一言:忘れられた頃に更新!
横島が京都でナンパに励んでいた頃。タマモと小竜姫の二人は刹那とエヴァンジェリンの二人を自宅である”よこっち”に招待していた。
「それで? この私に見てもらいたいというのは?」
「もう少し待って。今、竜姫が調整しているとこだから。そう言えば、茶々丸は一緒じゃなかったの?」
「ああ、アイツはメンテナンスとかで超のところだ。暫くは週に何度か必要らしい」
「ふ~ん。面倒なことしてるわね~」
エヴァの説明を軽く流すタマモ。聞きはしたが、然程興味はなかったらしい。
そんな二人のやり取りを黙って聞いていた刹那は、教室で竜姫に誘われた時のことを思い出していた。
「今日……ですか?」
「ええ。以前言っていたアレがもうすぐ完成予定なので。一度見てみませんか? 何でしたら刹那さんの要望も取り入れますよ?」
「あ、はい。って、別に私の意見はどうでもいいと思うのですが……」
竜姫の提案に困惑する刹那。アレと言うのが以前言っていた修行場と言うのは理解できたが、修行を受ける自分の要望を取り入れる理由が分からなかったのである。
「そうですか? 私は刹那さんの流派の修行に必要なものとかわかりませんから、本人に聞いた方がよろしいかと」
「特に必要としているものはないと思いますよ。基本的に道場で行っていましたし……麻帆良で刀子さんと修行する時も特には……。それでも何か挙げるとしたら、打ち込み用の巻藁とかでしょうか。他は滝行用に滝なんて……流石に無理ですよね」
「あら、それいいですね! 横島さんには精神修行が必要だと常々思っていたんですよ。うん、滝行……いいじゃないですか」
「え、あの……」
「では、六時に家に来てくださいね。それでは、私はやることが出来ましたので!」
刹那が冗談で口にして滝行に乗り気な竜姫。そのまま、刹那を放ってどうやって滝を設置するかに考えを巡らせ始める。その内、考えがまとまったのか刹那に時間を告げるとすぐに教室を出ていくのであった。
「お待たせしました! さ、こちらへ」
ようやく部屋にやって来た竜姫に促されてやって来たのは、よこっちの事務所として使用している一階の部屋。そのまま本棚が二つ並んでいる所まで進むと、エヴァと刹那に今日呼んだ理由について話し出す。
「刹那さんには少し話していましたが、こちらへ移り住んでから私たちは修行場所を
「ま、ほとんど竜姫がやったんだけどね。刹那は中を見て回って、足りないものや、追加で欲しいものがないかを確認して。エヴァも頼むわ。但し、エヴァは魔法使いの観点で確認すること」
「ふむ。それくらい構わないが、貴様ら魔法の修行も始めるというのか? あれほどの実力があれば、今更魔法を覚えても意味がないだろうに。ああ、あの男が魔法使いなのか?」
そう言えばサポートタイプだったな、と納得するエヴァ。竜姫たちと仮契約を結んでいることもあり、横島の為だと勘違いをしているのである。
しかしながら、横島は魔法使いではない為、この考えはハズレである。幾つか魔法を覚えてみようかという提案はあったが、今のところ彼女たちに他の修行の時間を割いてまで覚えるつまりはない。
では、何故魔法使いであるエヴァの意見を必要としているかと言うと、様々な力の使い手が修行出来るような修行場を作りたいという竜姫の思いからである。
「じゃ、早速行きましょうか。この本棚をスライドさせると……ほら、地下への階段が!」
「その仕掛けは元からでしょうが。ちょっとテンションが変になってるわよ。まぁ、アンタが一番熱心に創っていたから仕方ないのかもしれないけど」
「そ、そうでしょうか? 自分では普段と変わりないと……。まぁ、そんなことはどうでもいいことです。では、皆さん参りましょうか。修行場は地下にありますので」
気を取り直し先導する竜姫に、苦笑しながら続くタマモ。タマモと横島の二人は修行場の構築に必要な霊力やアイディアなどは提供したが、それだけであり構築は全て竜姫一人で行っていたのである。その成果を披露するとあって、ここ最近では珍しく浮かれ気味なのであった。
「あの……タマモさん? ここが修行場……ですか」
