道化と往く珍道中   作:雪夏

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エヴァンジェリンとの実践訓練が決定したタマモと小竜姫。妖狐と竜神と吸血鬼の勝負の行方は……?


一言: あれー? 色々あれー?



その6 妖狐と竜神と吸血鬼と……煩悩人と 後編

 

 

 

 

 

翌日、エヴァンジェリンが集合場所に指定した学園長室には既に横島の姿があった。横島が話があると早めに出向いたのだ。

 

「して、話とは?」

 

「三つあるんですが……。まず一つは許可ですね。木乃香ちゃんに手紙を書いてもらってるんです。親に向けての。それを京都へ行った時に渡す許可をくださいってのが一つ」

 

「うむ。それは問題ないぞ」

 

「次に提案です。木乃香ちゃんの今後についての」

 

横島の一言に学園長は一瞬で真剣な顔つきになる。可愛い孫娘のことなのだから、当然である。

 

「聞こう」

 

「まだ確証はないんですが……木乃香ちゃんも持ってるっぽいんすよ」

 

「まさか……」

 

横島の言葉に近衛は目を見開く。横島が次に告げるであろう言葉は、それほど予想外の言葉なのだ。

 

「そのまさかみたいです。木乃香ちゃんも“霊力”を持っている可能性が高いです」

 

「そうか……ん? 可能性ということは、まだはっきりとはわかっておらんのか?」

 

「ええ。木乃香ちゃんの場合、“魔力”が大きいせいかイマイチ確証がなくて。調べれば一発なんですが……可能性としては八割ってとこですかね」

 

「確証がないといった割に高いのぉ。つまり、提案と言うのは詳しく調査しないかという事かのぉ?」

 

「ちょっと違います。この機会に“霊力”の調査もですが、こちらの事情を木乃香ちゃんに伝えるかどうかについて、木乃香ちゃんのご両親を交えて話しませんかという提案です。以前、両親の方針については聞いてますし、それについては理解もできます。ただ、もう一度話し合う時が来たんじゃないかと。伝える場合も伝えない場合も、対策しないといけませんしね。ま、オレとしては木乃香ちゃんに決めてもらうのが一番だと思いますけどねー」

 

「……そうじゃのぉ。婿殿も自分の我が儘だと本当は理解しておるんじゃろうが、かつての大戦を経験しておるからのぉ。どうしても、木乃香には関わって欲しくないと考えてしまうんじゃろう。しかし、“霊力”持ちの可能性があるのなら、今後について改めて話し合うべきか」

 

「まぁ、すぐに結論が出るとは思ってませんが、“霊力”が関わっている以上、早い方がいいですからね」

 

「ん? どういうことじゃ?」

 

木乃香の父――詠春に今一度提案しようと決めた学園長であったが、横島の言葉に疑問の声をあげる。

 

「まず第一に“霊力”というのは妖魔にとって、“魔力”以上に魅力的な“餌”であるということ。妖魔が襲ってくる可能性があるってことです。事情を教えるなら、霊具も持たせやすいですしね。教えないとなった場合でも、早急に“霊力”を封印した方がいいですし」

 

「……ふむ。確かに妖魔の襲撃が増えてきたという報告は来ておる。ただ、増えたといってもまだまだ数は少ないがのぉ。それに、木乃香狙いという確証もない……が、違うという確証もないというのが現状じゃ。木乃香の安全を考えるのなら封印するにせよ、事情を知らせるにしても急いだ方がよいということか」

 

横島は黙っていたが、横島たちが“霊力”を持っているのではと疑っている人物がこの時点で木乃香の他にも数人いる。しかし、彼女らは木乃香と違い、対抗手段を持っているか、“霊力”が外に漏れていない為に此処では報告していない。前者はともかく、後者は普通に生活をしていれば“霊力”に目覚めることもないし、妖魔と近距離で接触でもしない限り感知もされないからである。

 

因みに木乃香の場合、非常に強い魔力を発している為、注目を集めやすい状態となっている。

 

そんな事とは知らない学園長は、木乃香の身辺警護をどうするかを考えていた。そこに横島がもう一つの理由を告げる。

 

