東方念想録   作:紅の赤

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第2話 肝試し・裏山にて

「なぁ、今日どうしておくれたん?」

 

男は俺の前の席の椅子に座り机に肘を乗せて話しかけてくる

 

「電車に乗り遅れたの」

 

そっけなく返しながら弁当箱のふたを開ける、ウインナーにトマト、唐揚げにおひたしといつもの顔ぶれがそこにあった

 

「なるほどな、それでその後はサボったんやろ?」

 

「ま、まぁその通りだ...」

 

全く、付き合いが長いからすぐ勘づくわけか

しかし男はあっけらかんと言い放った

 

「そんなんわかるって、だって8時前に電車に乗り遅れたのに今くるなんて、そんなん俺にかかれば即答よ」

 

ふふん、名探偵と呼んでくれと自慢げに顔を突き出しながら言う、いや誰だってわかるだろっのツッコミとセットでそいつの頭を軽く小突く、男はいでっ、と明らかなオーバーリアクションをしながら小突かれた頭を押さえる

 

「それで榊 光輝(さかき こうき)さんよ、今日の4限おかわりはなかったですかな?」

 

「なんか腹立つなその言い方、そやで、あとでノートみせたるわ」

 

すまん、親友の心遣いに感謝しながら弁当箱に端を伸ばす、小さい頃からの癖で好きなものをあとにとっておくので弁当の中身を瞬時にランク付けする、ならこいつからか、奇しくも最下位となったほうれん草のおひたしを摘んで口に運ぶ

 

「あ、そうそう、欠席届だせよ、お前忘れそうだからな」

 

「わかってるよ、委員長はいる?」

 

辺りを見渡し目的の人を探す

ワイワイと賑やかに弁当を食べる人の中に目的の人が見つからなかった

となると職員室か自習室にいるかもしれないな

 

「あっ、そうそう!昨日のお笑い見た?」

 

「見てないよ」

 

なんやて!お前人生半分損したぞ!なんて喚きながらお得意のオーバーリアクションで笑いを取っていく

光輝の姿を見てか周りのクラスメイトもクスクスも小さく笑う、なんか苦笑に近いものを感じるが

あとこいつと何年いられるのか....ふとそう思ってしまった

高校卒業後のことなんてなにも考えていない、決めるには時間がもう足りないのかもしれない、でも光輝にはちゃんとやりたいことがあってその目標のために生きている

成績はよくないが人格や人柄は好きだ、そして羨ましい

僕にとっての唯一無二の親友、それが光輝だ

 

「遥!何アホ面しとんねん!」

 

「うっせ」

 

ちょっと褒めたらこれだ、まったく

関西生まれの光輝はクラスでもかなりの浮きっぷりだ、もはや浮いてるを通り越して飛んでいる

関西人といえば明るく陽気な性格だと聞いている、こいつも例外なくそうだった

顔は大人しい見た目をしているのにどうやら関西人の血はしっかりと関西人にさせるらしい

ちなみに小学生の時から友だちだ、関西からの越してきて話し方が違う中でも関西弁を貫き通している、今だってそうだ、そして正義感あふれる性格で中学の時には同級生の不良と殴り合いの大喧嘩をしたほど、原因もいじめから友だちを守るためでまっすぐすぎて行き止まりも突き抜けていきそうだ

将来の夢は人の役に立ちたい仕事らしい

かなり抽象的だがいずれ人の為に自分の身を削って働く光輝の姿を見れるんだな

 

「遥、おい、委員長きたぞ」

 

なんどもこちらを呼びかけたらしくじとっとした目でやや呆れた口調で言ってきた

光輝はそのまま教室の前の入り口付近を指差す、刺された先を見ると入り口に1番近い1番前の席を使ってプリント整理をしている生徒がいた、メガネをかけていかにも勉強ができますという雰囲気を出している

実際頭はいいし学年トップスリー内の成績を常にキープしている、人柄も良いのでよく周りの人に勉強を教えている姿を見る

僕は席から立ち上がると委員長の元へと歩き出す、周りの声が大きい中委員長も歩み寄るこちらに気づいたらしく、整理のために手に持っていたプリントを丁寧に机に置いた

 

