東方銀翼伝 ~超時空戦闘機が幻想入り~   作:命人

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死んだ筈の霊夢が幻想郷に巣食う侵略者どもを皆殺しにしていく……?


第21話 ~石のような物体~

(同じ頃、アールバイパーは……)

 

 ようやく幻想郷に戻った俺が真っ先に目にしたものは首領蜂(どんぱち)隊の兵器群が白玉楼を襲っているところであった。戦況は白玉楼側の劣勢。幽々子の前で勇ましく刀を振るう妖夢であったが、次々と現れる兵器を前に防戦一方となっていたのだ。

 

 加勢してやりたいところだが、今の銀翼にもはや戦う力は残されていない。今は衣玖と合流したのち、命蓮寺で修理を受けるのが最優先だ。

 

「許せ妖夢、お前の手助けは困難だ」

 

 彼女の身を案じながら更に高度を下げていく。すると一つの光の玉が白玉楼へとジグザグに入り込むのを目撃。それらは首領蜂隊の兵器に体当たりしていく。更には同じ方向から無数の針も飛んできて、それらがなんと一つ残らず奴らを殲滅してしまった。

 

「何だ今のはっ!?」

 

 驚く最中、すれ違ったのは巫女であった。血のような真っ赤なリボンで長髪をまとめ、何故か腋が露出した巫女服らしきものを身にまとっている。……もしかしなくても霊夢だ。だけど彼女は既に死んでいる筈。どういうことだ?

 

「霊夢? 生きていたのか? だとしたら今まで何をしていた……?」

 

 こちらの存在に気付いたのか、踵を返してこちらに近寄ってくる。だが、どういうわけか先程首領蜂隊の兵器を破壊した針を撃ち出しながら。

 

「何のつもりだっ! 俺は敵じゃない!」

「よく言うわこの侵略者め。だけど殺すのは後。その前に聞きたいことがあるわ。青娥はどこにいったの? アイツと組んでたでしょ?」

 

 青娥だって? 奴はこの俺が仕留めた筈だ。大体目の前にいる霊夢だってロンゲーナー大佐が言うには既に死んでいる筈。それに仮にいままで生きていたとしたら、幻想郷がこんなことになる前にどうして動いていなかったのか疑問が残る。やはり生きている筈がないんだ。だけどあの針は、標的を追尾し続ける光は何だ? 

 

 わけが分からない。霊夢がここにいる理由も彼女が青娥を探す理由も俺が知る筈がない。

 

「青娥は俺が倒した。完膚なきまでに肉体をバラバラに砕いたから復活することはあり得ない」

「アイツは生きているのよ! この目で見たもの」

 

 なんだと……? そのことについて詳しく聞こうとしたが、その直後に地面が大きく揺れる。空を飛んでいる俺達には直接的な被害はないものの、霊夢はこの揺れに対して機敏に反応していた。

 

「アンタに構っている暇はなさそうだわ。どうせ放っておいても虫の息だし、何も知らなそうだし……。というわけで勝手に野垂れ死んでなさい」

 

 それだけ早口でまくし立てると人里の方へと飛んで行ってしまった。

 

 いつものアールバイパーなら彼女を追いかけることも出来ただろう。霊夢は足が遅いからな。だが、満身創痍の今ではそういうわけにはいかない。

 

 やはり一度命蓮寺に帰還しよう。みるみる高度を下げていく中、俺は無事に命蓮寺までたどり着いた。

 

 門を横切り、ひとまず安堵する。前に長く命蓮寺を空けていた時に大変なことになっていたからな。シーマや首領蜂隊の攻撃を受けた形跡はあるが、そこには確かに命蓮寺が存在していた。

 

「おかえりアズマ、君はよくやってくれました」

 

 格納庫に入るや否や、ムラサ船長が飛び出してきて俺をねぎらってくれた。すぐにでも機体の修理をしてくれるらしい。

 

「ありがとな、ムラサ。ところでシーマや首領蜂隊に襲われる以外に何か変わったことはなかったか?」

 

 銀翼から降りて壁に寄り掛かりながら座り込む。ムラサはスパナを手にさっそく作業に取り掛かっていた。恐らく白蓮も調査の為に蓮子と行動を共にしているのだろう。皆にも俺が無事だって事を知らせなくてはならないな。

 

「変わったこと……ねぇ。やっぱり見たことない兵器に襲われたってのが一番大きいですが……ああそうだそうだ、最近妙に揺れたかも。うん、地震が多かったですよ」

 