「そうですね。で、もう一つの理由。これは事情を知らせて、木乃香ちゃんに“霊力”を教える場合の話ですが……っと、その前にこれから話す内容は内密にして欲しいんですが」

 

「約束しよう。こちらは霊力という失われた秘術について教わる身じゃ。それくらいのことは折込済じゃ。他言するつもりは元々ない。大きな力が恐れられると言うこともよく知っておる(エヴァのようにのぉ……)。それに、約束を違えて君たちの不興を買ってもいいことなんてないしのぉ」

 

フォフォフォと髭を撫でながら笑う学園長。横島はその姿を苦笑とともに眺めている。

 

「それならいいです。それで、早い方がいいと言った理由ですが……“霊力”の修行をするなら早い方がいいからです」

 

「フォッ?そ、それだけかのぉ?」

 

「ええ。それだけです」

 

横島の言葉にしばし呆然としていた学園長であったが、すぐに思考を巡らす。

 

「(力を鍛えるなら幼少時から行った方がいいのは普通のことじゃ。“魔法”の場合は“魔力”の扱いに慣れるまで時間がかかるし、“気”はそもそも肉体を鍛えねばならないからのぉ。……しかし、あえて彼は内密にと言った。つまり、“霊力”独自の理由がある……?)……それは何故と聞いても?」

 

「構いませんよ。えーと、“霊力”は幼少時の方が目覚めやすいんです」

 

「……それだけ?」

 

「大事なことですよ? 元服だから……大体15歳前後? それまでに目覚めないと、大抵の人は“霊力”に目覚めることなく一生を終えるそうです。勿論、目安ですから絶対に目覚めないというものではないです。あくまで、目覚めやすいってだけで。それに、何事にも例外はありますから」

 

 

その例外筆頭が横島であることは言うまでもない。横島の場合、元々資質があったところに小竜姫が影法師(シャドウ)――実体化した霊力を抜き出したことで霊力を扱う下地がつくられ、高い潜在能力と心眼の補助があった為に完全に目覚めたという経緯がある。高い潜在能力と二度に渡る小竜姫の助け。まさに例外中の例外である。

 

 

「ふむ……。木乃香が霊力を学びたいと言った時、手遅れになるかもしれんというわけじゃな?」

 

「そういうことです。刹那ちゃんの場合、元々“気”を扱っていますし、出自のこともありますから割と早く目覚めるとは思います。木乃香ちゃんは下地がゼロですからね。猶予はあるといっても、早めに取り掛かるのが一番です」

 

「しかし、秘密にする必要があるのかね?」

 

「大人では“霊力”を習得できないって話が広まると、子供を攫って教育(実験)なんてバカなことを考えるヤツがいないとも限りませんし。念には念をってヤツですよ」

 

「ふむ。ないとは言い切れんのが悲しいことじゃのぉ。……改めて内密にすると約束しよう。婿殿には……別に知らせんでもよかろう。ただ、話し合いの場は早急に用意する」

 

「そうしてください」

 

「さて、どうなることやら」

 

二人は木乃香の今後に思いを馳せる。強大な力を持つ木乃香。安寧の日々を送るのか、それとも……。

 

 

 

しばしの沈黙の後、学園長が口を開く。先程の話の内容が内容であった為か、次に何を話すのだろうかと警戒しているようにも見える。

 

「それで、話の三つ目とはなんじゃ?」

 

「あー。その、開業祝いのお花ありがとうございました。あと、色々お世話になってますから、これ。お礼です。大したものじゃないですが」

 

「おお、わざわざスマンのぉ。そんなに気にせんでもよかったのに。此方が要請して来てもらったんじゃし、便宜を図るのは当然じゃ。それに花については麻帆良内で開店、開業するところには全て贈っておるしのぉ。して、どうじゃ? 便利屋の方は? 順調かの?」

 

横島が差し出したお茶菓子詰め合わせを受け取りながら答える学園長。先までの内容と打って変わり、日常的な会話に少し安堵しているようである。

 

「まだ二日目ですからねー。何とも言えないってのが正直なとこっすね。しかも、営業は止められちゃいましたから、現状は待ちの一手ですね。あ、それとですね。タマモたちのクラスメイトが報道部らしくて、取材してくれるそうです」

 

「ほー。報道部の取材をのぉ。記事に乗ればこれ以上ない宣伝じゃの」

 

