真剣に私と貴方で恋をしよう!!   作:春夏秋冬 廻

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第3話投稿。

みんなの軍師、原作主人公の視点。


第3話 直江大和、篁緋鷺刀について語る

ヒロの叔母さんから持ったお金をプラスして、全員が1500円となったお小遣いを持ち、とりあえずみんなで歩き回る。

 

「これからどーすんだキャップ。このまま全員で行動すんのか?」

 

ガクトの言葉に振り向き足を止めたキャップに倣い、みんなその場でいったん立ち止まる。といっても通行人の邪魔にならないように端に寄る事だけは忘れない。

ただ1人その場でぼうっと立ち止まったワン子だったが、ヒロがさりげなく引っ張りながらこちらに来るあら問題はないな。

 

「そうだなぁ、それはそれでおもしれーけど……どうする? 軍師大和」

 

「分散行動をお勧めする。全員で行動するのも悪くはないがそれだと全員の行きたいところに回ったとしても時間がかかり過ぎる。だったら最初から少人数で行動して、それぞれが行きたいところに行くのがベストだし多くの出店を回る事が出来る」

 

キャップの問い掛けに考えを述べる。

特に反対意見は出ないようだがワン子は俺の言葉に首を傾げる。どうやらあまり理解していないようだ。まあ、またさりげなくヒロが分かりやすい言葉で説明するだろう。

ワン子を放っておいてキャップに視線を向ると、俺の視線に答えるように頷く。

 

「よし! それじゃあ行動は各自自由に! 集合場所はあの大きな門の下だ!」

 

そう言って入ってきた山門を指さす。

 

「1度お昼になったら集まろう。正午の合図に寺院の鐘を3回鳴らすみたいだから、それを聞いたらいったん集合場所に来るように」

 

キャップの言葉に集まる時間帯と注意を付け加えると、みんな分かったと頷く。

 

「よし、じゃあ俺は早速食いもんのところに行ってくるぜ!」

 

「僕はガクトについて行くよ。急にお金が多くなったから絶対に食べ物を大量に買うのが目に見えてるからなんとか止めてくる」

 

意気揚々と食べ物系の出店に向かって歩いて行くガクトの後を、俺でも予想できる結末を止めるべくモロがついて行く。

 

「よっしゃあワン子! じゃあ俺たちはまず射的から行くぞ!」

 

「え~? アタシも食べ物の方がいい!」

 

「ンなもん後でもいいだろ。どうせ昼に1度集まるんだ。その時に食べ物を買えばいいだろ」

 

遊び系の出店に誘って行こうとしたキャップに、ワン子が抗議の声を上げる。

そんなワン子の手をお構いなしに取って駆け出して行くキャップ。ワン子も言葉に納得したのか特に抵抗する事なく一緒になって走って行った。

 

「さて、どうするヒロ?」

 

その場に残ったヒロに問い掛ける。

ヒロは直ぐには答えず、キャップとワン子が走って行った方を眺めて何やら考え事をしていたかと思うと、こちらを向き少しだけ呆れたような顔をしたが、直ぐに笑顔になって言葉を発した。

 

「僕は道場の方をゆっくりと見て回るよ」

 

「そういやあお前、武術習ってたもんな」

 

「うん。実家が古くからの剣術流派の道場だからね。こっちに来てからも凛奈さんに教わってるから」

 

嬉しそうに言うヒロ。

 

 

今、俺の隣にいる篁緋鷺刀。

俺たち風間ファミリーでただ1人の下級生で身長も1番低い。しかも首筋が隠れるボブカットのような少し赤みがかった茶髪で肌もどちらかといえば白い。ヒロ本人は嫌がっているが中性的な顔立ちはどちらかといえば女顔といえる。

 

訂正する“ほぼ”女顔だ。

 

服装にもよるが初対面の人は十中八九ヒロを女の子だと判断する。しかもヒロの叔母さんの凛奈さんも、面白がってヒロの服を男でも女でも着れるようなユニセックスな服を買ってきては着せている。

ワン子もガクトもモロも、かく言う俺も最初に会った時は名前を聞くまで女の子と思っていた。最初から男だと見抜いてたのはキャップ1人だけだった。

 

今日の服もヒロ曰く『これしか着る物がなかったから仕方なく着ている』せいか、遠目に見ても女の子にしか見えない。正直に言うと集合時、見慣れている俺ですら遠くからは女の子に見えた。

 

そんな女のような見た目と素直な性格のヒロだが、先ほど言っていたいように剣術を習っている。剣道ではなく剣術。しかも古流剣術。

 

事実ヒロは物凄く強い。

 

普段や素手の時はそうではないが、ひとたび竹刀に代わる棒状の物を持てば、俺たちの中で1番喧嘩に強いガクトですらあっという間に倒してしまう。

 

ガクトとモロを仲間に入れた去年の今頃。

あれは掃除の時間だった。同じクラスになって仲間に入ったガクトとモロをヒロに会わせたのだ。初対面のヒロの容姿をからかい爆笑したガクトに、珍しく怒ったヒロはちょうどその時、手に持っていた箒を構えると瞬く間に打ちのめしたのだ。

