「遥君、あそぼ」
緑髪の少女が言う
その子はこちらに手を伸ばして来た
一人ぼっちの俺はその子の手を払った
まとわりつかないで欲しい、人を近づけたくなかった当時は彼女を鬱陶しく思っていた
しかし、彼女は根気強くなんども接してきた、振り払われた手を何度も差しのばし、跳ね除けられた言葉を何度も投げかけてくる
なぜそこまで俺に執着していたのだろう、他に友達がいなかったから?可哀想に思ったから?
どれが正解なんていまから考えてもわからない、偽善者とか仲間作りとか簡単なことなら良かった、けど
本当に彼女の心が読めなかった
薄れ掛けていた意識が戻っていく
頭がぼーっとするが体あちこちの神経が少しずつ寝転がっていることを理解した
目を開ける、見えるものは草と土と木だ、そして鳥居、そう神社だ
「あれ...」
仰向けに寝転がっていた体を起こしてみる、体のあちこちから小さな悲鳴が聞こえてくる、転がり落ちたので体のところどころが打ち身なのかもしれない
でも動けないわけではなさそうだ、両手で腰を浮かして立ち上がる
間違いない、ここはあの神社だ
あの山からこの神社は駅で2つほど離れている、まさかここまで転がってきたなんてことはない
しかし転がってきた以外に何がある?なんでこんな所に....まさか
夢だろうか、....もしかしてもう死んでいるんじゃないだろうか?
そう思うと怖くなって自分の体のあちこちを確認する、体温や足、さらにほっぺをつねろうと思ったがもし痛くなかったらと想像すると怖くて出来なかった
辺りを見渡してみる、あれ?参拝道がない、出入り口がないのだ
いつものように神社の前には石でできた参拝道があり、そこが唯一の出入り口となっているのだが、
それが切れているのだ、多少続いているが5mほど先は既に木々に覆われている、神社周辺の木々もいつもより暗さが相まって不気味だ、何か潜んでいそうな雰囲気である。下手に入らない方がいい、帰ってこれなくなりそうだ。
ポケットを探っても何もなかった、財布とは転がっている時にお別れしたのか....携帯はあるがつかない、壊れたのかもしれない。どうしようか....途方に暮れてしまいどうにもできないので、痛む体を休めようと神社の賽銭箱に腰掛ける、高さはちょうど良いが座り心地の悪さと後ろの本堂に対しての申し訳なさがいっぱいだった
静か過ぎる空間、自分以外何もない空間、これが死後の世界と言われるなら悲しい
死後一人で生きていくのは孤独だ、孤独が寂しさを感じさせ寂しさが虚無感を生み出す、そもそも死んでいるのに生きるというのもかなりの矛盾である、はぁっ....ため息をついて空を見上げると、夜空の星が綺麗だった、星の輝きが都会の何倍もあり光り方も自由奔放であった、よく見ると雲のようなぼんやりとした塊がところどころ浮いていた、大星団とはこのことかな、と一人納得してしまった、俺はこの時綺麗な空に心奪われていた
「星空が綺麗ね」
聞き覚えのある声、声の方向、左を振り向く
暗いが特徴的な傘に派手な紫の服、間違いない
「八雲...さん」
「早速、あったわね」
「そうですね、昨日ぶりですかね」
やはり、この人は普通の人じゃなかった
「遥、あなたはもうわかっているはずです」
「わかっている?何をですか?」
「あなた自身を含めて、この世の秘密に」
この世の秘密?都市伝説か何かか?
頭を捻って考える、そんなものあったかな?俺の秘密なんてベッドの下に雑誌を隠してるくらいだけど
「あくまでしらを切るつもりですか?」
「しらを切るも何も知らないです、人違いじゃないですか?」
「いえ、思念遥、私が探していたのはあなたです」
だめだ、このままでは終わりが見えない、話を変えようとしても中々内容が見つからない
そんな時ふと参拝道を思い出した、そうだ
「すいません、話が変わりますがここはどこですか?」
「....そうね、まず現状を説明しましょう」
八雲さんはそう言うと僕の前に立つ、その目は穏やかでもあり、険しくもあった
何考えているのかさっぱりわからなかった
「ここは外の世界と幻想郷の間の世界」
「幻想郷?外の世界?」
「そう、幻想郷は私の住んでいる閉ざされた空間、そこからこの世界を外の世界と呼んでいるわ」
頭で理解しようにも少し追いつかなかった、えっと、俺の住んでいる世界が外の世界、八雲さんの住んでいる世界が幻想郷、幻想郷は閉ざされた空間
....言われたことを反復しただけである
とりあえず先の話を聞くために八雲さんの目を見る、考えるそぶりを止めてこちらを見て口を開けた
「幻想郷では様々な生き物が存在しています、人間、妖怪、魔法使い、神」
「そんな世界なので、人間も普通ではありません」
「こちらの世界で言う、超能力に近い物を持っています」
超能力?手から火を出したり口から火を放ったり可燃物から発火させたり、もし本当ならそんな世界が成り立つのだろうか?
力が強ければ溺れる者もいる、そんな奴らばかりなのではないだろうか?
力を振るい力を見せつけ、力の恐怖を人の心に刻みつける
そんな過去がこの地球にはある
なんというか漫画やアニメの知識が偏っているようにも思える
相変わらずの不気味さが漂う神社
重々しい雰囲気の中聞きたかった核心をついた
「幻想郷が、俺に何の関係が?」
「単刀直入に言います、能力を....持ってますね」
「まさか....」
「わかっています、既に」
真っ直ぐこちらを見る目、 そして沈黙
間違いない、これは質問で聞いてるわけじゃない、確信のある確認なのだ
はぐらかしてもあやふやでは終わらせられなさそうな声の重み
どこで知ったか知らないがやれやれ....
「......わかりましたよ、持っています」
八雲さんは素直な人は好きよと言うと先ほどの険しい表情を変え優しく微笑んできた、大人の女性の顔つきなのでそのギャップに少々驚いた
....いずれこんな日が来るとは思っていた
俺は普通に普通じゃないことを知っていた
「その能力は元を辿れば幻想郷へとつながります、知りたくないですか?自分を」
「知りたいですけど....」
「ハッキリ言います、あなたは幻想郷に来るべきです」
そんなこと、言われなくとも自分のことは知りたい、けど、けど.....俺は俯き、黙った
八雲さんはどんな顔をしていたのか見えない、そのまま時間だけが流れていた
何分経っただろう、感覚的には何時間経過したかわからないように感じていた
「その決断の前に、話してもらおうかしら」
不意に風が吹いたような気がした
肌寒い時期に吹く風なので寒かったが、いつも以上だった。気づけば手汗が湧き出ていた、ベトベトする手をズボンの側面で乱雑に拭く
手だけではなく体のあちこちから汗が吹き出ていた。しかし冷える体など今はどうでも良い。
「何をですか」
「あなたがどのような人生を歩いてきたか....を」
20年も生きていないただの男子高校生の人生など、語るほどない
中学の時に国語のテストで学年一位をとったー、とか高校生初日の授業に遅刻したとかとてもつまらないことばかりだ。だから話すことなんてない、普通なら
「能力絡みで、ですよね?」
「そうね」
わかりました、お話ししましょう
一人の超能力者のお話を