真剣に私と貴方で恋をしよう!!   作:春夏秋冬 廻

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第62話投稿。


第62話 軍師と策士、大和VS冬馬

「ハァイエブリバディ。携帯の待ち受けを自分の写真にしてるナルシストはいないかな? 今週もラジオ番組LOVEかわかみがはじまるよー」

 

教室のスピーカーから流れて来る、毎週火曜昼休み恒例の番組に耳を傾けながら昼食を取る。

 

俺も周りはいつも通りのキャップ、ガクト、モロ。今日はゲンさんが昼休みになるとすぐに教室を出ていったから兄弟も机をくっつけている。

クリスは今日もワン子と京の3人で食べている。なんだかんだいがみ合っているがワン子とは仲良くしていると思う。

 

他愛ない話をしながらラジオを聴く。

 

「パーソナリティーは2年でスキンヘッドの井上準」

 

「人生、純情一途桜花爛漫。3年の川神百代だ」

 

「なんか口上がおかしくないっすか? まあいいや、最近さらに温かくなってきましたね」

 

「そうだな、今の私は人生で最高の春を迎えているぞ」

 

何やら姉さんがおかしい。

このラジオは姉さんの暴君ぶりをいかんなく発揮するものなのに、何だろうか今の姉さんは無邪気に遊ぶ子供のような口調になっている。

 

兄弟には昼休みなってすぐに説明はしておいたから驚いてはいないが、箸を止めて興味深そうにスピーカーに視線を向けて聞き入っている。

 

「今日は気分がいいから私が1枚目のメールを読んでやる。『小さい子が好きな準さん病院に行ってください』。はははは、お前リスナーからも突っ込まれてるな」

 

「病院か……小児科なら喜んで。あで!」

 

「次不当な発言したら骨外すぞ」

 

「あててて……ん? ちょっと待って下さいね。どうやら今日になって大量に送られてきた質問があるようです」

 

その言葉と共にスピーカーから何やら紙を纏めているような音がもれる。

 

何だろう、何故か面白そうな事が起きそうで面倒くさい事が起きそうな、でも総合的に考える厄介事になりそうな予感がしてならない。

同じ事を感じたのか兄弟も微妙な表情をしている。

 

「代表してこの子でいいかな。では読み上げますよー。『モモ先輩に質問です。昨日の下校時と今日の登校時、男の人と腕を組んでいたましたけどあれは誰ですか』。同じような質問が200通以上来ております」

 

「おお、先週お前らが否定していた噂の私の彼氏だ。名前は暁神。覚えておけよ~」

 

学園全体放送の番組で名前を呼ばれた途端、兄弟は頭を抱えて机に突っ伏した。

 

その直後――

 

  ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!

 

校舎全体を揺るがすような叫び声がそこら中から沸き上がった。

 

昨日のクリスとの決闘、今日のラジオでの姉さんの暴露、編入わずか2日で学園最大級の有名人になった兄弟。

クリス以外の風間ファミリーのメンバーが突っ伏した兄弟の背中を慰めるように叩いた。形だけの同情は示してやるよ兄弟。だがこれが姉さんの彼氏としての運命だと思ってくれ。

 

「暁神って言うと、昨日2-Fに編入してきた奴ですよね」

 

「何だハゲ、知ってたのか」

 

「ええまあ、ちょっとは。そうですか……モモ先輩の彼氏、本当にいたんですね。そいつに物凄く同情しますよ」

 

「おいハゲ、どういう意味だ?」

 

「どういう意味って、モモ先輩の彼氏なんてきっと毎日が拷問――ウッギャァァ!」

 

バイオレンスなラジオだったが、今は誰も聞いていない。

すでに教室前の廊下に人だかりができ始めている。きっとみんな兄弟の事を見に来たんだろう。だが兄弟は無視を決め込んで机に突っ伏したままだ。

 

教室まで入ってくるようなツワモノな生徒はいないみたいだから、俺たちもとりあえず様子見でいよう。必要ないかもしれないけど。それから一応兄弟を守るように周りを囲む事も忘れない。

 

「おい大和! 昨日のS組の女子がお前を呼んでるぞ」

 

