真剣に私と貴方で恋をしよう!!   作:春夏秋冬 廻

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第31話投稿。

あの子の登場です。


第31話 北の少女、初対面の再会

  side ???

 

あ! また溜息を吐かれました!

 

かれこれ1時間。あの女の子はずっとあのベンチに座ったままです。

 

誰かを待っているのでしょか?

しかし待ち合わせをしている感じではありません。あれはまるで置いていかれてどうすればいいか悩んでいるような感じです。

 

ここはやはり声を掛けるべきなのでしょうか?

地元民としては困っている人を放っておくわけにはいきません。彼女はどう見ても観光客さんです。土地勘がないのは見ていても分かります。

 

え? あんなところで1時間も座ってんだから当たり前だと?

 

すみませんそうですよね私ごときが偉そうに他人さまの様子を窺って心情を悟るなんてなんておこがましい事を考えてしまったんでしょうかすみませんもう一度生まれ直して今度こそ輪廻の果てでこの卑しい心を全て浄化しますからどうか許して下さい!!

 

え? 誰に向かって言ってるのかって?

 

えっと……誰でしょう? 何故か謝らなければならない衝動にかられてしまって、気付いたら土下座しそうな勢いになってしまいました。

 

なんかそうこうしている内に彼女に男の人が声を掛けてしまいました!?

失敗です! 何とう言う失態を犯してしまったのでしょうか!? 

 

もっと早く私が声を掛けていれば今頃お友達になっていたのは私かもしてなかったというのにでもこれはやっぱり天罰かなにかなのですか学校にお友達1人もいないという事実に焦ってこのさい観光客でもいいや同年代だったら誰でもいいやなんていう投げやり的な思いでお友達を作ろうとした私に対する神様からの罰なのでしょうかごめんなさい!!

 

え? よく見てみろ?

 

あ、困ってますね。恐らくナンパというものでしょうか?

でも納得ですね。だって彼女は遠目に見ても凄く可愛いです。今日は少し肌寒いのでパーカーにハーフパンツという格好をしていらっしゃいます。それが物凄く似合っているんです。

 

え? 助けに行け? そうすればきっかけになるぞ?

 

な、なんという高等テク! 困っているあの子を助けてさらに行く先に困っている彼女を案内する事でお友達になるきっかけを作るというんですね!

さすがです! 私には思いもつかなかった事を考えるとはさすがです!

 

では行きます! 私ファイト、です!

 

あ……気合を入れているうちに彼女はナンパさんを撃退してしまいました。しかも結構と言うかかなりワイルドな方法です。

彼女なんとナンパさんの、あの、その、きん――ごほんごほん! いえ失礼しました! その、こ、ここここ、股間を蹴り上げたんです! しかもかなり容赦なくですよ!?

見て下さい! ナンパさん蹴られたところを押さえてなんか危ない感じに痙攣してます! 男の方があそこを蹴られる痛みは女には一生分からないと言いますが、いったいどれ程なのでしょうか?

 

え? 気になるなら父上に聞いてみろ?

 

いえいえいえいえいえいえ! 気になっているって言っても一般常識的に気なっているだけでありまして個人的に聞くまで気になってはいませんからね!?

 

変な事に私が混乱していると、倒れてるナンパさんを男の人が2人で抱えていくのが見えました。恐らくナンパさんのお友達なのでしょう。

衝撃の光景が流れたベンチ前は、まるで全てが止まったかのような空白の雰囲気が漂っています。みんなさっきの光景を目の当たりにしたのでしょう、誰も彼女に近付こうとしません。

 

でもある意味でこれはチャンスなのでは?

 

そうですよね? そうに決まってますよね!?

 

はい! 決めました! 声を掛けてみます! 玉砕覚悟です!

 

さあ行きますよ! 今日こそお友達1号を作るのです!!

 

  side out

 

 

 

          §  §  §

 

 

 

――2006年 5月3日 水曜日 AM10:00――

 

  side 篁緋鷺刀

 

どうしようかな?

