The Boundary of Emptiness   作:朱莉

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 書き方の練習中にできた未完成品。方向性が固まってないから。


参加資格

 ―――

 

 初まりは突然だった。いや、最初から始まっていたのかもしれない。

 その日の俺はいつもと違う事をした覚えもなく、いつも通りに頼まれ事を受け、それが終わり、下校をするところだった。他の生徒は部活生ですら帰ったあとで、俺以外に生徒なんて居なかった。それすらいつも通りだった。忘れ物がないか確認し、下駄箱に向かう……可笑しかったのはそれからだ。

 

 金属と金属がぶつかるような甲高い音が校庭から響き渡る。初めは野球部の連中がまだ残っていたのかと勘違いをしたが、俺の知る野球に金属同士でぶつかり合う音なんてしない。それとも何かしらの金属の器具が壊れて当たったか? それなら他の生徒が怪我でもしたら大変だ。直すのは無理でも、注意を促すように貼り紙なりしないといけない。取り敢えず確かめに行こう。

 

 

 なんの音なのか未だ不明なので警戒しながら校外に出る。器具の破損だったときは一度戻って体育倉庫の鍵を回収しよう。用務員室なら麻縄も有った筈だ。もしもの時はそれで固定して白線でも引けば被害も減るだろう。幸い俺は一人暮らしだし、今日はやることもない。時間はある。

 

 音は校外に出ると更に大きくなる。まだ聞こえるということは誰かしら残っていたということか? もしも喧嘩かなにかで音がしているなら注意の一つでもしないと危険だ。踏み込む足に力が入る。

 

 視界を音の方に向ければ人がいた。こんな時間に誰だろうとか、何をしているんだとか、声をかけようとしてやめる。なんだあれは……。

 

 

 俺の視界に広がる光景に思考が停止する。棒状の物を持った男と、二つの何かを持った男が睨み合い、争っていた。男の後ろには同い年位の女の子もいる。一体こんな時間に何をしているのだろうか? こんなに音が響いているのに近所の奴等も見あたらない。何かの撮影か? 先生や、警備員からは一切聞いてないぞ?

 

 疑問が頭から離れない。だが足はその場から逃げるように後ろに向かう。それがいけなかった。

 

 パキン

 

 俺の足が枝を踏み乾いた音がなる。目の前で聞こえる金属音より遥かに小さな音。それでも俺を含め四人しか居ない校庭に響いた。騒がしかった音が嘘のように静けさが辺りに広がる。ヤバい、気付かれた。俺の体に言い表せないほどの緊張が走る。槍を持った男と視線がぶつかる。それに合わせて校舎に逃げ込んだ。逃げ場のない袋小路に駆け込んで、足音を碌に隠さず走り回る。物騒なおいかけっこの始まりだ。捕まればまず殺される。そもそも逃げ場すらない。先程の争いを見たが一切剣筋が見えなかった。そこまで考えて足が止まる。なんだ、逃げたってどうせ⬛ぬ時間が多少変わるだけじゃないか。その直後に俺の後ろに気配を感じた。追い付かれたようだ。

 

「もう逃げるのはやめるのか? にしてもすごいじゃねぇか坊主、割りと逃げれた方だぜ?」

 

 振り返れば青のタイツを着て槍を持った男が立っていた。面倒そうに吐く台詞は嘘は言ってなさそうだ。

 

「お前もこんな時間に彷徨いてなけりゃ死ぬこともなかっただろうに……損したな」

 

 なら見逃してほしい。それは無理なのだろう、追ってきたことが何よりの証拠だ。

 

「関係者じゃないことは知っている。が、見ちまったんだ。諦めろ。勿論恨んでくれていい。それくらいなら喜んで引き受ける」

 

 男が自然に槍を構える。

 

「痛みを感じる暇すら与えず⬛してやるよ。それがせめてもの慈悲だ」

 

 その言葉を境に槍が動く、軌道は線を描き、俺の胸に消え、同じ動作で元に戻る。視界はぼやけ、全身から力が抜ける。男がいった通り痛みすら感じる暇もなく壁に倒れる。制服に血が滲み呼吸が止まる。直に意識も止まるだろう。

 

「次があるなら上手く生きろ。――――まぁ、有る訳ねぇか。じゃあな、坊主」

 

 男の声も遠い。直ぐ側で喋っている筈なのに遠い。呆気ない最期だった。

 

 

――――

 

 目が覚めた。……覚めた? 何をいっている。あんなことが有ったのにか? ――――あんなこと? 俺はなぜ学校の廊下で倒れているんだ?

