ちょっと文字数多くなりました。これからもちょくちょく多くなっていくかも?
風間ファミリー。
川神小学校において有名な友達グループの1つだ。
5人の4年生と1人の3年生、計6人で構成されているグループは、破天荒なリーダー風間翔一のおかげで、学校内では有名だった。
そして今日この日、風間ファミリーに新たなメンバーが加入する。
side 篁緋鷺刀
大和くんが助っ人で呼んできた2人は、物凄く強かった。
髪の長い男の子の方は殴り掛ろうとしていた6年生たちを、赤ん坊の手を捻るかのように片手で簡単にいなしひっくり返す。
髪の短い女の子の方は圧倒的な暴力と言っていいほどの力で、半数以上の6年生たちを完膚なきまでに打ちのめした。
しかも相当な手加減をしていたんだろう、2人とも物凄く余裕があるように見えた。
洗礼された武。
圧倒的な武。
そしてそれを御する心。
僕の目指すべき武人としての姿がそこにあった気がした。
side out
side 暁神
「なあ、俺らの仲間に――『風間ファミリー』に入ってくれよ!!」
バンダナの男の子の言葉に、俺はなるほどと思う。
この子たちが『風間ファミリー』か……
俺たちが通う川神小学校にはいくつか有名な友達グループがある。
その1つである『風間ファミリー』は同学年が多い俺にとってはまた別の意味でも有名だ。
ずらっと並ぶ6人をさらっと眺め見る。ぱっと見は普通だが、気質や気配を読むとなにやら個性の強いメンバーだと分かる。
隣にいたモモもそれが分かったのか、面白そうに口元に笑みを浮かべていた。
「さて、どうしようかジン?」
「どうしようかって……モモ、答えが分かっているのに質問するのはどうかと思うよ?」
「だがお前の意見も聞かずに決めるわけにはいかんだろ」
最近と言うか挙動不審が終わった後、モモはたまにではあるが俺の意見を聞いてから行動する、という態度を取るようになった。
今までは問答無用で俺を引っ張ってきたモモの変化に、最初は何か意図があるのかと勘ぐった事もあったが、特におかしなところはなかった。まあ、たまにあるだけで殆どは以前のままではあるが……
「俺はモモの意見に任せることにするよ。モモの強さを見ても仲間に入れって言った子なんてこの子たちが初めてだろ?」
「そういやあそうだったな」
意外ときつい事実をさらりと流すモモ。
相変わらず自分の価値観でマイペースに行動するモモだが、実は友達と言えるのは俺だけしかいない。
だいたいみんなモモの強さを目の当たりにすると、逃げ腰になりそれ以降は近寄ってこようとはしなくなる。この子たちはある意味で奇特な存在ともいえるだろう。
「えっと姉さん、兄さん、そろそろ答えを聞きたいんだけど」
いい加減焦れたのか、大和くんが代表して声を掛けてきた。
話し合いの時に舎弟契約した事を話したのだろう、大和くんの『姉さん・兄さん』発言に他の子たちが反応しない。
そう言えば俺が同級生だという事を教えていなかった。さて、いつ言うかな……
「舎弟から話は聞いてたが、私はお前たちが気に入った! 入ってやる!」
考え込む俺を放ってモモが答えを返す。と言っても俺に反対する意思はないのでモモの言葉に頷く事で同意する。
「よっしゃあ! 新しい仲間が増えたぜ!」
嬉しそうにガッツポーズを取るバンダナの男の子に倣うように、他の子たちも嬉しそうに円になってはしゃいだ。
「キャップ、嬉しいのは分かるけど新しく仲間になったんだから自己紹介しなきゃいけないだろ」
一番最初に冷静になった大和くんが、バンダナの男の子に言う。
『キャップ』――恐らくキャプテンの事だろう。と言う事はあのバンダナの子がこのグループのリーダーの風間くんで間違いないだろう。
「おっと、そうだったな。じゃあ大和から順に自己紹介だ!」
風間くんは一番右にいた大和くんを指差して言った。
