月面に眠る「首領蜂隊」の兵器を目覚めさせるべく「衣玖」「ダークヘリオス」「朱理」と一緒に月面までたどり着いた「轟アズマ」と相棒である銀翼「アールバイパー」。
途中でサグメと合流し、月の裏側まで到達するが、ここで「クラウンピース」と彼女が使役するシーマ艦「ファイアフォスル」が行く手を阻んできた。
応戦するアズマであったが、いくら攻撃を加えてもたちどころに復活してしまうクラウンピースとファイアフォスルに押されてしまい、戦況は芳しくない。
そんな中、衣玖は秘策を思いついたようだが……。
一方の地上では白蓮と蓮子を襲った「ゴーレム」から「八雲」の名を持つ雇い主が香霖堂に出入りしていたことを聞きだし、「霖之助」に話を聞きに行こうとするも、その途中でまたしても邪魔が入り白蓮は最後まで話が聞けなかった。
香霖堂を襲撃して蓮子と霖之助をさらった本人こそゴーレムの雇い主「八雲藍」なのであった。
「宇佐見蓮子は幻想郷を破壊するためになくてはならない存在」それだけ口にすると藍は八雲亭へと姿を消してしまった……。
「どうか私が準備を終えるまで、時間稼ぎを行ってください!」
幻想郷の月面には大気がある、そのことに気が付いた衣玖は何かいい作戦を思いついたらしく、俺達に敵の注意を引きつけるようにと頼んだ。
どの道俺にクラウンピースをどうにかする術はないのだ。ダークヘリオスや朱理と連携を取って奴らの注意を分散させよう。そうと決まればできるだけ消耗しないようにこちらも粘り強く戦う必要がある。
「あの月の形をした弾が厄介だ。バーストリンクで吹き飛ばすぞ」
息を合わせて同時にバーストを放つ銀翼(正確にはネメシス)とダークヘリオス。二つの細い光の槍は交差してより強力なバーストビームとなり、大きな月を砕いた。
これ以上の抵抗は無駄と悟ったのか、彼女はまた別のスペルカードを掲げた。
「獄符『フラッシュアンドストライプ』」
詠唱の直後、横殴りの赤いレーザーが「ストライプ」の名前の通りかなり狭い感覚で撃ち出される。
「ぐっ、バーストビーム!」
光の盾で防ごうとするも逆に赤いストライプがバーストビームをへし折ってしまった。レーザーを喰らい、アールバイパーは大きく吹き飛ばされる。だが、それよりも深刻なのはダークヘリオスだ。無数の赤い
低く鳴り響く悲鳴はダークヘリオスのもの。貫かれた箇所から赤い粒子が漏れ出ており、時折骨と思われるもの(白ではなく金色だった)が見えてしまうほどに肉がえぐられている箇所まであった。
「ダークヘリオス! 大丈夫っ?」
その反応を見ていたクラウンピースは狙いをダークヘリオスに絞る。更に赤いレーザーを照射するべく狙いを定めていた。更に朱理と戦っていた筈のファイアフォスルまでもがこちらに接近してくる。
「きゃははは、ウナギのかば焼きになっちまえ、ファイヤー!」
あれだけの集中砲火を受けたら巨大戦艦といえど無事ではない。俺は立ちはだかるようにダークヘリオスの前に立ちはだかり、オプションを自分を囲うようなフォーメーションで固めた。
頼む間に合ってくれ……。
「魔操術……」
背後に展開したオプションから純白の羽が大きく広がる。神綺さんの持つ羽にそっくりなものだ。
「『魔界神の大翼』!」
間に合った。あの赤い矛はあくまで光学兵器。実体を持たない攻撃ならこの魔力の翼で受け止めることができる。両者の攻撃が全て魔界神の羽に吸収された。急速に銀翼に流れ込む魔力に俺の体は拒絶反応を示した。
「ぐっ……」
息が詰まる! どす黒く変色した魔界神の翼は過剰なまでに魔力を含んだ証。人間の俺には到底耐えられない濃度だ。すぐさま眩い金色の光に包まれ、バジュラモードを発動させる。
『ガガ……ガ……
Variable
Arsenal,
Jet and
Resistance for
Assault.
