! この俺様のことを忘れるんじゃないよ! ゴーレムだよ、ゴーレム! うん? なんだ、銀翼の末裔はいないのか? まあいいや、お前にも消えて貰おうと思っていたからな。銀翼の末裔はメインディッシュにとっておこう」

 

 喧しいしゃがれ声の後ろから巨大な影が音もなく現れる。青色の球体であるコアを持ったバクテリアン軍の戦艦であった。通常のビッグコアのようなフォルムの左右に大きな筒があり、そこから大きなシャボン玉を撃ち出している。

 

「『あのお方』の依頼なのでな。カネもタンマリ貰ってるし、悪いが二人とも消えてもらうぜぇ、ヒヒヒッ。行けぇっ、巨大戦艦『バブルコア(※グラディウスIVの泡ステージに登場するバクテリアン戦艦。泡とレーザーによるコンビネーション攻撃に注意)』!」

 

 それだけ口にするとゴーレムはバブルコアと呼ばれた戦艦の後ろに隠れてしまった。大筒から色とりどりのシャボン玉が撃ち出される。

 

「はぁっ!」

 

 近づくシャボン玉を手刀で斬りつけると、しぶきを上げて泡は消えてしまう。だが、そのしぶきが白蓮のスカートの裾に飛び散ると、シュウシュウと溶け始めたのだ。

 

「強酸の液体で作られたシャボン玉さ。泡や水しぶきに触れると骨まで溶かすぜ。キヒヒヒ!」

 

 今度は金色に光るサーベルを展開し、泡を処理していく。水しぶきが飛ぶよりも早く、白蓮は大きく飛翔しながら少しずつシャボン玉の発生源へと近づいていく。焦るバブルコアはそんな白蓮を狙い撃つように4本の細いビームで狙い撃つが、虹色の軌跡を残しながら縦横無尽に動き回る彼女を捉えることはできない。

 

「いざ、南無三!」

 

 魔人経巻の模様を纏った光が右腕で渦巻き始めると、バブルコアの遮蔽板を瓦割りの要領で全て真っ二つにしてしまう。今度は剥き出しになったコア目がけて追撃を仕掛ける。

 

「キヒヒ! かかったな。シャボン玉が簡単に割られることなんて計算済みよぉ。この中に恐ろしいモンスターを仕込んでいたのさ。後ろを見てみなっ!」

 

 不敵な笑みを浮かべるゴーレムに背筋がゾクリとする。白蓮は言われたとおりに振り向き、青ざめた。そこには先程追い払った筈の虫の妖怪達が蓮子に群がっているではないか。

 

「蓮子さんっ!」

 

 振り向いたことによって彼女にも隙が出来る。ゴーレムはこの瞬間を見逃しはしなかった。住職サマにも同じ虫の怪物をけしかける。まとわりつかれて白蓮も動けなくなってしまった。

 

「どうだ、身動きできないだろう? こいつらは『オプションハンター』! 圧倒的な防御力と機動性、そしてその名の通り取り付いたものを支援するオプションを喰らうバクテリアン軍きっての生物兵器なのさ。ヒヒヒヒ!」

 

 ここで白蓮は何か違和感を感じる。ゴーレムはあくまで機動力と防御力のことしか話していなかった。もしかしてこいつらはオプションを食べる事しかできないのではないだろうかと。事実、蓮子に群がっていたオプションハンターは次々と離れていく。

 

「あ、あれ……? お前ら、オプション使わないの? ちくしょー、これじゃあ意味ないじゃん! こんなことなら多少耐久性に難があっても『エニグマ(※グラディウスIIIの泡ステージ終盤に登場するザコ敵。泡の中に潜んでいて、泡が割れると自機を追いかけてくる)』の方にするんだった!」

 

 そうやって悔やむ脳味噌の前には無言でオプションハンターを引き剥がした住職の姿があった。彼女の後ろではコアをサーベルで貫かれ爆発四散するバブルコアの姿も。

 

「さて、貴方には色々と聞きたいことがありますが……」

「ええい、今日の所はこれくらいにしてやる! だが覚えておけ。『あのお方』は何としても『博麗の巫女』に近づこうとするお前らを滅ぼすおつもりだ。さぁて、どこまで逃げおおせることができるかな?」

 

 捨て台詞を残してゴーレムは一目散に逃げていった。

 

 脅威の去った後に白蓮が最も気になる事、それは蓮子のことであった。戦う力を持たない外来人があれだけの数の妖怪に群がられたのだ。

 