指名に小さく息を吐いた大和くんは、気を取り直すように2・3度服をはたくと笑顔を浮かべて自己紹介を始めた。
「えっと、昨日も自己紹介したけど改めて――直江大和。軍師的な役割を任せてもらっている。これからもよろしく姉さん、兄さん」
「えっと、岡本一子! 一番の子と書いて『かずこ』って読むの! よろしくお願いします!」
「俺様の名前は島津岳人だ! これからよろしく頼むぜ!」
「僕は師岡卓也。まあ個性の強い人ばっかだけどよろしくね」
「篁緋鷺刀です。僕だけ年下の3年生ですけど、よろしくお願いします」
順に大和くん。髪を短く縛ったの女の子。一番体の大きい男の子。少し線の細い男の子。そして女の子のような外見の男の子。(やっぱり男の子のだった)
「で、俺がこの風間ファミリーのリーダー、風間翔一だ!」
締め括るように親指で自分を指しながら自己紹介を終えた風間くん。それを聞き終えたモモは、応えるように1歩前に出て己紹介を始めた。
「川神百代だ!」
腕を組み胸を張り、ふんぞり返って少し偉そうなモモ。
だがたった一言、名前を言っただけなのにその存在感は凄いものだった。そんなモモの頭を軽く小突きながら、隣に並び俺も自己紹介をする。
「モモ、無駄に威張り過ぎ。えっと、俺の名前は暁神。モモ共々よろしくお願いします」
『痛いな~』と言うモモの抗議を黙殺する。これから仲間に入れてもらおうとしているのに、威張ってどうするんだよ。
「よし! 自己紹介も終わったし改めて新メンバーを歓迎する! 今日から新生風間ファミリーの出発だ!!」
宣言するかのように拳を天に突き出した風間くんの声が原っぱに響き渡った。
side out
side 篁緋鷺刀
「そう言えば、これからみんなの事はなんて呼べばいいんだ? 仲間になったんだから他人行儀な呼び方はやめた方がいいだろ?」
一通り全員の自己紹介が終わり、大和くんが川神さんと暁くんの舎弟になった話がちょうど途切れた頃、暁くんがキャップに問い掛けた。
「ねえねえ大和、『タニンギョウギ』ってどういう意味?」
「もっと仲が良くなる呼び方をしようって言ってるんだ」
一子ちゃんの質問に暁くんの言葉をかなり砕いて大和くんは答える。
「そうだなぁ……あ! もちろん俺の事はキャップだぞ! 俺はこのファミリーのリーダーだからな」
「了解キャップ。それで他のみんなは?」
「俺はみんなを『大和』『ワン子』『ヒロ』『ガクト』『モロ』って呼んでるけどな」
「僕とガクトは緋鷺刀のこと『タカ』って呼んでるけどね」
キャップの返答に卓也くんが僕の呼び名に対して補足した。
2人の言葉に暁くんは少しだけ考え込むと、確認するように聞いてきた。
「『ワン子』は名前が『一』の『子』だから分かるが、『タカ』ってのは名字の篁から付けてるんだろ? 何で使い分けてるんだ?」
「使い分けているわけじゃねーよ。ただ後から仲間になった俺とモロが勝手に『タカ』って付けて呼んでるだけだよ」
暁くんの質問に岳人くんが答えた。
そう、岳人くんと卓也くんが仲間に入った頃に岳人くんが僕の事を勝手に『タカ』と呼んでいたら、いつの間に卓也くんもそう呼ぶようになっていたのだ。
「ふぅん、追加メンバーは『タカ』って呼んでいるのか……そっちの方がカッコイイな。よし! 私はお前たちを『キャップ』『大和』『ワン子』『タカ』『ガクト』『モロロ』と呼ぶ事に決めたぞ!」
「僕だけなんかおかしくなってない!?」
川神さんが決めた呼び名で、1人だけ呼び方が変わっていた卓也くんがさかさず突っ込んだ。そんな卓也くんを川神さんは『いいツッコミだな』と褒めながら首に手を回していた。
「モモ、絞め落とすなよ。じゃあ俺の方はキャップ以外のみんなは名前の最初の2文字を取る事にするよ」
川神さんの行動に注意をしながら、暁さんは自分が決めた呼び方をみんなに伝える。
名前の最初2文字って事は、僕の事は『ヒロ』、大和くんの事は『ヤマ』と呼ぶって事かな?
