原作突入前に30話を超えちゃった……
――2005年 10月10日 月曜日 PM2:00――
連れてこられたのは大きな屋敷。
日本武道館真っ青の広さをもつ武道場に、100以上の執事やメイドの姿をした人たちが囲うようにズラリと並んでいた。
俺の隣には川神鉄心さん。今日俺をここに連れてきた人だ。
目の前には2人。1人はがっしりした肉体の金髪の外国人。この人も執事の服を着ている。もう1人は少し年上だと思われる女の人。高校生ぐらいだろう。灰色の髪に額に大きなバツ字の傷跡がある。
2人とも普通に佇んでいるが、武術の心得があるのが見て取れる。特に大柄の外人さんは身体から溢れ出る闘気を隠そうとしていない。
女の人も自信があるのだろう。執事さんの隣で腰に手を当てて堂々としている。
「久しいのぉヒューム」
「ふん、年老いたな鉄心」
鉄心さんは穏やかに、ヒュームと呼ばれた執事さんは嘲るように挨拶し合った。
どうやらこの2人は知り合いのようだ。という事は俺がここに連れてこられたのには何か意味があるのだろう。嫌な予感しかしない。
だってこの2人、挨拶が終わった途端にお互いの闘気をぶつけ合っている。そのせいで俺たちを囲ってた人たちの数人が耐えきれずに膝をついている。
「ヒューム、こちらのご老人があの川神鉄心殿か?」
ぶつかり合う闘気の中で変わりなくヒュームさんに問い掛ける女の人。
思った通り強い人だ。この闘気の中かで顔色ひとつ変えることなく立っている。
「ああその通りだ揚羽様。この男こそ最強と呼ばれあの武術の総本山、川神院の総代を務める男だ」
ヒュームさん、一応執事なんだろうけどなんか偉そうな人だな……まあ、あれだけの闘気を放てる人なんだ、普段は人に仕えるというような考えはないのだろう。
なのにこの屋敷にいて執事の格好をしているという事は、よほどこの屋敷の一族を気に入っているんだろう。
そんな事を考えている内に女の人の自己紹介が始まった。
「お初にお目にかかります。我は九鬼揚羽。この九鬼家の長子にして恥ずかしながら未熟にも武の道を歩む者です。鉄心様のお話はかねてよりお聞きしておりました。今日お会いできた事、光栄に思っております」
九鬼家って、ここってあの九鬼家なのか? あの世界的に有名な九鬼財閥?
いきなり知った事実に若干驚きながらも、それを微塵も外に出すことなく立っている俺。ここで慌てた姿を見えるのは鉄心さんの恥になるからだ。
「ほう、お主が帝の娘か……なかなかに見処のある
「年老いてもさすがだな鉄心。初見で見抜くとはな」
「舐めるのも大概にするんじゃなヒューム。見抜く力はここ数年の方が増しておるわい」
ヒュームさんの猛禽類を思わせる鋭い笑みに、鉄心さんは底の見えない深い笑みで返した。
お互い牽制し合うのは別に構わないと思うけど、少しは周りの人たちを気に掛けてほしい。既に半分以上がぶっ倒れています。
「それで鉄心。隣にいる小童が貴様の弟子か?」
ヒュームさんがそう言って俺に視線が向けられると同時に、まるで圧殺するかのような膨大な殺気が圧し掛かってくる。
間違いなく俺の力量を推し量っているのだろう。だからと言ってこの方法はないだろう。下手な奴だと居竦んで気を失うぞ。
そう思いながらも圧し掛かってくる殺気に特に反応はしないでおく。抵抗するように闘気を放つでもなく、圧し負けないように闘気を張り巡らせるわけでもなく、ただ自分の身を守る鎧のように闘気を纏い、圧し掛かるヒュームさんの殺気を受け流す。
そんな俺の反応に何か思うところがあったのか、ヒュームさんは片眉を吊り上げ口元に笑みを浮かべると、より一層殺気をぶつけてきた。
隣にいた揚羽さんですら圧され半歩後ろに下がるほど殺気をぶつけられているにも拘わらず、先ほどと同じようにやり過ごす。
はっきり言いちゃあなんだが、この程度の殺気でビビるほど弱くはないつもりだ。
