海洋生物型金属生命体「シーマ」を狂気によって操り、月面戦争を引き起こしていた黒幕「純狐」とついに対峙することとなった「轟アズマ」と、相棒である銀翼「アールバイパー」。
けしかけてきた最強のシーマ艦「グレートシング」も屠り、いよいよ退路を失った筈の純狐はそれでも余裕綽々であった。それもその筈、彼女の「純化する程度の能力」は非常に強力でありアールバイパーの攻撃をまるで受け付けなかったのだ。そうしているうちにすべてのシーマを生み出したとされるシーマ「ジ・エンブリオン」に新たなシーマ艦を産み落とさせようとする。このままではいつまでも戦争が終わらない!
しかしシーマである「ダークヘリオス」が彼の母親にあたる「ジ・エンブリオン」と接触してからは事態が急変。かつて自らの息子を殺されていた純狐のトラウマを抉る形となり冷静さを失ってしまう。我を失いながらもダークヘリオスを爆発させるが、実は紫色のボディは鎧のようなものであり、その中から黄金の龍である真の姿「サイバリオン」が現れる。
すっかり平静さを失った純狐は同じシーマの手によってサイバリオンを屠ろうとするべく「ジ・エンブリオン」を使役して戦い始めた。これなら勝機があるとチャンスをうかがうアズマは(正確には途中で割り込んできたサイバリオンが)ついに「ジ・エンブリオン」のコアに強烈な一撃を食らわせて破壊する。
もはやシーマ艦を生み出すすべを失った純狐であったが、最後の力を振り絞りアズマを殺害しようと能力を行使し始める。だが、月面に封印されていた首領蜂隊の兵器、それを引っ提げた朱理がその純狐を包囲してしまった。戦争は終わったのだ。
一方地上では首領蜂隊から逃れようと早苗が奮闘するも結局ロンゲーナー大佐に捕らえられてしまう。大佐いわく「戦争は最終局面に入った」とのことだが……。
「終わり……ましたね。暴れるシーマも居なくなったことですし、いずれ月の民も戻ってくるでしょう」
後ろでサイバリオンもグルルと喉を鳴らしている。あの二人は本当に仲良しになったようだ。周囲を見渡していると誰かが俺の裾を引っ張ってきた。振り向くとその月の民の一人であるサグメが少し顔を俯けつつこちらを見ていた。
「……」
もっと顔を近づけるようにと手招いている。何事かと思い顔を近づけると、彼女は耳元でボソボソつぶやく。
「私の星を救ってくれてありがと。感謝の気持ちは多いけど、私は無暗に口に出せないから……」
それだけ手短に話すと、耳元に微かに吹き付けられた湿った空気が俺の頬をも撫でる。その直後、柔らかな感触と控えめに頬を吸う感覚を覚えた。これは……もしかしなくてもキスだ。
「今のは皆にナイショよ」
驚く俺の表情を至近距離で見ながら口元に指を当てて悪戯っぽい笑顔を見せるサグメ。とはいえ、本人も照れ臭かったのか、そのあとサッと距離を取ってしまった。
俺だってこんな事、とても人には言えない。ま、まあサグメなりの感謝を示す挨拶だと受け止めておこう。彼女が言う通りに能力ゆえに無暗に言葉を紡ぐことができないようだし。
さて、ドレミーが保護している月の民がここに戻って来て純狐を捕えたら、都の本格的な復興も始まるだろう。地上にいる白蓮達も月に招いて復興の手伝いをしなくてはならない。
そういえば朱理はこの後どうするんだろう? ここにたどり着き、目的を果たすまでは実に困難であった。俺達誰一人欠けてても成し遂げられなかった勝利であろう。それはもちろん首領蜂隊から派遣された彼女も例外ではない。
だから俺は今も俺達ごと純狐を取り囲んでいる朱理と多くの兵器達に向き直った。
「朱理もありがとう」
しかし、朱理の表情が明るくなることはなかった。
「大佐より入電。地上に向けてのメッセージのようだけど、アズマにも用があるみたい。ホログラムを出力するわ」
大佐、ロンゲーナー大佐。その名前を思い出した矢先、俺が抱いていた不安が再び大きくなった。何か企んでいて、いつ何を仕掛けられるかと警戒していたものの、朱理も何だかんだで人間臭かったし、ここに至るまで特に何も起こらずに警戒心も解けつつあった。だが、相手はあの大佐だ。奴は今だって何を考えているのか分からない男であるのだ。
朱理の目が光り、そこから立体映像が浮かび上がる。そこに映っていたのは俺の予想を裏切ることはない存在。無数のライトを後ろから浴びた長い白髪をオールバックにした軍人である。あの特徴的な姿を見間違うはずはない、ロンゲーナー大佐だ。
(その頃幻想郷、八雲亭周辺……)
蓮子を巡って白蓮と藍が戦いを続ける。原理は未だ白蓮には分かっていないようだが、藍は幻想郷をリセットするべく蓮子を我が物にしようとしているのだ。その暴挙を阻止するべく彼女は戦いを挑んでいる。戦況は白蓮が優勢であったものの、上空に立体映像が展開されると、それに気を取られてしまい、藍の奇襲を受けて蓮子を再び奪われてしまった。
