道化と往く珍道中   作:雪夏

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麻帆良学園に通うことになった小竜姫とタマモ。便利屋を営むことになった横島。彼らはこの麻帆良の地で何をなすのか……

一言: にんにくたっぷりの唐揚げが食べたい



その2 横島一行出逢う

 

 

 

 

 

 

 

横島一行が麻帆良にやって来た翌日。昨日の高畑との約束の通りに、横島たちは麻帆良女子中等部を訪れていた。

 

「いやー、ちょっと早く来ちまいましたかね」

 

「そうですねー。まぁ、待てばいいわけですし」

 

「それもそうですね。しっかし、こう中学生ばかりだとナンパして時間を潰すこともできんな」

 

「あら、中学生は対象範囲外なんですか?じゃあ、私たちも?」

 

「オレはロリコンじゃないっすからね。あ、小竜姫さまは別ですよ?」

 

「私は?」

 

「ガキには興味ねぇ」

 

「ハッ!言ってなさい。その内、そんな事言えなくなるようにしてやるわ」

 

「はいはい、楽しみにしてるよ」

 

タマモの宣戦布告ともとれる発言を軽く流し、タマモの頭を撫でる横島。それが癪に障ったのか、横島の膝を蹴るタマモ。その痛みにのたうちまわる横島に、タマモは嬉々として追撃する。そんな光景を微笑ましく見守っていた小竜姫が、ふと思い出したかのように呟いた。

 

「そういえば、学園長って人間じゃなかったんですね。まぁ、魔法協会の理事だから亜人でもいいんでしょうけど。それとも混血でしょうか?」

 

「私は先祖返りだと思うな。匂いが人間に近かったしね」

 

「確かにあの頭は見事だったが……。まぁ、オレたちが気にしても仕方ない。にしても、高畑さんはまだか?いい加減腹が減ってきたんだが……」

 

「アンタね……。ん?来たみたいよ?匂いが近づいてくる……けど、知らない人間が二人一緒みたい」

 

タマモが高畑を含めて三人の人間が近くに来たことを告げると、横島がジーパンの汚れを払いながら尋ねる。

 

「ふ~ん。美人なねぇーちゃんか?」

 

「さぁ?香水の匂いは一つだから、一人は大人の女性かな?」

 

「っし!ここは一発オレのナンパテクを……「横島さん?」……はい」

 

「飛びかかったら……切り落としますよ?」

 

小竜姫の言葉に、青ざめながら首を縦に振る横島。横島は悟ったのだ。自制しなければ、男として終わると。

 

その後、一分もしないうちに高畑が、二人の女性を連れて横島たちの前に現れる。高畑は、横島たちの姿を見つけると、手を上げながら近寄る。

 

「やぁ、待たせてしまったみたいだね。紹介しよう、こちらが葛葉刀子さん。そして、隣の子が桜咲刹那君だ。二人とも、この青年が横島忠夫君。その隣の赤髪の子が妙神竜姫君で、反対側にいる金髪の子が葛葉タマモ君だ」

 

高畑は合流するなり、紹介を始める。刀子と呼ばれた女性は、二十代後半くらいで腰まである長い髪をそのままにおろし、メガネをかけており凛とした雰囲気を放っている。正直、横島は飛びかかる寸前であったが、小竜姫とタマモが背中を抓る感触で何とか自制する。もうひとりの刹那と呼ばれた少女は、髪をサイドでまとめており、つり目であることもあってか凛とした雰囲気を纏っていた。

 

「はじめまして。葛葉刀子よ。麻帆良女子中等部で教師をしているわ。担当は古典」

 

「はじめまして。桜咲刹那です。この春から、女子中等部に入学することになっています。麻帆良には最近きました」

 

「妙神竜姫です。私たちも春から中等部に入学するんです。よろしくお願いしますね?」

 

「葛葉タマモよ。よろしく」

 

互いに挨拶を交わす女性陣。挨拶の順番が回ってきた横島が、ここはかっこよく決めてやると、意気込んで挨拶をしようとする。

 

「僕は横…「こいつは横島。スケベだから気をつけて」…お前はワイに何の恨みがあるんやー!!」

 

「事実でしょ?」

 

「なんやとー!!」

 

唐突に始まった言い合いに、呆気に取られる高畑たち。そんな三人に気づいた小竜姫が、笑顔で言葉を紡ぐ。

 

「ああ、気にしないでください。いつものことですから。その内、おとなしくなります」

 

