あと内容がおかしな点があるかもと置物は先に忠告しておきます
一方通行の能力はレポートで一通り把握している。
運動量、熱量、電気量と、ありとあらゆるベクトルを自在に操る事ができる能力。
見る人の九割、下手したら十割が嘘だろと嘆くだろう。
この世にベクトル、向きが存在しない物なんて存在するわけがない。つまり一方通行は、拳銃だろうと機関銃だろうと戦車だろうと核兵器であろうと、それにベクトルさえ存在すれば無傷で生還できるということだ。確かに最強の名にふさわしい能力だ。
けど、そんな無敵のように見える一方通行の能力だが、俺はその能力を打ち破るための手段を二つほど知っている。
一つ目は俺の友達である上条の右手。あいつの右手には能力測定では測れない能力、幻想殺しという、それが異能の力であれば神の奇跡をも打ち消せるをキャッチコピーにしているものがあるのを知っている。神の奇跡はわからないが、実際にあいつが何度も能力を打ち消しているのを見た事がある。
しかし、今回の件に上条を巻き込むのは気が引けたため、俺はレポートを読んで思いついたもう一つの手段を使う事にした。
「おら、止まってっと死ンじまうぞ」
二十メートルほど離れた位置にいる一方通行がなにかを囁き、足元の石をコン、と。
小学生が帰りに石を蹴って遊ぶように、軽い感じで蹴る。
それは二十メートルという距離を一瞬で縮め、俺の顔面目掛けて飛んでくる。
「くっ…!」
顔を横に動かす事で何とか回避するが、一方通行はすでに次の攻撃に転じていた。
「はっはァ!これでも喰らっときな!」
一方通行は地面に張り巡らされたレールを足で踏みつける。
メキメキとレールは一方通行の足を起点に持ち上がり、一方通行はそれを俺の方に勢いよく飛ばす。
数にして十余り。俺は念動能力を使い五つの動きを止め、後から来るレールを受け止める。
「守ってばっかじゃ俺には届かねェぞ!」
レールの事ばかりに集中していると、上から一方通行が俺の前に飛び降り、足元にある小石を散弾のように俺に飛ばす。
「ぐ…あ…!!」
「逃がさねェよ」
一方通行は俺が被弾と同時に後ろにバックステップで逃げようとするのを読み、服の裾を掴み、積み上げられたコンテナに向かって俺を投げつける。
コンテナにぶつかり、衝撃で吐きそうになるのを堪える。
「そこに居たままでイイのかよォ?」
突然の上からの警告の声。
このままではやばいと自分の勘が告げる前にコンテナから離れるように動く。
積み上げられたコンテナは俺を押しつぶそうとするように崩れていく。いや、崩される。
ドゴォン!!と轟音が暗闇に響く。
間一髪コンテナの下敷きならずに済んだが、一方通行の姿が見えない。
相手には居場所がばれてるのにこちらは相手の場所が分からないという状況は最悪と言ってもいい。
いつ仕掛けられるかわからないし、いつ隙が出来るかがわかってしまうのだから。
俺はコンテナなどの遮蔽物が少ない場所に移動する。
移動し終えた後、体から力が抜けて地面に座り込んでしまう。
「げほっ!げほっ!」
「オイオイ、まさかこのぐれェで終わりなンてこたァねェよなァ?」
ゆっくりと、相手に恐怖を与えるように歩いてくる一方通行。
せめての抵抗に一方通行の近くのレール二、三個を能力で持ち上げぶつける。
「テメエの能力は見た所念動能力、強度は3ってとこかァ?よくもまァその程度で俺に挑みにきたもンだ」
それらは一方通行にぶつかると同時に見えない壁にぶつかったように別の方向に飛んでいった。
「はっ!男には、引いちゃいけねぇとことかあんだろ?俺にとっては今がそうだ」
「俺って自分の命が一番だしさァ、そういうの分かンねェンだわ」
さてと、と一方通行は俺に近づいてくる。俺と一方通行との距離は四メートルほど。
「乱造品以外と戦うってのは新鮮だったが」
残り三メートル。
「テメエも弱すぎて飽きちまったわ」
二メートル。
「だから」
一メートル。