「ぜえぜえ……蓮子は渡さん! 幻想郷を幻想郷らしく残すためには……」
「そんなことを言っている場合ではありません! 何だか空の様子がおかしいですよっ?」
そこに映し出されたのはロンゲーナー大佐。藍はその姿に尋常ではない恐れを抱いているようだ。
「な、なんということだ! 魔住職、貴様の邪魔さえなかったら……」
狼狽える藍をよそに映像が完全に展開されると、幻想郷全域に響きかねない大音量でその声が再生される。
「我が同胞『轟アズマ』の活躍により、幻想郷に脅威をもたらす反乱分子は鎮圧された。しばしは戦いのことは忘れ、ゆっくり休んでくれ」
アズマや早苗であったらこの時点でよからぬことが起きることは察知できただろうが、この場には二人ともおらず、白蓮も字面通りにとらえている所であろう。恐らくは幻想郷のほとんどの住民も同じ気持ちを抱いている筈だ。
「……と、言いたいところだが」
この時点でようやく何か裏があることに気付いた白蓮。素早く呪文を詠唱して身体強化の魔法をかけ直している。
「この月面戦争で不幸にも博麗霊夢、そして八雲紫が犠牲となった。今や邪魔者……失礼、今やこの幻想郷の結界を管理できるものは存在しない。そこで幻想郷の未来をより輝けるものにするために、私はここから新しい秩序を築くことにした」
その威圧的な言動に蓮子が震える。彼女を庇うように守るのは白蓮ではなく藍であった。震えながらも藍は蓮子の背中を撫でる。
「恐れていたことが……! 大丈夫だ、命を懸けてでも守り通して見せる」
「異論はないな? これより反逆する者は私の獄滅極戮兵器群によって粛清することにする。この……風祝の小娘のようになっ!」
(その頃、月の海上空……)
「早苗ぇー!」
大佐を映していた映像がその頭上を映し始める。そこにはヤツが口にしていた風祝の少女が宙吊りにされて力なくぐったりしていた。ライトの逆光でその顔はよく分からないが、風祝といえば早苗でまず間違いないだろう。おおかた怪しいと思っていた首領蜂隊の裏の顔を暴くべく単身であの空母に潜入して、捕まってしまったのだろう。アイツ、無茶しやがって……。
「本来はすぐさま蜂の巣にする筈だったが、私の『協力者』のアドバイスによって命までは取っていない。もっとも、死よりも惨いことになりかねないのだがな。しかしこれも新たな幻想郷の為。尊い犠牲と言えるだろう。これ以上の悲しい事故を起こさないためにも、現状を受け入れるがよい。もっとも私の獄滅極戮兵器群に歯向かうというのであればいつでも相手をするが、貴様らに絶望をもたらす結果に終わるだけ……そう忠告しておこう」
それだけ尊大に振舞うと、大佐の立体映像からノイズが発生し、そして映像が消えてしまった。ふざけやがって! 早苗は見せしめとして晒し者にされて……! くそっ、くそっ、くそっ! いくら涙をこぼしても、いくら悔やんでも現状は良くならない。誰も声をかけられない中、意外な声が俺に語り掛けてきたのだ。
「お友達を悔やむのもいいけれど、今は現状を打破する方が大事ではなくて?」
今まで敵対していた純狐の一言で俺はハッとした。完全に俺達の敵となった首領蜂隊は月面で何をしている? そう、奴らは純狐を「俺達ごと」取り囲んでいる。いや違う、初めから標的は俺だったんだ。正しくは「俺達」を純狐ごと取り囲んでいる……だ。つまり純狐を攻撃したのは完全にオマケということ。
「うおああああああ!」
首領蜂隊が動き始めると同時に、俺はレイディアントソードを取り出し無茶苦茶に振り回した。カラフルな戦闘機たちはこれで次々と落ちていく。兵装をハンターに換装し、遠くでジェットエンジンの羽音を立てる蜂どもも確実に仕留めていった。
そうして俺はこの月面の兵器群を指揮しているであろう朱理と向き直る。
「お前たちは始めから……俺達を騙したのかっ! 何か言えよっ、目を逸らすんじゃない朱理っ!」
まだまだ首領蜂隊の兵器は多く残されており、更に朱理とも戦うとなると消耗したアールバイパーではどこまで持つか分からない。視線を逸らす朱理はどこか躊躇っているようにも見えたが、瞳そのものは冷酷な光を発したままであった。
「ごめんなさい轟アズマ……。だけど、
俺は無言で銀翼に乗り込み、かつての戦友に銃口を向ける。しかし指が震えてしまい、その引き金を引くことはできなかった。
「私に課せられた任務は二つ。シーマと戦うアンタを監視して、その様子を
覚悟を決めたのか、冷たい光を宿した瞳をこちらに向け、腕を突き出してきた。本気で殺しにかかるつもりだ。ならばこちらも……やらなければ死あるのみ!
