雪が溶け、冬の終わりを感じながらも肌寒い。
まだ田植えのすんでいない田園風景。
そんな中を
ガタンゴトン、ガタンゴトン
車輪がレールの継ぎ目を通過する際に発する独特の音を、独特のリズムで刻みながら走る一両編成の電車の中。
乗客はたった二人のみ。
腰くらいまであるだろう綺麗な黒髪、それとは対照的な白いロングワンピース。
軽い防寒程度に羽織る紺のカーディガン。
清楚な印象を受ける女性。
もう1人は、女性の膝枕で眠る同じ黒髪の幼い女の子。
こちらは動き安さ重視なのだろう長袖Tシャツにジーンズ。
コートを布団代わりにしている。
外の景色を眺めながら、ワンピース姿の女性はあることを思い出していた。
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楓「は?東京?」
とある日の夕暮れ。
茜色に染まる空の下で、神社の階段に腰掛ける二人の少女。
そのうちの一人、加賀山 楓はどこか間の抜けた声をあげる。
ひぐらしの鳴き声が響き渡る秋の日の出来事。
ーーー《桂木 彩花》小学五年生ーーー
彩花「うん。ウチ東京にいく。」
楓「いつ行くんだよ?てか何で?」
ウチの言葉に楓は更に質問を続ける。
彩花「いっぺんに聞かないでよ。えっとね、お父さんが転勤で東京に行くんだって。こっちにいられるのは二月の終わりくらいまで。」
楓「そっか。」
楓は寂しそうに顔を俯かせる。
そんな彼女を見て、ウチは楓と約束をする。
彩花「ちゃんと帰ってくるから。
いつになるかは分からないけど、絶対帰ってくるから。
だから、待っててくれる?」
こんどは恥ずかしそうに顔を赤くしながら答える
楓「ああ、待ってる。てか店継ぐつもりだからな。わたしはここを離れる気はねーよ。」
楓らしくぶっきらぼうに。
その言葉がすごく嬉しくて、ついウチの頬が緩んでしまう。
彩花「ふふ、でも引っ越すのは二月だし、今はもっと遊んでよう!」
ウチは勢いよく立ち上がる。
楓「分かったよ。付き合ってやる。」
彩花「え?何?その告白されて嫌々OKみたいなセリフ。」
楓「そういう意味じゃねーよ。で?明日はどこいくんだ?」
先ほどまでの暗い雰囲気を忘れて明日の予定を立て始める。
『とにかく今を楽しもう』と。
彩花「そだねー。秘密基地とか作ってみない?」
楓「別にいいけど、一からか?」
彩花「いや、おじいちゃんが使ってない小屋があるから、それ使って良いって。」
楓「このみやひかげも誘うか。」
家路に着きながら交わす、こんな会話も楽しかった。
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ワンピース姿の女性、《桂木 彩花》は、
『ガタンゴトン』と先ほどから変わらず刻み続けるリズムに揺られながら、自身の膝で眠る女の子の髪を優しく撫でる。
彩花(懐かしい。それでも昨日のことのように思い出す。)
そして呟く
彩花「みんな元気にしてるかな。」