Earl Viper...VAJRA MODE!!』
すぐさま蓮の蕾が4つ、アールバイパーの背後に展開された。大切な人である、俺の命の恩人である白蓮とお揃いのフォーメーション。力を貸してくれっ、いざ……南無三っ!
「大魔法『魔神復誦』!」
蕾から赤いレーザーと青い鱗弾を乱射する。横切る赤いストライプが銀翼を容赦なく貫こうとするが、バジュラモード時は金色の燐光を放つ紫色のフォースフィールドがあるので、ある程度は耐えることができる。
このままでは押し切られると思ったか、クラウンピースは宙返りをしながらまた別のスペルカードを掲げてきた。
「『フェイクアポロ』!」
ダメだ、奴の魔力は無尽蔵なのだろう。今度はあの偽物の月を3つも一気に呼び出して、それぞれを回転させてこちらに飛ばしてくる。しかも今度の月は時折紫色の放射弾まで放ってくるのだから始末に負えない。
あの月を砕くには俺だけの火力では足りない。ここは「相方」と息を合わせる必要がある。
「もう一度バーストリンクを決めるぞっ」
横目でダークヘリオスをチラと見てサインを送ると、エラを変形させてダークヘリオスがバーストの準備に入る。出来るだけ銀翼をその長い巨体と寄り添うように近づけると、こちらもネメシスにバースト砲を撃たせる。
二つに合わさったバーストが偽物の月に着弾。わずかに回転が弱まり、こちらに迫る勢いが弱まるものの、完全には止まらない。
「うおぉぉ!」
心が折れてはいけない。更に気合を入れてバーストを撃ち込む。ようやく3つあるうちの1つを打ち砕いた。だが、他の月を対処する猶予は俺達には残されていなかった。
すんでの所でダークヘリオスが尾を伸ばして俺を庇う。月が紫色の巨体にめり込んでいく。
「無茶をするな! お前だって手負いだろう?」
唸り声を上げながら2つの月型弾を押し返そうと踏ん張るダークヘリオス。それでもその勢いは止まることなく、ガリガリと体が削れているのがこちらからも分かった。
「もうやめるんだ! それ以上は……」
口元でニヤリと笑ったのはクラウンピース。不意に月の勢いが増してダークヘリオスは弾き飛ばされ、その後ろにいた俺も思い切り上から殴りつけられるように月型弾に被弾、地面に叩きつけられた。
見上げると朱理もファイアフォスル相手に押されているのが分かる。倒しても倒してもその炎を再び灯し、何度でも立ち上がるのだ。消耗戦に持ち込まれてはこうなる事は分かっていた。
「さすがに……疲れてきたわね。ねえ衣玖、準備はまだできないの?」
強がっているつもりなのだろうが、その声に最早覇気はない。衣玖からの反応も特にみられない。
「あははは、あたい達は『友人様』がいる限りたちどころに蘇っちゃうのさ。じゃあそろそろオシマイにしようか。ファイアフォスル、でっかいのよろしくね♪ イッツ、ルナティックターイム!」
高々と松明を掲げ、高く飛翔すると、そこから眩い光を放つ。俺達にとどめを刺すために。
口角をこれでもかとつり上げて、愉悦の表情を浮かべている。しかしそれはクラウンピースだけではなかった。
「自らの勝利を確信した時、そこに最も大きな隙が生まれる。空気の流れを変える契機が訪れるものですね」
俯いていた彼女は黒い帽子からわずかに目をのぞかせ、アメリカンな妖精に目をやっている。だが、俺からは彼女の表情が見えていたのだ。そう、背後で「作戦」の下準備とやらに勤しんでいた衣玖もまたニヤリとしていたのである。
それだけ言い終わると衣玖さんはビシとクラウンピースを指さした。直後、まばゆい光が彼女を包む……いや、光は空から落ちてきた。数泊おいて轟音響く。見上げてよく見ると月が黒雲で覆われているではないか。これは落雷だ。
雷は高いもの、尖ったものに落ちる。そうか、奴が松明を掲げる癖を見ていた衣玖はこの瞬間をずっと待っていたのだ。