「おはよう、じゃないなこんにちは、今来たから五時間目から出席で」

 

「はいはい、って遥の遅刻って初めてじゃないの?」

 

「そうだな、初遅刻だな」

 

「あとこれ、欠席届、君が忘れる前に渡しておくよ」

 

手渡されたプリントを受け取り礼を言った

委員長は気をつけるんだよと去り際に言い残しまとめたプリントを大事そうに抱えて教室を去って行った

 

「やっぱり委員長はわかってんだな、お前が忘れそうなの」

 

そうだな、と返事を返す

委員長、本名は円居 遼(まとい りょう)

仲のいい友達、医師志望で以外と熱血漢

努力友情という単語が好きなので好きな漫画雑誌はそれがテーマの雑誌

それに繋がって漫画が好き、医師になりたい動機もあの無免許医師が主人公の漫画に感動してらしい

頭がいいが親近感を覚えるプロフィールだ

 

「おい、いつまでつったんてねや、早く飯食えよ」

 

そうだった、歩いて席に戻り腰を椅子に落としてそのまま弁当箱に箸をつけ始めた

今日最後に食べたのはナゲットだった、一位おめでとう

 

午後の授業は特に何もなかった

午前中から授業しているクラスメイトの数人は睡魔に負けて突っ伏していたが午後から参加の僕は疲れもなくいつもより授業の内容が頭に入ってきている感じはあったが

、そんな時に頭によぎるのが今日の出来事、八雲さんとの会話

あの人の言った意味、あの人は何者なのか

考えたって無駄なことは分かっている、雲を掴むようなものだ

けどいずれ見つけられそうな気もしなくもない、いずれ

結局あまり頭に内容が入ってこなかった

 

きーんこーんかーんこーん

六時間目の授業の終わりのチャイムが鳴る

日直の気だるそうな号令に生徒が立ち上がる、一人立ち上がらず突っ伏している生徒がいるが忘れられているのかそのまま終わってしまった、因みにその生徒は光輝である

 

「一緒に帰るかい?遥」

 

鞄を肩にかけて机を後ろに引いている時遼が声をかけてきた

どうやら今日は塾も生徒会も何もないらしい、帰宅のお供に誘われた

断る理由もないので誘いを承諾して未だ寝ている光輝の席へと向かう

光輝は上半身を机に委ねて睡眠している、顔はこちらを向いていてその顔は気持ちよさそうだ

 

「...えっと、ひらめは嫌いだけど、エンガワは好きです...ぅ」

 

寿司でも食べているのだろうがえんがわはひらめのことだ、と突っ込みを入れる

寝ていてもボケるとは見上げたものだ

 

「起きろ、授業終わったぞ、帰るぞ」

 

体をゆさゆさと揺らす

最初は肩を優しく揺らしていたが中々起きず愚図る様な声を出す、周りは掃除を始めようとしているので起きて席を後ろへ引かないと邪魔になる、仕方ないよな、許してくれよ、予め謝っておく

光輝の頭を叩くとぱーん、と気持ちの良い音が響く

こうも綺麗な音が出るとは、楽器か何かと勘違いしてしまうほど、そして反応が早いこと

 

「いってぇ!?」

 

頭をがばっと起こして叩かれた後頭部辺りを抑え、痛い痛いと呻く、そんなに強くした覚えはないが

 

「なんで叩くんだよ」

 

首が痛くなるんじゃないかと思うほど早く顔をこちらに向けてやや剣幕に怒る

 

「だって、もう放課後だもん、いつまで寝てんだ」

 

「起こし方ってもんがあるだろ!」

 

「起こしたよ、でも起きなかったから」

 

「お前は俺のおかんか!」

 

相変わらずむすっとしている光輝をまぁまぁと諭す、なんか憮然としているがとにかく落ち着いたようなのでそのまま3人で帰ることにした

 

