真剣に私と貴方で恋をしよう!!   作:春夏秋冬 廻

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第40話投稿。

いつになったら原作に行くのやら……


第40話 彷徨いの夜明け、それぞれの変化

――2008年 3月7日 金曜日 PM4:00――

 

ジン兄が行方不明になって1年と半年が過ぎた。

 

その間に僕たちに変わった出来事はそれほどなかった。

強いて言うのなら、モモ先輩があの事件の半年後に中学卒業し、翌月に川神学園に入学。

そしてキャップ、大和君、一子ちゃん、岳人君、卓也君が卒業式を終え今日で中学校を卒業した事と、京ちゃんを含めた全員でモモ先輩と同じ川神学園に進学が決まった事ぐらいかな。

 

そして何故か特例という形で、ジン兄の卒業も決まった。

 

鉄心さん……もしかして川神院の力で何かしましたか?

 

一緒の高校に行くに当たり、京ちゃんは岳人君のお母さんが切り盛りしている川神学園の学生寮の島津寮に入る事になった。

そして両親が海外に行く大和君も島津寮に入る事が決まった。父親に一緒に来るかどうかの決断を求められていた大和君は、最初はついて行こうと考えていたみたいだたけど、結局はこの川神市に残る事に決めたらしい。

 

その事を少しだけ詳しく聞いてみたら、

 

『最初は兄弟の事があったからついて行こうと思ってたんだ。けど、みんなで待つ事を決めたのに俺だけ抜け駆けするわけにいかないだろ? それにやっぱりみんなと一緒にいる方が楽しいからな』

 

そう言った大和君に僕は何故かジン兄の姿が重なって見えた。

 

あの事件以降、何かしらの形でみんなは自分について少しだけ見つめ直したんだと思う。

 

その中で顕著だったのが大和君。

大和君は仲間内での自分の立ち位置を決めた。今までジン兄に頼っていた部分を補うために必死になっていた時期もあったけど、自分とジン兄の違いを受け入れ、自分なりにこの風間ファミリーを纏める術を手に入れたんだと思う。

 

『軍師』。

 

そんな大和君を見てキャップとモモ先輩が付けた大和君のあだ名。今までは例えとして使っていたこの名前は、今は名実共に大和くんの地位となった。

 

京ちゃんの変化も少しだったけど見て取れた。

中学に入ってから遠く離れた事も理由なのかもしれないけど、京ちゃんは僕たち風間ファミリーに依存しているところがあった。とりわけ大和君への信頼は盲目過ぎて時々ジン兄に注意されていたぐらいに。

でもあの事件以降は少しずつだったけどその依存が和らいできていた。

 

大和君に注意された事もあったし、自分でも思うところがあったんだろう。仲間依存が全くなくなったわけじゃないけど、いい傾向になってきたと思う。

 

そして、別の意味で顕著な変化をしたのがモモ先輩だった。

 

性格が変わったとか、みんなへの態度が変わったとかそういう事での変化じゃない。

いつもと変わらず力で僕たち風間ファミリーに君臨しているモモ先輩だけど、時折ジン兄がしていたような後ろから見守るスタンスを取るようになった。

 

仲間内で問題が起こった時、今までだったら率先して介入、あるいは引っかき回していたのに、この頃はみんなに意見を出させ合った後に収める。あるいは場合によっては強制加入して止めるような態度を取るようになった。

 

まるで大和君とモモ先輩、2人でジン兄の代わりをしているみたいだった。

 

それと服装や格好。

ジン兄が好んで着ていた服なんかを着るようになったし、小物なんかもジン兄の物を使うようになった。でもだからといって、行方不明になってすぐの頃のように縋っているという感じじゃない。

 

モモ先輩はちゃんと僕たちを頼ってくれているけど、それでも拭えない不安があるんだろう。それが『仲間』と『恋人』の違いなんだと思った。

 

みんないい方に向かってる。ジン兄がいないこの仲間の空間を大切にして、それでもいつでもジン兄が帰ってきてもいいように。

誰も焦っていない。この1年と半年、全くジン兄の情報はなかったけど、必ず帰ってくるとみんなで信じて待つと決めているから、誰1人として自棄になる事はなかった。

 

僕たち風間ファミリーは今、1番絆が強くなっていると言えた。

 

 

今日は卒業祝いのパーティーをする予定だ。

 

