超鈴音さん叫ぶ
「さて、茶々丸のメンテナンスが何事もなく終わって良かったネ。後はこのデータを確認して終わりネ」
横島が京都から戻って来た頃、超は茶々丸の定期メンテナンスの後も一人研究室に居残り、蓄積された茶々丸の
葉加瀬は一緒に残ると言っていたが、ここ数日茶々丸とは別のロボットの制作で徹夜続きだった彼女がこれ以上残ることを、超が許さなかったのである。
「分かっていたとは言え……何人かには思いっきり引かれているネ」
茶々丸視点での自分の自己紹介の時の映像を見た感想である。目的の為、世界征服を企むマッドサイエンティストと称したが、比較的常識的な数人には引かれてしまっていたようである。
「うーむ、日本語の怪しい中国人キャラは不要だったかもネ。余計変に思われてる気がする……。ま、いいネ。全ては世界平和の為。些細なことは気にしない、気にしない」
何処かぎこちない笑顔を浮かべながら映像の続きを確認していく超。基本的に主であるエヴァンジェリンと行動を共にする茶々丸の記録である為、エヴァンジェリンの姿や声が多いが、様々な人、物について観察し学習をしていることが超には分かった。
「ふむ、学習AIは上手く機能しているようネ。ただ、エヴァンジェリンの寝ている姿が、猫と同じフォルダに格納されているのは意外だったネ。おそらく、どちらも可愛い生き物と判断したからだとは思うけど、普段のエヴァンジェリンは主と認識しているようなのに……」
時折、予想していなかった方向に学習していることに驚きながらも、続きを確認していく超。そうしていると、茶々丸が竜姫と勝負した日の記録が再生され始める。
「これは……早速、イレギュラーとの接触。不確定要素のデータが増えるのはいい事ネ」
「葛葉タマモ……アーティファクトを持っているという事は、マスターは横島忠夫か妙神竜姫のどちらかである可能性が高い。アーティファクトの扇は、狐が描かれていて、狐火と言うキーワードで火を出現させる。そして、狐に変化することから、妖狐の能力を得るアーティファクトの可能性が高い……」
タマモとエヴァンジェリンの戦いを見た直後、超は映像の確認を一時停止しタマモとタマモのアーティファクトについて考察していく。
「能力を得るタイプのアーティファクトは、初見だと厄介だから助かったネ。しかし、妖狐とはまた面倒なアーティファクトネ。しかも、絵柄を見る限り九尾。瑞獣としてなのか、悪狐としてなのかは分からないけど……まだ隠している能力はありそうネ」
ブツブツと呟きながら、映像を繰り返し確認していく超。敵対するとは決まっていないが、少しでも多くの情報を頭に入れようとしているのである。
「アーティファクトも厄介だけど、タマモさん自身も厄介ネ。エヴァンジェリンも本気ではないが、それに対し常に先手を取っている……これではエヴァンジェリンが自由に動けないかもしれないネ」
やがて麻帆良にやってくるであろうご先祖様と、エヴァンジェリンの対決を画策している超としては想定以上にタマモが厄介に思えてきていた。
「幸い全てではないとは言え、手の内を早期に確認出来た。計画まで二年ちょっと。その間にどれだけ情報を得られるだろうか……」
少々弱気になっていると、超は両手で頬を叩き気合いを入れる。全ては計画の為と自分に言い聞かせ、映像を先に進める。
その数分後、防音処理が施されている研究室の内部に、映像を確認し終えた超の魂の叫びが木霊するのであった。
「一体誰ネー!! このデタラメな女を麻帆良に入れたのはー!!」
裏話的お話。超さんも大変なんです。
一年生の時、茶々丸のメンテナンスが頻繁に行われていた。
これらは作中設定です、
ご意見、ご感想お待ちしております。
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