駅までの道、夕方というのに一向に引かない暑さ、日差しは幾分かマシになったもののジメジメとしたいやらしい暑さは健在である、あちーと言いながら遼は手の甲で額の汗を拭う、一度ではぬぐいきれなかったのか二回三回と汗をぬぐっていた

光輝は先ほど立ち寄ったコンビニで買ったスポーツ飲料を口に含んでいた、飲み終わったあとは小さな息を漏らしていた、疲れている雰囲気だ

 

「にしてもマジ暑いな」

 

「そうだな、どうにかならないものかな」

 

二人は暑さに愚痴をこぼす、こぼしたくもなるだろうな、なんせ人が倒れているのだから、水分補給を怠らないようにしないといけない、同じくコンビニで買った炭酸飲料を一気に飲み干す、炭酸が抜けた間抜けな味が口を潤す

 

「あ、そうや、今週肝試しいかへん?」

 

光輝は今思い出したように僕らに話しかけてきた、肝試し?まさか高校に入学して誘われることになるとは思ってもなかった

最後に行ったのは小学校の6年の時、あれは怖かったな、裏手の山でやったがビクビクしながら回った記憶がある

 

「なんでまた肝試しに....」

 

遼は乗り気なのかどこでやるんだ?と質問した、こういうことは好きな方でありそうな性格してるよ、ほんと

 

「裏手の山だ」

 

しかも同じ場所だった、はぁ、またあそこを歩くのか、大変なんだけど

思わずため息が出た、一度回ったことがあるのでビクビクせず回れる自信は少なからずある、

遼はスケジュール帳を開き、質問していた

 

「いつ?」

 

「今日」

 

今日予定の事を今日伝えるのか、用事あったらどうしてたんだよ、心の中でツッコむ

 

「コースは決めといた、例の場所を通るように」

 

「例の場所?」

 

なんだそれ?聞いたことがない

遼に知らないのか尋ねるが首をかしげる、どうやら知らないらしい

こちらの反応を見て知らないとわかったらしく、勿体振るように話し始めた

 

「そうかそうか、二人は知らないのか」

 

ふふん、と軽く鼻息を鳴らす、優越感にでも浸ってるのかこいつ、いいから早く話せよと急かすと渋々話し始めた

 

「わかった、実はな、その場所っていうのは出るらしい、なんとお化けとか妖怪が、その獣道には」

 

「獣道?」

 

「整備されてない、大型の哺乳類とかが日常的に使用している道だよ」

 

あれ、獣道って言うんだ...知らなかった

でもそんな道ならいっぱいある、それにおばけの噂なんて一切入ってこなかった、ここで生きてきて数十年、今の一度も

最近立った噂なら納得できるけど

 

「なら夜10時集合でよろしく、一時間で終わるし」

 

終わらせてもらえないと非常にまずい、警察官の補導が入る時間帯になるからだ

それで親に怒られるのは嫌だぞ、「肝試ししていました」なんて警察官に言えるはずがない

とりあえず、ぱぱっとやりますか

 

電車に揺られ帰宅、クーラーがかかった現代のオアシスというリビングで熱された体を冷やす

汗で体がベトベトなのでそのままお風呂へ、シャワーで汗を流してさっぱりする、

着替えの服を適当に箪笥から引っ張り出してそれを着衣、自室へ向かった

 

ふー、ベットに体を預けるよう仰向けでダイブ

ぼふんという年季の入ったベットの音が聞こえたがしっかりとキャッチしてくれた、いやしてくれないと痛い

そのままごろんと半身にして手のスマホのロック解除を素早く行う、そろそろロック番号変えようかな、なんてぼんやり考えながら操作したので一度間違えた、ぶぶ、とスマホがバイブして怒ってきた

今度はしっかり意識して打つとすんなりといった、あっ指紋認証わすれてた

あれ便利だけどすぐ忘れちゃう、今度から使っていこう...これ何度目だ

 

解除してすぐ左下のインターネットをタッチする、ネットを開くと昨日調べてた好きなアーティストの最新アルバム情報のサイトだった、そのページから調べたい項目を打ち検索する

出てきたページには自分の知りたい事に関して書かれたものはなさそうだった...

