また、文量にばらつきがあります。ご了承ください。
程度の差はあれネタバレを含みます。話によっては結構なネタバレがあります。
以下、簡易的内容
タマモ@動物園
小竜姫@修行後
美砂@カラオケ
茶々丸@ねこ
一言: ありがたいことです。次は25万UAかな。いや、30万かも。
Zoo(タマモ@動物園)
「ここが動物園って所ね! 全く、檻に囚われることを良しとするなんて、野生の誇りってのがないのかしら。ま、いいわ。今日は、その情けない姿を存分に笑ってやるわ」
「お前も変わらんと思うがな……。大体、動物園にいる動物の大半は、産まれたときから動物園にいるからな。野生なんて残ってないだろ」
「どうでもいいわ。それより、早く行きましょ!」
横島とタマモの二人は、動物園に来ていた。それも珍しく二人きりである。麻帆良に来てからと言うもの、二人きりで行動することが少なくなったことを少なからず不満に思っていたタマモは、今日をとても楽しみにしていたのか珍しくはしゃいでいる。
その姿を追う横島も、普段と違いはしゃぎ回るタマモに笑みを零している。
「横島~! ほら、アンタの親戚がいるわよ!」
「はぁ? って、猿じゃねぇーか!」
「あ、あっちは何がいるのかな~」
「ちょ、待てって!」
あちこち見て回るタマモと横島の二人。やがて二人は、“日本の動物たち”というコーナーへとやってくる。言葉通り、日本に生息している動物たちを展示するコーナーである。
「人少ないわね。日本の動物なのに、興味ないのかしら?」
「う~ん、世界中の動物に比べちまうとな。国内に生息してるなら、わざわざ動物園で見なくてもって思っちまうのかもな」
「ふ~ん。それで、こいつらもやる気ないのかしら? そんなんだから、客も来ないのよ」
「関係ないんじゃないか? 野生と違って危険がないわけだし、警戒心が薄れてるんじゃないか?」
このコーナーで横島たちが見た動物たちは、どの動物たちも身動きもせずじっとしていた。それをやる気がないと、タマモは批難する。普段、横島の頭に乗ってぐうたらしている自分のことは、完全に棚に上げての発言である。
「あら、キツネもいるじゃない。こいつらもやる気ないわね」
「ああ、お前そっくりだな」
「私はいいのよ。妖狐だし。でも、こいつらはちょっと不甲斐なさすぎるわね。人間に媚び売ってるのも癪に触るけど、人間に見向きもされないのはもっと癪に触るわ」
そう言うとタマモはキツネが展示されている檻へと近づく。近づくタマモに気づいたキツネたちは、タマモを一目見るなり起き上がり逃げ出そうとする。
薄れたとは言え、僅かに残っていた野生の本能がタマモという強者に警鐘を鳴らしているのである。
「いい? アンタたち。私と同じキツネが他の動物より目立たないなんて、この私が許さないわ。この動物園で一番人気の動物になりなさい。これは命令よ」
タマモにそう告げられたキツネたちは、先程までのやる気のない態度から一転。木に登るもの、天高く飛び跳ねるもの、檻の中を所狭しと駆け回るものと、それぞれが必死にアピールを始める。
時折、タマモの顔色を伺うようにタマモの方を見ては、更に必死になってアピールをする。
その姿にかつての己を重ね合わせた横島は、キツネたちに客寄せの為の芸を教えるのであった。
その後、この動物園では芸を繰り広げるキツネが話題を呼ぶことになるのだが、それはまた別の話である。
――この前のキツネたち、大人気らしいぞ?