「そうみたいですねー。学生の部活動が何でそんなに影響力を持ってるのかが、オレにはよく分からんっすけど」

 

「ここは殊更学生の影響力が高いからのぉ……。そうじゃ、少し聞いてもよいかの?」

 

「何でしょう?」

 

「エヴァとタマモ君たちが訓練することになった経緯とか知っておるか? 儂も警備に就いてもらう前に実力をみられるのならと許可したが、エヴァがあそこまでヤル気になっておるのは珍しくてのぉ」

 

脳裏によぎるのは、高笑いするエヴァンジェリンの姿。あれほど感情的になるエヴァンジェリンも珍しい。

 

「あー、何か挑発合戦の結果らしいです。それにしても、訓練なんて何処でやるつもりなんでしょうね?」

 

「おそらく、エヴァが所有しておる魔法球の一つじゃろう。聞いたことはないかの? 魔法球とは主に魔法使いが訓練や実験に使うものでのぉ。基本的な機能は、内部に別空間を創るといったものじゃが、大抵の魔法使いは内部の経過時間を加速させたり、魔法を使いやすい環境にと機能を追加しておる。そこなら、エヴァも魔法を使えるし、時間を気にすることもないからのぉ」

 

「へー、便利っすね。時間を気にせず修行が出来るとか、竜姫が聞いたら喜ぶだろうなぁ」

 

横島の脳裏には、時間を忘れ修行に一人没頭する小竜姫の姿が浮かんでいた。しかし、横島は知らない。確かに彼女は修行好きではあるが、没頭する程ではないし、一人で修行するよりも誰か――特に横島――を鍛えることの方が好きだという事を。

 

神族である小竜姫は元々の力が大きい為、修行しても人間のような劇的な変化は望めない。勿論、武術を学ぶことで技を身につけたりはできるし、霊力も強くはなる。しかし、元の力が大きい為に、成長がわかりにくいのである。

だからこそ、高い才能を持つものを鍛えることが好きなのである。小竜姫はそう言う意味でも横島が好きなのである。高い潜在能力、多彩な才能、急激な成長、柔軟な思考力に意外性。横島の人間性を含めてそのすべてが愛おしいのである。

 

 

 

 

 

その後、二人は世間話を続ける。この後に控えている諸々の事から目をそらすように。

 

「高級学食なんてのもあるんすか」

 

「打ち上げに人気らしいぞ? あそこまでいくと学割が凄い店という感じじゃのぉ。君も今度行ってみたどうじゃ?」

 

「そうですねぇー。もう少し便利屋が安定した後で行ってみますよ」

 

「そうじゃ! 木乃香のことが片付いたら一緒に行かんか? 結果がどうなるにしても……じゃ」

 

「いいですね。是非」

 

「フォフォフォ。これで、あとの楽しみが出来たのぉ。後は望む結果が出るように頑張るだけじゃ」

 

「楽しみがあると思えばってやつですか」

 

「何事も楽しむことが出来れば、自ずと良い結果となると言うもんじゃ」

 

「はー、深いっすね」

 

「そうじゃろ、そうじゃろ。伊達に長く生きてはおらんよ。ま、エヴァ程ではないがの」

 

「あー、600歳でしたっけ? 吸血鬼としては若い方なんすかね?」

 

「さぁ? 儂もエヴァ以外に吸血鬼を知らんしのぉ。しかし、まだかのぉ? そろそろじゃと思うんじゃが……」

 

 

 

 

学園長が呟いたからなのか、学園長室の扉が開く。エヴァンジェリンを先頭に茶々丸、タマモ、竜姫が室内に入ってくる。そして、もう一人。

 

「お、刹那ちゃん」

 

「あ、横島さん。もう来てたんですね」

 

「ああ、ちょっとね。今日、オレたちは見学だから気楽に行こう。うん、それがいい」

 

うんうんと頷く横島にエヴァンジェリンが口を開く。

 

「貴様がこいつらのマスター候補か。……なんだ“魔力”も“気”も並ではないか。葛葉タマモ、妙神竜姫。こんなヤツがマスターでいいのか? それに覇気も感じられん。ダメダメじゃないか」

 

