十四話 共犯
夏休みから一週間以上が経過した八月一日。俺、草木陽太は公園のベンチ座って泣きたい思いを必死に堪えて空に浮かぶ雲の数を数えていた。
なんで泣きたい思いをしているかというと、目の前にある一見普通の自販機に原因がある。
俺は外に気分転換に出たんだ。それで暫く暑い中歩いていると体温を下げるために汗が出てきて体の水分が減って、水分を補給するために自販機にお金を入れたんだ。水分を補給するためと言ったが俺の財布の中には札しか入ってなかったため両替の意図もあった。
しかし、この自販機、お金を飲み込んだくせに商品である飲み物を出さない腐った商人魂を持った自販機だったのだ。
普段の俺ならしかたねぇなで済ますのだが、入れた額が額なために引き下がるわけにもいかず、自販機の前にあるベンチに座って自販機とにらめっこしていた。
千円なら我慢できる。だがな、俺の入れた額はその十倍、一万円なんだ。引き下がるわけにはいくはずねぇだろ!?
ベンチに座って早十分。俺はある決意をする。
「よし、この自販機ぶっ壊そう」
大丈夫だ、ばれなきゃ犯罪じゃないとどこかのだれかが言ってたんだ。大いに賛同しようではないか。都合のいいことに、周りには人はいない。いるかもわからん神もやれと言ってる!ならやるしかないじゃないか!!あの一万円は俺の食費でもあるんだ!!自販機一台で人一人が救われるんだ!!誰も彼もが許してくれるに決まってる!!その時偶々他のお金も出るかもしれないが些細な事だ!!
俺はよし、と小さく言い、ベンチから立ち上がり自販機に近づく。
初めての犯罪に少し冷や汗をかく。頭の中でどういう風に壊して証拠隠滅を図るかを綿密に計画する。
だからだろうか、近くに人がいたことには驚いて、
「草木ー、結局、そんな怖い顔してどうしたの?」
「うひゃお!!」
こんな変な声だすなんて。
だからフレンダ、そんなに頬を膨らませて笑うのを堪えるな!!当人にとって笑われるより笑うことを我慢されているのがわかる行為をされる方が結構恥ずかしいものなんだぞ!?
「結局、草木はこの自販機に飲み込まれたお金を取り返したい訳ね。証拠を残さず」
「そうだけど」
「なら私に任せて!」
そう言ってフレンダはどこから出したか分からない様々な道具で自販機の側面に色々と何かを施していく。
その行為を、その道具を、俺はなにかで見た事がある。本当に昔、ドラマか映画かアニメか、現実では見る事が叶わないものを映像化するなにかで見た事が。
フレンダはまたまたどこから出したか分からないテープのようなもので自販機の側面からピーッと、自販機から十メートル以上離れた場所まで引いていた。
「それじゃ、着火!!」
フレンダが離れた所からテープのようなものに火をつけると、それはチチチと小さな音と火花を立てながら自販機に向かっていき、自販機の側面にまで辿り着くと地響きかと思うほどの揺れを起こすほどの爆発が起きた。
俺は爆発した後に、ああ、映画で見た事ある爆破ツールか、と煩い警報とあまりの出来事にぼーっとしている頭で思っていた。
「草木ー、結局、早く盗らないと風紀委員か警備員が来ちゃうよ?」
「俺証拠も残さずにって言ったよなフレンダ!?」
「結局、そんなの無理に決まってる訳よ。ほら、ぱぱっと中のお金盗ってファミレスにでも行こ。もうそろそろお昼だし」
「なんという明るさ!!」
俺は飲み込まれた一万円しか取らなかったが、フレンダは自販機にあったお金をほとんど盗っていた。
あれ?俺もお金を盗ろうと思ってたが実行には移してない。しかしこの場合共犯になるのか?
いやいやなるはずないよね偶々知らない人が自販機壊してお金を盗っているのを目撃した俺は飲み込まれた一万円を取り返しただけだしならないよねなるはずないよね。
「結局、これって共犯だよね?」
そんな笑顔で俺に言うなぁぁぁぁ!!
俺は我慢していた涙を流しながらフレンダの手を引っ張りファミレスに向かった。
今日の空は、雲がたった二つしかない、クソッタレなほど快晴だった。
「自販機が壊れてやがる…。これってもしかしてもしかすると飲み物盗り放だ」
「はぁ。またお前じゃん浜面」
「よ、黄泉川!?ちょ、待て早まるな!!これは俺じゃねぇ!!」
「はいはい、言い訳はいつもの場所で聞くじゃん」
「濡れ衣だぁぁぁぁぁ!!!」