投稿再開です。そしてあとがき予告を裏切りました。すみません。
――2009年 4月28日 火曜日 AM7:00――
最後のおかずを並べてお弁当の完成。
今日は3人分を作るから時間が掛かるかと思ったが、1人分増えたぐらいではそんなに差はなかった。
蓋を締め布で包みながら時計を見ると7時を過ぎた頃。家を出るのはまだ早いが、その前にやらなければならない事がある。
ちゃっちゃと朝食の準備をし、エプロンを外し椅子の背もたれに掛ける。制服の上を羽織りながら短い廊下を歩いたその先に
「凛奈さん、朝だよ」
起きていないのは百も承知だが礼儀としてドアをノックして声を掛ける。案の定、返事は全くないがどうやら完全に寝入っているわけではないようだ。
部屋の中の気配はもぞもぞと緩慢な動きを繰り返している。意識は何となく覚醒しているけど起き上がるのが面倒くさいといった感じだろう。
なら一発で目覚める言葉を贈ろう。
「凛奈さん。起きないとプライベート用ノートパソコンのハードディスク、クラッシュさせるよ」
「私の
部屋の中から絶叫が聞こえてきたからもう大丈夫だろう。ドアから離れてリビングに戻る。
椅子に座り自分で作った朝食を食べていると、眠たそうな顔だがスーツに着替えた凛奈さんがリビングに現れ僕の向かいの椅子に腰を下ろした。
「もう少しましな起こし方をしろ」
「今日は取材があるからなんとしても起こせ、って言ったのは凛奈さんだよ。普通に起こして起きてくれるならあんな方法取らないよ」
軽く睨んで来た凛奈さんに対して堪える事なく言葉を返す。
以前、起こしてもなかなか起きなかったから本当にノートPCのハードディスクを物理的にクラッシュしようと事がある。寸前で起きて来た凛奈さんに止められたが、その事件以降は僕の本気を分かってくれたらしく声を掛ければちゃんと起きてくれるようになった。
「おい緋鷺刀、なんで今日は弁当が3つあるんだ?」
朝食を取りながらテーブルの上に置いてあった弁当の包みを見て、凛奈さんは不思議そうに問い掛けてきた。
いつもなら僕1人分だけだし、凛奈さんが出かけるときは2人分作る。それが3つあれば疑問に思って当たり前だろう。隠す事じゃないので素直に答える。
「友達の分。日曜日に島津寮でご馳走になったからそのお返し」
凛奈さんの箸が止まった。
視線を上げて見ると、困ったような悲しいような表現しがたい表情を浮かべていた。
「
「そうだよ」
「緋鷺刀……」
「凛奈さんの言いたい事は分かっているよ。でも
言いたい事は分かっている。でも本当に僕たちには関係のない事だ。
正確に言うなら確執を持ってるのは『篁家』だけであり、彼女の家は
特に彼女は僕の事を覚えていないのだから話して蒸し返す事はしたくない。せっかく『友達』になれて彼女も『仲間』が増えたのを喜んでいるんだ。
これ以上へんな事を話して彼女を困らせるような真似はしたくない。
「そうか……ならそれでいい。私はただ要らない心配をしているだけだ。お前がこれ以上傷つく事だけはないようにしたい、そう思っているだけだ」
凛奈さんの気持ちはありがたく受け取っておく。
「うん、ありがとう」
「それから1度家に連れて来い。じっくりと見てみたい」
「考えておくよ」
話しを変えるように言った凛奈さんだったが、その顔が厭らしい笑みを浮かべたのを見逃さない。連れてくればまず間違いなくイジられる。僕も彼女も。
それが分かっているのにそう易々と連れて来るわけがない。