「幻想郷の月には大気がある、それはつまり私の能力で上空の気圧だけを低くし、雷雲を呼び寄せることも可能という意味でもあります。奇しくもこれだけ炎を燃え上がらせて大気の温度も急上昇とあれば、上昇気流も発生し、そして雷雲だって発生するでしょう」
最大で10億ボルトにも達すると言われている雷。それをモロに喰らった彼女はひとたまりもない。もちろん妖精の体で受け止められるはずもなく、黒焦げになって力なく落ちていく。
「だからぁ、無駄なんだって。いくら『一回休み』にしたって『友人様』の傍にいるあたいはたちどころに……」
炎に包まれてまたしても不死鳥のごとく蘇ろうとするクラウンピース。あのままではまたたちどころに復活してしまい、戦況が振出しに戻ってしまう。
だが、衣玖にはこうなる事も予見済みであったようだ。クスクスと口元を手で覆いながら笑って見せている。
「ですから私の能力と妖精さんのまき散らした炎の熱で積乱雲が発生しているんです。雷だけで終わるわけないでしょう?」
直後、アールバイパーのキャノピーに大粒の水滴がポタリと落ちた。一つ落ちたかと思えば二つ三つと加速度的に増えていき、最後はザアザアと土砂降りになってしまった。
「えっ、雨? しまった……!」
このようなバケツをひっくり返したような大雨の中、松明の炎が維持できる筈もない。どうにか肉体の復活は終えたクラウンピースであったが、炎はすっかり消えてしまい、それ以上炎を発することは出来なくなってしまった。誰よりも驚いていたのが朱理である。
「天気を操作したって? 随分と掟破りなことするわね」
豪雨はファイアフォスルにも容赦なく襲い掛かり、モウモウと白い湯気をまき散らしながら、その熱は完全に奪われてしまっていた。湯気が晴れると、その巨体は力なく墜落し、動かなくなってしまった。あれだけ酷使されたのだ、敵とはいえ惨い最期ではある。
「って、よく見るとファイアフォスルじゃないぞ! こいつは『クイーンフォスル』だ」
なんということだ、ファイアフォスルだと思っていたのは高熱のあまり金属の体が赤熱していたクイーンフォスルであったのだ。炎で焼かれるだけでも過酷だというのに、肉体が滅びかけると無理矢理炎で狂わせて戦わせていたのだ。
「この腐れ外道めっ!」
逃げようとしていたクラウンピースを逆回転リフレックスリングで捕まえる。ずぶ濡れになり、松明の炎も失った彼女は最早何もできない。いまだ留飲は下がらないが、こいつを殺したところで事態は好転しない。むしろ生かさず殺さず無力化した状態で捕虜にした方があとあと有利になるだろう。ゆえに俺は捕まえるだけにすることにした。
「ブルブル……くしゅん!」
ずぶ濡れのままなので、体も冷えているのだろうが、下手に熱を与えるとまた松明で悪さをしかねないので無視。ひとまずロープでグルグル巻きにしてネメシスに引っ張らせることにした。
「ひどいやひどいや!」
「今までお前がしてきたことに比べれば随分とぬるい処遇だと思うがな。次に何かしでかしてみろ、今度こそ地獄の底に叩き落としてやるからな」
衣玖が呼び寄せた大雨はしばらく上がりそうにもない。これでゆっくりと首領蜂隊の兵器を探すことが……。
「いいえマスター、探すまでもないわ。すぐ近くで強烈な反応が見られるの」
何という偶然か、いつの間にか俺達は目的地に到達していたのだ。周囲を見渡すと妙に細長い(2、3メートルくらいだろうか)不自然な岩の柱が見えた。まさかコレなのか?
「さすがマスター。そうよ、この地下に兵器が封印されているの。あとは私に任せなさい。もう少しでミッションコンプリートよ」
これで戦争は終わる……。幻想郷から出撃する首領蜂隊と、月面から迫るこの兵器群で挟み撃ちにされたらさしものシーマも混乱し、壊滅してしまうだろう。岩の柱に手を伸ばそうとする朱理であったが、その前に立ちはだかる姿があった。クラウンピースは動けない筈。ではいったい誰が……?