 ううむ、シーマにしても首領蜂隊にしても地震を引き起こす兵器を持っているなんて話は聞いたことがない。なんだか気になるが直接関連しているとは思えない。

 

「あとは……そうだな。なんかメンテナンスしやすくなってます」

「それは単にお前が腕を上げただけだろ」

 

 まさかムラサ船長に機械いじりの才能があるなんて思ってもみなかったし、その才能をここまで開花させるってのも全く想定外である。

 

「えへへへ、もっと褒めてくださいなっ」

「そうだな、いつも助かってる。だから手も動かして欲しい」

 

 頭でも撫でてあげたい気分だったが、アールバイパーだけでなく俺も消耗しきっているのだ。壁に寄り掛かり続けていると意識がまどろんできたのが分かる。

 

 さすがに連戦続きで俺も……疲れた……んだな……。

 

 

 

 揺り動かされる。俺の体が左右に大きく揺れる。ムラサが起こしているのか? いや、それにしてはあまりに乱暴すぎる。今も完全に意識が目覚めないうちに俺は目を開いた。

 

 どうやらムラサ船長ではなく、地面そのものが俺を揺らし起こしたようである。つまり地震だ。反射的に飛び起きる。

 

「ムラサ、大丈夫かっ!?」

 

 我らが船長の安否が気になり周囲を素早く見渡す。幸いにもムラサは怪我をすることなく元気そうであった。

 

「にしても今回もひどく揺れました。整備はまだもう少しかかるから待っていて欲し……」

 

 だが、間髪入れずに再び地面が大きく揺れる。先程よりも大きな地震だ。棚に置かれていた道具が一気にばら撒かれる。

 

「こんな短時間の間に……。この地震、何かおかしいぞ!」

 

 首領蜂隊以外にも何かいるのではないか? だがまるで心当たりがない。だけど他にも異変が引き起こされているとしか思えない。何せあの青娥が、俺がこの手で殺めた筈の邪仙が生きているらしいのだから。

 

 やはり白蓮が、そして衣玖とサイバリオンも心配だ。俺が駆けつけないと取り返しのつかないことになってしまうかもしれない。

 

「ムラサ、もう時間がない。アールバイパーは飛べるか?」

「待ってください、最低限の修理は済ませたけれど細かい部分がまだなんです! 君はこういう時にすぐ無茶するから綿密に整備を……」

「よしわかった、すぐに上がるぞ!」

「ダメだって! まだ耐久性に難が……」

 

 地面は三度震えた。まるで地球そのものが大きな厄災を前に、恐怖で震え上がっているのではないかというくらい地震が頻発している。今の揺れでムラサがバランスを崩した瞬間に、俺はコクピットに乗り込んだ。

 

「アールバイパー、出撃する!」

 

 制止するムラサの声を無視して俺は再び幻想の空を舞った。

 

 

 

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(その頃、衣玖は……)

 

 短い間とはいえ幾度となく死線を潜り抜けてきた相棒を、そして自分をどこまでも慕ってくれた友を失い、泣き崩れる衣玖。そんな彼女のもとに降り立ったのは白蓮であった。

 

「これは……いえ、深くはお聞きしません。今は心を落ち着けることが先です。さあ衣玖さん、立てますか?」

 

 周囲には無数の首領蜂隊の兵器のものと、サイバリオンの残骸が転がっている。泣きじゃくる衣玖さんを優しく抱きしめるとよしよしと頭を撫でる。ひとまずは落ち着きを取り戻したようである。

 

「それで衣玖さん、蓮子さんを見かけませんでしたか? 例の兵器と戦っているうちにはぐれてしまったのです。こちらの方に駆けていったと思ったのですが……」

 

 抱き締められながら衣玖は静かに首を振った。

 

「だけど……霊夢さんに会いました」

「霊夢さんに!? そんな筈はありません! だってロンゲーナー大佐が声高らかに宣言していたでしょう? 彼女は今回の月面戦争で既に……」

 

 一際声のトーンを上げて白蓮の言葉を遮る衣玖。

 

「生きてたんですよっ! この目で見たんですっ。そして大暴れしたんですよ! 霊夢さんは『侵略者は皆殺し』だって言って奴らの兵器と、そしてサイバリオンにまでも無慈悲に手をかけたんです……」

 

 リュウグウノツカイの妖怪から離れて周囲を改めて見渡し、目を見開く白蓮。霊夢が生きていたこと、そしてその蛮行に驚きを隠せないでいる。

 