「蓮子さんっ、怪我はありませんか?」

「まとわりつかれて怖かったけど、でも奴らは何もしてこなかったわ」

 

 外来人の体を素人ながら確認するが、白蓮には怪我らしい怪我を見つけることはできなかった。だが、彼女の体が小刻みに震えているのは明白である。そんな華奢な外来人の体を白蓮は優しく抱き留めた。

 

「よしよし、怖かったですね。貴女を守るというのは怪我をしないという意味もありますが、怖がらせないようにするという意味も含めたのです。なのにちゃんと守り切れなくてごめんなさい……」

 

 肩に顔を埋めて表情は確認できないが、白蓮は声の震わせ様から、そして肩に染みる涙の感触から、泣いていることはよく理解していた。ただただ白蓮はそんな蓮子の頭をナデナデする。

 

「そんなに自分を責めないで。私一人だったらやっぱりやられていたもの。ありがとう、白蓮さん」

 

 心に落ち着きを取り戻した蓮子からの一言は白蓮の心を何よりも安堵させた。さて、二人の行く先にいよいよ永遠亭の姿が見えてくる。

 

「さあ蓮子さん、あと少しですよ」

 

 ギュっと繋いだ手を揺らし、白蓮は永遠亭へ一直線に向かった。

 

 

 

__________________________________________

 

 

 

(その頃幻想郷某所……)

 

「ヒィー! 申し訳ございません、申し訳ございません!」

 

 戦艦「バブルコア」を失い、身一つで逃げ落ちたゴーレムはその雇い主から手厳しいお仕置きを受けていた。散々説教され、ようやく解放されたゴーレムは彼女の後姿を恨めしい目つきで睨み付ける。

 

「ちくしょうめ、何が『カネの対価分は仕事してもらわないと困る』だ。あんな奴、ゴーファー様が復活したら真っ先に血祭りにあげてやる」

 

 雇い主が姿を見せなくなったのを確認し、誰に告げるでもなくただただボヤく。

 

「まあいいや、『あのお方』はそれでも俺様にカネを支払ってくれた。だけど、貰ったカネはなるべく早く使わないとな。いずれこんなもの何の役にも立たなくなるんだから。まったく、恐ろしいこと考えるよ『あのお方』は……。まっ、ゴーファー様を復活させることさえできればどうでもいいんだがね、俺様は。キヒヒヒ」

 

 次の作戦でもあるのか、ゴーレムもまた姿をくらませた。




※こちらは東方銀翼伝の原作にあたる作品に対して「エンダー・ヴァリー」氏が投稿した非公式の次回予告となります(それに対して筆者がビッグコアとして返答をしているという形式です)。
本人からの許可をいただいたので、この場をお借りして(一部修正して)掲載しております。



・次回予告(偽)
ゴーファー「……」
バニシングコア「本編の様子、遂に我々が戻ってくる機会も遠くなさそうだな!」
サークルコア「ゴーレムの奴、一体どんな策を用意してくれてるのやら……」
ゴーファー「おのれ……」
バニシングコア「ゴーファー様もやる気満々じゃん」
サークルコア「あの憎き銀翼を血祭りにする日も近いな」
ゴーファー「おのれゴーレム!我を差し置き銀翼シリーズにおける敵役としてすっかり定着しおって……!ずるいぞ!」プンスコ
バニシングコア「えっ」
サークルコア「えっ」
小悪魔「次回『東方銀翼伝∀CE 第12話』。果たしてゴーレムはお金で何をしようとしてるのでしょうか?」
ゴーファー「次会ったら文句を言ってやらねば!」
ゴーレム「ファッ!?」


ビッグコア「遊戯王カードになっていない方のゴーファー様は戦闘要員として出てきてもほとんど何もできないので、要塞の奥でデンと構えて我々に指示を出しててください。ゴーレムも銀翼を強く意識して戦地に赴いていたようです。そこにはいなかったんですけどね。おかげでオプションハンターも無駄になってしまいました」


・次回予告こぼれ話
しかし、銀翼でああいう直接的なグロい演出は結構珍しいですね。いやまぁ、リリーホワイトの件があると言えばあるけども。対象は妖精だったし
どうでもいいですが、あの月の民Aさんは女性?


ビッグコア「月の民は『死=穢れ』を恐れるって描写をしたかったので。なので血しぶきがかかってしまったサグメも声にならない悲鳴を上げていました」
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