――キツネ? 他のキツネのこと何てどうでもいいわ。そんなことより、私を撫でなさいよ。
――はいはい。
knee(小竜姫@修行後)
「し、死ぬ……」
「大丈夫、横島さんがこれくらいの修行で死ぬわけありません」
「お、オレを何だと……」
何でも屋“よこっち”の地下にある修行場。そこに、横島は横たわっていた。その体に流れる大量の汗と、荒い息遣いが直前までの修行の激しさを物語っている。
そんな横島の傍らに、小竜姫は涼しい顔をして立っている。その顔には、優しげな微笑みが浮かんでおり、とても先程まで横島をしごいていた人物とは思えない。
「やはり、横島さんは凄いです。修行の度に動きが鋭くなる。こういう時、人間の成長を羨ましいと思ってしまいますね」
「そりゃ、毎回命の危険に晒されれば嫌でも成長するって……。しなきゃ、本当に死ぬし」
「大丈夫ですよ。死なないギリギリの所でやってますから。それに、いざとなれば文珠で回復させますし」
「お、鬼ぃ……」
「竜です。あとは、私に任せて横島さんは寝てていいですよ。もう限界なんでしょ?」
小竜姫の言葉を聞いた横島は、強烈な疲れからくる眠気にその身を委ねる。限界ぎりぎりまで消費した霊力を回復させるための眠りであるため、眠気に逆らうことが出来ないのである。
そのまま、横島は深い眠りにつくのであった。
「……横島さ~ん。眠りました?」
横島が目を閉じてからしばらくした後、横島が眠っているかを確かめる為に声をかける小竜姫。横島が何の反応も返さないことを確認すると、いそいそと横島の頭を持ち上げ膝枕の体勢へと移る。
「役得ってやつですね」
膝に乗せた横島を見つめながら、小竜姫は呟く。
小竜姫が横島と二人きりでする修行の時に、限界まで横島を追い詰めるのは、未だ成長を続ける横島を鍛えたいという思いの他に、眠った横島に膝枕をする為だとは誰にも言えない秘密である。
「横島さん。アナタの成長には本当に驚かされます。知ってましたか? 修行時間が倍に伸びてるんですよ? 体力、霊力ともに成長している証です。このままなら、アナタは何れ……」
小竜姫の呟きに反応したのか、横島が身じろいだ為、その続きが語られることはなかった。小竜姫はくすりと笑うと、横島の頭を優しく撫でる。
そして、小さく呟くのだった。
――愛しています、忠夫さん
――んー? 何か言った……?
――何でもありあせんよ。ほら、もう少し寝ていてください。
song(美砂@カラオケ)
「おー、美砂ちゃん結構歌上手だなー」
「でしょー。ほら、次は横島さんの番!」
「それじゃ、カラオケの忠ちゃんと呼ばれた実力をお見せしましょう」
「何その言い方! 似合わないって」
美砂のその言葉に若干へこみながらも、横島は見事な歌声を披露する。そんな横島に、笑顔を向け、次に歌うように促しながら、美砂は内心今の状況に戸惑っていた。
(何でこうなってんの!?)
美砂は今の状況――横島と二人きりでのカラオケ――になった経緯を思い出していた。
「え? くぎみーも来れないの?」
『くぎみー言うなっ! ま、ちょっと用事が出来てね。残念だけど、横島さんと桜子によろしく言っといて。本当、せっかく横島さんが……』
「何? 声が小さくて聞こえない」
『何でもない! とにかく、横島さんに次回はカラオケ一緒にって言っといて』
「OK―。じゃ、切るね」
美砂は円からの電話を切るとため息を吐く。その日は、以前から約束していたカラオケの日であった。メンバーはチア三人組――桜子、美砂、円――に横島の四人。代金は横島持ちということもあり、円と桜子と共に非常に楽しみにしていたのである。
それが、一気に二人欠けたのである。
「桜子も猫が病気だとかでキャンセルするし……。横島さんと二人きりとか、絶対気まずいって。密室に男女が二人きりとか、危ないって。でも、奢りだしなぁ、それに横島さんも楽しみにしてたら申し訳ないし」
ぶつぶつと呟く美砂。そんな彼女に近づく二人の男。どうやら、美砂が約束をキャンセルされ暇になったと思い声をかけようとしたようである。所謂、ナンパである。
「そもそも、横島さんと一緒って言うのが嫌じゃないってのが問題なのよね。そりゃ、嫌いじゃない……と言うか、好きな方だけどさ。流石に、二人きりはマズイって。円に二人きりだってバレたら……」
「ねぇ!」
「何?」
「約束なくなったんでしょ? 暇つぶしの相手ならオレらがするよ?」
「何なら奢るよ?」
「いや、オレが奢るよ! 一緒にカラオケ行こうぜ!」
ナンパ男たちに混じって聞き覚えのある声が聞こえた美砂は、その男の姿を探す。男たちも、自分たち以外の声に驚きながら、ナンパの邪魔する男の姿を探す。
「おい、何処だ! オレらが先に声かけてんだぞ!? 順番守れよな!」
「そうだ! ルールを守ってナンパしろよな! オレらが失敗したら、次がお前! 今はオレらの時間なの!」
「あー、その反応は予想外だった。でも、残念。順番で言ったらオレが先。ね、美砂ちゃん?」
その声は美砂のすぐ後ろから聞こえてきた。慌てて美砂が振り返ろうとすると、背後から抱き寄せられる。感じるぬくもりに、何故か安心した美砂は体の力を抜き、そのぬくもりの主――横島に身を委ねる。そして、まるで恋人に語りかけるような、そんな口調で彼に語りかけるのであった。
「遅いよ、横島さん」
それからナンパ男たちは、男がいることがわかるとすぐに退散した。彼らのルールでは、男つきの女に声をかけるのはNGだったようである。
それを横島に抱き寄せられた状態で見送った美砂であったが、自分たちの態勢に気づくと、慌てて横島から離れ、他の二人が来れないことを告げると、横島の手をとりカラオケ店に入店。部屋へつくなり、一曲歌うのであった。
(何やってんのよ、私! 取り敢えず歌ってる間に正気に戻ったけどさ。歌ったら、すっきりしたけどさ。絶対、変に思われたって)
美砂はそう思いながら、熱唱する横島を見つめる。そこには、美砂の内心に気づかずカラオケを堪能する横島の姿。少々、イラッと来たが横島は何も悪くないと思い直す。
(まぁ、変に思ってないみたいだからいいか。それにしても、あのときのぬくもり……何というか……)
横島に抱き寄せられたときのことを思い出し、美砂は呟く。横島が歌い終わっていることに気づかずに。
――凄かった……。
――そうだろ? 何せ近所じゃ歌が上手いと有名だったからな!