オレンジ色の小型ビットを4つ展開した朱理。そこからすぐさまこちらを狙うようにオレンジ色の銃弾が一気に押し寄せてきた。
「受け止めるんだっ、ゆっくり霊夢! 白鈴『大食い勇者アレックス』!」
物量こそ多いものの、大きな口をパクパクさせながら朱理に迫るゆっくり霊夢は銃弾を一つ残らず喰らいつくしていく。朱理の射撃は強烈ではあるもののあまりに直線的すぎるのだ。
「ならば奥の手よ。ハイパーシステム、起動……」
あくまで火力で押し切るつもりだ。だが、朱理の眼前まで迫ったゆっくり霊夢と視線が合った瞬間、朱理の動きは鈍った。
「馬鹿なっ、起動できない!?」
そのまま焦燥する朱理にゆっくり霊夢がぶつかりこむ。しがみつきながらガブガブと頭に噛みついている。
「こんな事したって誰も幸せにならないもん! 朱理はアズマのこと、嫌いになっちゃったの?」
「うるさいっ、
朱理の頭に噛みついていたゆっくり霊夢はその眼前に躍り出るともみあげで思い切り頬を叩いた。そのまま涙ながらに訴えかける。
「その『ドン』って人の言う通りにちゃんと働いたアズマはよく分からない理由で今まさに殺されそうになってるよ! 朱理だってこの後で捨てられるかもしれないのに!」
両目を見開き頭を抱えてうずくまる朱理。心なしか頭から湯気が出ているようにも見える。エレメントドールとしての使命と、今まで見てきた俺達にギャップを感じて葛藤しているのが分かる。それでも朱理が選んだのはエレメントドールとしての、首領蜂隊の一員としての行動であった。
頭を抱えながら朱理はボソリと一言。
「スザク08、閃光、火光っ。銀翼とその取り巻きを抹殺せよ」
背後でスタンバイしていた巨大兵器群に光が灯ると、鈍く動き始めた。地上からは「閃光」が、空中からは「スザク08」と「火光」が迫ってくる。今も朱理はこちらと目を合わせようとせずに後ろを振り向いているが、月面で封印されていた兵器を俺達に差し向けて始末するつもりのようだ。
「やっぱりこうなったか。しかし、ボス級の兵器をこれだけ一度に相手するのは……」
焦る俺の目の前にまるで俺を庇うように腕を広げる少女がいた。
「ここは私とサイバリオンに任せてください。月面でこの有様ですから、恐らく地上でも潜伏していた首領蜂隊が暴れている筈です」
空に向かって咆哮を上げる黄金の龍はその口から赤色の、そんな彼と波長の合うリュウグウノツカイの妖怪は両手から金色の電撃を放ち戦闘態勢をとっている。さっそく二つのホバーリングポッドを装備しているスザクにサイバリオンが食って掛かっていった。
「(ここはあの二人に任せるべきだ)」
多勢に無勢な事は変わりないが、大佐を止めないことには圧倒的な兵力に押し切られるだけだ。俺は目でそう訴えかけてくるサグメと共に槐安通路を目指す。
かつてシーマの「ディメンションダイバー」によって破損していた槐安通路は未だ復旧の目途が立っていない。いや、更に崩壊しているのではないだろうか。まさか首領蜂隊の魔の手がここにまで!?