「イイ加減楽にしてやるよ」
触るだけで相手を死に至らしめる事が出来る右手が、俺の頭を掴もうとする。
ま、そんなことさせる訳にはいかないんだけどさ。
俺は素早く膝立ちの状態になり、拳を引き、最大の力を振り絞り目の前にある一方通行の腹に叩き込む。
普通なら一方通行の皮膚表面、服表面に触れたと同時に拳のベクトルが逆向きになり、俺の手首はボキっと簡単に折れる所だ。しかし、俺の拳は深々と一方通行の腹に突き刺さり、一方通行は大きく吹っ飛ぶ。
「がはァ!?な、なンなンだよ今の!?俺の反射を通り抜けた!?」
一方通行が腹を押さえながら現状を把握しようとしているが、俺は立ち上がり、呆然と立っている一方通行に拳を叩き込んでいく。
レポートに書いてあった事だが、一方通行は普段から無意識に近い状態で能力を発動し、反射を常時しているようだ。その為スキルアウトに闇討ちをされても寝ている時に部屋に手榴弾を投げ込まれても無事らしい。
ならば、正体不明の攻撃でその反射の壁を乗り越えれば、それを解析する時にできる隙、それを含んだ演算をする時にできる隙が生まれるはずだ。
だけどこの作戦を成功させるには一方通行に油断してもらった状態で俺に近づいてもらわなくてはいけない。そのために俺はわざと俺の能力がわかるように能力を使い、負け犬を演じた。
だけど計画が成就したんだ、こっからずっと俺の
一方通行は困惑していた。
目の前の奇抜な髪型の女のような顔をした男に自身の反射の壁が通用しないからだ。
「(なンでだ!?なンで反射できねェ!?能力は正常に発動できてるハズだ!!コイツの能力は念動能力、なら俺の反射を超えることは出来ねェハズだ!!)」
一方通行は今まで攻撃が当たったことがない。なぜなら自身の自慢の能力、ベクトル操作で全ての攻撃を反射し続けてきたからだ。
「(落ち着け俺。よく見るンだ!どこかに仕掛けがあるハズだ!)」
今まで感じた事のない痛みに耐えながら、したこともない防御をしながら、回避というにはあまりにも情けない動きをしながら、学園都市第一位の頭脳は目の前の謎を解析するために思考する。
「(そもそもコイツの能力は本当に念動能力なのか?俺は手も触れずにレールを浮かしてたりしてたから念動能力と思っていたが、他の能力でもそれは代用できる。例えば発電能力。磁力を使ってレールを動かせるし、空気操作系だって動かせる。だがどちらにしてもレールを動かす時になにかしら目に見えるハズだからありえねェ。いや、その前に俺の反射の壁を越えることが出来る能力があるのか?)」
長考しているうちに一方通行は不思議な感覚に気付いた。
反射の壁は確かにあるのだが、その反射の壁が無理矢理捻じ曲げられているような奇妙な感覚があるのだ。
「(俺の意思関係なしに反射の壁が?原因は多分、いや間違いなく目の前のコイツだが、どうやって?そんなこと出来るのは俺と同じようなベクトル操作け…!!)」
一方通行はまさかと言った顔をし、足の裏のベクトルを操りコンテナの上に移動する。
草木はチッと舌打ちをする。
「その顔、やっぱり学園都市第一位の頭脳にかかれば種なんてすぐバレるか」
「まさかと思うが、ありえねェと思うが、テメエ、ベクトル操作系能力者か?」
「合ってるよ。俺はこう見えてもオマエと同じベクトル操作系能力者だ」
「だとしたら、おかしい点がある。テメエが俺と同じベクトル操作系能力者なら、どうやって触れてもないレールを動かす事ができた?」
ベクトル操作は、触れたベクトルを自在に操る事ができる能力だ。逆に、触れていないベクトルはどうやっても操れない。なのに草木は、一方通行から飛来した触れていないレールの動きを止めていた。もしも触れていないベクトルを操れるのなら、その強度は超能力者だろうが、一方通行以外に超能力者のベクトル操作系能力者はいない。
「そりゃあ能力使って動かしたに決まってんじゃん」
「質問の答えになってねェぞ!!」