卒業組の5人は同じ卒業生の京ちゃんを迎えに行っている。

従って今この秘密基地にいるのは僕とモモ先輩の2人だけだった。

 

「タカ。料理はどうすればいい?」

 

「モモ先輩が作ったの!?」

 

いきなり掛けられた声とその言葉に驚きの声をあげてしまう。

その僕の返答に機嫌を悪くしたんだろう、モモ先輩は手に提げていた重箱を包んだ風呂敷をテーブルの上に置くと、背筋が凍りそうな薄ら笑いを浮かべた。

 

「なんだその反応は? 私が料理を作るのがそんなに意外か?」

 

まずいとはっきりと分かる。今の僕は蛇に睨まれた蛙も同然だろう。

なんとか脱出方法を取らなければならないのだけれど、こういった時のモモ先輩を相手にするのは基本的に大和君だ。

 

大和君が生け贄になっていると言った方が適切かもしれない。

 

その大和君はさっき言ったように京ちゃんの迎えでここにはいない。なんとかして話を逸らさなければならいなけど、こういう時はどうすればいいだろうか?

 

とりあえず思ったままの言葉を口にする。

 

「驚いたのは意外だからじゃないよモモ先輩」

 

「ほう? じゃあなんで驚いた?」

 

「作ってくるってモモ先輩、ひと言も言ってなかったから驚いただけだよ。まさか料理を持ってくるとは思わなかったから、ここに来る途中でお菓子をたくさん買ってくるってキャップも言ってたし」

 

素直に言ったことが功を奏したのだろう、僕の言葉にモモ先輩は少し困ったような顔をして人差し指で頬を小さく掻いた。

 

「言っておくべきだったか……驚かそうとして黙っておいたのが仇になったな」

 

「今から携帯に連絡入れておく?」

 

「まあ必要ないだろ。量もそんなに作ってきたわけじゃないし、ワン子もガクトもいるし8人で食えばすぐなくなるだろ」

 

そう言い切ったモモ先輩は気にする風でもなく準備を再開した。

とりあえず一命を取り留めた僕は安堵の溜息を小さく吐く。なんとか窮地は脱したと思っていいだろう。

 

その後は取りとめのない話をしながら準備を続ける。

 

「そういえばタカ。最近は川神院に顔を出さないけど何やってんだ?」

 

作業の手を止めずモモ先輩が問い掛けて来た。

 

実はあの時のモモ先輩との勝負以降、何故だか鉄心さんに気に入られた僕は時々ではあったが、川神院の修練に参加させてもらっていた。

それも2ヶ月ぐらい前の話で、最近はあまり顔を出していない。

 

まあ、それにもきちんとした理由があるんだけどね。

 

「急に行かなくなったのは申し訳ないと思ってるよ。でも最近は凛奈さんにまとまった休みが出来たから、集中的に鍛えてもらってたんだ」

 

「凛奈さんにか……なあタカ、ずっと聞きたかったんだが、凛奈さんてどれぐらいの強さなんだ?」

 

僕の答えにモモ先輩は少しだけ思案顔で問い返して来た。

答えを間違ったかな。モモ先輩が凛奈さんに興味を持ったような気がした。

そんな僕の雰囲気を感じ取ったのだろう、モモ先輩は誤解を解くような感じで言葉を続けた。

 

「いや、別に戦ってみたいという訳では――多少はあるが、純粋な武道家としての興味だ。私らの中では今のところ私に次いで強いお前が指導を請う人の強さが知りたいんだよ」

 

それなら大丈夫かな。

鉄心さんには余りモモ先輩の闘争心に触れるような事はするなと言われている。

 

一時期、ジン兄が行方不明になった後の頃は酷かった。

鉄心さんが言うには、僕とのあの勝負がある意味でモモ先輩の中の生まれ持っての性《さが》の、戦闘狂の部分を大いに刺激してしまったらしい。

それまではジン兄が時々勝負をして息抜きをしていたし、何より『恋人』という存在がその戦闘へ向かう心のエネルギーを『恋愛』に向けさせていたようだ。

 

だけどその『恋人』であるジン兄がモモ先輩の前からいなくなった事で、『恋愛』に向いていた心のエネルギーが、本来の『戦闘』に向かってしまい僕との勝負の結果、モモ先輩の戦闘狂の面が強くなってしまったのだ。