簡潔に答えた僕を詰まらなさそうに見ている凛奈さんを無視して、食器を重ね流しに持って行く。振り返り流しを指さし、視線で後片付けを任せますと合図を送ると不満げだったが頷いて答えた。それを見て取った僕はテーブルに置いてあったお弁当の包み2つと鞄を手にし、リビングを後にする。
「行ってきます」
「行ってらっしゃ~い」
語尾を伸ばした挨拶を背に受けて僕は玄関のドアを押し開いた。
学園へ向かう道を歩きながら凛奈さんが言いたかった事を考える。
確かに心配するのは分からないでもない。僕と彼女は他人から見れば本来なら相容れない者同士のはずだ。
幼かった頃に起きたあの事は、間違いなく僕たちの心に何かを与えたはずだ。あの事に立ち合った僕は希望と目標を貰った。同じように見ていた彼女が何を感じたかは分からないけど。
でも彼女は僕と再会した時そのことに対して何も言わなかった。それとなく探りを入れても覚えている感じはしなかった。
忘れたのならそれで良かった。覚えているのは僕だけでも全然問題ないし、凛奈さんにも言ったように僕たちには関係のない事なんだ。
「おはよう、タカ」
後ろから卓也君の挨拶の声がしたから考える事をそこで止める。今は難しい事を考えていても仕方がないんだ。
「おはよう、卓也君」
隣に並んだ卓也君に挨拶を返す。
みんなと集合する川沿いの道まであと数分。それまでにいつもの自分に戻しておかないと気配の変化の機微に聡いジン兄に気付かれる。
失礼かもしれないけど、和み系でまさに一般人の卓也君と当たり障りのない話しをして気分を戻しておこう。
そう考えた僕は凛奈さんの新作の話を卓也君に漏らしながら歩みを進めた。
数分歩いていると前方にみんなの姿があった。どうやら今日はまゆも一緒に登校しているようだ。
「みんな、おはよー」
「おはよう」
卓也君に続き挨拶しながらみんなと合流する。10人と大所帯になったメンバーで学園への道を進んで行く。
みんながいつもの他愛のない会話をしているのを、後ろにいるまゆの隣に並び一緒に眺める。
「今日は一緒に登校してるんだね」
「はい、みなさんに誘っていただきました。嬉しいです」
誘ってもらって嬉しいって……別に一緒に登校する事ぐらい誘う誘わない関係ないと思うけど、まゆにしてみればそれだけ大きなイベントなんだろう。余計な事にツッコミを入れるのはよそう。
と、そうだお弁当を渡しておかなければいけない。
「はい、まゆ」
バッグからお弁当の包みを1つ取り出しまゆに手渡す。言われるままに呆然と受け取ったまゆは、今自分の掌に置かれたのがお弁当だと気付くと、穏やかな顔が一変した。
「ほ、本当に作ってきたんですか!?」
「うん。昨日約束したじゃん」
「いえいえ、た、確かに頷きはしましたけど! まさか本当に作ってきて頂けるとは思ってもいなかったわけでして!」
「タカっち、まゆっちテンパってるけど期待してたんだぜ。現に今日お弁当作ってきてねーもん」
「松風!」
テンパって慌ててるわりには綺麗にひとりツッコミをするまゆ。だけどとりあえず期待はされていたんだと分かってホッとする。表向きは遠慮してるけど心では待っていてくれてたんだろう。
松風はある意味でもう1人のまゆだ。その松風が言うんだから間違いないだろう。
結局まゆは僕の説得に折れて受け取ったお弁当を大事そうに鞄に仕舞った。
それを見て思わず笑みがこぼれた時、前方から嫌な雰囲気を感じて慌てて視線を向ける。そこにはジン兄と腕を組みながらもこちらに顔を向けてニヤリと笑っているモモ先輩の姿が。
見られていた。よりによって1番見られたくなかった人に。