「……」
いつになく真剣な面持ちで両手を広げてゆく手を阻んだのは衣玖とボロボロになったダークヘリオスであった。
「何のつもり?」
その行動が信じられないと言わんばかりに困惑しながら朱理はつっかかっている。
「やっぱり、こんなことはやめましょう。貴女達の作戦を進めていったら……」
言葉を詰まらせた衣玖はダークヘリオスに目をやる。その瞳はどこまでも悲しげであった。
「このままここの兵器を出撃させたらきっとシーマは全滅してしまう。そして、ダークヘリオスは一人ぼっちになってしまうわ」
元々は幻想郷を制圧しようとするシーマを倒すための作戦なのだから、当然である。だが、どうしてシーマは幻想郷を襲うのか、それはクラウンピースとその「友人様」とやらがそう狂わせて操っているからに他ならない。なるほど、確かに一理ある。だが朱理はというと……。
「バカバカしい」
「なんですって……!」
さも呆れたと言わんばかりの口調で心からの訴えを斬り伏せてしまう。さすがに衣玖もこれには顔をしかめる。
「そんなすぐにシーマなんて全滅しないわよ。そもそもこの封印を解くのにだって時間がかかるんだし。だからアンタ達は私に構わず行きなさい。私はここでするべき事を進めてるから、アンタはマスターと一緒に諸悪の根源を叩いて頂戴」
そうやって発破をかけるように衣玖を追いやる朱理。
「朱理さん……」
「頭さえ叩いてしまえば戦争は終わる。さあっ、モタモタしている暇はない筈よ? 私達にアンタの友達の同胞を殺されたくなかったら、とっととピエロ野郎が言う『友人様』とやらを倒してきなっ!」
言葉に心打たれ衣玖は決意の面持ちを浮かべ、前を見渡す。
「奴の反応は近い。方向はあっちだ」
生命(穢れ)の象徴たる妖精も力を失ったとはいえ、いまだに月の民にとっては耐えがたい穢れが充満しているのか、サグメは銀翼のコクピットの中で一点を指さす。
豪雨の中、衣玖、ダークヘリオス、サグメ、そして俺はこの戦争を終わらせるべく、黒幕と対峙する。決戦の時は近い……。
(アズマ達を見送った後の朱理は……)
「私もあのピエロ野郎の狂気にあてられたのかもしれないわね。あそこまでセンチな気持ちになるだなんて。まあいいわ、せいぜい頑張りなさい。この戦争さえ終われば月の兵器を目覚めさせる必要もなくなる。無駄なく戦争に勝てるわ」
一言呟きながら、作業に入る朱理なのであった。
(その頃地上、八雲亭では……)
八雲亭の薄暗い一室に霖之助は囚われていた。鉄格子があるわけではないが、縄で手足を縛られ拘束されている。蓮子は別の場所で幽閉されているのだろうか、その姿は見られない。そして囚われの香霖堂店主を見下すように睨み付けるのは藍であった。
「私としてもこのような処遇は心苦しいのだがね。しかし計画を邪魔されるわけにはいかないのだよ。幻想郷を完膚なきまでに破壊するという計画を」
なるべくこの半妖の目を見るまいと顔を逸らしている。藍本人もこのような計画を進めるのは不本意であるようだ。
「ならば猶更こんな事をしている場合ではないと思うがね。それに本当の目的は幻想郷の破壊ではないのだろう? あくまで幻想郷を襲う異変を収束させたい。それは僕がよく知っている」
ばつが悪そうにさらに目線を逸らす藍。
「だがしかし、今の幻想郷は数多の『侵略者』によって踏みにじられ、修復の目途も立たないまでにボロボロにされているんだ。このまま奴らの思うままに紫様の愛した楽園が蹂躙され続けるというのならば……」
楽園を維持する少女も姿を消し、このまま蹂躙され続けるのならば、自らの手で幻想郷に終焉をもたらす。それこそが八雲藍の計画の内容であったのだ。
「その為には、今この『宇佐見蓮子』に死なれてしまっては困る。だから命に代えても彼女は守り通す。彼女なしに幻想郷破壊は……」
「やれやれ。要は異変を解決できないから世界ごと葬り去ろうという算段だろう? だけどね、僕としては今までの異変を解決してきたのは他でもない『博麗の巫女』だった気がするんだが?」