「呼び方が決まったのなら私の事は『モモ先輩』と呼べ」
そう考えていたら、卓也くんを解放した川神さんがみんなに向かって宣言した。川神さんは上級生だから誰も文句ないだろう。みんな頷いて答えた。
だけど、次に川神さんの口から出た言葉に全員が衝撃を受けた。
「おいお前、そう言う訳だから私がこのグループのリーダーになる。いいな」
キャップを指差し有無を言わせない威圧感を纏いながら川神さんは言い放った。
一瞬、何を言われたのか理解できなかったキャップだったけど、その言葉を理解した途端、物凄い勢いで言い返した。
「ふざけんな! リーダーはキャップたる俺だ! 俺がリーダーだからこそ『風間ファミリー』だろうが!」
「集団というものは、その中で最強が統べるべきだ。だからこのグループは以後私が率いる。私はここが気に入ったから私のものにする」
「ここは俺のグループだ! 誰が譲るか!」
物凄い勢いで食って掛るキャップ。
呆然とする僕らの目の前で言い争いが続く。
ただ1人、暁くんだけが呆れたように頭を抱えていた。
「お前、さっき私の力を見ていただろう」
川神さんはそう言うと足元にあった石をつまみ上げ、それを握り潰し粉々にする。
「逆らうなよ……私にリーダーを譲るよな?」
薄ら寒くなる笑みを浮かべ畳み掛けるように言う川神さんに、キャップは一瞬だけ後ずさるように体を震わせたが、踏みとどまり握り拳を作ると毅然と、澄んだ瞳で川神さんを見返した。
「断る!!」
「いい加減にしようなモモ!!」
ゴッ
キャップの叫び声と、暁くんの言葉と、川神さんの頭を殴った音が同時に響いた。
ポカンとするキャップ。
事態について行けない僕たち。
頭を押さえて蹲り痛みに耐えている川神さん。
「いきなり何するんだジン!?」
殴られたであろう場所を手で押さえ、少し涙目になりながら川神さんは暁くんを見上げる。そんな川神さんの態度にも厳しい眼差しで暁くんは答える。
「モモが余りにも理不尽な事を言っているから止めたんだよ」
思っていた以上に厳しい眼差しだったのだろうか、そう言われた川神さんはバツが悪そうに視線をそらしそっぽを向いた。
そんな態度の川神さんに呆れたように溜息を吐いた暁くんは、蹲る彼女のそばに同じようにしゃがみ込むと、自分が殴った場所を優しく撫でながら言葉を掛けた。
「新参者のお前がいきなりリーダーになってどうするんだ。そんなことしたら直ぐにみんなバラバラになる」
「でもさぁ」
「でもじゃない。もしモモが言うように一番強い奴がリーダーになるんだったら、このグループのリーダーはキャップじゃなくヒロになっていたはずだ」
「そうだけどさぁ」
2人の会話に僕は一瞬だけ体を震わせた。
そんな僕に気付いていたはずなのに、気付かないふりをしている暁くんと川神さん。
2人は僕が剣術をやっている事に感付いている?