「なかなか骨のあるガキを弟子に取ったな鉄心」
圧し掛かっていた殺気がなくなり、ヒュームさんはより一層獰猛な笑みを浮かべて鉄心さんに声を掛けた。対する鉄心さんは呆れた表情だ。
「全くお主は相変わらずじゃのう。じゃが勘違いするではないぞヒューム。こ奴はワシの弟子ではない」
「なに?」
「自己紹介せい神」
「はい」
鉄心さんの言葉に答え1歩前に出て、ヒュームさんと揚羽さんに対し一礼してから自己紹介を始める。
「初めまして。川神院に居候として身を置かせて頂いております暁神と言います」
俺の名前を聞いた途端、ヒュームさんの気配が変わったのが分かった。
どうやら彼は“暁の一族”の事を知っているようだ。外国人の彼がどうして知っているかは分からないが、鉄心さんの『弟子ではない』発言の説明は必要ないだろう。
顔を上げ視線を戻した時、顔が歪みそうになるのを必死で堪えた。
ヒュームさんが物凄くいい笑顔で俺を見ている。あれは間違いなく獲物に選んだ標的をロックオンした猛獣の眼差しだ。
「なるほど、こいつが今日の相手か。だがこれではどっちが試し試されているのか分からんぞ、鉄心」
「突然連絡を入れてきて、誰か連れて来いと言ったのはお主じゃ。ワシはそれに従ごうたまでじゃよ」
「タヌキジジイが。まあいい開始は10分後だ。揚羽様」
ヒュームさんはそう言うと揚羽さんを促し、武道場の端へと移動した。俺も準備を始めるためにきびすを返した鉄心さんの後を追って壁際に移動する。
持ってきた道着に着替える。更衣室かなく多少恥ずかしかったが、周りにいた執事さんたちがバリケードになってくれたので、余り気を遣う必要はなかった。
「今日ここに連れてきた理由は揚羽さんと仕合う事ですか?」
準備運動に体をほぐしながら鉄心さんに問い掛ける。答えは分かっているがとりあえず確認のためだ。鉄心さんは声には出さなかったが案の定、頷く事で答えてきた。
準備運動を終え流していた髪を1つに縛り上げポニーテールにする。
気を落ち着かせるように息を吐いた時、見計らったのか鉄心さんが声を掛けてきた。
「ところで神。先ほどヒュームから殺気を当てられた時、なぜ【
【纏鎧】と【封殺】。両方とも暁の業だ。
【纏鎧】は字の通り鎧を纏うように自身の闘気を纏う業で、さっき俺がヒュームさんの気を受け流すために使った。もうひとつの【封殺】とは相手が放った気と自身が放った気の波長を合わせ強制的に掻き消す業。
やる気になった相手の気を殺ぐ暁の基本の業だ。
「特に意味はありませんよ。ただ【封殺】だともっと興味を惹かれかねない状況になりそうだったので【纏鎧】にしただけです」
「正しい判断じゃな。してどう思う?」
「それはどちらに対してですか?」
具体的な対象を示すことなく掛けられたと問いに、ヒュームさんと揚羽さんのどちらに対してなのかという質問で返す。
俺の問いに鉄心さんは気を悪くした感じではなかった。
「もちろん九鬼の娘の方じゃ。現状ではモモと同等ぐらいの強さと見たが」
「そうですね。地力――生まれ持っての身体能力はモモが上でしょうが、恐らく使う技の腕は揚羽さんの方が上ですね。モモはまだ力に頼る事が多いですから」
「ふむ、総合的に見て同等ということか……で、どうするつもりじゃ?」
再度の問いかけに少しだけ考え込む。
見て感じた通り、揚羽さんの強さがモモと同等なのは間違いないだろう。となるとまず負ける事はない。今回はどうやら揚羽さんの相手としてヒュームさんが呼び寄せたと言った感じのとようだ。
「本気で行きます」
「分かった。力加減はお主に任せる」
そう言い残し鉄心さんは俺の側から離れる。どうやら既に揚羽さんは準備が終わっているようだ。
武道場の中央で待ち構える揚羽さんの姿を見た俺は、深く息を吐き少し穏やかになった闘気に喝を入れるため、目を閉じ1回だけ柏手を打つ。弾けた闘気が武道場全体に行き渡る。
