桂木桂馬の性格改変してみた   作:ネオストーン

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 書いてて漫画ってずるいなと思いました。


高原歩美編

 「地獄も末だな……掃除係が駆け魂隊とは……」

 「が、がんばります!! それでドクロウ室長? 本当にそんな人間がいるのですか? 女性の心を思い通りにできる人間なんて……」

 「いる。その名も落とし神!! これ以上の協力者はいない。まずはこの男を探せ!」

 「了解です!! エリュシア・デ・ルート・イーマ駆け魂討伐に出発します」

 

 本当にエルシィでいいのかな? あの時の聞き間違いじゃないとは信じたい。あとは頑張ってもらうしかない自分が歯痒い。

 

 

 

 

 

 「どうしてここがわかったの?」

 

 抵抗しても無駄だ。エンディングはもうすぐだ。

 運命は常に一本道だ!!

 

 「わ、私……あなたが好き!!」

 

 

 これで10000人目のヒロイン攻略だー!! 俺に解けないギャルゲーなんてない!

 フハハハハハ!!

 俺の力に俺自身が怖くなるよ。

 

 「ゲームは楽しいかい? 桂木君。担任様の授業よりも楽しいものがあんのか?

あ゛?」

 「あ、すいません。セーブするんで待っててください」

 

 殴られた。解せぬ。

 

 

 

 

 俺の名前は桂木桂馬。

 6月6日11時29分35秒生まれの17歳。

 身長174センチ。体重53キロ。

 得意科目は、すべてだ。

 

 好きなものは……女子だ。

 

 このくらいの年の男子なら当然のことだ。

 ただし……

 

 「オタメガネー!!」

 

 遠くから声が聞こえてくる。

 ああ……嫌な予感がする。

 案の定その予感はすぐに当たった。

 声が聞こえてきた方から女子が突撃してきたのだ。ゲームなら女子が俺のほうに倒れこんでくるのだろうが、残念ながら俺は空中できりもみ回転しながら宙を舞った。

 どんな速さだよ。

 

 「あた!!」

 「いぎゃあああああ!! 俺の、俺のPFPがあああああ!!」

 

 俺の命の次に大事なPFPを壊すだなんて……こいつ……許さん!

 

 「悪い悪い。スピード出すぎてブレーキの限界超えてた」

 

 そう謝ってくるのは高原歩美……だったか? 確か俺のクラスメイトだ。

 その高原は手を合わせて申し訳なさそうに謝ってくる。

 うんうん。俺の心は広いからな。土下座で済ませてやっても……

 

 「ねーオタメガネー? 今日の屋上の掃除やっといてよ! 今日の掃除当番、私とあんたじゃん? でも私、あんたと違って忙しいから」

 

 ゑ? 普通激突した相手に謝った直後に仕事押し付けてくる? どこまで傲慢なんだ! これだから現実の女は嫌いなんだ!

 

 「ふざけるな! 断固断る!!」

 

 次に見えた光景は『ヨロシク』と描かれた板と箒だけだった。

 

 怒ってもいいと思う。

 

 

 

 文句を言う相手ははるか彼方へ走り去ってしまい、俺は屋上の掃除をしていた。

 それにしても、なんて理不尽な奴らだろう。

 ゲーム世界の女子を見習ってほしいものだ。あの完璧に理論的で美しい存在を!

 僕が好きなのはゲーム女子だけだ!! 現実なんてクソゲーだ!

 

 やはり現実よりゲームだ。

 そう思いPFPを取り出し、メールを確認する。

 

 813通、それが俺に届くメールの数だ。この世界がクソゲーだと思っている奴は俺以外にもたくさんいるのだ。

 それがこの数字。

 ふっ……今日も迷える子羊たちに救いの手を差し伸べてやろう。

 現実なんて所詮は仮初めの世界。ゲーム世界にとどろく俺の真の存在!

 

 そう、俺こそが落とし神!!

 

 そうさ。現実のような不合理かつ不条理なものに、かかずらう必要なんてない。

 

 俺はゲーム世界の神だ!!

