道化と往く珍道中   作:雪夏

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お待たせしました。今回は導入的お話。短いです。


6時間目:麻帆良探索
その1 麻帆良探索 はじまり


 

 

 

 

 

 横島たちが麻帆良にやって来て十日が経過しようとしていた。

 

 その間に裏の仕事として夜間の警備が一度あったが、高畑と一緒に見回るだけで特に何かが起こるようなことはなかった。高畑曰く、警備と言っても外部からの侵入者と遭遇することはほとんどないとのことであった。一昔前までは、西との関係が悪く小競り合いが頻発していたが、現在は関係が改善されつつあることと、学園都市の電力を源とした大規模結界が設置されたことで減少傾向にあるらしい。

 その分、結界のメンテナンスを行う大停電を狙われる可能性がある為、その際は特別シフトを組んで対応に当たる。主に侵入者を排除するチームと、出歩いている生徒たちを取り締まるチームの二つに分かれており、横島たちは侵入者対策チームに割り振られているとのことであった。

 

 裏の仕事以外ではよこっちにくる依頼に精を出していた横島であったが、都合よく依頼が舞い込んで来るわけでもなく、依頼があったとしてもタマモたちが学校に行っている間に片付くような簡単のものしかなかった。

 つまり、どういうことかと言うと……

 

「ただいまー。あ、また暇してる」

 

「こんにちはー。今日も仕事なかったん?」

 

「またですか。一体、いつ働いてるですか」

 

「ゆえゆえ、失礼だよー」

 

「あはは」

 

 木乃香たちに暇人認定されているのであった。

 

 

 

「いや、ちゃんと依頼来てるし、今日も仕事したからな?」

 

「それで今日は何をしたのですか?」

 

「ああ、ペットの猫探し。猫が集まる公園は知ってるからな。そこ行ったら一発だった。これ報酬のシュークリームな」

 

 そういって、シュークリームの箱を差し出す横島。それを受け取った小竜姫がお茶を淹れてくるとキッチンに向かうと、木乃香とのどかの二人が手伝いに走る。それを見送った夕映が視線を戻すと、ソファーにぐでーんと寝そべっていたタマモが身を起こすところであった。

 

「それにしても、最近の依頼はペット探しばかりじゃない? 前はマドレーヌが報酬だったし、あんたお婆ちゃんに餌付けされてんじゃない?」

 

 タマモの言葉に一理あると納得する夕映。既にお得意様と言っても過言ではない老婦人は、毎度猫探しを依頼してくる。そして、報酬にお手製のお菓子をくれるのである。これは、横島が現金収入が他にもあることから現金以外も報酬として扱っている為である。

 

(タマモさんの言うとおりですね。猫もすぐ見つかるようなところにいるそうですし話し相手にもなっているようですからね。完全に孫扱いです。まぁ、ご相伴にあずかっている身としては、なんとも言えませんが)

 

 そこに、小竜姫たちが戻ってくる。どうやら、元パティシエの老婦人お手製のお菓子で、今日も午後のティータイムが開始されるようである。

 

 

 

 楽しいティータイムが終わると、木乃香が今日来た本題について口を開く。

 

「図書館島に一緒に?」

 

「そや。うちらが図書館探検部なんは知っとるやろ? そんで、大人の人が一緒やったらうちらが行けるとこよりも深いとこに行けるんや」

 

「(深い……?)そうなの?」

 

 木乃香の言う深いという言葉に疑問を抱きつつ、のどかに確認する横島。急に話題を振られたのどかは慌てたが、どうにか話を続ける。

 

「えっと、正確には図書館探検部の外部部員の人です。この場合の外部部員と言うのは、探検部のOBの方や、大学教授、麻帆良在住の人で図書館探検部に入部している人のことです。横島さんの場合は、在住ってだけなので一緒に行っても私たちと同じとこまでしか行けません」

 

「え~、そうなん?」

 

 どうやら木乃香は知らなかったようで、折角のアイディアがと落ち込んでいた。そんな彼女の様子に、探検部に入部しようかと考える横島であったが、そんな考えが分かったかのように木乃香がそれなら別にいいという。

 

「せやったら仕方ないな。でも、ちょうどええと思ったんやけどな~」

 

「ちょうどいいって?」

 

「ほら、前に横島さんが言うとったやん? 一回無料で依頼受けるて」

 

「ああ、あれですか」

 

 木乃香が言っているのは、以前お礼にと持ちかけた一件である。結局、今日に至るまでここにはいない千鶴も含め誰一人使用していないのである。

 

「何時までも保留というのもあれですし、私も何かないか考えて見ますか。のどかはどうします?」

 

「私は……」

 

 それっきり黙るのどか。深く考え込んでいるようだが、何も思いつかないようである。

 

「私なら、お稲荷さんでも奢って貰うわね」

 

「別に構わんが、それは依頼と言うのか? のどかちゃんもそこまで深く考えなくていいから。依頼だとか難しく考えないで、何かこれして欲しいとかでいいんだって」

 

「そうですよ。深く考えずに、して欲しいことを言えばいいんですよ。意外とこの人万能ですから、大抵のことは叶えてくれると思いますよ?」

 

 いまだ悩むのどかに、小竜姫が笑顔でフォローする。ちなみに小竜姫が横島にお願いしたいことは、一緒に修行(実戦形式)である。

 そんなことは知らないのどかが悩み続けていると、のどかを見ていた木乃香がポンッと手を合わせ満面の笑顔で告げる。

 

「あ、うち決めた!」

 

「お、決めたか。で、何にするんだ?」

 

「あんな~、横島さんにデートして欲しいんよ。――のどかと!」

 

 木乃香の言葉に時間が止まったかのように静まりかえった後、よこっちに横島たちの声が響くのであった。

 

 

 

 

 

 




 と言うわけで、麻帆良探索編のはじまりです。
 新しいPCになってから、思うように一発変換されずイライラします。木乃香や夕映、小竜姫は辞書登録したんで大丈夫なんですが。ま、慣れるしかないですね。
 
 西の侵入者が減少傾向。図書館探検部関連。
 これらは作中設定です。

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