今までは平静さを何とか保っていた藍であったが、両目を見開き霖之助の胸ぐらを掴みあげる。これぞ妖獣の本性といわんばかりの荒々しさであった。
「知ったような口をききやがって! 紫様は死んだし、博麗の巫女も侵略者を前に屈した。もうあいつらに対抗する術も博麗大結界を修復する術も失われている!」
ギリギリと喉を絞めあげられる霖之助。だが負けじと彼はさらにこう続けた。
「よく言うよ。霊夢を屈服させたのは侵略者どもの技術で間違いないが、膝をついた博麗の巫女を『殺した』のは他でもない君自身じゃないか!」
言葉を詰まらせた藍は霖之助を解放する。倒れ込む霖之助は咳き込み続ける。四肢を縛られているので起き上がるのも一苦労であった。見かねた藍は片腕をピッと振り上げると、霖之助を縛っていた縄が切断された。
「……とにかく今は邪魔が入られては困る。頼みの綱は紫様が何か情報を残しているかどうか。隠し部屋も多いしそういう書物が見つかればいいのだが……」
ゆっくりと起き上がる霖之助は「やれやれ」とため息をつき藍の後に続いて八雲亭の調査を始めた。
「こんな事している場合ではないと思うのだがね。荒事にされては僕ではどうにもならないし……」
(その頃、妖怪の山頂、守矢神社……)
わずかな風に揺られる山頂の湖、そこに突き立てられていたのは極太の御柱。その上で神奈子はあぐらをかき、両目を閉じて瞑想を行っていた。シーマの軍勢はますます幻想郷に近づくことは稀になっており、山の妖怪の中には既に異変は終息したと考える者も出てきていた。
だが神奈子はその筈はないと踏んでいたのだ。
「なあ諏訪子」
御柱の根元で気持ちよさそうに泳いでいるもう一柱の神に片目で視線を送りながら問う。
「なぁに?」
「シーマが幻想郷に降り立ってこなくなってから随分と経ったな」
話しかけられたのを契機にピョンとほとりに向かってジャンプする諏訪子。
「あの『首領蜂隊』って奴らが追いやってるんだろう? あの厳ついロン毛のおっさん……えーっと何て名前だっけ?」
「『ゴットヴィーン・ロンゲーナー』だ。この幻想郷を守る様に戦ってくれている彼らなんだが何か引っかかる。この名前、どこかで聞いたことがあったような……? それに早苗と連絡がつかないことも気になる」
「えー、私は全く聞き覚えがないよー?」
首をかしげる諏訪子の仕草はさながら幼子のようなものであった。こんな見た目だが祟り神なのだから世の中分からない。その直後湖がわずかに若草色の光を宿した。
「なんだ?」
「早苗だよ、この感じは早苗のものだ!」
澄んだ音とともに薄緑色に発光した湖が揺れ動く。波紋は円形ではなくいびつな形を描いていく。
「なんだろう、何か文字に見えない? 波紋があんな形に広がるなんて、早苗がなにか奇跡を起こしたんだ」
「ちょっと黙ってて諏訪子。今読んでいるところだ」
御柱の上で目を凝らしながら神奈子は水面の波紋を読み上げていく。
「『首領蜂隊の空母に囚われている。奴らは敵。ロンゲーナー大佐の本当の目的は……』」
だが、次の瞬間フッと光が失せて湖の波紋も元の円形に戻ってしまった。
「やはり胡散臭い連中だとは思っていたが……」
「大変だ、これは救難信号だよ。今すぐ助けに行かないと!」
「直接殴り込んでも勝算は薄いだろう。何せ幻想郷中に現れたシーマをあっという間に撤退させたのだから。数が尋常じゃないことは容易に想像がつく。下手に刺激したら蜂の巣をつついたようになるだろう。そこで、私にいい考えがある」
御柱から飛び降りると、そのまま守谷神社へと走っていった。
「なるほど、あの空中空母を蜂の巣に見立ててるんだね」
諏訪子も遅れて走り始める。
(その少し前、首領蜂隊空母 薄暗い部屋……)
イタタタタ……。結局捕まってしまい、幽閉されてしまいました。だけど、この異変の全貌が見えてきましたよ。確かにロンゲーナー大佐にとっても今頃アズマさんが倒そうとしている月でシーマを暴れさせた存在は邪魔だったようです。しかしその後の考えが……。