 

 

 『初めまして!!落とし神です。ゴスゴスぱにっく苦労しているみたいですね!』

 

 以下長すぎるので割愛。

 

 

 

 「ふう。さて次のメールは……ん?」

 

 『落とし神へ

  どんな女でも落とせるという噂を聞く。まさかとは思うが、本当なら攻略してほしい女がいるのだ。

  自信があるなら返信してくれ。

  PS 無理なら絶対に返信しないように

                           ドクロウ・スカール』

 

 な、なんなんだ? この人を馬鹿にして「お前には絶対できないだろうな」などと言われている気分になる不愉快なメールは。

 俺を誰だと思っているんだ。

 

 神は逃げない!!

 

 返信したとたんに俺を襲ったのは強烈な風圧だった。突如、竜巻が目の前にできたのかと疑うレベルの風圧だった。

 そして、慌てて風圧が発生した場所を見てみるといたのは、

 

 箒を持った女の子だった。

 

 

 

 「契約ありがとうございます! 神様! さあ、参りましょう! 駆け魂狩りに!」

 

 そう言った女の子は俺を持って、空を飛んだ。

 ―――――空を飛んだ。

 

 「う、うわあああ!!」

 

 

 

 な、なんだ。なぜ俺は女の子に持ち上げられて空を飛んだのだろう。

 ゲームの世界に飛び込んでしまったのだろうか。

 

 

 死ぬかと思った。連れてこられた場所は教室だった。生憎と放課後のため、誰も他の人を見かけない。助けを求められない。

 

 「広域チェックでは反応あり……次は精度を上げて……個人特定でしたっけ?」

 

 落ち着け。現実に呑まれるんじゃない。順序立てて論理的に考えれば問題はない……たぶん。

 

 「整理しよう。まず、お前は何者だ?」

 「私、エリュシア・デ・ルート・イーマと言います。みんなはエルシィって呼んでます。地獄から派遣された『駆け魂隊』の悪魔です!!」

 

 なるほど、分からん。

 ただの馬鹿なのか、現実とゲームの境界を間違えたのか。

 どちらにしろ、君子危うき3D女に近寄らず。ここはかかわらないのが吉だ。

 

 「さて、今日は木曜日か。ゲーム買いに行くか」

 

 今日はセフィロトの発売日だったかな。俺は初回限定版を買いに行かなければならないんだ。だからその肩の手を離せ。

 

 「あの……気を付けてください。首、取れちゃいますよ」

 「首?」

 

 指摘されてはじめて気づいた。

 俺の首に見覚えのない首輪が付いていたのだ。

 

 「な、なんだ? この首輪?」

 「神様は、悪魔と契約されたんですよ。契約書を送られましたよね? 室長のドクロウさんあてに」

 

 ――――――――あのふざけたメールかあああ!!

 

 「地獄の契約は厳しいのでご注意してください。もし、契約を達成できなかったり、許可なく破棄しちゃいますと……その首輪が発動して首をもぎとります。し、しかもその後首が……キャーとても言えません!!」

 

 おいおい、冗談でも笑えねえだろ。

 

 「ふざけるな! 今すぐこの首輪をはずせ!」

 「大丈夫ですよ。駆け魂を捕まえれば外れますから」

 「かけ……なんなんだ。それは!」

 

 ドロドロドロドロ

 俺がエルシィに問いただそうとしたとき、エルシィのどくろの髪飾り?からそんな音が鳴り響いた。

 

 「神様! 窓のそばに来てください! 下の広場に駆け魂がいます!」

 

 問題の駆け魂がいると聞き、ひとまず問いただすのやめ、窓から外を見てみることにした。

 そこには陸上部の面々が準備をしていた。

 

 「あの先頭の娘!! はっきりと奴らの気配が見えます!」

 「あいつは……」

 

 エルシィが指をさしたそこには、さきほど人に激突し、きりもみ回転をさせながら宙を舞わせ、命の次に大事なPFPを木端微塵に粉砕したくせに、直後に掃除を押し付けてきた憎き女、高原歩美がいた。

 

 「なるほど、あの女を捕まえればいいのか。きっと地獄で悪行でも働いたんだろう。そう思えば俺への狼藉も分からなくもない」

 

 人を捕まえるだけで命が助かるのか。なんだ。簡単じゃないか。

 

 「ち、違いますよ。捕まえるのは人じゃなくて駆け魂です」

 「かけたま?」

 「駆け魂とは地獄から抜け出した悪人の霊魂です。奴らは地表で悪事を働くべく地獄の囲いを抜け出し、地表へやって来るのです。

 しかし、駆け魂を捕まえるのは非常に困難なのです。何しろ極めて特異な場所に隠れていますので……人の心のスキマ、それが駆け魂の隠れ家なのです!!」

 「人の心のスキマ? 捕まえようがないだろ! そんなもの!」

 

 「そこで人間の協力者の出番なのです。心のスキマが埋まってしまえば……駆け魂は居場所がなくなり出てきます!