やはりこの手の事は掲示板か、掲示板中心にネットから探しているとそれらしきものが見つかった

ローカルオカルト板と題された掲示板は地方のオカルトちっくな情報を集めているようだ、あるとしたらこんな掲示板くらいか

少しその掲示板に目を通してみることにした

 

しかし本当にローカルでオカルトちっくだな、茄子湖のナッシーとは一体、蛇ヶ山のジャエガーってなんだ?

もう何か狙っているのではないかと思う偽情報感満載の情報から呪いや言い伝え、都市伝説の類と言った信じてしまいたくなるような情報まで様々だ

ある程度地方ごとにわかれているので自分の地方の掲示板を見てみる、情報によると隣町では口裂け女ならぬおちょぼ口女がいるらしい、怖い...のか?

さらに読み進めるとやっと出てきた、欲しかった情報に近いもの

 

近所の裏山では夜に妖怪らしきものが徘徊しているらしいですよ、2足歩行だったり4足歩行だったりと

 

妖怪ぽいの見たわ、用事で少し歩いていたらそれらしきもの発見、怖くなって逃げてきた

 

それに類似した書き込みは他数件あった

どれもはっきりとした容姿は書いてないものの口を揃えて妖怪と言っている

妖怪とお化けって何が違うんだろう、ふと疑問に思う

どちらかが恨んできてどちらかが物に魂が宿ったもの、そんな所かな

にしてもこれで光輝の言う噂は本当だった事がわかったな、あいつの事だからこんな噂をやる前に言って雰囲気をあげようと思っていたと考えたていたが、違ったな

逆に考えるなら噂があるから肝試しにはもってこいと思いついたかもしれない

光輝の性格的に後者っぽい気がする

もしかして妖怪の噂を聞いて肝試しを発案したんじゃないだろうか

うーん、もういいかな

お腹が空いたので下に降りて行った

 

 

 

家族が眠る午後10時前に家を出た

友達の家に宿題を忘れたと言って外に出たが理由として不十分だろう、一時間もかかるはずないから、寄り道したとかなんとか後で付け足すか

夜の街は少し怖くもあり静かで綺麗だ

街の明かりがあるとは言え夜の暗さは完全には消せない

キョロキョロ夜の街を眺めていたがそんなにここでゆっくりできるわけでもない、少し急ぐか、早足に指定された山の入り口に向かっていった

 

 

「おーす、遥!きたかきたか!」

 

山の入り口で光輝が手を振っていた

蒸し暑い夏の夜なのでラフな半そで、下は蚊を意識してか長ズボンだった

右手には大きめの懐中電灯を持っていて左手で手を振っていた

遼は麦わら帽子にタンクトップと半ズボンと肝試しを全力で楽しむようだ、その前に蚊に刺されて全身かゆくならない事を願う

一応自分も長ズボンを履いてきたが腕は噛まれるかなと覚悟してきた、虫除けスプレーかけても噛まれる時は噛まれるからな

 

「よし、揃ったな」

 

「ああ」

 

「虫除けスプレーかけたかい?二人」

 

ニコニコしながら楽しみにする光輝、心配してくれてか小型の虫除けスプレーを取り出して確認してくれる遼

俺は特に何もない、ただとりあえずやるからには楽しむだけだ

 

小学生の時とはまた視点が違った

山の木々が少し小さくなり視界が広くなったようだ、背が伸びたのもあるが当時と比べ精神的に余裕が出ているのかもしれない

先頭は光輝で右手の懐中電灯で前を照らす

次に俺が続いて歩く、最後は遼が鼻歌交じりに歩く

最初は3人黙って肝試しの雰囲気を味わっていたがだんだんと話し始めるようになった、いつしかいつもの学校の雑談のように明るく馬鹿らしい話を始めた

 

「なーなー、明日暇か二人?」

 

「何かするの?塾は午前のみだけど」

 

「俺は別に何もないけど」

 

「遥はいつも暇やないか」

 

「うるせー、光輝お前もだろ」

 

「勉強してまーす」

 

「遼みたいな奴を勉強してるって言うんだぞ」

 