からかわれるのを覚悟していたが、見なくても気配だけで僕とまゆのやり取りを理解していたのだろう、咎めるようにモモ先輩の頭を軽く叩いたジン兄のおかげで、最悪の状態は免れる事は出来た。
胸を撫で下ろし心の中で感謝する。ありがとうジン兄。
そんな僕を不思議そうに見ていたまゆだったが、急に大和君が笛を吹いた事をに驚き慌てて視線を前に向けた。そのまま視線を固定して僕に問い掛けて来る。
「大和さんはどうして笛を吹いたんですか?」
「見てれば分かるよ。もうすぐ来るから」
百聞は一見にしかず。言葉で説明するよりも実際に見た方がいい。
「おはよー! 誰か呼んだ?」
数分の間を置く事なく、みんなの前方から一子ちゃんが元気よく走ってきた。それを見たまゆは混乱したような納得したような複雑な表情を浮かべる。
「えっと、まさかあの笛って……」
「その通り、一子ちゃんを呼ぶための笛で通称『犬笛』。一応風間ファミリーは全員持ってるんだ」
そう言って制服のポケットに入れてあった笛を見せた。まゆはどう答えを返していいのか分からないのか苦笑するだけだった。
どうやらクリスさんも大和君の説明を聞いて納得しているみたい。クリスさんは目に見えるものは信じるタイプだから余り疑問に思わないだろう。
総勢11人。
キャップ、ジン兄、モモ先輩、大和君、一子ちゃん、岳人君、卓也君、京ちゃん、クリスさん、まゆ、そして僕。
その風間ファミリーが全員揃い橋の入口に差し掛かった時、その2人は待ち構えていた。
「兄者! あれが川神百代じゃけぇのぉ!」
「ウム。噂にたがわず美しい。満点で合格だな」
見るからに筋肉自慢の2人組―顔が似ているから兄弟だろう―が待ち構えていた。言葉から察するにモモ先輩の挑戦者だ。
「今日はゴッツイ2人組だな」
大和君の言葉が全員の気持ちを如実に表していた。
「川神百代とお見受けするけんのぉ!」
「そうだが」
「我らは地元では知らぬ者のいない仁王兄弟。道場の世継ぎを作るために強い嫁を探している」
目的がはっきりしているのはいいけど、それを今言う必要はないと思う。あれは既に自信というより慢心だ。地元敵なしって言ってたけどそのせいで天狗になってる。
「ガクトが2人いるみたい。筋肉バカ」
「俺様の方が断然知的にナイスガイだぜ」
京ちゃんの呟きに岳人君が心外といった感じで反論している。それこそ今ここで言う必要ない事だと思うんだけど、これがいつも通りの僕たちだ。
「あんたたち、純粋な勝負か嫁探しか、どっちだ?」
珍しく怒りを含ませた声で問い掛けるジン兄。自分の恋人が勝手に嫁扱いされているから仕方ないと思うけど、本当に珍しい。
そんなジン兄の雰囲気を察したのか、モモ先輩以外のみんなが1歩後ろに下がった。それを見て何か勘違いしたのか、ジン兄の変化すら気付いていない挑戦者たちは笑みを浮かべ出した。
「勝負なぞしなくても俺たちの圧勝だけんのぉ」
「嫁探しだ。俺と弟の相手をする嫁のな。ワハハハ!」
完全に怒らせたよこの2人。
ジン兄っていつも冷静で泰然自若に振る舞ってるけど、モモ先輩の事になると意外に怒りの沸点が低い。モモ先輩が馬鹿にされるような事は殆どないから僕たちしか知らない事だけどね。
「兄者! 俺はこっちの男装しているオナゴの方がいいけんのぉ」
一瞬でカタがつくだろう思っていた僕の耳に、理解しがたい言葉が入ってきた。
誰が発した言葉か確認するために周囲を見渡していると、僕を指さし卑しい笑みを浮かべる挑戦者の1人が視界に映った。
なにこの筋肉達磨。もしかして僕のこと言っているのか?
