七月二十六日
一日課題と格闘。ただし進んだ量は全体の約五%という少なさ。
理由を挙げるとしたら唯一つ。
俺が書くこと自体をめんどくさがるから。
一問解いては寝転がり、一問解いては寝転がりと繰り返すから一ページ終えるのに一時間、下手したら二時間の時もあった。
そのせいでただでさえ周りより格段に課題が多いのにほとんど進まなかったのだ。
誰かに代筆を頼むって手段もあるのだが、一度それをやったところ小萌先生に呼ばれ「代筆はしちゃだめだめなのですよー。草木ちゃんだけ特別に課題増量です♪」と言われそのときは課題の量を二倍にされた。もし夏休みと言う長期休暇に出される大量の課題を二倍にされたら俺は死んでしまう。
くそ、誰か、俺をこの苦しみから解放してくれ…。
そう思っても誰も解放してくれないが。
どうでもいい話だが最近冷蔵庫の突発的発光に慣れた。
七月二十七日
俺の部屋で俺と青髪は真剣な顔であることをしていた。
「…」
「…」
青髪はじっくり、俺の持つ二枚のカードのうち一枚を取ろうとする。
「…!」
俺の顔が驚愕に染まるのを見てそれが目的のカードだと理解し、青髪はカードを抜き取る。
「そりゃあ!!」
「あぁ!?俺のハートの2が!!」
「これでビリはクッキーだにゃあ」
「クッキーほんまこういう表情に出したらあかんゲームに弱いなぁ」
「ダウトとかやったら一瞬でみんなにダウトって言われるぜい」
「うるせ!ほっとけ!」
俺、土御門、青髪は昼飯を賭けたばば抜きをしていたんだが、土御門が一番最初にあがり、そして青髪が二番目にあがって俺がビリになってしまった。確か今日は牛丼大盛りだったから三人で千円超えは確実だな…、はぁ。大富豪ならまだ勝てるんだがなぁ。
「そういえばクッキー、上やん暫く見かけないんやけどどこ行ったか知ってる?」
トランプを片付けながら青髪は聞いてくるが、これにどう答えればいいだろうか?
もしここで小萌先生の所にシスターさんと寝泊りしてるなんて正直にのたまったらこいつのことだ、クラスの男子全員に上やんが小萌先生にフラグ建築しやがったがっでむ!的な事をメールで送り、上条死亡のお知らせ…なんて未来があるかもしれない。適当に思っただけなのになぜかそれが現実に起こりうることで怖かった。
なので俺は適当な返事を返す。
「さぁ?どこかのシスターさんにフラグ建てたりしてるんじゃね?」
しまった、妙に具体的になってしまった。
「な!?上やん!!また一人だけおいしい思いしとるんか!?上やん属性羨ましすぎるやろ!!」
「青髪、ただのジョークだから暴れないでくれ!ここ俺の部屋だから!あと土御門、俺の本棚をメイド物で染めるな!」
そこらへんの物を蹴飛ばしそうな勢いで暴れる青髪を抑えつつ本棚で怪しい動きを見せる土御門を牽制する。
「ちっ」
「だってクッキーは悔しくないん!?上やんばっかりいい思いして…はっ!?まさかクッキーは既に彼女とかいたり!?」
「しねぇよ!!」
もしいたらお前らと遊んだりしねぇよ!!…多分!!
「にゃー、それでも上やんのフラグ属性を羨ましく思わないなんて、クッキーは本当に男なのかにゃー?」
本棚に突っ込んであったメイド物の本を紙袋に回収しながら土御門は俺に言う。
「は?誰がどこからどうみても完全無欠の日本男児だろ」
「うーん、僕の勘から言わせてもらいますと、クッキーは女装がすごく似合いそ」
「なにか…言ったか青髪?」
青髪がなにかおかしな事を言っていた気がしたので殺気を込めて青髪に聞く。
「ちょ、冗談やてクッキー!!やからそんな殺気ださんといて!!」
「ならいい」
「にゃー、なんでそんなに女装が嫌なんだにゃー?」
「土御門、お前は地獄の淵を覗きたいか?」
「いえ結構です」
あまりの殺気の強さに土御門も真面目な返答をする。
「もうそろそろ昼やし、牛丼屋行こか」
まるで話を逸らすかのように青髪は時計を見ながら言ってきた。
「そうだにゃー。俺もそろそろお腹がすいたぜい」
土御門もそれに便乗し、腹に手を当てながら言う。
「それじゃ、牛丼屋行きますか」
財布にお金が入ってることを確認して、俺らは牛丼屋に向かった。
「あいつら!なにが副菜もおごりの一部だ!まさかの牛丼屋で二千越えという驚きの出費だよ!!」
「なにをそんなに荒れているのですか?とミサカは笑いを堪えながらあえて理由を聞いてみます」
「いつの間に後ろに!?あと理由がわかってるのに聞くな!!」
牛丼屋で土御門達と別れ、愚痴を零しつつ歩いているといつの間にかミサカが後ろにいた。
「貴方が牛丼屋を出た辺りからずっといましたが、とミサカは貴方の反応を楽しみながら尾行していたことを悪びれもせず言います」
「悪びれてくれ!!」
「ところで、貴方は今暇ですか?とミサカは一応貴方の意思を尊重して質問します」
「一応なんだ…。暇っちゃ暇だが、それが?」
あ、上条達の様子が気になるし暇じゃねぇな。
「やっぱり暇じゃな」
「それでは今から公園に行きましょう、とミサカは貴方の言い訳を聞かずに貴方の手を引っ張ります」
「ちょ、暇じゃないんだってばー!!」
そう言ってもミサカが止まるわけなく、俺は公園まで連行された。
「で、カップル限定のキーホルダーが欲しくて彼氏の代わりに俺を連れてきた、と?」
俺とミサカはクレープを持って木の下のベンチで座っていた。ミサカはクレープを膝の上に置き、手のひらに猫のキーホルダーを持ってじっとそれを見ていた。
「はい、とミサカは貴方に適当に返事をしつつキーホルダーに夢中になります」
なんでも路上クレープ屋で期間限定先着五十名に猫のキーホルダーがもらえるのだが、もらえる条件がカップルで購入することで、俺は彼氏役として連れてこられたらしい。
「でもなんで俺が奢ることに…」
ここのクレープ屋、原材料が高いのか、クレープ一個の値段が千二百円と言う学生にとって極悪な値段だった。そのため俺の財布の中身は野口さん一人しか生存していなかった。
「細かいことは気にしない、とミサカは男ならそんくらいの甲斐性を見せろと暗に言います」
もう嫌だこの娘…。
「もうお前の用事は済んだし、俺帰っていい?」
「はい、構いませんよ、とミサカはキーホルダーをどこに付けるか悩みながら貴方に返事します」
本当に用事はそれだけだったのかよ!!次会ったら絶対拒否るからな!!絶対だからな!!
俺はそう思いながらベンチを立ち、公園の出口に向かって走っていった。
目の前が少し霞んで見えたがそれはきっと汗だ!涙ではない!!
「あ、草木。どうしたのそんな悲しそうな顔して?」
「フレンダぁぁぁ!!ちょっと俺の愚痴聞いてくれよ!!」
「結局、何があったの?」
「かくかくしかじかで…」
この後草木の愚痴は三時間に渡って続いたとか。