通路の出口からは頭を抑えながら月面へと逃げていく月の民でごった返している。それを綿月姉妹がどうにか誘導している状況だ。
「依姫っ、やはり首領蜂隊の仕業か?」
「どんぱち……? よく分からないが魚って感じはしなかったな。とにかく槐安通路が正体不明の艦隊からの攻撃を受けている。完全に壊れる前に皆を避難させなくては」
二人で話しているとどこからか豊姫が月の民の子供を何人か抱きながら姿を現した。
「子供や怪我人は大体これで全員よ」
彼女の能力で逃げ遅れた民を救出していたのだろう。さすがに大人数を一気にワープさせることはできないようで、何度も槐安通路と月面を行き来していたらしいことが分かる。
「すまない、俺達の仲間の中にスパイが紛れ込んでいた。それでここの存在も首領蜂隊にバレてしまったようだ」
俺はますます幻想郷の様子が心配になった。地底のバイド異変の時だって俺が幻想郷から離れているうちに大変なことになっていたのだから。一刻も早く地上に戻らなくては取り返しのつかないことになりかねない。
「おいっ、こんなボロボロの通路を抜けていくつもりか?」
「当然だっ、地上の首領蜂隊を叩きに行く! 俺の友達が捕らえられているんだ」
サグメを依姫達に任せ、単機で壊れかけの槐安通路へ飛び込もうとするが、俺の裾を引っ張る手とボソボソ声がそれを遮った。
「この中には私の友達がいる筈。通路が健在ということは今も彼女はこの中に取り残されている筈。お願いアズマ、私のお友達……ドレミーのことも助けてあげたいの。この私自らの手で」
それなら置いていく理由などない。機体にサグメを乗せたまま改めて崩壊しつつある夢の通路へと踏み入った。
槐安通路の壁面は所々で漏電を起こしており、外側からの攻撃にずっと晒されてきたらしいことが分かる。豊姫達の活躍によって中で動けなくなっている月の民はいないようだが、サグメが言うにはこの通路を維持するためにドレミーが中に残っている筈だというのだ。
一刻も早く彼女を救出してひとまずは地球に逃げよう。そこで白蓮と合流して
「ちくしょう、ここには『雷光』がいるのか」
首領蜂隊が誇る主力艦の中でも特徴的な巨大レーザーキャノン砲を二つも装備した兵器だ。槐安通路の外側から通路を破壊しようと左右交互に砲撃を続けている。完全な破壊には至っていないものの、着弾するたびに通路は激しく揺れて破片が飛び散っている。あのままでは通路が破壊されるのも時間の問題だ。
「やめろっ! この俺がっ、轟アズマが相手だ!」
早速レーザーキャノン砲を狙いトリガーを引く。ここはフォトントーピードを用いて脅威的な砲台を破壊、もしくは無効化するのが先だ。通路が壊されてしまえば今も避難を続けている月の民も無事ではないだろうし、何よりもアールバイパーやサグメが宇宙空間に放り出されてしまう。
ミサイルは加速度的に速度を上げて雷光に迫る……が、途中で壁に突き刺さって爆発してしまった。
「槐安通路の壁に遮られている!」
なんだって! それじゃあ理不尽なことに雷光の攻撃ばかりが通って俺のは遮られるってことか? いや、そういうわけではないようだ。雷光はレーザー砲の他にも鮮やかな赤色や青色の小さい弾幕を張っているようだが、それらはこちらまで着弾せずにアールバイパーの兵装のように壁で遮られてしまっている。あちらもあちらで特別高火力なレーザー砲でしか通路にダメージを与えられていないようなのだ。
つまり状況を覆す手段といえば雷光のレーザー砲のような高火力のもののみ。ならば仕方がない。こちらも高火力の一撃で対抗するしかない。
「全無……」
ならば「αビーム」が最適解だ。奴がこっちにレーザーを撃ち込んだ瞬間にそのエネルギーすらも吸い取ってこちらの火力に充てれば……!