「胸のない女は女じゃないと言っていたくせに、どういう風の吹き回しだ」
「胸などどうでもいいぐらい、顔が物凄い好みじゃけんのぉ!」
胸なんてどうでもいい? 顔が好み? ああ。そうか。間違いない。男子の制服着ているのに僕を『女』だと思ってるんだこの筋肉達磨。これはアレだよね。別にブチのめしてもいいよね。だって人の尊厳踏み躙っているんだからある意味で正当防衛だよね。
チラリとみんなの方を見ると、キャップと大和君、岳人君、卓也君が額に手を当てて大きな溜息を吐き、モモ先輩と京ちゃんと一子ちゃんが憐みの笑みを浮かべ、クリスさんとまゆだけが不思議そうに首を傾げている。
「よし、やるかヒロ」
「そうだねジン兄」
掛けられた声に、持っていた荷物をまゆに手渡して預かってもらい1歩前に出る。アイコンタクトだけでどっちの相手をするのかを相談する。
するまでもないけどジン兄が筋肉達磨兄、僕が筋肉達磨弟の相手をすると速攻で決まった。
まず僕が先に前に出る。筋肉達磨弟が筋肉達磨兄の前に立っているから必然的に僕が先に戦う、いや叩きのめす事になる。
自分がこれからどうなるかも分かっていない筋肉達磨弟は、より一層卑しい笑みを浮かべて僕を見ている。
「素直に進み出るとはなかなか可愛い――ガフッ!?」
言葉は最後まで続かなかった。
僕は音もなく筋肉達磨弟の懐に入ると、言葉を遮るように左拳を鳩尾にめり込ませる。その時点で呼吸困難に陥ってるのは感じ取れたが、この程度で終わらせる気はさらさらない。
この筋肉達磨弟は人の尊厳、いや僕の男としての尊厳を踏み躙ったんだ。この程度で許せるわけがない。
呼気をすぼめ気を練り、足、足首、膝、腰、肩、肘、手首の順に練り上げた気を通しながら捻じりを加え、左脚を強く踏み込むと同時に螺旋に廻らせた力を一気に左拳から解放する。
【師走・
10メートル近く吹っ飛んでいった筋肉達磨弟はピクリとも動かなくなった。
それを見て一応はスッキリしたから溜飲は下げる。
本当なら【睦月・
あ、まゆに借りればよかったんだ。頭に血が上っていて気が付かなかった。やっぱり怒りで我を忘れるといい事ないね。
吹っ飛んでいった筋肉達磨弟を驚愕の表情で見ている筋肉達磨兄を無視して、僕はきびすを返し後ろに下がる。
交代するように前に出たジン兄は、未だに呆然としている筋肉達磨兄に呆れた声で言葉を掛けた。
「なにボケっと突っ立っているんですか仁王兄弟のお兄さん」
場違いなほど丁寧で穏やかな声音が逆に恐怖を呼び起こす。
声を掛けられた筋肉達磨兄も同じように感じたんだろう、ビクリと体を震わせると物凄い冷や汗を流しながら振り返った。その視界に映ったのは恐らく満面の笑みを浮かべたジン兄の姿だろう。
僕たちからは背中しか見えないけど、ジン兄の纏う雰囲気から有無を言わさない時の笑顔を浮かべているんだろうと見なくても分かった。
モモ先輩ですら恐怖を感じる笑顔だ。筋肉達磨兄の心境は想像するに容易い。
「さて、貴方はさっきなんと仰いました? 俺の聞き間違いでなければ、モモを嫁にすると言いましたよね?」
「あ、いや、その」
筋肉達磨兄は既にしどろもどろでまともに会話すらできない状態だ。恐怖で身が竦みまともに思考が働かないんだろうけど、誰も責めはしない。
あのジン兄を見て冷静でいろという方が難しい。だって見慣れていないまゆとクリスさんは冷や汗を流している。といっても見慣れている僕たちも余り近寄りたくないけどね。
「残念ですけどモモは俺の彼女なんですよね」
「そ、そそ、そうなんですか」
あくまでもジン兄の口調は丁寧で穏やかだ。可哀想なくらい怯えている筋肉達磨兄の方が場違いに見える。
「さて仁王兄弟のお兄さん。貴方はこんな
「は?」
「『人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ』」
言い終わりジン兄が動いたと思った瞬間、筋肉達磨兄はまるで糸の途切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちた。
全く見えなかった。何が起きたのか全然分からなかった。
動いたと思ったのも気配が一瞬ブレたのを感じ取っただけで、視界の中のジン兄は動いた風には見えなかった。
周りのみんなを見てもモモ先輩以外は呆然としている。たぶん僕と同じで何が起きたのか全く見えなかったんだろう。
「相変わらず凄いなジン。目を凝らして見ても残像しか見えなかったぞ」
自分のために怒ってくれたのが嬉しかったんだろう、モモ先輩はジン兄の腕に抱きつきながら笑顔で感嘆の声を上げた。
やっぱりモモ先輩は見えていた。でもそのモモ先輩ですら残像しか見えなかったって……いったいどんな動きをしたんだろうかジン兄は?