そんな少し騒がしい昼休みを過ごしていると、廊下の人だかりを掻き分けてヨンパチが俺に声を掛けてきた。

 

「は? 昨日の女子ってあの賭場にいたアレか? 今度は何で勝負だよ」

 

「賭場じゃねえよ、屋上に来いってさ」

 

若干面倒くさかったから適当に答えた俺に、ヨンパチは天井を指さして言う。

 

屋上という事は賭け事ではないだろう。だがあんな世間知らずのお子様お嬢様がいったいどんな勝負を吹っ掛けて来るか少しだけ興味がわいた。

それに行かないでチキン呼ばわりされるのも嫌だ。

 

「ワン子、京。ついて来てくれる?」

 

「はいご主人様。あなたの安全バッチリガード」

 

「バトルになりそうならアタシにお任せ」

 

呼び掛けに答えて立ち上がるワン子と京。それに続いて兄弟も立ち上がる。

 

「俺も行くよ。半分は当事者だからな。場合によっては俺が引き受ける」

 

兄弟が来てくれるなら百人力だ。でも恐らくついて来る理由の9割はこの状況から抜け出したいからだろう。でなければワン子も京もついて来るのに、兄弟が同行する理由ははっきり言ってない。

みんなそれが分かっているから特に突っ込まず兄弟の言葉を受け入れたのだった。

 

 

「よく来たのじゃ! その度胸は褒めてやる」

 

屋上に足を踏み入れると、そこには昨日泣いて逃げていった着物姿の女がふんぞり返って立っていた。

その虚栄に近い自信はいったいどこから来るんだろうね。

 

「それで、用件は何? まさか告白?」

 

「なんで高貴な此方が下賤なお前に告白をしないといかんのじゃ!」

 

おお、物凄い勢いで怒鳴り返してきた。昨日の泣いた事はすっぱり忘れているようだ。

 

「今日は本格的に“決闘”を申し込むのじゃ!」

 

「余り乗り気がしないね」

 

「闘うのは此方ではない。葵君、頼んだぞ。こ奴をぶっ倒すのじゃ!」

 

こっちの言葉を無視してさらに他力本願かよ。本格的にダメなお嬢様の典型だなこの女。だけど今はそんな事はどうでもいい。

 

葵冬馬。常に学年成績トップの男。

 

我がままお嬢様の後ろにいた葵は、何やら優しく話しかけると衆人観衆の前にも関わらず我がままお嬢様を抱き締めた。そしてさらにその耳元で言葉を掛けている。

 

「何あの生物。腹が立つ」

 

どうやらプレイボーイという噂は間違いないようだ。京はああいったチャライ態度を取る男を物凄く嫌っている。

 

抱き締め終えた後も優しく笑みを浮かべた葵は、振り返りこっちに歩いて来る。ほんの一瞬だったが視線を俺の斜め後ろにいた兄弟に向けたが、何もなかったように戻し胡散臭い笑みを浮かべて目の前で止まった。

 

「やぁ、直江君。こうして話すのは初めてですね」

 

「そうDEATHね」

 

「2-Sの葵冬馬と申します。改めてよろしく」

 

「何度か賭場で顔は見てるね。直江大和、ヨロシク」

 

お互いに挨拶を終えると周囲が騒がしくなる。特に女子たちが色めき立っている。確かこいつキャップやゲンさんと並んで『イケメン四天王(エレガンテ・クアットロ)』なんて呼ばれているんだっけ。

 

「私は女性が大好きですが、男性も好きですから」

 

「聞いてないし知りたくもないわそんな事!」

 

穏やかに笑っているが物凄く不気味だぞこいつ。だいたいの奴はひと言ふた言話しをすればどんな奴か予測できるのだが、まったく本性が掴めない。

 

「直江君には恨みはないですがこれも運命。昨日彼女が負けた倍の金額で私と勝負して下さい」

 

「クラスメイトの仇討ちで決闘というわけね。何で戦う? 肉弾戦なら代役が行くぞ」

 

俺の言葉に脇にいたワン子と京が1歩前に出る。

 

「大和の剣! 川神一子! 大和の敵を打ち払う!」

 

「大和の鞘! 椎名京! 大和の剣を受け入れる!」

 