 

 寝起きの頭で必死に考える。頼まれ事を終えたあとの記憶が一切ない。ここで寝ている理由すら思い出せない。しかし身体は思い出そうとする行為に嫌気を表すかのように帰路につく。気になるが、学校ですることでもない。そう言い訳して動き出す。諦めたとも言える。だって、いくら考えても思い出せないのだから。

 

 

 

 家に帰り電気もつけずに制服から私服に着替える。何故か制服からはパリパリと音が響いたが気にしないことにした。

 着替え終わった頃には真っ暗で夜もだいぶ深くなっていた。思ったように身体に力が入らない。あんなところで寝て風邪でもひいたのだろうか? しかし、どんなときでも習慣である鍛練は欠かさないよう倉に向かう。集中していれば体調も多少は良くなればいいな……。

 

「これは驚いた」

 

 誰も居ないはずの部屋から俺以外の声がする。その声がしたとたん酷い寒気が俺を襲う。錆びた機械のように震えながら声の出所に体を向ける。――――其処に居たのは槍を持った男。そして思い出す。忘れていたことを思い出す。俺はこいつに⬛されたことを。

 

「魔術師じゃねぇと思ったんだが……どうやって起きた? 確かに破壊した筈だ。⬛んだことを確認してから離れた筈だぜ?」

 

 知らない。知るわけがない。俺は、こいつが言ってることを理解できない。

 

「そんなこと関係ないか。同じ人間を二度も⬛すことになるとは思わなかったぜ。まぁ、坊主も同じ奴に⬛されるなんざ、なかなか体験出来ないことだぜ? 貴重な経験じゃねぇか」

 

 嬉しくはねぇがなと、男は犬歯を見せ笑う。冷や汗が止まらない。近くに武器になるようなものなんてない。有るとすれば新聞紙。心許ないが無いよりましだ。素手で防げるとは思えない。もう少し動けば竹刀があるが、取る暇は無さそうだ

 

「悪いが、もう一度⬛んでもらうぜ? 次がないよう意識がとんでから解体すっからよ、安心しな」

 

 槍が動く、全身に力を込めて丸めた新聞紙で槍を弾く。

 

「!? 面白い坊主だな。⬛す前にちょっくら遊んでやるよ。俺と遊べるんだ、がっかりさせんなよ?」

 

 男が片手で槍を動かす。突かずに薙ぐように動かす。遊ばれていると自覚するが、それでも力の差は埋まらない、埋まるわけがない。受ける度に身体ごと弾かれる。

 

「せめてその竹刀を使わしてやるよ。チャンバラごっこをするにも紙じゃ格好つかねぇだろ?」

 

 男が俺に竹刀を投げる。その竹刀を拾い、歯を食い縛る。どう足掻いても⬛ぬ。だが、諦めたくない。何度か打ち込んで力が尽き、竹刀が弾けとぶ。

 

「力尽きたみてぇだな? よし、⬛るぞ。――――ってオイ! ここにきて逃げるのか?!」

 

 ⬛にたいなんて思わない。思いたくない。あそこなら何かある筈だ。相手が待つ訳がない、急いで倉に向かい探す。探して――――

 

「ったく、逃げ出したと思ったらまた袋小路か? ここはお前の屋敷なんだろ? 逃げ場くらいちゃんとしておけよ。ここなら後始末もやり易くて助かるがな。――――じゃあな、坊主。もう⬛んどけ」

 

 ⬛ にた く な  い   。

 

 

 叶う訳のない望みを浮かべれば足元が光る。槍の男は後ろに跳び、俺は唖然と床を見る。なんだ? こんなこと今まで起きたことがない。視界が光で埋まり暫くしてやんだ。座り込むように視線を塞いだが痛みなどはない。恐る恐る目を凝らして見れば目前に先程まで居なかった奴が居た。栗色の髪に、桜色の着物。見慣れない格好の同い年位の女の子が立っていた。俺と槍の男の間に。此方には背中を向けている。彼女の右手には日本刀。これは、どういう状況なんだ? どうせ⬛される身だ。理解しても無駄だろう。

 

「新手のサーヴァントだと!?」

「あら、まさか私が喚ばれるなんてね」

「刀? てめぇ、セイバーか?」

「そうね、貴方が思うならそうなのでしょう」

 

 槍の男は間合いを計るように下がる。女性は此方を一瞥して視線を槍の男に戻す。

 

「一応喚ばれたからにはマスターを護りたいのだけれど……諦めてくれないかしら?」

「ん? ああ、そうだな。関係者なら深追いする理由はなくなった」

「物分りのいい人なのね」

「だが、こっちにも事情があってな。一当て願いたい」

「此方の願いを聞いてくれたんだもの、できる限り応えるわ」

「ありがてぇ。実力差があったら加減してやるから頼むぜ」

「そうならないよう祈るわ。私も、勿論貴方もね」

「よく言った!」

 