僕の思惑をよそに会話は続いていく。
「このグループは、キャップがリーダーをしているからこそ上手くいっているんだ。それは力が強いからじゃない。みんながキャップという人間を認めているからだ。それなのにお前が力だけでリーダーになってみろ。それはもう仲間じゃない。ただの支配だ」
ひと言ひと言、言い聞かせるように言葉にする暁くん。
「モモ、人間は気持を伝え合う言葉を持っている。考える知恵を持っている。相手を思いやる心を持っている。そして強い意志を持っている。あのままお前が力に訴えても、きっとキャップの心を折ることは出来なかったはずだ。それはあのキャップ目を正面から見ていたモモなら分かったはずだ」
その言葉に川神さんが頷くと同時に、たぶんキャップ以外の僕らも心の中で同意したはずだ。
だからこそ、キャップは僕たちのキャップなんだ。
「人にはそれぞれ役割というものがある。キャップはみんなのリーダー。それはもうみんなの中では当たり前な事なんだ。だからモモ――」
そこで言葉を切った暁くんは、川神さんと視線を合わせるように覗きこむと笑顔を浮かべる。
「お前はみんなを率いる役じゃなく、みんなを守る立場になるんだ」
「守る?」
「そう、今日みたいな上級生の理不尽な暴力や、それこそキャップにすらどうする事のも出来ない、もっと大きな脅威からみんなを守るんだ。それこそが年上で上級生たるモモのするべき事じゃないかな」
暁くんの言葉に少しの間考え込んでいた川神さんは勢いよく立ち上がると、握り拳を作っていた。
「そうだな! みんなを守る! それこそお姉さんである私のすべき役割だ!」
宣言するように叫ぶ川神さん。それを立ち上がりながら優しい笑みを浮かべて見る暁くん。
そんな2人を安堵した感じで見ていた僕たち。
そして急に真面目な顔になった川神さんは、キャップに声を掛ける。
「すまなかった。お前に嫌な思いをさせたようだ」
「いやまあ、分かってくれたらそれでいいさ」
「ああ、だから私はそんな真っ直ぐな目をしたお前を認める。これからもよろしくな『キャップ』」
「ああ! よろしく頼むぜ!」
そう言ってキャップと川神さんは握手をした。
今日この日、新たに仲間に加わった川神百代と暁神。
その圧倒的な武で風間ファミリーの力のヒエラルキーの頂点に君臨することとなる2人との出会いだった。
ちなみにその後のひと騒動
岳「しっかしジンはすげえな。あのモモ先輩を簡単にあしらうなんて」
卓「あしらうっていうかコントロールしてるよね」
神「別にコントロールしてるわけじゃないけど」
大「さすが兄さんだ」
翔「よし決めた! 俺はジン兄と呼ぶことにするぜ!」
一「それいいわね! アタシもそうする!」
岳「おお! そりゃあいいな!」
卓「僕も賛成。上級生だしちょうどいいよね」
百「くっくっく」
緋「モモ先輩? 何で笑っているんですか?」
翔「よし! じゃあ今日からみんな『ジン兄』って呼ぶぞ!」
神「俺の呼び名で盛り上がってるところ申し訳ないけど……」
大「うん? どうしたんだ兄さん」
神「俺、4年生でみんなと同級生なんだけど」
翔・大・一・岳・卓・緋「「「「「「えっ!?」」」」」」
百「あははは!」
あとがき~!
「第8話終了。あとがき座談会、司会の春夏秋冬 廻です。今回のお相手は――」
「キャップこと風間翔一参上!」
「風間ファミリーのリーダーついに参戦。ちなみに視点にならなかった人が初登場です。さて今回は神と百代がファミリーに加入するお話でした」
「その割には長かったよな」
「まあね、原作百代ルートにもあったキャップの座を巡る過去話も混ぜたからね」
「あれって本来、後日俺だけが呼び出されてタコられるって話だったよな?」
「その通り。それを何で今回の話に入れた理由は2つ。まず何より百代をコントロールできる神がいた事が1つ」
「それで2つ目は?」
「2つ目は原作をプレイして余りにもキャップがかわいそうだったから」
「って、同情かよ!?」
「ボコられる話の方が良かった? なら書き直そうか?」
「いや……出来ればやめてほしいです(T0T)」
「さて、次回あたりから竜舌蘭防衛エピソードを始めようかと考えている今日この頃」
「あの話をか?」
「そう、だって時系列から考えるとこの頃でしょ? 百代が加入済みで京が加入していない。そして8月」
「そういやあそうだな」
「という訳で、竜舌蘭防衛エピソードを始めるかも?」
「決定じゃないのかよ!?」