戯れた、戯れた   作:星の屑鉄

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 今回はちょっと甘酸っぱくて苦いです。
 皮ごと入ったレモンケーキのようなテイストで仕上がっています。
 お読みの際は、ダージリンなどのストレートで楽しめる紅茶をお供にどうぞ。




別たれた、別たれた

 

 穴だらけ。穴だらけ。

 起きて動けば穴落ちた。

 上がって進めばまた落ちた。

 

 およそ悪戯好きの誰かの罠を。

 僕は面白おかしく踏み抜いた。

 

 おっと、悪戯してたのてゐなんだ。

 キミは悪戯大好きかい?

 何、頷いてくれるなんて、キミはとってもお利口だ。

 自由気ままに生きようか。

 

 

 

 すりすりなでなでぽっかぽか。

 日向ぼっこは楽しいな。

 今日もてゐと戯れた。

 

 およそ眠りに落ちた意識に微睡み。

 僕は昔を思い出す。

 

 父さん母さん捨てないで。

 僕の何が悪かった?

 何、失敗作だなんて、酷い言い草あんまりだ。

 船の上。僕はすっかり泣きじゃくる。

 

 

 

 ごそごそがやがや。ダダダくるくる。

 元気はつらつ兎たち。

 僕の意識が浮かび上がる。

 

 およそ寝起きに弱い僕は。

 悪戯てゐに起こされた。

 

 おっと、唾液で顔がぐっしょりだ。

 どうして僕を慰める?

 何、寝ながらなんて、とんでもない泣き虫だ。

 てゐはとっても優しいね。

 

 

 

 気配はビリビリ。心はボワア。

 離れた本土に現れた。

 僕はすぐさま船に乗る。

 

 およそ醜い姿の僕は。

 同類求めて本土に向かう。

 

 おっと、引き留めてはくれるなよ。

 どうして君は泣いている?

 何、情が移ったなんて、それはこっちの台詞だろ。

 大丈夫。僕は絶対忘れない。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 引っ掛かった、引っ掛かった。

 ちょっと仲間の兎と一緒に落とし穴を掘ったら、起き抜け矢先にこいつは盛大に穴に落ちた。

 

 間抜けな面だったよ。妙に顔だけは良いこいつは、「あれ、あれ?」何て言いながら、穴から抜け出してようやく理解したような顔をした。

 

 間抜け、本当に間抜け。落ちて周りを確認すれば分かる筈なのに、こいつは抜け出した後に気が付いた。

 まぁ、その後に面白そうに落とし穴に突っ込んでいたのは、ちょっと予想外だったけど。

 本当に子どもっぽい奴。でも、逆に言えば見てるこっちがすかっとするほど無邪気な奴で、あたしゃ嫌いにゃなれなかった。むしろ、ああいうタイプは人としてとっても好きだ。

 

 しかも、悪戯した犯人を私と特定したにも関わらず、あいつは泥だらけの顔で笑って、「キミはとってもお利口だ」なんて言ってきた。

 子どもが大人ぶるんじゃないよ。それに、何が「自由気ままに生きようか」だい。お前さんは自由そのものじゃないか。

 

 おかげであたしゃ、ちょっと神様に目を付けられた。

 こいつの監視なんて、自主的にゃしないよ。

 

 あたしゃ、自由気ままに生きるのさ。

 

 

 

 まったく、お前はいつまで私を撫でる気だい。

 

 こいつの膝の上に乗せられて、兎のあたしゃ日向ぼっこをしながら撫でられる。

 陽光と絶妙な力加減の手が気持ちよくて、すっかり夢見心地さね。

 

 まぁ、二人……いや、一人と一羽が泥まみれになりながら戯れて、遊び終われば仲良く昼寝と、本当に子どものような一日を過ごしたのさ。

 私が落とし穴を作って、こいつが落とし穴を踏み抜いて、泥まみれになって。

 本当に、こんな時間は久しぶりで、今まで忘れていたのが可笑しくなるほど、楽しい時間だったね。

 

 で、夢の世界に落ちた後、あたしゃ雨に起こされた。

 

 こりゃ大変、なんて急いで避難しようと思ったら、雨はこいつの涙なんだから、困ったもんさね。

 そう、「父さん母さん捨てないで」とか、そんなこと言われちゃ、老婆心から心配になるってね。

 だからあたしゃ、こいつを慰めるように、涙を拭きとってやったさ。しょっぱい、しょっぱい。

 

 本当に、神様っていうのは好きになれない。

 こんな幼子を捨てて、アンタらに良心ってやつはないのかい?