 そして、心のスキマを埋めるには恋が一番!! 落とし神様のお力で、あの娘の心のスキマを埋めていただきたいのです!」

 「ま、待て待て!! 俺に現実の女を落とせというのか!?」

 「えっまぁ……ほどほどに。あの、口づけ程度でいいので……」

 「バカヤロー!! お前はとんでもない間違いをしているぞ! 俺は現実の女と手をつないだことすらない。そして……現実もそれを望んではいない。現実の女たちは俺をこう呼ぶ。オタメガネと!!」

 

 現実の女に興味がないというのも理由としてはあるのだがな。まあ、それは言わなくてもいいだろう。

 

 

 「こんなことだろうと思った……何をやっても私、ダメなんだから……」

 「結局勘違いなんだよ!! 早く契約を解除しろ!!」

 「できません。すいません。せ……せめて私もいっしょに死にますので……契約は対等……協力するものが死んだら悪魔の首も飛びますから」

 

 ゑ?

 俺、死ぬの?

 

 その後の雰囲気はまさにお通夜のような雰囲気だった。誰だって自分が死ぬことがもうすぐ死ぬことがわかったら落ち込むだろう。

 なぜこんなことになったのだろうか。決まっている。

 あの契約書もどきのせいだ!!

 ドクロウ・スカールとかいうやつ許さん!!

 さすがに一緒に死ぬかもしれない相手を責める気にはなれなかった。

 

 「ストレッチおしまい!」

 「そろそろ走るか」

 

 なぜ陸上部は元気なのだろう。こっちは命の危険だというのに。あいつらにもこの不幸を分けてやりたいよ。

 自分が不幸のどん底にいるときに幸せそうにしている奴がいるとぶち壊したくなる。やらないけど。

 

 「ああ……こんなに近くに駆け魂がいるのに……掃除しかできないなんて……」

 「静かにしてろ! 首が飛ぶ前にやり直すゲームを書き出してるんだ。あれとこれと……」

 

 せめて死ぬときはゲームをやりながら死にたい。ゲームに囲まれて死にたい。

 

 「でも……神様は落とし神様なんですよね? 現実の女もゲームのように落とせるのでは?」

 「現実とゲームを一緒にするんじゃない。ゲームに失礼だろ。あれが陸上部? 笑わせてくれるな。俺に言わせればあんな精度の低い陸上部はない!!」

 「精度?」

 「誰も、誰も髪をくくっていないじゃないか!! 陸上部の女は髪をくくってるものなんだよ!! あいつらは髪を止めるゴムに魂が宿るのを知らないのか」

 

 まったく、これだから現実は。そんなんだから精度が低いとか言われるんだ……俺に。

 それに、もしもギャルゲーができただけでモテたら世の中にもてない男子はいなくなるしな。

 ギャルゲーが衰退するのは避けたいし、ぜひともモテないままでいてもらいたいものだ。

 

 「こんな世界の女子、攻略できないな!!」

 「神様! 見てください!髪くくってますよ」

 

 

 「よーっし!! 本気だすぞー」

 

 ……確かに高原が髪くくってるな……

 本気を出すときに髪をくくるというのも分かっている!

 だがっ!

 

 「いや、まだだ!短パンの陸上部もゲームではありえない! ブルマじゃないと動けないな!」

 

 これで俺の勝ちだ。現実の女子など攻略するものか。

 

 「ブルマにな~れ」

 「きゃっ! なんでブルマになったの!!」

 

 なん……だと……。

 

 「羽衣を変形させて飛ばしました。外見だけなら、私でも変えられます。でも、内側を変えられるのは神様しかいないんです!! やりましょう神様!」

 

 退路という名の言い訳は木端微塵に砕かれました。

 もういいよ……腹をくくるか、首をくくるかの違いだ。

 覚悟は決めてやる!

 

 

 翌日

 そうと決まれば早速行動だ。

 

 「な、なに!? こらー!! 何よそれは!!」

 

 秘儀! とにかく応援してますよ作戦!

 説明しよう。とにかく応援してますよ作戦とは、とにかく応援する作戦である。まずは印象に残ることが大事だ。モブキャラにヒロインは落とせない!