「そんな……。蓮子さんも探さないといけませんが、まずは霊夢さんに話を聞いたほうがよさそうですね」

 

 そう飛び立とうとした最中、幻想郷の地面が激しく揺れ動いた。

 

「また地震が……。先程よりも大きい!」

 

 だが、地面が揺れただけではない。最初に「それ」を目にした衣玖はただただ硬直するしかなかった。

 

「あああ……アレは……アレは何なんでしょう?」

 

 言葉を失い人里方面の空を指さす衣玖。白蓮もそちらに目をやりやはり同じように目を見開いた。

 

 

 

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(その頃、アールバイパーは……)

 

 白蓮を探すために飛び立った俺であったが肝心の手掛かりがまるでない。もっと大掛かりに捜索したかったが、青娥がどこで息を潜めているか分からないし、霊夢に出くわしてしまったら今度こそ終わりだ。見つからないように低空飛行を続けて周囲を探すのだが、痕跡すら見当たらない。

 

 そんな折、宝塔型通信機がビカビカと光り始めた。もしや白蓮か? すぐさま俺は応答した。急な事だったので思わず声が上ずってしまう。

 

「アズマだ、今どんな状態だ白れ……」

 

 いや、通信してきた相手は白蓮ではなかった。宝塔型通信機の光が投影しているホログラムは地獄鴉のものであった。

 

「お空か。見ての通りしばらく一緒に遊べそうにない。それより地霊殿は、さとりやお燐は大丈夫なのか?」

 

 地面が断続的に揺れ続けているということは地底だってその被害が計り知れないことを意味している。

 

「うわぁぁん、大変なんだよ!」

 

 さすがの首領蜂隊やシーマも地底までは攻撃対象にしていなかったようであるが、それでも相手が地震であれば話も違ってくるわけだ。

 

「やはり地震の被害が……?」

「ううん、それは大丈夫なんだけど、地底の新名物だった『黄金の逆さピラミッド』がなくなっちゃったんだよ! 異変が片付いたらアズマと一緒に見に行こうと思ってたのにぃ~!」

 

 なんだよそれ! だけど地底ではそこまで大きな被害が出ていなそうなことが分かってホッとした……ん? 何か引っかかるな。

 

「黄金の逆さピラミッド」といえば、今お空が言っていたように、彼女が命蓮寺に遊びに来た時に一緒に見に行こうとしたものだ。だけど地震と共に地上、細かく言えば迷いの竹林に黄金のピラミッドが突然発生していて新たな観光スポットになってて……まさか!

 

 地上のピラミッドを見てあの時のお空は何と言っていた? 地底の逆さピラミッドとソックリだと言っていた。もしも地上と地底のピラミッドが同一の存在だとしたら? そして地底ではその姿が消えて、地上に逆さピラミッドが現れたとしたら……。俺の推測が正しければ幻想郷はとても恐ろしいことになってしまう。

 

 霊夢や青娥を気にしている場合じゃないぞ! すぐに白蓮に知らせなくては! アイツは……アイツはっ……!!

 

 俺は最高速度で幻想郷を飛び回った。そして人里近くで白蓮と衣玖を見つけた。だが、遅すぎた。「奴」は完全に姿を現していたのだ。

 

 地底でその姿を見せなくなった、それはつまり全身が地上に現れたことを意味するのだ。

 

「ああ……あ……。あの『石のような物体』は一体……?」

 

 迷いの竹林上空あたりか、そこには黄金の八面体がゆっくりと回転しながら浮遊していたのだ。あまりに無機質で異質な存在。確かに「石のような物体」以外にどう形容したらよいものか。

 

「俺の読みが正しければ……アレは地球の意思そのものだ。その名は……」

「『産土神黄輝ノ塊(ウブスナガミオウキノカイ)』……といったところですわね」

 

 不気味に浮遊する黄金の八面体の下、芝居がかったように両手を広げ、名乗りを上げるのは青髪の邪悪であった。

 

「青娥……!」

 

 だが、奴は俺のことなど無視して愉悦に浸り、口元をゆがませた笑顔を見せている。直後、頭上で何かが落ちてきた。

 

「霊夢さんっ!?」

 

 思い切り地面に叩きつけられた霊夢はピクリとも動かない。その頭上ではなんとクジラ型のベルサー艦「グレートシング」が3機も配備されていた。無茶苦茶だ。これもあの石のような物体が生み出したというのか? 逆に青娥が霊夢の胸ぐらをつかみ、空中まで引っ張り上げる。