その言葉が聞こえたのかは分からないが、タマモが肘を横島の鳩尾に決め大人しくさせた。

悶絶する横島とそれを見て笑うタマモを横目に、小竜姫が高畑へ問いかける。

 

「それで、お二人を連れてきた理由は?」

 

「あ、ああ。いや、それより彼は…「大丈夫です」…そうなのかい?まぁ、そういうのなら……。彼女たちは所謂関係者でね。刹那君は君たちのクラスメイトになるし、まだ麻帆良に来てから日が浅いからね。親睦を深めながら、一緒に案内しようと思ってね」

 

「そうですか。改めてよろしくお願いしますね?刹那さん」

 

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

「それで、刀子さんの方は?」

 

「私は刹那とは同じ流派でね。麻帆良に来る前からの知合いなのよ。それで、刹那を案内しようと思ってたところに今日の誘いがあったってわけ」

 

小竜姫はその言葉に、改めて二人をじっくりと眺める。無言で見つめられた二人は、その視線に居心地の悪さを感じるが、同性であることから耐える。

 

「ふむ。横島さーん、こっちに来てください!タマモちゃんも!」

 

「なんすか、小竜姫さま?」「なに?」

 

小竜姫の呼びかけにすぐ集まる横島とタマモ。悶絶していた筈の横島が、何事もなかったかの様に寄ってきたことにも驚いたが、横島の“小竜姫さま”という言葉に疑問をもつ刹那たち。

 

小竜姫は刹那たちの疑問を気にもせず、横島とタマモに話かける。

 

「この二人をどう思います?」

 

「どう……とは?」

 

漠然とした問いかけに、質問の意図が分からず聞き返す横島。

 

「二人とも関係者らしいのですが、魔法使いと気の使い手。どちらだと思いますか?」

 

「う~ん。まぁ、魔力の方が小さいですし……気の使い手ですかね?刹那ちゃんの方は魔力もそれなりみたいですけど。微かに霊力も感じますね」

 

「そうね。刹那は人間にしては気も魔力も大きいわ。霊力は混血だからかしら?」

 

「ん?でも、魔法世界であった混血の人たちは霊力なんてなかったぞ?」

 

「魔法世界にいた混血とは違う匂いだけど、間違いなく混血の筈よ。霊力は多分、魂の質が違うのよ」

 

「そうですか。学園長は先祖返りでしたけど、霊力は感じなかったですからね。私の勘違いかとも思ったんですが、お二人が言うのなら間違いではなさそうですね」

 

盛り上がる小竜姫たちとは違い、刹那たちの方は静かである。高畑と刀子は刹那の出自に気づいたのかと驚愕しており、刹那に至っては顔面蒼白である。途中、霊力という耳慣れない言葉を聞いたが、それも吹っ飛んでしまっている。

 

そんな三人に構わず横島たちは会話を続けている。

 

「しかし、よかったな~タマモ。これで、関係者にはお前のことを隠す必要は完全にないわけだ」

 

「そうね。学園長だけなら隠しておくけど、刹那がいるんだもの。大丈夫ってことよね」

 

タマモの発言に、どういうことかと問いただそうとする高畑たち。そこに、タマモ自身の口から驚愕の事実が告げられる。

 

「“妖狐”だって秘密にしなくていいのは助かるわね」

 

 

「「「ええぇぇ!!!」」」

 

 

三人の驚愕の声に、横島たちは一斉に振り向くのであった。

 

 

 

 

 

「落ち着いた?」

 

驚愕の声を上げ固まっていた三人が落ち着くのを待って、タマモが問いかける。それに、一番に反応したのは刹那であった。

 

「あ、あの、その、えーっと。妖狐だって、いや、それより、私のこと」

 

「あー、落ち着きなさい。妖狐だってのは本当よ。それで、アンタが混血――ハーフだってことも分かってるわ」

 

「そ、そうですか。あ、あの、私のことは内密に。その、知られるとマズイので」

 

「あー、そうなの?こっちじゃ、ハーフとか知られちゃダメなわけ?」

 

「えーと、その、あの…「あー、私が説明するわ。いいわね?刹那」…はい。お願いします」

 

テンパっている刹那を見かねたのか、刀子が説明をする。

 

「ハーフってこと事態は知られても問題ないわ。ただ、口外しない方がいいってのも事実。魔法世界の人間の中には、妖怪やそれに類するものたちを目の敵にしている奴らもいるから。こっち――旧世界出身の魔法使いはそうでもないんだけどね」

 