何処か当惑した表情で尋ねる刹那。彼女の目の前には旅館のロビーのような空間が広がっていた。
「そうよ。ま、ここは食事をしたり休憩したりするところなんだけどね」
「他にも宿泊の為の部屋や道具を保管したりする倉庫、汗を流す為の温泉もありますよ」
主な効能は疲労回復です、と語る竜姫。そんな彼女に何とも言えない表情をする刹那。
「で、あっちがアンタや刀子の為に創った剣道場に続く扉。その横が竜姫が向こうで修行していた場所をモデルにした修行場。それで、その左が……何だっけ?」
タマモが指差した扉には、『自』という言葉が記されており、剣道場と説明した扉には『剣』、修行場には『修』の文字が同じく記されていた。
「そっちは滝とか自然物の空間ですね。今のところ滝行や瞑想するくらいしか使い道はないのですが。ああ、野営訓練とかにも使えそうですね」
食べられる植物も色々突っ込みましたから、と語る竜姫に意外と大雑把なのではないだろうかと疑問を持つ刹那。同じ疑問をエヴァも持ったようだが、例えそうでも自分には関係ないとすぐにその考えを捨て、修行場に関して意見を述べる。
「私の別荘以上に魔力に満ちているな。これなら外より魔法は発動しやすいだろう。他もこれと同じくらいの濃さなら、
「そうですか。それは良かったです。では、早速剣道場の方から見て回りましょうか」
そう告げると竜姫は『剣』と刻まれた扉を開くのであった。
「で、どうでしたか? 刹那さんたちが利用する空間は全て見てもらいましたが、何か不足していたものはありましたか?」
「あ、はい。麻帆良にある修行場より、かなり充実していましたし特に足りない物はなかったかと。かなり威力のある技の修行も出来そうですし」
「ふむ。攻撃魔法は上位になるほど、効果範囲が広くなるからな。あそこならそれらを放っても問題ないだろう……と言うか、実際に問題無かったしな。いくら全力ではないとは言え、
何処か呆れた様子で語るエヴァ。彼女は、剣道場(他の空間からも移動可)から続く模擬戦(または高威力の技の練習)用の空間で、竜姫に頼まれ雷系最強呪文を試し打ちをしていたのである。
刹那には壁に向かって斬空閃と雷鳴剣を放ってもらったが、どちらも修行空間には何の影響もなく、刹那はその強度に関心するばかりであった。
「まぁ、減衰や吸引の術式を使っていますからね。取り敢えず、魔法も気も問題なさそうですね」
ホッとため息を吐く竜姫。事前に、自身の霊波砲などで強度の確認をしていたが、魔力と気が霊力と同じ術式で軽減出来るかは不安があったらしい。
「んじゃ、さっさと戻ってご飯とお風呂の準備をしましょ。早くしないと横島が帰ってくるわよ? 横島を準備万端で迎えるってのやりたかったんでしょ?」
タマモの言葉に慌てる竜姫。麻帆良にやって来てから、横島の帰宅を竜姫たちが待つと言うシチュエーションは、今回が初めてなのである。その為、この機会に竜姫は夫の帰りを待つ新妻よろしく夕飯と風呂の準備をして、横島の帰宅を待つと決めていたのである。
無論、出迎えの言葉は定番のあの言葉……は竜姫の性格的に無理なので、無難にお帰りなさいである。
慌てて夕飯の買い出しに向かう竜姫を追いかけながら、タマモはエヴァと刹那に話しかける。
「あ、アンタたちも夕飯食べていきなさいね。今日のお礼ってことで」
「いえ、そんなお礼されるようなことは……。どちらかと言う、こちらの方がお礼をしないと……修行場を提供して頂く訳ですし。でも、折角……」
「折角だ。ご馳走になるとしよう。但し、招待する以上は私を満足させろよ?」
迷う刹那に対し、即決した上に上から目線で注文をつけるエヴァ。対象的な二人に苦笑しながら、タマモは先を行く竜姫に夕飯の人数の追加を伝えに行くのであった。
忘れられた頃に更新~。
今回は横島が京都に行っている間の出来事でした。以降、修行場を使って修行とかが始まることになります。
一年生の時、茶々丸のメンテナンスが頻繁に行われていた。霊力用の術式が魔法と気にも有効。
これらは拙作内設定です。
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