アホな事をいう京の頭をはたく。何だそれは。普通は盾だろ。

京の言葉に隣にいたワン子は苦笑い、後ろにいる兄弟は呆れたような溜息を吐く。そんな俺たちのやり取りを胡散臭くない穏やかな笑みで見ていた葵だったが、すぐに元に戻り声を掛けてきた。

 

「私自身、頭脳労働派ですから」

 

「そこらへんは話が合いそうだな」

 

「話が合うと言われると少しときめきますね」

 

「大和、目の前の男から変態の匂いがする」

 

どうやら同種の匂いを嗅ぎ取ったようだ。だが京の言葉に何も返さない。それは俺がお前を変態だと思っているし、言葉を返して変に突っ込まれたらややこしいからだ。

 

そんな事を考えていると昼休み終了のチャイムが鳴った。

 

「昼休みが終わったな。放課後またここで。きちんと決着をつけよう」

 

「はい喜んで。受けていただきありがとうございます。しかし時刻と場所を決める……まるでデートの約束みたいですね」

 

既に精神的な攻撃が始まっているのだろうか。的確に怖気の来る言葉で胸を抉ってくる。顔が歪みそうになるのを懸命に堪える。

 

「愛を込めて『大和さん』とお呼びしていいですか?」

 

「やめてくれ、せめて直江さんで」

 

本当に本性が掴めない男だった。

 

 

葵冬馬。2-Sに所属。

川神市最大の規模を誇る葵紋病院院長の1人息子。

成績は学年で常に1位。全国模試トップの常連で常に10位以内。

 

以上の情報から学園でも指折りの秀才と言っていいだろう。しかも彼は賭場で勝ち続けているし、1度は勝負をしてみたかった。

 

「うん。イケメンで優しいし、学校で3本の指には確実に入るモテモテ君だよ。イケメンだし」

 

「イケメンって単語、2回出てきたよね今」

 

小笠原さんからの情報にモロが呆れたように呟いた。確かに出てきたけど今はどんな情報でもいいから知りたかった。

後ろでヨンパチやガクトがなんか言っているが今は無視。

 

「小笠原さんも葵冬馬だったら付き合ってもOK?」

 

「超OKだよ。あんな物件そうそうないし」

 

今の女子高生は男を物件扱いするんだな。少し勉強になった。だがその言葉を聞いて黙っていない奴がいる。スグルだ。

 

「ふん。男を物件扱いとは……これだから立体女は困る。一次元違うだけで堪ったもんじゃない。レディ・ビッチが!」

 

「キモい欠陥住宅がなんか言ってるんですけど」

 

遠距離での嫌味の言い合い。俺を挟んでのやり取りでなければいいんだけど勘弁してほしい。時間が無いんだ今は。

 

「おいおい。言い争いは――」

 

「クリス、大丈夫だから」

 

余計にややこしくなる前にクリスの参戦を阻止しておく。

その後も大した程ではなかったが、小笠原さんからの情報で何となく人物像が見えてきた。

 

はっきり言えば俺と同じタイプだ。ならば俺が俺を倒す計画で策を練ればまず負ける事はない。学年1の秀才も恐るるに足らずだ。

 

友達にも声を掛けるという小笠原さんにお礼を言って作戦のための行動を開始する。

 

「あと5分で次の授業だぞ」

 

「5分で結構いけるさ」

 

声を掛けて来る兄弟に答えながら、まず誰に声を掛けるべきか考えながら俺は教室を出たのだった。

 

  side out

 

 

  side 椎名京

 

「ジン兄は動かないの?」

 

教室を出ていく大和を一緒になって見送るジン兄に声を掛ける。

 

たぶんあの葵冬馬は大和と同じタイプの人間だから、勝負に勝つための仕込みをするにしても被るところが出て来ると思う。そうなると条件のいい方が仕込みに有利。

今回、大和はたぶんお金を使う。そう考えると病院の院長の1人息子のあっちの方が有利になる可能性が高い。

 

でもジン兄が動けば最悪互角にする事は出来るかもしれない。私はそんな期待を込めてジン兄に言葉を掛けたのだ。

 

「いや、俺は何もしない」

 

「なんで?」

 