手を下ろし目を開け真っ直ぐに前を向き俺は中央に歩み寄る。既に待ち構えていた揚羽さんは両手を腰に当て、好戦的な笑みを浮かべたまま俺を見ている。
「準備は出来たか?」
「ええ、お待たせしました」
その会話を合図として1人のメイドさんが歩み寄ってくる。どうやら彼女が審判を務めるらしい。鉄心さんとヒュームさんはそれぞれ俺と揚羽さんの後ろで見届け役に徹するようだ。
特に掛け声を上げずに、メイドさんは右手を高く上げる。
それを合図に揚羽さんは腰を落とし半身に構え、左腕を引き右腕を前に出し握り拳を作る。相対する事になった俺は脚を肩幅に開き腰を軽く落とし、軽く開いた掌を内側にし右手を胸の前に、左手を腰の前に置く【
「始め!」
一瞬の間の後、開始を告げる声とメイドさんは掲げていた筆を振り下ろした。
開始の合図に即座に反応し一瞬で間合いを詰めてきた揚羽さんは、既に右拳を繰り出す体制になっていた。間髪おかず放たれた右正拳に俺は慌てる事なく右腕をそわせて軌道を逸らすと同時に勢いを利用し揚羽さんをひっくり返す。
初めてモモと戦った時と同じように呆然となる揚羽さんを見下ろす。そしてその後の反応も全く同じ。即座に立ち上がると左脚での蹴り上げを放ってきた。
俺もあの時と同じように身を沈み込ませ左腕で蹴り脚の左脚をいなし右腕で軸足である右脚を払い上げ、揚羽さんの身体を半回転させる。
だが今回はここからが違う。
上下逆さになり体制の整わずさらに背を向けている揚羽さんに左掌底を当てる。俺の行動を察知したのだろう、見えないながらも揚羽さんは背にありったけの気を集中させる。
だが俺はお構いなしに踏み足に力を込め、衝撃で揚羽さんを吹き飛ばす。
空中にいたため、無抵抗に吹っ飛ぶ。だが揚羽さんは地面に両手を着き身体を押し上げる勢いを利用し飛び退くと、足からきちんと着地した。
数秒痛みに耐えるかのように苦悶の声を漏らした揚羽さんだが、すぐに体勢を立て直すと再び構えを取りこちらを見据えてきた。
思っていた以上のダメージは与えられただろう。たった1度の攻防だけだったがやっぱり思った通り、総合的な強さはモモと同等ぐらいだ。ただ技のキレは揚羽さんの方が上なのは間違いない。
恐らく先ほどの攻防でこの構えの特性を見抜いたはず。【円柳】で下手に後手に回るよりは自分から責めた方がいいかもしれない。
そう判断した俺は拳を握り左半身に構えを取ると、左拳を顔の横に右拳をへその前に置く【
構えを変えた俺を警戒しているのだろう、揚羽さんはその場から動かず俺を出方を窺っている。
来ないならこちらから行くまで。
床を蹴り踏み込んだ俺は一瞬にして揚羽さんの間合いに踏み入る。
驚く揚羽さん。無理もないだろう。さっきまでの俺と揚羽さんの距離は10メートル以上離れていた。その距離を一瞬で詰めたのだ。驚かない方がおかしいだろう。
だがさすがに驚きは一瞬。すぐに反応し迎え撃つように左拳を突き出してきた。俺はその左拳に前に出していた左腕を被せて抑え込むと、がら空きになった揚羽さんの顔面に向かって右正拳を繰り出す。
左腕が抑えられ不安定な体制ながらも、揚羽さんは俺の右拳を右手で受け止める。
一瞬の停止。その後すぐに揚羽さんは大きく飛び退いた。
ほんの数瞬前に揚羽さんがいたところを俺の蹴り上げた右脚が通過した。だが俺は蹴り上げた勢いをそのままに軸足にしていた左脚で地面を蹴る。
そのまま宙で身体を回転させ、着地したばかりの揚羽さんに向かって左踵落としを放つ。
「くっ!」
次々に襲い掛かってくる攻撃に対応しきれていないのだろう、吐き捨てるような苦悶の声を上げた揚羽さんは、俺の踵落としを受け止めるように両腕を頭上で交差させた。
それを見た俺は次の攻撃の準備に入る。
右膝を曲げ右足の位置を伸ばした左脚より下げると、そのまま左脚を交差した両腕に当て、受け止めた事に一瞬の安堵を浮かべた揚羽さんの顎に向かって、右足を振り上げ下から蹴り上げた。