「お子ちゃまには横島の良さはわからないわよ(竜姫! 横島に興味を持たせちゃダメよ

!)」

 

「ダメな人ほど可愛いというじゃないですか(分かってます! 吸血鬼はピートさんという前例がありますからね! すぐに仲良くなるに決まってます!!)」

 

「そりゃないよ、竜姫~」

 

泣き崩れる横島を他所にタマモと竜姫はエヴァンジェリンを警戒する。彼女が吸血鬼――人外であることに今更危機感を覚えたようである。

睨み合う形となったタマモたちとエヴァンジェリンの背後では、刹那がこっそり横島を慰めていた。

 

「わ、私はそこまで横島さんのことを知っている訳ではありません。ですが、少なくともダメな人じゃないと信じてます! ですから、その……元気出してください!」

 

「ううっ……刹那ちゃんはええ子やなぁ。いつもなら、誰もオレのことなんか気にせんのに。……ありがと、刹那ちゃん。元気出すよ」

 

「い、いえ。お役に立てたのならそれで……」

 

珍しく人から慰められた横島は、刹那の頭を一撫ですると睨み合っているエヴァンジェリンたちに歩み寄り話しかける。背後で赤くなっている刹那に気づくことなく。

 

「君がエヴァちゃんかい? オレは横島忠夫。気軽に“忠ちゃん”でも“よこっち”とでも呼んでくれ。そっちの君も」

 

「ふんっ! 誰が呼ぶか! 大体気安く私を呼ぶでない! この…「分かりました。では、忠ちゃんさんと」…茶々丸……。そういう場合はさんはつけなくていい」

 

「そうなのですか。では、忠ちゃん様でしょうか?」

 

「いいか、茶々丸。愛称に敬称を付けることはしない。わかったか?」

 

「愛称には敬称をつけない……学習しました」

 

「うむ」

 

うんうんと満足そうに頷くエヴァンジェリン。そのやり取りを不思議そうに眺めていた横島たちだが、ひと段落したと見て再度話しかける。

 

「ええと。いいかな?」

 

「む? ああ、そうだったな。では、我が家に招待してやろう。ついてこい」

 

「マイペースだなぁ」

「周りが見えてないだけじゃない?」

「とにかく行きましょうか」

「はい」

「フォフォフォ」

 

 

 

 

 

女子中等部から一行は、木々に囲まれたログハウス――エヴァンジェリン宅へと移動していた。室内に入ると、そのままエヴァンジェリンは一行を引き連れ地下へと向かう。そこには、台座とその上に置かれたボトルが。

 

「これは我が別荘の一つだ。まぁ、私レベルの魔法使いともなればこれくらいは持っておらんとな。今回はこの中で模擬戦を行う」

 

「こちらの一時間が中での一日に相当致します。また、中で一日経過しないと外へは出られません。なお、着替え、食事についてはこちらで用意しております」

 

「分かったら行くぞ。まぁ、怖気づいたのなら来なくとも良いがな」

 

そう言うとエヴァンジェリは姿を消す。ボトルの中へと転移したようである。続いて茶々丸の姿も消える。

 

「じゃ、儂らも行くかのぉ」

 

「行くってどうやれば?」

 

「このボトルに近づけば良い。そうすうれば、転移陣が反応するわい。ああ、レジストはしないようにのぉ」

 

その言葉に従い横島を先頭にボトルに近づく一行。次の瞬間、地下室には一行の姿はなかった。

 

 

 

 

 

「ほー、こりゃ見事なもんだ」

 

横島たちが転移した場所は、四方を海に囲まれた塔の上であった。塔はかなり高く、一本の橋が伸びている。その先にある塔には広場があり、更にその奥には建物が見える。下を見下ろすと、広場のある塔からは下に降りる階段が塔の外壁に沿って作られているのが分かる。おそらく、下方に見える砂浜へと向かう階段であろう。

 

「へー、ここはいいわね。濃度が高い」

 

「ほう。わかるか。ここは魔力が外界に比べ満ちている。そのおかげで、私も存分に力を振るうことが出来ると言う訳だ。模擬戦はあそこの広場で行う。ついてこい」

 

そう言うとエヴァンジェリンは橋を渡っていく。その後ろを歩きながら、刹那はタマモに質問する。

 