 男の目付きが変わり鋭くなる。女の子はそれを見て佇むだけだった。

 

「ほう、隙だらけに見えるが……成る程、なかなかやるようだ」

「その槍は大切なもの?」

「ん、まぁな」

「なら壊さないようにするわ」

「っ!?」

 

 女の子の声が響き終わる前に彼女の姿は掻き消え、槍の男が反応した頃には刀が首筋に当てられていた。

 

「……驚いた。気配遮断持ちかよ」

「真似事のようなものよ。次は本気でやりあいましょう?」

 

 女の子は刀を降ろし徒歩で此方に帰ってくる。

 

「ちっ。マスターからの頼まれ事がなけりゃ直ぐにでも再戦してぇが新手も来る。ここは引かせてもらうぜ」

「いいわよ。此方もマスターを護れる、貴方を追いはしないわ」

「また会おうぜ。坊主も追い回して悪かったな」

 

 目の前の戦いが終わっても震えが止まらない。情けないと思うが震えた声で「あぁ」とだけ返せた。

 

「大丈夫かよ……。まぁ、あとはそちらに任せるぜ」

「貴方もね」

「じゃあな」

 

 槍の男はそして消える。彼女が此方を向いたので帰ったのだろう。

 

「ここはマスターのおうち?」

 

 彼女の問いに頷いて返す。

 

「なら、落ち着ける場所に行きましょう。聞きたいことあるでしょう?」

 

 上手く立てない俺を庇うように立たせてもらい、居間に通す。先程の攻防で散らかっていたが、手伝ってもらってなんとか元通りになった。

 

「そうだわ、私のことはセイバーと呼んで。いつまでも名前を呼べないのは面倒だから。私は貴方をマスターと呼ぶわ。詳しいことは座ってから話しましょう」

 

 唐突にそう言われ俺は頷いた。

 

 

――――

 

 

「そうね。私も解ることは少ないのだけれど……まずは聖杯戦争という言葉に聞き覚えは?」

 

 知らない。

 

「なら、魔術師」

 

 ……。それならわかる。

 

「なら、そうね。簡単に説明すると魔術師のための戦争、それが聖杯戦争よ。各々が持てる力を出しあって戦い、聖杯を奪い合う。聖杯は願いを叶える願望機で、私たちサーヴァントと魔術師であるマスターの願いを叶えさせるために私たちは争うの。そして左腕を見て?」

 

 彼女の言葉で腕を見る。そこには見慣れない痣ができていた。

 

「それは令呪。そこには三画の呪いが刻まれていて、三度の強力な命令をサーヴァントにかけれるの。戦え、守れ、自害なんてね」

 

 自害?

 

「私たちサーヴァントは人より優れている者が大半なの。令呪がなければ命令を聞かない奴だっているわ。その為の抑止力って訳よ。手に負えない場合はそうするの。自らを護るためにもね」

 

 ……そうだとしても、俺はそうしたくない。

 

「……」

 

 セイバー、急に黙ってどうしたんだ?

 

「私のマスターは素敵な人だと、そう思っただけよ。マスター」

 

 うん?

 

「貴方は優しいのね。今は実感がないからなのかもしれないけれど。もしも然るべき時に同じように応えたら、私は何よりも貴方を護ることを誓うわ。……さて、脱線してしまったわね。話を戻しましょう」

 

 ……あぁ、頼む。

 

「聖杯戦争は主に夜に行われるわ。時と場合によるけれどね。それとクラスと呼ばれるものがあるの。セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、アサシン、キャスター、バーサーカー。一陣営一騎のサーヴァントで戦い、時に共闘、時に裏切り、時に寝返る。勝者になるために――――さて、話したいことはまだあるのだけれど……。マスター?」

 

 どうしたセイバー。何かあるのか?

 

「ここの玄関は何処かしら?」

 

 玄関? それならあっちだな。外に出るのか?

 

「貴方に……いいえ。マスターにお客さんよ? どうする?」

 

 マスターに……と言うことはサーヴァントも居るってことか。セイバー、一緒に来てくれ。

 

「勿論よ、私のマスター。敵意を感じたら優先的に排除するわ。ね、マスター、それでいいわね?」

 

 いや、流石にそれはだめだろう。サーヴァントが勝手に動くことだってあるんだろ?

 

「ふふっ。本当に私のマスターは優しいのね。じゃあ最初は寸止めで、その後はマスターに従うわ」

 

 寸止めでもダメだ。

 

 

――――

 





 中途半端。

 
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