思いもよらないところからの攻撃に全く反応できなかったのだろう、揚羽さんの顎に蹴りを直撃させた俺はその蹴りを遠慮なく振り抜いた。
その勢いに一瞬だけ宙に浮いた揚羽さんだったが、なんとか倒れる事なく着地したものの受けた衝撃を全く逃がす事が出来なかったのだろう、たたらを踏み膝を着いた。
振り抜いた蹴りの勢いで1回転した俺は足から地面に着き、膝を着いたまま俯いた揚羽さんに声を掛ける。
「まだ続けますか?」
「無論だ!」
静かに問い掛けた俺に吐き捨てるように返してきた。
手を抜いていると思われているのだろうか。睨みつけてきた視線には分かりやすい怒りの感情が込められていた。
そんなつもりはないのだが、はてさてどうしたものか……
考え込みながらも迫り来る蹴りを払い、出来た隙を突いて蹴りを返す。6発放った蹴りのうち、4発は受け止められ2発が脇腹と太腿に当たる。
痛みに体制をほんの少し崩したところで間合いに踏みこみ、蹴りを受け止めた右腕を掴み肩を胸に当て、震脚による衝撃を透すと同時にその勢いで投げ飛ばす。
「がはっ」
背中から地面に叩きつけられ息を吐き出す揚羽さん。
追い打ちを掛けようと左拳を振り下ろしたが、すでに体勢を立て直していた揚羽さんは飛び退くと大きく俺との間合いを取った。
肩を上下させ大きく息を乱している揚羽さんだったが、何を思ったのか俺を睨みつけていた目を緩めると口元に笑みを浮かべて声を掛けてきた。
「手を抜いていると思ったのだが……どうやらそれは我の思い上がりだったようだな。よもやこれ程までの力量差があるとは思いもよらなかったぞ」
呆れたような感心したような、だけどどこか悔しさのにじんだ声だった。そんな自分の感情を抑え込むかのように俯き大きく息を吐いた揚羽さん。
次に顔を上げた時、その表情はどこか晴れやかなものだった。
「今の我では到底お前には勝てん。だから今我が持つ最高の技もって立ち向かおう!」
宣言と同時に気を練り始める揚羽さん。どやら次でこの勝負を終わらせるつもりだ。
俺もその思いに応え、迎え撃つように構えを取る。
そんな俺を見て嬉しそうに笑った揚羽さんは、すぐに表情を引き締めると、練り込んだ気を爆発させるように全身から闘気を放つと、今日1番の速度で俺の間合いに踏み込んで来た。
「九鬼家決戦奥義! 【古龍昇天破】!」
闘気が渦となり風を纏い竜巻となり迫り来る。
そのまま拳を振り上げればその竜巻は周囲を巻き込む巨大な力となるのだろうが、俺はその拳を左手で受け止める。
それと同時に拳に纏っていた闘気が霧散しことに、揚羽さんは予想外の出来事なのだろう驚愕の表情を浮かべている。
だがそれは霧散したわけじゃない。
俺はさっき揚羽さんが纏った闘気と同じ闘気を右腕に纏うと、未だに驚愕の表情のまま固まっている揚羽さんに向かって一気に振り上げた。
なす術のない揚羽さんは自分が放とうとした技の直撃をくらい、数メートル吹っ飛んだところで意識を失ったのだろう、動かなくなった。
「勝者! 暁神!」
倒れた揚羽さんの容体を確認していたメイドさんは、小さく首を振ると俺の方を向き腕を上げて勝ち名乗りをしたのだった。
目を閉じ礼をし、勝負で昂った気を落ち着かせるために少し長く息を吐く。自分以外の気を体内に入れたのだ。慎重に気の巡りを落ち着かせなければならない。
異常なしと感じたので目を開け顔を上げると、気を失ったままの揚羽さんを抱き上げたヒュームさんが近付いてきた。
その顔は思っていたより厳しい。
「1つ聞きたい事がある」
表情通りの厳しい声に身を正し答える。すぐ後ろには鉄心さんが来ていた。
「なんなりと」
「貴様が最後に使った技。あれは間違いなく古龍昇天破だ。だがあれは九鬼家にのみ伝わる技。貴様いったい何をした?」