「しかし本当に凄いな。ジン兄殿もそうだがタカ、お前も強いんだな」
僕に向かって感心した声で話しかけて来るクリスさんだけど、そのツッコミどころ満載の呼び名は何でしょうか。
「あの、クリスさん? その『じんにいどの』とはいったい何ですか?」
さすがのまゆも我慢できなかったらしく僕と同じ疑問を口にする。それに対してクリスさんは不思議そうな表情で言葉を返してきた。
「なにと言われても、みんなにそう呼べと言われたし、みんなもジン兄と呼んでいるから私もそう呼んでいるだけの事。何かおかしいのか?」
「それをジン兄に向かって言ったの?」
「言ったが苦笑を浮かべるだけで何を仰らなかったぞ」
いやクリスさん。それは苦笑じゃなくてたぶん泣きたかったんだと思うよ。でも本当に可哀想だねジン兄は。ついに入ったばかりの留学生にまで『兄』呼ばわり。
「まゆ、まゆはちゃんと先輩って呼んであげてね?」
「? 分かりました。『ジン先輩』と呼びますね」
「オラはみんなと同じで『ジン兄』って呼ぶぜ」
不思議そうに首を傾げたが素直に頷くまゆ。だけど松風で追い打ち掛ける気のようだ。
それでも少しでもいいからジン兄の救いになればいいかな、と思いながら僕は先を行くみんなを追って橋を渡り学園へと向かうのだった。
あとがき~!
「第61話終了。あとがき座談会、司会の春夏秋冬 廻です。今回のお相手は——」
「久し振りだな、川神百代だぞ」
「おおう、21話振り。51話あとがきでは使いもにならなくなってたな」
「うるさいぞ、それよりお前、今回は大和と葵の勝負じゃなかったのか」
「はっはっは、前回あとがきの予告を見事に裏切ってしまって申し訳ありませんでした読者の皆さま」<(_ _)><(_ _)><(_ _)>
「で? なんでこうなった」
「はい、今回のお話なんですが、本当に大和と冬馬の勝負をやるつもりだったんですけど、ちょっと原作を確認プレイしていたら挑戦者仁王兄弟のシーンって、神と緋鷺刀でやれるなと思ったのが原因です」
「ああ、なるほど。嫁探しに来た奴らだから私の彼氏であるジンは間違いなくキレる」
「それと緋鷺刀を女に間違えれば緋鷺刀もキレる」
「ちょうど2対2になるから書いてしまえと勢いで」
「その通り!」
「威張れる事じゃないだろ! 相変わらず計画性ないなお前!」
「いやホントすみません。あとちょっとずつなんですけど、緋鷺刀と由紀江の今後の展開のための種蒔きをしなきゃいけないので……」
「それが冒頭での凛奈さんとの会話シーンか?」
「その通りです」
「蒔いたのはいいけど腐らせるなよ?」
「肝に銘じておきたいと思っている所存でございます。さて、次こそ予告通り大和と冬馬の勝負になる! ……はずです……たぶん」
「なんでそんなに自信なさ気に言うんだ?」