 というわけで横断幕を校舎につけさせてもらった。

 

 『がんばれ!高原歩美ちゃん!』

 

 これは恥ずかしい。カワイソス。

 

 「オタメガー!! なんなのさ! この恥ずかしい横断幕は!!」

 

 ああ、きれいな空だ。昨日と今日で2回連続宙を舞った。ギャグマンガか何かじゃないんだぞ。

 

 「その……大会も近そうだから応援を……」

 「屋上の掃除を押し付けたのは悪かったわよ。つまりこれが復讐ってわけ?」

 

 首を絞められた。半分ぐらい当たってたから振りほどけなかった。なぜばれたし。

 

 「次やったら殺すよ!」

 

 この攻略、俺の体大丈夫かな。死なないといいな。

 

 

 「か……神様……これでいいんですか? 怒られちゃいましたけど」

 「だ、大丈夫だ。今はとにかく出会いの数をこなすんだ。ゲームでの親密度は出会いの数に比例する。今はとにかく俺の存在を高原に印象付けることが大事だ」

 

 イベントは大丈夫でも俺の体が大丈夫じゃないがな。

 

 

 それでは応援してますよ作戦をダイジェストでお送りします。

 3日目

 「なんでまたいんのよ!! 横断やめろ!」

 

 4日目

 「バカヤロー! 垂れ幕でも同じだよ!」

 

 5日目 

 「もうムシ」

 

 部活終わりはDIEジェストだったとだけ言っておこう。

 

 

 「なんかどんどん嫌われていってるような……」

 「ゲームではな、『嫌い』と『好き』は変換可能なんだよ。喧嘩したり嫌われたりしても、そのあと仲良くなることでプラスにすることができる。それに、嫌われることのほうが簡単だしな」

 

 本当に嫌われる可能性も高いがな!!

 セーブロード不可、バックログ無し、ファーストプレイのみってどんな攻略だよ!!

 命がかかってなきゃ誰がやるか。

 

 「ちょおっとォ、歩美! こっち来な!」

 「はい! なんですか!?」

 「なんであんたらが先に走ってるわけ? 2年はうちら3年が走るまで待機でしょ?」

 「先輩方は今日は来られないかと……本番まで時間もありませんから」

 「聞いたー? 本番だって? すーっかり選手気分ね。 なんで私が補欠であんたが代表なのよ。たまたま1回いいタイムが出ただけじゃん」

 「罰なら早くお願いします!! 本番まで時間がないですから!」

 「何こいつ!! 外周よ! 外周30週!」

 

 見事なまで悪役だな。今どきの高校生でこういうのもまだいるんだな。

 

 「うー!! 嫌な先輩!! 人間界にもああいう人いるんですね」

 「地獄にもいたのかよ」

 

 まだ……エンディングにはまだピースが足りないな。

 

 

 6日目

 「アドバルーンって……」

 

 

 「すいません。羽衣が足りなくて3本しか作れませんでした」 

 「1本で十分だったのに」

 

 「いよいよ明日は大会当日です。私たちの応援でぜひ歩美様を1位に! そしてあの先輩たちを悔しがらせたいです!! とっても!! とっても!!」

 

 先輩に何か嫌な思い出があるのかよ。

 

 「これだけ応援して勝てば、歩美様もきっと神様を好きになります」

 

 ガシャン!!

 物が倒れる大きな音が響く。

 そう簡単にはいかないだろうなと思ってたらこれか。先が思いやられるな。

 

 「誰か!! 先生を呼んで!!」

 

 そこには倒れたハードルと足を押さえた高原の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 「ええー? ねんざー!?」

 「なんで……大会は明日なのに……」

 「なんか変じゃなかった? 今日のハードル」

 「そうよ!! あそこだけ台の間隔が短かったわ」

 「誰かが動かしたのかな……」

 

 これでよかったんだよ、きっと。

 

 

 

 

 

 「絶望的です~大会で優勝してくれないと私たち……」

 

 まずいかもしれない。大会の優勝無しにハッピーエンドなんてものはない。あってノーマルエンドだ。よりにもよってケガするとは……

 

 

 ん? でもなんで……高原はあの時してなかったんだ?