「俺はまだ編入して2日目だぞ? 話が出来るような顔が無いし、今はしたくない」

 

げんなりして言うジン兄を見て、そう言えばモモ先輩の爆弾発言があったのを思い出す。今も廊下は人だかりが出来てひと目ジン兄を見ようと生徒がごった返している。

 

「それに、いい加減ヤマもフォローされるのは嫌だろ。あいつにもちゃんと誇りがあるんだ。それを傷つけるのは俺もしたくない」

 

そう言ってジン兄は安心させるような笑顔を浮かべて、私の頭を撫でたのだった。

 

  side out

 

 

  side 直江大和

 

放課後。決闘のため再度葵冬馬と向かい合う。

 

小笠原さんが言い触らしたのか野次馬が多い。だいたいがF組とS組の生徒たちだが、他のクラスや他学年の生徒も集まっている。

ただちょっと気に入らないのは葵の後ろは女子で固められているのに、俺の後ろには仲間たちがいるが殆ど男しかないな。

 

なんだこの構図……まるでモテる男に嫉妬する男がひがんでるみたいだ。

 

「賑やかな勝負になりそうですね……では決闘です」

 

「受けたぜ」

 

地面に置いた葵のワッペンに、俺が自分のワッペンを重ねるように置く。

決闘の成立に声援が湧き上がる。ただし俺の声援は野郎の嫉妬剥き出しの応援で、葵の声援は女子の期待の籠った応援。なんか早くも負けた気分だ。

この学校でこんな露骨な取り巻きがいるのも、姉さんとこいつぐらいなものだろう。後々は兄弟とヒロにも出来そうだが。

 

「頭で闘うとして、何で決闘しましょうか? 一応、新品のトランプかサイコロは持って来ましたが……」

 

「ギャラリーには分かりにくい。観客が多いんだから分かり易くてみんなで楽しめる勝負がいいだろ」

 

相手が用意したものを使っての勝負なんて負けるに決まっている。準備いいように言っているがあからさまに怪しすぎる。

 

周囲を見回しながら何か使えるかを探す。といってもこれも仕込みだから大した意味はない。だが自然に決めたように見せなければならないから、無駄な事だがとても大事な動きだ。

その自然な動きのままグランドに視線を落とす。放課後という事で陸上部が練習しているのを指さしながら葵に提案する。

 

「今、陸上部がタイムを計ってるだろ。あの最後の組に走る4人の中で、誰が1着になるか賭けないか? ギャンブル好きなら問題ないと思うけど」

 

「なるほど。簡易的な競馬ですね……面白そうですが、グラウンドには他にも人がいます。陸上部以外でも問題ないのでは?」

 

既に駆け引きは始まっている。主導権を取られるわけにはいかない。

 

「1番盛り上がりそうだし、何より1番結果が早く着く。他に何か提案があればどうぞ」

 

「……直江さんの言う通りですね。構いません、それでいきましょう」

 

競技は決まった。適当に決まった事に慌てている生徒もいるけど、競馬というのは運で決まるものじゃない。出走直前の馬の状態を見るように、賭けの対象となった走者4人のテンションなどを観察すれば、正解率を上げる事が出来る。

しかも4人が走るのは次の次、しばらく観察する事も出来る。

 

「あの4人、B組の人たちだね。誰が速いかなんてもとから4人のタイムを知っていれば有利になるよね」

 

「ああいうの、タイム似たもん同士が走らねーか?」

 

モロとキャップが後ろで走る人間の組み合わせについて話しているが、実際俺にしてみればそんなもの関係ない。

 

「私は1番手前のイガクリ頭の人に掛けます」

 

「俺は1番奥の髪束ねてるロンゲを選ぶ」

 

上手いこと分かれた形になったがこれにはホッとする。同じ奴を選ぶとせっかくの仕込みが駄目になってしまうからな。

 

賭け対象の計測レースが始まった。

俺が賭けたロンゲの奴が1番前を走っている。だがそれも当たり前だ。今走っているあいつらは買収に露骨に弱いから出来レースで頼む、とさっきの休み時間に工作済み。打ち合わせでロンゲが勝つと決まっている。

 

葵ならこの競馬じみた決闘に乗ってくれると思っていた。

 

「俺の勝ちだな、葵冬馬」

 

確信をもった言葉に、葵は口端を歪めた。

 

「――それは、まだ分かりませんよ」

 

「おい、あのロンゲ急に速度落ちたぞ」

 

「ちょっ、イガグリ頭に抜かれちゃったよ!」

 

何!?