 

そう考えながらもぼけっとベンチに座っている僕。かれこれ1時間ぐらいここで座っているけど、どうしようもない状況にちょっとだけど参っている。

 

今年のゴールデンウィーク。

温泉好きの凛奈さんにいつも通り引きずられるように連れられ、来たのがここ加賀温泉郷のある石川県加賀市。北陸は加賀前田百万石の県だ。

 

昨日学校が終わり帰ってきた僕を文字通り引きずりながら、強行軍もびっくりな手際で高速バスに乗ると、昨日の夜にはすでにホテルにチェックインしていた。

どうやら既に予約は入れていたらしい。抜け目のない人なのは凄いと思うけど、事前に教えておいてほしかったと思う。

 

それなのに今日の朝になると書置き1つ残してどこかに消えてしまった。

 

その書置きが今僕の手の中にある。

 

 

『緋鷺刀へ

 私はこれから自由気ままに加賀温泉を楽しむ。

 チェックアウトの手続きはもう終えてあるから後はキーをフロントに返すだけだ。

 荷物は先に次の宿泊先に送ってあるから気にするな。

 それと次の宿泊先の住所はもう1枚の紙に書いてある。ちゃんと見ておけ。

 午後6時半に夕食の予定だからそれまでに宿泊先に1人で来るように。

 なにお前なら大丈夫だと信じているぞ。

 ちなみにお前の財布に諭吉を1枚入れておいた。それで今日1日遊んで来い。

                                     凛奈』

 

 

これでいったいどうしろって言うんですか凛奈さん。

再度手紙に目を通して思わず深い溜息が出てしまった。これで今日何回目の溜息だろう。かれこれこの1時間で10回ぐらい吐いてるような気がする。

 

でもまあこれはまだいいと思う。いつもの凛奈さんの行動を考えればそこまで突飛な事でもない。いい方だと思っておこう。僕の精神衛生上のために。

 

それよりさっきから気になっているのが僕を見つめる視線だ。

ここに座ってからずっと感じる視線。最初は僕の外見を見て勘違いした男の人の視線かと思っていたが、1時間近くも見られていると気にならない方がおかしいだろう。

さりげなく視線のする方を見てみたが、そこにいたのは1人の女の子だった。たぶん同学年か1つ上ぐらいだろう。長い髪を後ろで1つに纏めた可愛い子だと思う。

 

だが表情はなぜか険しかった。

 

僕が何かしたのだろうかと思い考えるが、見覚えもないし会った事もない女の子にあんな顔をされるような覚えなんかあるはずがなかった。

そもそもここに来るのも初めての僕が恨みを買うような事は出来ないはずだ。あ、また雰囲気がなんか変わった。おかしな子だ。

 

そんな事を考えていたら上から影がさした。何かと思って顔を上げると、そこにはなんと言うか大和くん的表現で言うとチャライ?格好をした男の人が1人僕を見下ろしていた。

その目を見てすぐに分かった。この人、僕を女と間違えている。

 

「ねぇねぇ彼女。さっきからずっとそこにいるけど誰かと待ち合わせ?」

 

ああ、やっぱりナンパだ。慣れたとはいえ去年あたりから増え過ぎだと思う。

最近凛奈さんが旅行先で僕を置いていく理由の1つがこれだ。旅行に行く度にナンパされる僕を面白がっているんだ。1月の旅行の時なんか凛奈さんと姉妹って言われてしまった。

 

小学6年生になったころから身長も伸びだしたし体つきもそれなりに男っぽくなってきたつもりだったけど、生まれついての顔だけはどうにもならなかった。

 

モモ先輩曰く『可愛いは正義だぞ』

一子ちゃん曰く『可愛いからいいじゃない』

京ちゃん曰く『女の私より可愛いってどういうこと?』

 

らしい。モモ先輩何が正義なんですか? 一子ちゃん男にとって可愛いはいいことじゃないよ? 京ちゃんどうにも出来ない事で理不尽に怒るのはやめてくれないかな?