「じゃあ、学園内の関係者はどっちなわけ?」

 

「どっちも。ここは魔法学校を出たばかりの子や、魔法世界から派遣されて来た人もいるし。ただ、その人たち全員がそうって訳でもないし、危害を加えるのは当然禁止だから安心はして頂戴」

 

「そう。ま、積極的にいう事でもないしいいわ。気をつける。刹那も驚かせたみたいで悪かったわね」

 

「い、いえ。魔法世界では亜人の方々も普通に生活してると聞きますし、こっちに来たばかりでは葛葉さんたちも勝手がよくわからないでしょうから」

 

「あー、タマモでいいわ。私も刹那って呼んでるし」

 

「は、はい!タマモさん!」

 

固く握手をするタマモと刹那。いろいろあったが、友情が結ばれたようである。そんな二人を微笑ましく見守っていた小竜姫が、刹那に話しかけながら手を差し出す。

 

「私が横島さんたちに尋ねたばかりに大事にしてしまったようで。申し訳ありませんでした。私のことは竜姫と呼んでくださいね」

 

「いえ。私のことも刹那と」

 

「おおー、美少女同士の友情って奴かー。あ、オレのことは“お兄さん”とでも呼んでくれ!ところで、刹那ちゃん……君」

 

「は、はい」

 

刹那の手をとり迫る横島。その迫力に押されながらも、何とか答える刹那。

 

「君におねぇーさんはいないかい!刹那ちゃんはこんなに可愛いんだから、きっと美人なお姉さまがいるに違いない!是非、紹介して…「「せいっ!!」」…ごっぐ」

 

目の前から急に消えた横島に驚く刹那に、タマモが話しかける。横島はいつ移動したのか、少し離れた場所で小竜姫に許しを請うている。

 

「アイツが言ったことは気にしなくていいからね……って、顔が赤いわよ?」

 

「あ、いえ……その、可愛いって男の人に言われたの初めてで」

 

「それは、他の男が見る目なかっただけよ(ちょっと、この娘ちょろいんですけどー!!)」

 

内心の動揺を隠しながらタマモが刹那に言う。刹那と仲良くなるのは構わないが、横島が興味を持たれるのは遠慮したいタマモである。しかし、その思いは実ることはない。

 

 

 

 

――何故なら、刹那の視線の先には横島がいるのだから。

 

 

 

 

「いやー、青春だねー。会わせて正解だったみたいだね」

 

「そうですね。お嬢様と同じクラスになるって、張り詰めてましたから。それに、此処(麻帆良)は神鳴流剣士であるあの子にとっては敵地も同然。帰る場所も既になく、かつての仲間からは裏切り者と罵られる。まぁ、それは私も同じなんですが」

 

「……これで、刹那君も少しは楽になるでしょうね。友達が二人も出来た」

 

「ええ。本当に」

 

 

 

 

 

 

色々あったが、本来の目的である街の案内を再開しようとする一同。

 

そこに、そういえばと高畑が告げる。

 

「さっき横島くんたち、学園長が先祖返りとか言ってたけど……」

 

「それがどうかしたっすか?ああ、先祖返りも不用意に言いませんから、大丈夫っす」

 

「そうじゃなくて……いや、言うのを控えてくれるのはいいんだけど」

 

「じゃあ、何すか?」

 

「学園長の家系に妖怪や亜人はいない筈だよ。あの人は純粋な人間だ……多分」

 

 

 

 

「「「ええぇぇええ!!!」」」

 

 

 

――その日、麻帆良の各地で謎の叫びが聞こえたと言う。

 

 




ネギまキャラが本格的に登場し始めました。
一番最初に出会ったクラスメイトはせっちゃんでした。予測出来た方はいるでしょうか。
いないといいなー。

個人的に、せっちゃんはちょろいと思います。出自からして、男性に免疫ないでしょうし。
とは言っても、簡単に横島に惚れたりはしません。現状では、出自を気にしない横島がちょっと気になる程度です。


ハーフとバレた刹那がすぐ様逃げ出さなかった理由は、横島たちが魔法世界からやって来たと聞いていた為です。元々、裏の人間ですから思わず逃げ出すとまでは行かなかったわけです。関係も浅いので、そこまで深刻にならなかったと言うのもありますが。それでも、顔面蒼白にはなりましたが。

刀子が女子中等部の教師である。刹那と刀子が麻帆良に来る前にあっている。刹那のことを刀子が知っている。
これらは作中設定です。

刹那、千雨がヒロイン昇格しました。

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