 

あの時はあするしかなかったとはいえ、そう言われてしまうと少しだけ罪悪感を感じてしまった。だから鉄心さんが僕の剣術を認めてくれた事もあり、言葉に甘えて川神院に1年ちょっと顔を出していた。

 

そんなモモ先輩から凛奈さんの事を聞かれたら、答えていいのか考えるのは仕方ないと思う。

だけど今のモモ先輩の雰囲気から察するに大丈夫そうだ。もしこの返答のせいで凛奈さんに勝負を仕掛けるような事があったら、ある意味で僕が凛奈さんに殺されかねない。

そうならない事を祈りつつ、僕はモモ先輩に答えた。

 

「うん、僕より強いのは間違いないよ。凛奈さんは篁の一族全員から『篁の歴史上至高の天才』って言われてたぐらいだからね」

 

「ふぅん、そうなのか」

 

僕の叔母である篁凛奈さん、実は15歳で免許皆伝を受けるほどの天才だったらしい。なのに実家から勘当、絶縁状態にあるのには物凄い逸話が残っている。

 

今から10年前の3月に凛奈さんは篁の業を全て修め、祖父――凛奈さんから見れば父親から免許皆伝の許しを得た。

一族誰もが次の篁家の当主は凛奈さんだと思っていた。

当時、僕の父も免許皆伝を受けていたが、凛奈さんは父のそれより10年早かったため、天才と称されていた凛奈さんこそ相応しいと誰もが言っていたらしい。

ところが凛奈さんは免許皆伝を受けた直後に、一族全員が見ている中で持っていた刀で受けたばかりの皆伝の証を真っ二つに斬り捨てると、

 

『私は今日をもってこの篁の家を出る。悪いが今まで素直に教えを受けていたのは自分1人で生きられる力をつけるためだけだ。こんな腐れジジイがいる家を誰が好き好んで継ぐものか。』

 

そう吐き捨て、真っ二つになった皆伝の証を拾い上げ祖父に叩きつけると、時間が止まったかのように呆然となる道場から出て行きそのまま荷物を纏めて家を奔出していったらしい。

その結果、祖父は凛奈さんを勘当。絶縁まではさすがに周りの人たちから止められたが、殆ど絶縁と言ってもいい今の状況になったのだった。

 

余りに豪快すぎる逸話に、初めてその話を凛奈さんから聞いた時、僕はなんて言葉を返せばいいか分からなかった。

 

さすがに他人にこんな事を話す訳にもいかないからモモ先輩に言わないけどね。

 

「足元にも及ばない、とまでは言わないけど、僕がまだ教わっていない技もあるから、さっきも言ったように凛奈さんにまとまった休みが出来たら集中的に鍛えてもらうってわけ」

 

そこで話を切った僕にモモ先輩は少し笑顔を浮かべた。

 

「じゃあタカはまだまだ強くなるわけだな」

 

「まあ、目標はまだ全然先にあるからね。強くなりたい気持ちはもちろんあるよ」

 

「じゃあこれからを楽しみにしておこう」

 

聞きたくない言葉が耳に入ってきた。

 

モモ先輩は今なんて言った? 『これからを楽しみにしておこう』って言った? どういう意味で『楽しみにしておこう』なの?

 

いやな予感が駆け巡り、僕は少しだけ顔を引きつらせながらモモ先輩の様子を窺うように視線を向けた。その視線の先にはいい笑顔のモモ先輩の姿。

いやな予感は当たったようだ。

 

「またいつか勝負するぞ。これはお願いじゃない決定事項だからな」

 

「分かりました……」

 

そう答えるしか出来ない僕だった。こんな時になればなるほど強く思う。

 

ジン兄……早く戻ってきてね。

 

 

僕とモモ先輩が準備を終えて20分ぐらいたった後、今回のパーティーの主役である卒業組6人が秘密基地にやっていた。

 

モモ先輩が料理を作ってきた事に、僕の予想通りみんな驚いていたけど、空気の読める大和君と京ちゃんと卓也君はきちんと回避を取り、素直においしいと褒めたキャップや一子ちゃんはお咎めなし。

ただ1人馬鹿正直に『食えるのか?』と呟いた岳人君のみ、モモ先輩のキツイ制裁を受けたのは、いつも通り過ぎる僕たち風間ファミリーの日常だった。

 