静かだが最初の時よりも濃い殺気をぶつけてくるヒュームさんに、俺は今度は【封殺】を使って殺気を掻き消した。
「っ!?」
突然消えた自分の殺気に驚きの表情を見せていたヒュームさんだったが、俺はあえてそれを無視して質問に答えた。
「何をと言われましても……ただ単に揚羽さんが使おうとしていた技を取り込み、逆に私がその技を使っただけです」
「それも“暁“の業の1つか?」
「ええ、そうです。【
俺の返答に訝しげな視線を向けていたヒュームさんだったが、次の瞬間、豪快に笑いだした。
「フハハハハハハ! 何ともふざけた一族だな暁というのは! だがまあ面白いものを見せてもらった」
俺にそう言葉を掛けたヒュームさんは次に鉄心さんの方に視線を向けると、あの獰猛そうな笑みを浮かべた。
「鉄心、今日の借りは覚えておく。いずれたっぷりと利子を付けて必ず払ってやる」
捨てゼリフのようなものを言い残して、ヒュームさんは揚羽さんを抱えたままその場から去っていったのだった。
あの後、1人の執事さんの案内で見送られた俺と鉄心さんは、川神院への帰路を歩いている。
久し振りに全力とはいかないが本気をモモ以外の人に出せた俺は、少しだけ気分よくし隣を歩く鉄心さんに言葉を掛けた。
「揚羽さんはこれからも強くなりますね」
「そうじゃな。今日の勝負で恐らくある意味で初めての敗北を知ったはずじゃ。今日感じた気持ちを忘れなければ、近いうちに武道四天王の一角に入るやもしれんな」
「モモはずでに候補に入ってますからね」
目の前にはもう川神院の門が見えてきた。よく見ると門の前にモモとカズの姿がある。変える前に連絡を入れた事で出迎えてくれたようだ。
手を大きく振るカズに応えるように手を振り返しながら、今日の出来事を振り返りあの人の強さはどこまで行くのだろうと考える俺だった。
あとがき~!
「第30話終了。あとがき座談会、司会の春夏秋冬 廻です。今回のお相手は――」
「ハハハ。九鬼揚羽、降臨である」
「はい揚羽様の登場です。さて今回のお話ですが、やっと戦闘者視点での一人称の戦闘描写に挑戦しました」
「して、どうであった?」
「難しい。本当に難しかった。一人称になると片方の心理描写しか書けないから相手の考えがすべて推測になってしまう。だから文章に『だろう』が増えるし、相手の呼び方も呼び捨てにできない」
「確かに我の呼び方は『さん』付けになっておるな」
「そう。さらに戦闘中にも相手に対する心理描写が多くなって……そのせいで文字数が7千を超えました。2話に分けるほどじゃなかったので1話の文字数では最大になりました」
「ところでヒュームの事なのだが」
「ああ、ヒュームさんね。次作の『まじ恋S』に出ることが決まってるから、今回出してみたんだけど……喋り方や性格は推測です。『こんなんだろう』という考えからですので突っ込まないでください」
「また自分の首を自分で絞めるような事をしおって……まあそれは良い。しかし今回の題名はどうなのだ? なぜ“(未来の)”が付いておる?」
「ああそれはですね、原作開始プロローグで揚羽様は高校を卒業した事になっていますよね?」
「その通りである」
「そう考えると神との年齢差は2歳。現在神は中学1年生だから揚羽様は中学3年生という事。さすがにこの歳で四天王入りはしていないだろう、という考えから題名に“(未来の)”を付けました」
「理由があるのならばそれでよい。それで次回の事で何やら伝える事があるそうだな?」
「はい。実は次のお話ですが少し行き詰ってます。もしかしたら1日1話毎日投稿ができないかもしれません」
「無理な事をやり続けようとした結果であろうな」
「言い返せない。8月いっぱいは毎日投稿しようと思ってましたが、ちょっと難しいかも……でもなんとができるように頑張りますので、期待しないでお待ち下さい」
「精進あるのみだな」