「待って! このままだとドレミーが……」
いやダメだ。まずはこの通路を維持している彼女を救出しなくてはならない。壁越しにビーム合戦に持ち込むことはすなわちこの通路に風穴を開けてしまうことに等しい。ならば奴と戦うのはその後だ。悔しいがしばらくは奴を放っておくほかない。
「よし、ドレミーの救出が最優先だ。ついてこい、サグメ!」
「……(こくこく)」
砲撃の鳴りやまない槐安通路の中、今も一人で戦い続けているであろうバクの少女を探す。そんな俺達を阻むように剥がれた壁の破片が、どこからか紛れ込んできた首領蜂隊の小型機が迫ってきた。
「操術『サイビット・サイファ』!」
魔力を纏いホーミングするオプション達の後ろで、サグメも多数の攻撃用ポッドを呼び出して援護射撃を行っている。
決して順調ではないが通路の奥へ奥へと突き進んでいく。地球が随分と大きく見えるようになってきた。そして俺達はようやく見つけたのだ。たった一人で通路を維持するべくこの場に残ることを選んだ彼女のことを。
「ドレミー! これ以上はもたないわ。もういい、もう避難するべきよ」
手負いのバクの少女をサグメがおぶる。その次の瞬間、外側で砲撃を続けていた雷光がその砲台をキラリと光らせ始めた。それも左右同時に。まずいっ、本格的に破壊に持ち込むつもりだ!
「アズマっ!!」
自然と銀翼は二人を庇うように飛翔していた。展開したオプションの魔力を機体前方に集中させながら。今も青白いオーラを纏い、純粋な魔力の塊を撃ち出さんと操縦桿を力強く握る。
「
雷光の紫色のレーザー砲とアールバイパーのαビームがぶつかり合う。それと同時に槐安通路がかつてないほどの破片を散らす。とうとう通路に風穴があいた。ここからではよく見えないがそれは明白であろう。強大な光学兵器は壁面に亀裂を生み、砲撃が続くたびにそれが次々と伝搬していく。今や幻想的な通路の面影は残っておらず崩壊も止まることを知らない。
しかしそれでも終わらない。ビーム合戦の勝敗が決するまでそれが続くのである。幸いにも俺の青白い光線が雷光の渾身の一撃を次々と飲み込み、そして増大した青白い魔力は雷光の砲台にまで到達した。俺は打ち勝てたようだ。それでも奴は最後の抵抗と言わん限りに砲撃の手を休めない。今もバチバチとスパークが走っていた。
「いっけぇ!」
ダメ押しの一撃。魔力というものは精神とも密接なつながりがあるものだ。幽香さんや神綺さんにそう教わってきたから間違いない。心なしかαビームの威力が増した気がした。そして激しく爆発。
「やったか?」
いや、レーザー砲の破壊には成功したが、雷光は未だ轟沈せず。最大の武器を失ったとはいえ結局は通路の破壊を許してしまった。それは俺がこのままでは地球に戻れないことを意味する。アールバイパーは大気圏突入の高熱に耐えられないのだ。槐安通路を失ってしまった以上、これはどうすることもできない。
「先のことは分からんが、今は目の前の脅威を排除するぞ!」
サグメとドレミーを庇いながら、手負いの兵器と一騎打ちを続けた。
(その頃月面では……)
轟アズマが地球に向かうべく離脱した中、この場に残るは朱理と彼女が従える主力兵器が3つであった。満身創痍だった純狐はこのどさくさに紛れてクラウンピースに抱えられながら何処かへ避難してしまったようである。
月面では戦車型の兵器である「閃光」とサイバリオンがぶつかり合いを続けており、その上空では朱理と衣玖がにらみ合っている。
「邪魔をするようならばアンタ達も排除するまでよ」
敵意をむき出しにして衣玖に弾丸をこれでもかと浴びせるも彼女は全く動じない。これらの弾丸は明後日の方向へと逸れてしまったのだ。怒りに我を忘れて狙いが定まらないのか? いいやそうではない。そのことに衣玖は気が付いているのだ。
「朱理さん、本当は気が付いている筈です。いいえ、既に察している。こんなことが間違っていることを」
「うるさいっ!