 今度会ったら、文句の1つでも私から言ってやろうかね。

 

 すっかり、あたしゃこいつの保護者兼友達さね。

 名付け親なのに、本当に、訳の分からない関係だよ。

 

 

 

 私の周りにはいつも配下の兎たちが集まってくる。

 今はこいつが泣いているせいか、みんながみんな、すっかり冷静さを損なって、ただ慰めるためだけに踊りやら一発芸に走ってる。

 

 あぁ、まったく、そんなに走るんじゃないよ。こいつの口の中に砂が入るでしょ。

 ほら、アンタ達がうるさいせいで起きちゃったよ。

 

 まったく、ほら、もう泣き止んで。

 もう、不器用な兎の手じゃまともに涙も拭けないよ。

 ほんとう、しょっぱい、しょっぱい。あと、泥のせいでちょっとじゃりじゃりする。

 

 こんなに献身的に尽してやったっていうのに、こいつときたら、「唾液で顔がグッショリだ」なんて文句を言った。

 まったく、慰めてあげたのに、何だいその言い草は。

 

 お前は寝ながら泣いていたんだよ。

ほっとくなんて、あたしゃそこまで薄情になった覚えはないよ。

 

 え、私が優しいだって?

 まったく、兎を見る目も無いなんて、お前はとんでもない子どもだね。

 

 あたしゃただの悪戯兎。

 自由気ままで、何者にも縛られない、そんなお転婆な子なのよ。

 だから、そんなに褒めるんじゃないよ。背中が痒くて仕方ない。

 

 

 

 あぁ! こりゃ大変!

 本土の方で、とんでもない化け物が現れたよ!

 こんな離れた小さな島にまで、その禍々しさが伝わってくるんだから、もうなす術なんて無いよ。

 

 さて、本土なんて行かずに、余生をここで過ごしてやろうと思えば、あいつは嬉々とした様子で飛び出して、船に乗った。

 

 何だって、同類?

 アレはお前さんのようなか弱い存在じゃないよ。もっと禍々しくて、恐ろしい存在だよ。

 あれに遭ったら殺される。だから早くこっちに戻っておいで。ここに残れば良い。お前さんを拒む奴なんて、ここにゃ誰も居やしない。

 

 引き留めてくれるな?

 何言ってんだい。理解せずに死地に行くやつを、友人を、止めないでどうするって言うんだい。

 だから、行くんじゃないよ。

 ……行かないで。

 

 何で泣いているかだって?

 情が沸いてしまったのよ。どうにも、お前さんは危うくて心臓に悪いのさ。

 友が死んだら目覚めが悪い。健康的な生活も出来ないってもんだよ。

 あたしゃ、これからも健康的に生きたいんだよ。だから、心労が重なるようなことはしないでおくれ。

 

 情が移ったのはこっちの台詞?

 生意気なこと言っちゃって。いつからそんなに大人になったんだい。

 お前はまだまだ子どもだよ。

 だから、もうちょっと此処に居て。勉強すると良いのさ。

 

 絶対に忘れない?

 何だい、その死んでしまうような言い草は。

 

 ……待って、船を戻して!

 こっちに、こっちに戻っておいで!

 

 木の実がある。山菜がある。魚も居る。月だって綺麗だし、何より面白おかしく遊べるんだよ!?

 

 早く、今ならまだ間に合うよ。私の手に掴まって、早く!

 待って、待って、待って!

 

 そっちには何もない。そっちは地獄が広がってるよ!

 比べて、こっちは天国だよ。早く、船から飛び降りて!

 

 ――っ!

 あいつ、声すら聞いちゃいない!

 

 お願い、待って。

 そっちに行ったら、あたしゃ追い掛けられないよ!

 こんな不利な戯れ、あんまりだよ……!

 

 

 

 あたしゃ結局、友達一人連れ戻せなかった。

 あんな禍々しく恐ろしい場所に、行く勇気がなかったんだよ。

 滑稽な話。友達、名づけの親すら助けられないなんて。

 

 でも、骨くらいは探してあげるよ。

 手始めに、まずは鮫でも騙そうかね。

 

 痛い。痛い。本当に痛いよ。

 心も体も傷だらけ。でも、あたしゃ助けられた。

 お前さんも、誰かに助けられたのかい?

 今日もあたしゃ、お前さんの面影を捜してる。

 

 

 





 3節、2節、4節、最低限のリズムを崩さない様に、最初の文章の基本形式はこれを繰り返し4回行って、それの範囲内で納めることです。
 必要な情報を最低限の内容で納め、こういった形式で入れるのはなかなか難しいですね。和歌や川柳とはまた違った難しさです。

 オリ主は既存の存在、モデルが存在します。
 もしかしたら……なんてお気づきになった方は、そっと心のうちに御仕舞下さい。

 あくまでこの小説は、頭の準備体操程度の代物。
 たくさんの方の目に触れるのは光栄ですが、楽しみ方はお忘れなきように。

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