「あー、ゴメンゴメン。詳しく言うとベクトル操作でレール動かしてない」
「あ?ンだそりゃ?それじゃあまるでテメエ、
多重能力者とは、二つ以上の能力を保持する能力者で、学園都市の研究所の多くが研究していたが、一つでも脳にかかる負担は大きく、二つ以上など無理だという結論が出された代物だ。
「そうだ。俺は多重能力者だ。と言えたらかっこいいんだろうけどさ、それっぽい紛い物ってのが正しいかな?」
「はァ?」
「『暗闇の五月計画』を知ってるって言ったよな?」
「
「そう。そして計画は一部成功したが超能力者に至る者は出ず、研究員が皆殺しにされたため頓挫した。はずだった」
「あ?」
「『暗闇の五月計画』の成果を見て馬鹿な研究者が思いついたんだ。『もしも、一方通行の演算パターンを全て植え付けることが出来たなら、それは一方通行と同じ能力、同じ強度まで至るのではないか』ってな。そして暗闇の五月計画の後継計画『常闇の七月計画』が実行された」
「…」
「俺はその実験の被験体だった」
トンと、軽い足踏みをすると足元の砂利が弾け飛び、草木が一方通行に目掛けて飛ぶ。一方通行はそれが足にかかる運動量のベクトルを操作したものだとすぐ理解した。
「実験は過酷な物だった。お前の演算パターンを少しづつ植えつけていくんだが、その過程で能力を使うだけで死ぬ奴もいた」
「はっ!知るかよンなの!」
一方通行は自身の能力を持ってコンテナを踏み砕き、草木の攻撃を回避する。
コンテナからは白い粉末が噴き出し、辺りに漂う。
「コンテナの中身は小麦粉ってかァ?こりゃあ楽しい事が出来るンじゃねェのか?なぁオマエ、粉塵爆発って知ってるよなァ?」
一方通行のしようとすることが分かり、草木は小麦粉のカーテンから逃れようと走り出すが、一方通行から火花が散り、昼間と思えるほどの明るさを伴った大爆発が起こる。
体が熱い。服の所々が爆発の所為で焦げてやがる。爆発のせいで酸素が薄くなって息も苦しい。
「しんでェ。酸素がねェとやっぱ辛ェわ。こりゃあ核を撃っても大丈夫ってキャッチコピーは撤回しねェとなァ?」
黒煙の中から白い人影、一方通行が俺とは違い無傷の状態でこちらに歩いてくる。
「あァ?テメエ、なんだその体たらくは?俺と同じ能力ならこンなの簡単に防げるだろォが」
「はっ…お前と同じベクトル操作は、出来るが…お前みたいに自在に…操れるとは一言も言ってない…ぞ」
確かに俺は常闇の七月計画の成功例だ。ただし、
強度の方は大能力者ぐらいあるのだが、一方通行の演算パターンの植え付けによって手に入れた能力だからか、使用するたびに頭痛、酷い時には吐き気眩暈など身体に異常が出る為強能力程度として俺は認識している。
「所詮模造品はその程度か。ちったァ……ると思ったが期待……期待外れ」
能力の使いすぎのせいで頭が痛く、視界がぼやけ、一方通行がなにを言ってるのかわからない。
「ンじゃ……らせ………?」
不意に、一方通行が後ろを向く。
俺は動かない体に鞭を打って動かし、一方通行の視線の先を確かめる。
視界がぼやけていたが、崩れていないコンテナとコンテナの間に誰かが立っているのが見えた。
しかしそれが誰かを確かめる前に、俺の意識は深い深い闇に落ちていった。
ミサカ「結果は以上です」
???『まだ許容範囲内だったってのがオレの感想だな。欲を言えばもうちょい能力が上手く使えてくれてたらなぁ』
ミサカ「それをミサカに言われても困るのですが、とミサカは眉間に皺をよせて言います」
???『いいじゃねぇか愚痴くらい。聞き流せ聞き流せ』
ミサカ「それで、これからミサカ達はどうなるのでしょうか?とミサカはミサカ達の今後を尋ねます」
???『絶対能力進化計画が凍結したんだし、処分…はしねぇか。どっかで調整でもするんじゃねぇの?まぁそんなことよりオレは今から再度理論の組み立てと実験しねぇといけねぇから暫く連絡すんなよ』
ミサカ「はい。わかりました。木原昇華様」