「俺だってしてるから!なぁ遼」

 

「知らないよ」

 

「がーん」

 

肝試しという事も忘れて大声で馬鹿みたいに話していると急に光輝が止まった

遼と喋っていた俺は前をあまり見ていないので急に止まった光輝の背中にぶつかる

なんだよ、と光輝の背中に言った

光輝はそれに振り返る事もなくぽつりと言った

 

「何かいた」

 

懐中電灯は以前と道の前を照らしていた

それには普通に道が写っている、何もいない、演出として言う光輝の声のトーンではなかった、本当に何かいたからこそ言った一言に聞こえた

遼もそれを察したのか周りを見渡す

見渡しても暗く木々がぼんやりと見える程度なので何も見えない、派手に動かなければこちらからは確認できないほどに

 

「引き返すか?」

 

俺は小さく投げかけた

光輝は以前と振り返らず前だけ見つめていたが首を横に振った

そして光輝はそのまま歩き出した、俺はそれにつられて後ろを歩き出す、懐中電灯の先を気にしながら歩き遼とちょくちょく会話を挟む、光輝は最初はだんまりだったが時間が経つと少しずつ会話に参加してきた

だがさきほどの会話との声の大きさがまるで違った、ひそひそと誰か第三者に聞かれないように小さな声で話していた

ざ、ざ、ざ、ざ、ざ

足音の方が声よりも大きかった

ざ、ざ、ざ、ざ、ざ、

3人の足音さえも小さくなってきた

音が消えていくと、音が増えた

だ、だ、だ、だ、だ、

 

3人は止まった

右から何か来る、そう感じるのに時間はかからなかった

右を見たくても見れなかった

重量のある足音がどんどんと近づいて来る

うさぎなんかでもない重さ

人以上ある重さ

ぱき、くしゃっと葉や小枝の折れる音が大きくなる

近くで地を踏みしている

 

ゔゔ....

 

人の声帯では発することが出来ないような低いうめき声

金縛りにでもあったのか、動けなかった

会ってはいけないモノに会ってしまうかもしれない恐怖心が、心に動揺を与え、動揺が脳の最善の一択を阻害している

取るべき行動が取れない、強者に慣れない人の性にも思える

草食動物のように、逃げられなかった

ずん、ずん、ずん、

足音が響いてきた、クリアに聞こえる

 

「なんだよ!」

 

光輝が果敢にも懐中電灯を右に向けた

光の中、いたのは妖怪だった

2mはありそうな巨体に頭には額から一本角、ごつい体つきに腰に布を巻いている

目はこちらを向けており完全には視界に入っていた

 

ゔゔゔゔ....ぅぅ

 

刹那、俺に飛びかかった

3人の中で確実に俺を標的とした飛びつき俺の身長を軽々と超え見上げる位置まで飛び上がりこちらに襲いかかる

やばい、体が勝手に反応してか、身を翻して後ろに思いっきりジャンプした

ずしん、と何百キロありそうな巨体が着地した途端地を揺らした

ジャンプしてなんとか交わしたが全身土まみれとなったが、今となってはどうでもいい

 

逃げなきゃ、そう思って立ち上がろうとした時、足を踏み外した

目の前が急な坂になっていたのだ

踏み外した俺はそのまま体のバランスが前に崩れ、転がり落ちた

落ちないように周りのものに捕まろうとしたが中々捕まらない

石や小枝が全身に食い込み苦痛だ

手を伸ばして懸命に何かに捕まろうとした、藁にもすがるとかこのことなのかもしれない、懸命に、藁にでもすがりたかった

すると手首あたりに何かが当たった、そのまま流れで手のひらに当たったがその時になんとかつかむことが出来た

しかし転がっていた反動もあって左手でつかんだ木を中心に90度曲がった

右手でも掴みに行こうとしたが曲がり切った時には胸の前に辺りに顔ほどの大きさの石があった

がん、鈍い音がして胸に直撃した

肺の空気が風船より早く抜けていくのがわかった

その痛さと呼吸ができないほどの衝撃に思わず手を離してしまった

そのまま転がり続けて行った

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