「捕まってしまったことを神奈子様に知らせなくては」
幸いにも大佐は私の能力に全く気が付いていない。その間に奇跡を行使する準備を行いましょう。どうか神奈子様、諏訪子様、私の声なき叫びに気が付いてください……。
小声で長い長い呪文を詠唱しているとほの暗い部屋に一筋の光が差してきた。助けが来たのかと一瞬気が緩んだが、その先にいたのは神奈子様ではなくロンゲーナー大佐であった。今も威圧的にこちらを見下す様に睨み付けている。私は詠唱が不完全ではあったがコッソリと奇跡を行使した。妖怪の山の湖の波紋を用いて現状を伝えるくらいなら出来るだろう。
しばしの沈黙ののち、ついに大佐が口を開いた。
「我々の『計画』を知った以上、貴様を生かして帰すわけにはいくまい」
あれだけ威圧的でも所詮は人間。いくら歴戦の軍人とて丸腰の少女が弾幕を放つとあれば多少はたじろぐはず。上手く行くかは賭けであるが、私は実行することにした。
私は不意を突く形でカエル型の弾を大佐の顔面目がけて放つ。着弾すれば白い爆風を残すものだ。カエルが大佐の顔面に張り付く。しかしその直後大佐の懐が黒く光り、カエル型弾は弾かれてしまった。
「小癪な。そのような手など予見済みである。ここ幻想郷の住民の中にも我らに与する存在がいるのだからな」
やはり大佐と仲睦まじく話していた少女は幻想郷の住民だった。それはそうとどうする?
「しかしますます気に入った。それだけの闘志を残していればさぞいいデータが取れるだろう。ついてこい」
銃で武装した首領蜂隊員がどこからか現れてこちらのその鉄の筒を突き付けてきた。これでは抵抗も出来ない。しばらく歩かされたどり着いた先には……。
「これは……蜂?」
「さよう。今から貴様にはこの最終鬼畜兵器と戦ってもらう。これから貴様はなんの手助けも受けず、ただひたすら、死ぬだけだ。どこまで もがき苦しむか見せてもらおう。屍くらいは拾ってやる。……もっとも残っていればの話ではあるがな」
大佐が邪悪な笑みを口元に浮かべた直後、私は後ろの隊員に蹴飛ばされ、禍々しい蜂の姿をした兵器の蠢く広くて頑丈な部屋に叩き落とされた。ガントレットもなしにこの戦いは無謀すぎる!
「圧に飲まれてはいけない。どうにか生き延びて時間を稼ぎ、策を講じなくては……」
その巨体が容赦なくこちらににじり寄ってきた……!
※こちらは東方銀翼伝の原作にあたる作品に対して「エンダー・ヴァリー」氏が投稿した非公式の次回予告となります(それに対して筆者がビッグコアとして返答をしているという形式です)。
本人からの許可をいただいたので、この場をお借りして(一部修正して)掲載しております。
・次回予告(偽)
天子「……」
空「きっと部下?の人が心配なんですね……」
さとり「え、えぇ……」
空「しかし、なんだかスゴい複雑な状況になってきましたね……。私頭がこんがらがってきました……」
さとり「第四勢力が増え、それらにアズマ達がバラバラに立ち向かっている状況。果たして突破口はあるのでしょうか?」
空「次回『東方銀翼伝∀CE 第16話』!黒幕との決戦……でも他の人達が大変なことになってるし、月の兵器をこのままにしていいのかな?」
天子(や、やばい……。これこのままだと私出ないパターン?ついていけば良かったなぁ……?)
ビッグコア「いつも次回予告ありがとうございます。確かに勢力が今回多いですね。『異変を解決したい銀翼、命蓮寺、守谷神社、朱理、サグメ、衣玖さん(とダークヘリオス)の連合軍』『月の都と幻想郷を蹂躙せんとする純狐と彼女に利用されているシーマ』『地上のシーマを退けた謎の勢力、首領蜂隊』『管理者を失い、外界の侵略者に蹂躙され続ける幻想郷を強引にリセットしようとする八雲藍』の4つです。
今のところお話のメインは銀翼と月の都を蹂躙した純狐の戦いですが、他の部分も少しずつ描写しないと後で明るみに出た時に唐突になってしまうのでオマケみたいな形でチョイチョイそのシーンを挟んでいるのです」