 

あれには俺もキャップもワン子も驚いた。

 

小学3年生で同学年でも背が高いガクトを、小学2年生で同学年でも背が低いヒロが打ちのめし、うつ伏せに倒れているガクトを見下ろしていたヒロの姿。

 

ガクトの情けなさとヒロが手に持っていたのが箒だったため、物凄くシュールな光景だった。

 

俺たちの中でも1番の強さを持つヒロだが、決して自分からその強さを見せびらかそうとはしない。キャップやガクトはどうしてだと何度か問い詰めたが、ヒロはちょっと困ったような顔をするためなかなか踏み込んで聞く事が出来ないでいた。

 

『性格的なもんだからあんま突っ込むな。お前らと違ってあいつは自分から目立つような事はしたくない性質(たち)なんだよ』

 

凛奈さんにその言葉と共に後頭部を思いっきり叩かれたキャップとガクトは、それ以降ヒロに問い詰める事はしなくなった。

 

強くても弱くてもヒロはヒロだから関係ない。

 

結局はそう結論付けた俺たちは、変わることなくヒロを仲間として接している。

 

 

「大和くんはどうするの?」

 

少しの間、去年の出来事を思い返していた俺にヒロが言葉を掛ける。

 

「そうだな。とりあえず軽く何か食べてからぐるりと出店を回るよ。それよりもヒロ……」

 

「うん?」

 

「なんでさっき一瞬だけど呆れた顔してたんだ?」

 

こちらを振り向いたときの表情を思い出し、少し気になって問いかけてみる。俺のその言葉が意外だったのか、少しだけ驚いた表情を浮かべるが直ぐにまた呆れたような、微笑ましいものを見たかのような表情に変わる。

 

「別に深い意味はないよ。たださっきキャップが一子ちゃんに食べ物は後で買えばいいって言ってたけど、あの調子じゃあキャップも一子ちゃんもお昼前にお金全部使い切っちゃうんじゃないかなって思ったんだ」

 

「大いにあり得るな……ガクトもやりそうだがあっちはモロが付いているから何とかなると思うけど、キャップにワン子の組み合わせじゃあ、まず間違いなく使い切るな」

 

「うん。だから少しばかりお金を残しておかなきゃなって思ってただけだよ」

 

年下の小学3年生とは思えないヒロの気の遣い方と、心配されるキャップとワン子の情けなさに思わず溜息が漏れる。

微笑んだまま俺を見ているヒロの頭に手を乗せると、少し乱暴気味に髪の毛をかき回す。

 

「変に気を使うなと言いたいが、そのせいでキャップとワン子が昼飯抜きになるのも可哀そうだしな」

 

撫でていた手を止め最後に軽くヒロの頭を叩くと、俺は人ごみへと1歩踏み出し背を向けながら言葉を続ける。

 

「回るついでにキャップとワン子を探して使い切らないように注意はしておくよ。でも見つけた時には手遅れになっているかもしれないから、お前は一応ワン子の分を買えるぐらい残しておいてくれ。俺はキャップの分を担当する。まあ、お前なら無駄遣いはしないだろうしな」

 

そう言葉を締めくくり、右手を軽く上げ後ろにいるヒロに見えるように小さく振りながら、俺はキャップとワン子を探すために遊び系の出店がある方へと足を進めた。

 

「分かった。じゃあまた後でね」

 

後ろから掛る声に答えるように1回だけ大きく手を振る。

少したった後、確認するように振り返ってみるとヒロは既に背を向けて川神院の本堂、道場の方に小走りで向かっていた。

 

あんな外見で素直な性格のヒロだが、やっぱり武術に対しては強い思い入れがあるのだろう、道場に向かう足取りがいつもより軽やかに見えるのは錯覚ではないと思う。

 

そんなヒロの後姿を何となく微笑ましく思いながら眺めていた俺は、さてキャップとワン子を探しに行くかな、と思考を切り替えて再び歩き出した。




あとがき~!

「第3話終了。あとがき座談会、司会の春夏秋冬 廻です。今回のお相手は――」

「どうも初めまして直江大和です」

「さて、オリキャラ以外での初の別視点となったわけですが、いかがでしたか?」

「て言うか、何で今回俺の視点で話が進んだんだ?」

「今回は緋鷺刀についての簡単な説明だったんだが、本人に語らせるよりは別視点の方が分かりやすいと思ったんだ。自分の事って本人より他人の方がよく分かるって言うじゃん」

「まあ確かにな。それよりもヒロの外見、あれって何かイメージでもあるのか?」

「特にはないけど……そうだな、イメージに一番近いのはリリカルなのはのユーノだな」

「あぁ、なるほど……確かに女顔扱いが多いもんな……」

「そういうこと。あくまでも作者の脳内イメージなのでそこんところよろしくお願いします」

「ところでさ、この頃の俺ってニヒルな言動が多いんだろ? なのに地の文が普通な気がするんだが?」

「ひと言、書けん、以上!」

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