 

「何度挑んでも結果は一緒ですわ。あのスキマ妖怪の後ろ盾のない貴様などこの程度よ! さて、博麗の巫女よ、わたくしの軍門に下るというのでしたら命だけは助けますけど」

 

 あの霊夢が……首領蜂隊の兵器相手にワンサイドゲーム状態だったあの霊夢がズタボロにやられている。確かにグレートシングを同時に3体相手するのは無茶な話である。俺だってこんな状況になったら逃げの一手だ。俺がこの状況下で今のように捕まってしまったらどうするだろうか? ひとまずは従うだろう。その上で反撃の機会を静かにうかがう。

 

 だけど霊夢は違った。俺よりもずっと幼いのに幻想郷そのものを抱えている。覚悟が、背負っているものが桁違い……並大抵ではないのだ。

 

「やるなら……やりなさいよ。紫も藍も殺して、この私まで手にかけたらもはや博麗大結界を維持する手段は永遠に失われる。そうしたらアンタの企みもおしまいよ!」

 

 苦悶の表情を浮かべながらも口元だけニヤリとふてぶてしい笑みを浮かべている霊夢。果たしてそれがハッタリなのか、本当に結界が崩壊するのかは分からない。だが、この表情であの様に言われては普通は躊躇してしまう。だが青娥もまた思考回路がイカれていたのだ。

 

「あっそう、ざーんねん。じゃあ……死ね」

 

 無機質に、無造作に、まるでそうなるのが自然の摂理かのように青娥は無表情で霊夢を再び地面に叩きつけた。グシャと嫌な音を立てて、霊夢はそれきりピクリとも動かなくなった。

 

 地面に叩きつけられたまま全く動かない霊夢を侮蔑の眼差しで見下している青娥。霊夢が、博麗の巫女が死んだら結界が綻びて消滅するはずであったが、その予兆はまるで見られない。まだ辛うじて息があるのか、あるいは本当にブラフだったのか……。

 

「結局はただのハッタリだったのね。もとより穴だらけ綻びだらけの結界に今更何の価値があるのやら。じきにそんなもの何の価値もなくなるというのに。あっはははは……」

 

 ひとしきり高笑いした後、ようやく俺達に気が付いたようで、黄金の八面体と共に俺達に近づいてくる。

 

 青娥はいつもの服装に加えて紺色のマントを羽織っていた。……いや、よく見るとマントではなくて男物の上着である。さらによく見るとそれがロンゲーナー大佐が生前身に着けていた軍服であることまで分かった。

 

「やはり、ロンゲーナー大佐の言っていた『協力者』ってのは貴様のことだったのか!」

「そうよ。幻想郷を素敵に改竄するの。わたくしとゴットヴィーンにかかればより強く、素敵に幻想郷を進化させられるのよ」

 

 相変らず口調は呑気だが、その眼光がぎらぎらと光っているのを俺は見逃さなかった。

 

「さて……と。ゴットヴィーンの件は残念だけど、これで邪魔者もいなくなったことだしわたくし一人でも計画は進めていかないとね」

 

 そうはさせるかっ! 俺はレイディアントソードを展開し、白蓮と衣玖を守る様に前に躍り出て青娥と対峙した……!




※こちらは東方銀翼伝の原作にあたる作品に対して「エンダー・ヴァリー」氏が投稿した非公式の次回予告となります(それに対して筆者がビッグコアとして返答をしているという形式です)。
本人からの許可をいただいたので、この場をお借りして(一部修正して)掲載しております。



・次回予告(偽)
「さぁさぁ、いよいよ終幕。ついに本当の黒幕と対峙した俺達。『希望を繋ぐ程度の能力』の底力を見せてやる!
……と言いたいが、わかってる。この戦、既に俺達の敗北だ。アールバイパーはもう戦える状態じゃない。そもそもこの戦いに勝っても幻想郷は戻らない。今度ばかりは勝っても負けても、多分何も変わらない。希望は完全に断たれた。
だが!そうであっても!散々好きにやってきた貴様らに完勝は渡さない!!笑わせない!!覚悟して貰おう!地獄へは道連れだ!精々その頭に忘れられない悪夢を刻めぇーっ!!!
次回!東方銀翼伝∀CE 最終回!!
願うなら、後ろの二人が逃げ切れますように」


ビッグコア「多くの犠牲を支払いながらも真の黒幕を突き止めるも、既に負け戦の状態。それでも最後まで意地を見せるべし! さすれば道は開けるのだから……」
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