「クッソー。こんな時にジン兄がいればなんとかしてくれたのによ~」

 

思わず呟いた岳人君の言葉に、モモ先輩以外の全員の動きが止まる。

それを見て自分が何を言ったのかに気付いたんだろう、岳人君はしまったとばかりに慌てて口を手で抑えた。

 

だけどもう遅かった。

 

あの後で、モモ先輩以外の僕たちだけで1つのファミリー内でのルールを作った。

 

それが『モモ先輩の前ではジン兄のことを話題にしない』という事だった。

 

別にモモ先輩を疑っているわけじゃない。ちゃんと僕たちと同じように、ジン兄が帰ってくるのを仲間全員で信じて待つ事に同意してくれているのは分かっている。

 

でもモモ先輩と僕たちとではジン兄と繋がる絆の形が違う。

僕たちにとってジン兄は『仲間』であり『憧れ』や『目標』という存在だけど、モモ先輩にとっては唯一無二の『恋人』という存在なんだ。僕たちとは感じる悲しみや喪失感が違う。ジン兄の事がファミリー内で話題に上がる度に、モモ先輩は小さくてもそういった感情を受けるかもしれないとみんな思った。

 

だからみんなでそんなルールを作ったのだ。

 

みんな恐る恐るといった感じでモモ先輩を窺い見た。

僅かでも傷ついた悲しい顔をしているだろうと誰もが思っていたが、その顔はいつもと変わらない穏やかだけど自信に溢れた顔だった。

 

予想外の表情に僕たちの方が驚きで表情を変えてしまった。

そんな僕たちを不思議そうに眺めていたモモ先輩は、雰囲気を察したんだろう小さく呆れた溜息をついて笑顔を浮かべた。

 

「なんだ、やっぱ気を使っていたのか」

 

「姉さん、気付いてたのか?」

 

「気付かない方がおかしいだろ。1年半も仲間内でジンの話題が出ないなんてありえないだろ? 気を使われているんだろうなっていうのは1ヶ月で分かったよ」

 

種明かしをするように肩をすくめて言うモモ先輩に、僕たちは返答に困ったというのが正直な思いだった。

モモ先輩はわりと始めの頃から気付いていた。でもそれを言わなかった。逆に気を使われていたのは僕たちの方だったのだ。

 

「あ~そうするとアレか? 俺たちのやった事って無駄な事だったのか?」

 

キャップが僕たちの思いを代表してちょっと困ったような表情で言う。

同意するように頷き目を合わせる僕たちも苦笑いしか浮かべられなかった。

 

そんな僕たちの考えを否定するようにモモ先輩は首を横に振った。

 

「いや、助かったのは事実だよ。ジンが行方不明って知って私は閉じ籠って……タカと大和のお陰でお前たちのありがたさに気付いて……でもやっぱりどうしようもない心の不安はなくならなかったからな」

 

あの頃の自分の思い出すかのように、自嘲的な笑みを浮かべながら話すモモ先輩に、隣にいた一子ちゃんは心配そうにモモ先輩の右手に自分の両手を重ねた。

そんな一子ちゃんの行動にモモ先輩は浮かべていた笑みを優しいものに変えると、安心させるように空いていた左手で重ねた一子ちゃんの手を軽く叩いた。

 

「でも今は大丈夫だ。完全に不安がなくなったわけじゃないが、ジンの話題を出されて塞ぎ込むほどでもない。変な心配を掛けさせて悪かったな」

 

最後は明るくこの場の不安な雰囲気を取り除くように言うモモ先輩に、僕たちは頷き小さく安堵の溜息を吐いた。

そんな穏やかになった雰囲気に便乗するかのように、京ちゃんが珍しく少しおどけたような声で言葉を発した。

 

「分かる。私にはモモ先輩の気持ちがしみじみ分かる。私も大和に会えない時は不安だった。気が狂いそうなほど不安だった」

 

「いや京? 京は毎週の金曜集会で大和に会ってたじゃん」

 

卓也くんのツッコミが入る。だけど京ちゃんは聞く耳を持たないのだろう、そのツッコミを全く無視して言葉を続ける。

 

「だからこの不安をなくすためには恋人になるしかないよね。それが1番いい解決策だよね大和。だから好きです付き合って」

 

「お友達で」

 