――え? あ、うん。歌、歌のことだよ! 歌のことに決まってんじゃん!
with(茶々丸@ねこ)
「どうしてマスターにも言っていないのでしょうか……」
猫と戯れたあと、自身の膝で眠る横島を眺めながら、少女――絡繰茶々丸はそっと呟いた。
彼女は、エヴァンジェリンの従者として生み出されたガイノイドである。彼女にとって、マスターであるエヴァンジェリンは絶対。秘密を持つことなど有り得ない。その筈であった。
しかし、彼女には、エヴァンジェリンにも他の誰にも伝えていない秘密の習慣があった。
それは、横島と一緒に猫の世話をして過ごすこと。
駅から猫の餌場まで並んで歩き、横島と二人で世話をする。それは、時間にすれば一時間にも満たないであろう僅かな時間。その時間のことを彼女は、誰にも伝えたことがない。
一度、茶々丸が一日をどのように過ごしているのか興味を持ったエヴァンジェリンに、一日の行動を聞かれた時にも、猫の世話とだけ伝え、横島が一緒だということは伏せていた。
彼女にはそんな自分の行動が分からなかった。本来なら、マスターに隠し事は禁物。それでも、それが悪いことだと思えなかった彼女は、その後も伝えることはなかった。
「きっと、これが二人だけの秘密と言うものなのでしょうね。本で読んだ時は、何故秘密にするのか理解出来ませんでしたが、今ならわかる気がします」
茶々丸が言う本とは、恋愛という理解できない茶々丸の為にと、のどかと夕映が選んだオススメ恋愛小説のことである。
「そういえば、本を借りる時、早乙女さんが渡そうとしていた本は何だったのでしょうか?」
「ん……茶々丸ちゃん?」
「おはようございます、横島さん。約十分程の眠りでしたが、疲れは取れましたか?」
眠りから覚めた横島が体を起こすのを手伝いながら、茶々丸が問いかける。
「おー、ばっちり。大体、そこまで疲れてた訳でもなかったしな」
立ち上がり、背伸びをする横島に、茶々丸も立ち上がり声をかける。
「横島さん……」
茶々丸の呼びかけに振り向いた横島に、普段は無表情な顔に微笑みを浮かべ彼女は告げる。
――秘密というのもいいものですね
――え、何のこと!? オレ、何か寝言でも言った!?
――ふふ、秘密です。
皆様のおかげで20万UAを突破しました。ありがとうございます。
時系列は内緒ですが何時かはこう言う関係になっていく……“かも”と思って頂ければ。ええ。“かも”です。
以下、各話あとがき。
タマモ:お題は動物園の他に、殺生石関連がありましたが諸事情で動物園に。狐や狸がいる動物園って数が少ないですよね。何でも、人気がないからだとか。狐かっこいいのに……。勿論、作中の動物園は架空の動物園です。それにしても、甘さの欠片もないな。
小竜姫:小竜姫様といえば修行。実は、本編あわせて二回目の膝枕。どちらかと言えば横島に甘えるタイプのキャラが多い為、小竜姫様はこういう甘えさせる系のシチュエーションが多くなるかと。まぁ、今回も甘えさせている訳ではないですが。
美砂:美砂のキャラは崩壊している可能性大。カラオケなのに、歌う描写はゼロ。
茶々丸:アナタはネコ派? イヌ派? この茶々丸のボディが換装前か後かはご想像にお任せします。
これらは拙作内設定です。
ご意見、ご感想お待ちしております。
活動報告は気が向いたら更新しています。関連記事はタイトルに【道化】とついています。