 

ガクトとモロの声に慌ててグランドを見ると、葵の賭けたイガグリ頭が1番にゴールした瞬間だった。

 

「俺が負けた……」

 

いやでも待て、打ち合わせは完璧だったはずだ。それなりの金も積んだしあいつらも納得したはずだ。だけどそれでも、ああいう欲で動く奴が俺を裏切ったって事は……

 

「危ない危ない、ひやっとしましたよ」

 

まるで勝ちを拾ったかのような少し嬉しそうな声を上げる葵。しれっと何ともないように振る舞っているけどこい……

 

「私の勝ちですね」

 

そう言った葵が俺に顔を近付けて耳元で囁く。

 

「仕込みに行ったら先手を打たれていたので驚きました。おかげで当初の予定より出費がかさみましたよ。直江さんより好条件を出さないといけませんからね」

 

やはりさらに上の欲に流されたって事か。だがこいつ、単なる金持ちの坊ちゃんじゃない。仕込みをしているくせに陸上勝負に待ったを掛け俺の反応を見て楽しんでやがった。いい性格をしている。

 

「面白い勝負でした」

 

「今回は見事にやられたよ」

 

スッと手を上げると、グラウンドで柔軟をしている2人組や、走り高跳びを続けていた男、それを見ていたテニス部の男も合図に気付き、がっかりな顔をした。

自分たちが賭けの対象にならなかったので報酬を貰えないと分かったのだ。

 

「ふふふ」

 

それを見ていた葵がいきなり笑い出した。どうやら俺が陸上部以外にも仕込みをしていた事に気付いたようだ。

元より大がかりな賭けにするつもりだった俺と違い、葵はトランプややサイコロを用意したせいで仕込みをする時間が短かったはず。それでも1番最初に仕込んだのが俺と同じ陸上の計測出来レース。

 

「私と貴方は近しい考えを持っていますね、直江さん」

 

「……そうだな、葵冬馬」

 

この反応、やはりトランプとサイコロにも仕掛けがあったな。

 

「いつかリベンジさせてもらうぜ」

 

「楽しみです」

 

次に勝負する事になっとき、必ずやり返すと宣言した俺を、葵は楽しそうな、そして嬉しそうな笑みを浮かべて見る。

 

お互い同族嫌悪なんて感情は抱かない。

全く自分と同じ思考を持つ存在。言い換えれば鏡合わせの自分自身だ。

 

さっきの休み時間に感じたちょっとした高揚感。自分が自分の策を持って自分を倒す、それがまさに現実になろうとしている事に、俺はえもいえない興奮の覚えるのだった。




あとがき〜!

「第62話終了。あとがき座談会、司会の春夏秋冬 廻です。今回のお相手は——」

「皆さんこんにちは、葵冬馬です」

「今回の勝者です。久し振りだな」

「ええ、本当に久し振りです。この間は準がお世話になりましたね」

「えいえい。さて今回のお話ですが原作通りに君の勝利に終わったわけですが」

「何か含みのある言い方ですね」

「まあね、本当は神が動いて引き分け、あるいは大和の勝ちにしようかと思ったんだけど、さすがにそこまでやっちゃうと大和の成長にならないから原作のままにしたんだよ」

「私は助かったと考えていいのでしょうか?」

「どうだろうね」

「それで、私と神君の再会はいつ頃に? ユキと準はすでに挨拶を済ませていますからね」

「とりあえず次回で」

「しかし、言ってしまっていいのか分かりませんが、私とユキが原作と違う心境ですから完全に『竜舌蘭ルート』がない状態ですけど何か考えが?」

「一応はね」

「それは?」

「さすがにそれは言えないね。でも少しずつ物語に絡ませていこうと思ってる。次回にも少しだけど登場させるつもり。あくまでもつもり」

「登場しないかもしれないって事ですね」

「逃げ道作っとかなきゃね」

「小賢しいだけですよそれは」

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