 

この女顔を1番どうにかしたいのは僕なんだけどね?

 

「ねぇ聞いてるの?」

 

考え込んでいた僕を見て無視されてたと思ったのか、男の人は少しだけイラついた声で問い掛けてきた。

さて、どう対応するかな。ていうかこの人、僕を幾つだと思ってるんだろうか。

 

「聞いていますよ。待ち合わせと言ったらどうするんですか?」

 

「嘘ついたらダメだよ。だってさっきからずっと見ていたけど、待ち合わせしてるって感じじゃなったもん」

 

見ていたのならわざわざ聞かなくていいと思うんだけどな……ナンパのパターンって意外と少ないんだよね。たいがいが『暇なの?』とか『待ち合わせ?』なんてセリフから始まる。たまにストレートに『遊びに行こうよ』と言う人もいるけど。

 

「それでお兄さんは何の用ですか?」

 

「暇だったら一緒に遊びに行こうよ。観光客でしょ? この辺りを案内してあげるよ」

 

「結構です」

 

切って捨てるように言い放ち顔を背ける。ひと言で終わらせたかったが男の人は諦め悪く未だに何かを言っては側を離れようとしない。

いい加減少しうるさくなってきた。

 

「いい加減にして下さい。下心が隠せていないのは見て分かります。犯罪者になりたいんですか、貴方は?」

 

「犯罪者って穏やかじゃないね。とこで君幾つなの?」

 

「今年の4月で中学1年生になった12歳ですがなにか?」

 

「えっ?」

 

さすがに予想外だったんだろう。年齢を聞いて明らかに固まっている。

それも仕方ないだろう。認めたくはないが女顔だが背は同学年の女子より高い。それが相まって僕を女と勘違いする人は僕の事を16・7だと思うらしい。

大和くんとジン兄の見解と推測だけど間違いないだろうと言っていた。

 

だがまあ怯んだのなら頃合いだ。そろそろ退場してもらおう。

僕の精神衛生上これ以上は不愉快だ。

 

「それと僕、男ですからナンパしても意味ないですよ」

 

「ええっ!?」

 

どうやらこっちの事実の方が驚きが大きかったみたいだ。

一瞬だけ信じられないといった表情を浮かべていたが、すぐに笑顔を浮かべる。

これはアレだ。信じていない。ナンパの断りの手段だと判断したのだろう。

 

面倒臭い人だな……あまりやりたくなかったけど強硬手段で行こう。

 

「だから嘘はいけないよ。それに大丈夫。俺年下好きだからぁっ!?」

 

言い終わる直前に言葉が跳ね上がり、男の人は見る見るうちに顔を青くすると、声にならない声を上げて蹲った。

 

まあ痛いだろう。思いっきり股間を蹴り上げたんだから痛いのは間違いなない。その痛みは僕も男だからよく分かる。分かるからこそあえてやったんだけど。

 

「痛いですか? 痛いですよね。僕も男ですからよく分かります。でもこれって自業自得ですよね? 僕は断ったはずです。しかも男だとちゃんと言いましたよね?」

 

股間を押さえ痛みに悶える男の人を見下ろし、笑顔を浮かべて問い掛けてみる。痛さからなのかそれとも僕が浮かべた笑顔のせいないのか、顔をさらに青くし顔を引きつらせながら頷く。

そうこうしている内に2人の男の人がやって来て、ナンパしてきた男の人を抱えるようにして連れていった。

 

たぶんあの人の友達なんだろう。それでナンパの理由が分かった。

恐らく遊び感覚、勝負感覚で1人が僕に声を掛け、成功したら勝ちみたいな賭けでもしていたんだろう。僕からしてみればふざけるなと言いたい。

 

言いたい事はまだあるけど、終わった事にいつまでも愚痴を言っていてもしょうがない。それよりもこれからどうするかの方が先決だった。

 