だが、見るからに焦りを見せた朱理は攻撃に身が入らない。射撃の精度が目に見えて落ちているのは明らかであった。
「もう一度自分でよく考えてみてください。自分は何のために生まれ、何をすべきなのかを」
完全に攻撃の手を止めた朱理が自分の胸に手を当て始める。
「……私達エレメントドールは『人類のことを第一に思い、可能な限り助けること』、その為に生まれた。
「それが朱理さんの本心です。どうか、本当の気持ちを胸に行動をしてみてください。幻想郷を、アズマさんを手助けしたいというのでしたら、私達も力になりましょう」
しばらく黙り俯く朱理。しかしその魂には新たな決意がみなぎっていた。
「これがエクスイの反乱の元凶か。……止めなくては! 暖かな心に満たされた幻想郷がこのようなことになってしまった原因を排除しなくては!」
サイバリオンの手で主力級の首領蜂隊兵器が焼き払われる中、朱理は本当の意味で幻想郷の救い手として覚醒したのだ。
(その頃幻想郷、八雲亭周辺……)
ロンゲーナー大佐の号令と共に高高度を旋回してシーマ艦への牽制をしていた筈の首領蜂隊の戦闘機が急降下を始める。
「奴らは端から対話でどうにかしようなんて考えてない。紫様の愛したこの地を徹底的に蹂躙するつもりだ。その上で私達に『分からせよう』としているに違いないさ」
急降下しつつ無数にショットを放つ色とりどりの戦闘機から距離を取るように藍は飛翔し、横側からクナイ型の弾を放ち、撃墜させる。
「侵略者同士で潰し合いをしているうちに幻想郷をリセットしようとしたというのに……貴様はどこまでもどこまでも!」
「恨み言を口にしている場合ではありません!」
金剛杵から金色の光を発すると、ビームサーベルのように振り回し、戦闘機を次々と斬り伏せていく。
「月にも首領蜂隊の兵器が多数眠っていた筈です。アズマさんの安否も気になります……」
1機1機は白蓮達も容易く撃墜していく。さすがの首領蜂隊精鋭のパイロット達でも、人ならざる妖怪や魔法使い相手では分が悪いのだろう。そうしていると巨大な影が八雲亭に落ちる。どうやら主力艦が近くまで接近しているようである。
「奴ら、私を本気で殺しにかかるつもりだ……」
「助太刀しますよ!」
呪文を詠唱しながら、藍の横で戦闘態勢をとる白蓮。藍はそんな彼女に疎まし気に視線を送るもののそれ以上のことはしなかった。
「不本意だが力を貸してほしい。ここで私が、そして蓮子が倒れるわけにはいかないんだ……」
二人が対峙するは首領蜂隊の主力艦の中でも大型ミサイルの爆風による広範囲制圧に特化した「嵐光」であった。
※こちらは東方銀翼伝の原作にあたる作品に対して「エンダー・ヴァリー」氏が投稿した非公式の次回予告となります(それに対して筆者がビッグコアとして返答をしているという形式です)。
本人からの許可をいただいたので、この場をお借りして(一部修正して)掲載しております。
・次回予告(偽)
「いや、正直予想はしてたんだけどね……」
衣玖「そんなに信用できない相手だったのですか?」
「そんな相手でも協力を受け入れるしかなかった時点で、いつかはこんな風になることは決まってた。俺達も無駄な戦いをしてた訳だな」
純狐「最初から私の邪魔をしなければ……」
「そもそもお前が悪いんだよー、頼むよー責任取ってこの状況をなんとかしてくれよー」
純狐「出来てもすると思う?する手段もお前らのせいで絶たれたし」
「お前、後で覚えておけよ」
純狐「そんな余裕がお前にあるの?ww」
衣玖「こんな時にケンカしないでください!」
「本当覚えとけよ…!次回『東方銀翼伝∀CE 第19話』とりあえず地球に戻らなきゃ話にならない。もう敵の残骸を盾にして大気圏突入するか!」
サグメ(アニメの見過ぎ…)
ビッグコア「毎度毎度、次回予告をありがとうございます。
やっぱり裏切ったロンゲーナー大佐、怒首領蜂シリーズを知っている人ならこうなる事は予想できたでしょうし、そもそも最初から早苗さんが怪しんでいたなど、かなりわかりやすくなっていたと思います。大佐の兵器群にどう対処していくのか、次回もお楽しみに!」
・次回予告こぼれ話
これまでの戦いで損傷も目立つアズマ達(あれ?アールバイパーとサイバリオンばかりか?)と、戦力温存しつつ戦力拡大に成功した首領蜂隊じゃ戦いにすらなるかどうか…
少なくてもアールバイパーは修理やら補給やらしないと、そろそろ良くて飛べなくなるか悪くて爆発しそうな気がする(KONAMI感)
ビッグコア「継戦能力は高そうですけど(元がSTGの自機ですし)、強敵とばかり戦っていて損傷の方は無視できないことになっていますね。地球に戻ってにとりに修理を依頼したいところです」