「あ、あの。にんにくは結局」

 

「ああ、使わないわよ。それに試したいことも出来たしね」

 

「試したいこと……ですか?」

 

「ええ。昨日ちょっとね。竜姫も今日はそれを試すつもりよ。だから、私たちの戦い方がちょっと変かもしれないけど気にしないで。ああ、でもちゃんと見ておきなさい。私たちが使う“力”は変わらないから」

 

「はい。この目でタマモさんたちの“力”見させていただきます」

 

力強く頷く刹那に満足気に微笑むタマモ。そんな二人にエヴァンジェリンが話しかける。

 

「ほう、余裕じゃないか。私相手に試したいなどとは……いいだろう。初手は譲ってやる。それに茶々丸も参加させん。存分に試すが良い」

 

「あら、いいの? 後悔しても知らないわよ」

 

「構わん。誇り高き“悪の魔法使い”たる私に二言はない。そこまで言うからには、楽しませてくれるのだろう?」

 

「そうね。きっと、面白いことになるわ」

 

「ならよい。ああ、妙神竜姫。お前はどうする?」

 

「私はアナタの全力と戦いたいですね。どうも最近体を動かす機会がなくて。茶々丸さんも一緒で構いませんよ」

 

「ほう、いうな。まぁ、私も茶々丸との連携を確認したいので丁度いいがな。ま、あっさりやられるということだけではやめてくれよ」

 

「ふふ、ご心配には及びませんよ。きっと、楽しくなります」

 

自身満々に笑う小竜姫。その瞳はエヴァンジェリンではなく、横島を捉えていた。そのことに気づくことなくエヴァンジェリンは話を続ける。

 

「そうだといいがな。で、どちらから相手をしてくれるんだ? 何ならあの男を加えても構わんぞ」

 

「オレはやらん!!」

 

「と言う訳で、アイツはなし。ま、アイツを加えたら可哀想だしね」

 

「本当にそんなヤツがマスター候補でいいのか? どちらかと言うと、従者にしてやった方がいいんじゃないのか?」

 

タマモの言葉を横島は戦闘力がないと受け取ったエヴァンジェリンは、従者にしてアーティファクトが出ることに期待した方がいいのではないかと暗に伝える。

 

タマモはそれに笑って答えるのであった。

 

「アイツ以上なんていないし、アイツは縛れない。これが、私と竜姫の答えよ。さ、そろそろ始めましょうか?」

 

「そうか……。で、お前が相手でいいんだな? 茶々丸!! お前は見学だ。そこでジジイたちと見ておけ」

 

「分かりました。マスター」

 

優雅に一礼すると茶々丸は横島たちの元へ移動する。入れ替わりに学園長が前と進む。

 

円形に拡がる広場で、中央を挟んでエヴァンジェリンとタマモが向かい合う形で立っている。それを、学園長以外の面々が横並びで見学している。横島たちから一歩前に出た学園長が口を開く。

 

「それでは始めるとしようかのぉ。両名とも相手を死に至らしめる攻撃は禁止じゃ。ま、エヴァは不死じゃがの。危険と儂が判断した場合、割ってはいるからの。またある程度の怪我なら治療薬を持ってきておるから心配するでない。では……存分に力を示せ!!」

 

 

 

学園長の声が広場に響き渡る中、向かい合う二人に動きはない。やがて、エヴァンジェリンが口を開く。

 

「約定通り先手は譲ろう。試したいことがあるのだろう?」

 

「ええ。お言葉に甘えさせてもらうわ」

 

そう言うと、タマモはポケットから一枚のカードを取り出す。そして、高らかに唱えるのであった。

 

 

 

――“来たれ(アデアット)

 

 

 




今回は模擬戦前の説明回となりました。学園長が出張ったせいです。文句は学園長に言ってください。時間がかかったのは私のせいです。でも、文句は学園長にお願いします。

皆様のおかげで10万UA突破しました。ありがとうございます。
記念小説は少々お待ちを。

木乃香が霊力を持っているかもしれない。霊力の目覚めやすい時期。横島が霊力に目覚めたのは影法師も関係している。
これらは拙作内設定です。

ご意見、ご感想お待ちしております。
活動報告もたまに更新しています。

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