今日の宿泊先は住所が書かれたメモを見れば分かる。場合によっては携帯のネットで検索すれば問題ないし、周りの地元の人に聞けば迷う事はないと思う。

ただそれまでの時間をどうやって潰すかが1番の問題だよね。只今AM10:00過ぎ。今から宿泊先の夕食まで約8時間半もどこかで過ごさなければならないのだから。

 

どうせ凛奈さんの事だ、きちんと予約は入れているだろうが、チェックインは直前の6時ぐらいに設定しているはずだ。

そもそも未成年で中学生になったばかりの僕が、1人でチェックインしても門前払いを受けるだけ。どうせ『大人の人と一緒に来て下さい』って言われるのがオチだろう。

 

分かってる。絶対分かっててやってるよ凛奈さん……

 

またも落ち込んでしまう僕。

凛奈さんが僕を大切にしてくれているのはちゃんと理解しているけど、それなのに僕をいじるのはやめてほしいと思う。

 

あ、気配が動いた。

 

そんな風に考えて落ち込んでいると、さっきまでずっと僕を見ていた女の子の気配が動いたのが分かった。

僕がナンパされている時もじっとこっちを見ていたし、突然雰囲気がおかしくなるのを感じていた。せわしないなあと思いつつも、面白く感じていたのは事実だった。

 

そんな女の子が何やら決意したような雰囲気で近付いてきた。

さて、いったいどうなるのやら。なんだか怖いようで期待している自分に何故かおかしくなり笑ってしまった。

 

あ、なんかビックリしている気配がある。

 

いきなり笑ったから驚いたのかな? なんていうか、人の気配に敏感……じゃないけど、たぶん人付き合いが苦手かあるいは人見知りな子なんだろう。

あれ? それだと今近付いて来ている意味が分からない。なんだろうかこの子。物凄く興味が湧いてきてしまった。

 

驚き止まっていた気配が、ゆっくりとだけどまた近付いて来た。

 

本当に恐る恐るといった感じだ。

だが1つだけ気になる事があるんだけど、会話が聞こえるのはどういうことなんだろう。気配からは1人しか感じないのに声は2人分、ちゃんと会話している声が聞こえる。

その事がより一層興味を惹いている。

 

彼女が近付く度に湧きあがってくる面白さを表に出さないように抑えながら、僕はこれからの彼女との会話がどんなものになるのか考えていた。

 

  side out

 

 

驚きながらも強い決意を持って近付いていく彼女。

 

興味と面白さを隠しながら待ち構えている彼。

 

お互い初対面の初めての出会いと思っている。

 

だがこれが彼女と彼の、2度目の出会い(・・・・・・・)だということには、まだお互いに気付く事はなかった。




あとがき~!

「第31話終了。あとがき座談会、司会の春夏秋冬 廻です。今回のお相手は――」

「篁緋鷺刀です」

「はいよろしく。さて今回のお話でついにあの子が登場しました」

「といっても名前出てきてませんけどね。最初の視点も“???”ですからね」

「まあそうなんだけど、分かる人には分かると思う」

「文面を見れば一目瞭然だと思いますけどね」

「そうだね。でもその文面なんだけど」

「文面がどうにかしたんですか?」

「いやあ、あの子の心理描写って難しいけど書いてて面白いね。テンパるところなんてなんかどんどん書けていけるのがいいよ」

「でも句読点が入っていないのはどう事なんですか」

「勢いだね。それだけ混乱しているのを表現する1つの方法」

「彼女らしい混乱時の言葉の表現ができないからじゃないんですね」

「………………………もちろんだよ」

「なんですかその間は?」

「さあて、次回で彼女の名前もきちんと登場しません」

「登場しないんですか?」

「うん登場しない。君たちの正式な自己紹介は原作突入後にしたいからね。まあさっきも言ったけど読んでる人は分かってると思うけどね」

「考えがあっての事なんですね。ところでなんで急に話をそらしたんですか?」

「な、何の事かな?」

「ですから表現が出来ない――」

「では皆さん! 次回投稿もよろしくお願いします!」
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