すかさずいつも通りの言葉を返す大和君。そのお陰か部屋の雰囲気もいつもと変わらない僕たち風間ファミリー独特の楽しいのもになった。

大和君にいつも通り振られた事で、いつもなら落ち込む京ちゃんだが何故か今日は小さく含み笑いを浮かべてさらに言葉を続けた。

 

「クックックック……まあいいよ。チャンスはこれから幾らでもあるしね。なにせ寮の私の部屋は大和の部屋の真上だからね。これで大和がいない時に入り込める」

 

「ちょっと待て京! 俺はまだ入寮が決まったばかりだぞ! 何で既に俺の部屋が決まってるんだ!?」

 

その事実に驚きを隠せない大和君は声を張り上げた。そんな大和君の姿が面白いのだろう、京ちゃんはさらに笑みを深くした。

 

「麗子さんに頼んだの。大好きな韓流グッズを献上品にしてね」

 

「ガクトォ!!」

 

「なんで俺様!? 悪いのはかーちゃんだろ!?」

 

衝撃の事実に大和君の怒りは何故か岳人君に向かった。

とばっちりを受ける事になった岳人君には同情するしか出来ない。

 

「分かるぞ京。好きな男の部屋に入り浸りたい気持ち。私もジンの部屋に入り浸ってるからな」

 

モモ先輩のその言葉に一子ちゃん以外全員が一気に身を引いた。

訳が分からないモモ先輩と一子ちゃんを余所に、僕たちは離れて円陣を組み声を潜めて意見を出し合う。

 

「やばいんじゃねーかモモ先輩。ホントに立ち直ってんのか?」

 

「その言い方は失礼だよガクト。恋する乙女に常識なんてないの」

 

「本当に常識ないよな京、お前も。それより姉さんの事だ」

 

「ワン子が心配してないから大丈夫だと思うけど……」

 

「甘いぞモロ、ワン子にモモ先輩の機微を察知できると思うか?」

 

「それも一子ちゃんに失礼だよキャップ。でも確かにたまにジン兄の部屋で過ごしてたのは見てたし、時々鉄心さんに叱られてたねモモ先輩」

 

川神院に顔を出していた頃の出来事を思い出す。何度かモモ先輩がジン兄の部屋から出てくるのを見ていたし、時々鉄心さんに怒られていた時もあった。なんでもジン兄の部屋で寝ている事もあるそうだ。

 

この行動を見ると立ち直っているのか怪しいところは確かにある。

 

「おいお前ら、内緒話なら私のいないところでやれ。全部聞こえているぞ」

 

モモ先輩の言葉に僕たちは体を震わせ顔を向ける。

怒っているだろうと思っていたがモモ先輩は呆れた顔をしているだけだった。

 

「全く失礼な奴らだな。いいかお前ら、これから私の事はかわゆい恋する乙女な美少女だと思え、いいな」

 

「モモ先輩が恋する乙女って無理だろ」

 

岳人君の呟きに対しすかさず飛んできたモモ先輩の蹴り。

 

思っていても口に出すなよ。

 

容赦のないモモ先輩の制裁を受ける岳人君の悲鳴を聞きながら、ここにいる全員の思いは今1つになった。




あとがき~!

「第40話終了。あとがき座談会、司会の春夏秋冬 廻です。今回のお相手は――」

「川神百代だ」

「はい、久し振りのあとがき座談会復活。8話振りかな?」

「なんでこのエピソードが始まった時はやらなかったんだ?」

「まあシリアスな話という事もあるからだけど、少し物語の方に集中したかったんだよ」

「見通しはつていなかったのか? 37話で長くても2話で終わりとか言っておきながらもう3話だぞ?」

「見通しはついていたんだけど、書きたい事が増えたんだよ」

「行き当たりばったり過ぎるだろ」

「ごめんなさい。精進します。さて急に話は変わりますが、今回のお話は神の行方不明後のファミリーのちょっとした変化を描きました」

「大した話じゃなかったな」

「まあね。でも今回の話で神がいたことで原作とスタンスが変わっていた大和と君が、ある意味で原作通りに戻ったと思う。さらに京も少しだけ原作開始時と変化を持たせる事が出来たと思う」

「多少なりにも意味はあったということか」

「まあ作者の自己満足でもあるけどね」

「で? このエピソードはいつ終わる?」

「いつか終わります」

「なんだその投げやりな言い方は!?」

   バキッ

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