 

 「エルシィ、一つ聞いていいか?」

 「はい。なんですか?」

 「心のスキマはそう小さな悩みでもできるのか?」

 「? いいえ、心のスキマは少なくとも当人にとっては重要なことじゃないとだめです」

 

 スキマを埋めることに気を取られすぎたのかもしれない。

 スキマができたその理由を考えれば、おのずと答えは出てくるはず。

 

 ケガ、先輩、ハードル、応援。

 

 ……そうか! そういうことか!

 

 「見えたぞ。エンディングが!」

 「ええ!?」

 「間違いない! 似たゲームをやったことがある」

 「…………」

 「ここが勝負だ。今から、告白しに行くぞ」

 

 スキマについてもこれから答え合わせに行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 「どうしたのよ。桂木。こんなとこで何か用?」

 

 俺は高原を校庭に呼び出していた。

 ここが勝負時だ。

 

 「しばらく私は運動に用ないよ! しかも呼び出しの手紙が乗っかってたこれ!! イヤミ!?」

 

 高原が持ってきたのは俗にいうフルーツバスケットというやつだ。イヤミのつもりはなかったのだが。

 

 「それ食べて元気出して、明日の大会で頑張ってもらおうかと」

 「この足を見てから言え!! 大会なんか出られるわけないでしょ」

 

 それは嘘だろうな。

 

 「本当にケガなんてしたの?」

 「え?」

 「そもそもハードルはちゃんとケガをしにくいようになっている」

 

 ハードルは引っかかってもすぐに倒れるものだ。

 

 「走ったことも無いくせに!! スピードを考えてよ!」

 

 確かに全力で走ったら危険だろう。

 ただ、それは全力で走ってたらの話だ。

 

 「あの時、高原は髪をくくってなかった。本気、出すときは髪をくくるんじゃなかったのか?」

 

 少なくともスピードも出ていないハードルなんでケガをするわけがない。

 高原にも目に見えて動揺が走った。

 

 「最初からコケるつもりだったんじゃないのか?」

 

 コケてー――――先輩に大会を譲るつもりだったんじゃないのか。

 そんな言葉を匂わせながら、俺は聞いた。

 

 「これで……良かったのよ。先輩たちもこれで大会に出られる。先輩たちの言う通りだったんだよ。

 私なんて先生の前でたまたま速く走れちゃって、選手になっちゃってさ……ずっと練習してるのにタイムも全然でないし……私なんか出ない方がいいんだよ」

 

 これだから現実の女は嫌いだ。無駄なことでうじうじと。

 

 「どうして走れなくなっちゃうのさ……こんなに練習してんのに……もういいの……ビリになったらおしまいだもん」

 「現実とゲームは違うんだよ。過去には戻れない。それは後悔しない選択肢なのか? 出たいのか? 出たくないのか? お前はどっちなんだ」

 

 ゲームと現実は違う。現実なんてクソゲーなのだ。だからこそ、攻略方法は簡単だ。

 常に自分が最良だと思う選択をするしかない。

 

 「私だって、私だって大会に出たいのよ!! 大会に出て優勝したいのよ!……でも……できないんだよ!」

 「そんなに自分が信じられないか? やる前から諦めるのか?」

 「自分が信じられないよ! だって……できないんだよ!? いくらやっても……それなのに挑戦し続ける勇気なんて……私にはない……」

 

 きっと怖かったのだろう、失敗するのが。それは誰だって思うこと。そして誰もが立ち向かわなくちゃいけないことだ。

 それでも立ち向かえないというのなら、

 

 「そのために俺が応援してやるんだろ?」

 

 俺が力を貸してやる。

 

 「……本当に?」

 「本当だ」

 

 「……ありがと、桂木。大会!! 応援してよね!!」

 

 高原はそう言って、少し顔を赤くしながら走り去っていった。

 あの調子ならきっと大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、高原は大会に出場し、ぶっちぎりで優勝した。

 もちろん、俺も応援しに行った。

 走っているときの高原はとてもいい笑顔だった。

 

 

 「すごいー歩美ー」

 

 「ふっふっふ、どうだ!」

 

 あれから高原はとても元気だ。この前のことが出来事が幻のように。

 

 「見て桂木! 新聞に載っちゃったよ!!……あ、あれ?なんで私、あんたなんかに話しかけてんだろ……」

 

 そう幻のよう。

 高原は攻略の間の記憶を丸々失っていた。ま、その方が好都合なのかな。俺はゲームを楽しむ。高原は今までのことも俺のことも忘れて元気に生きれる。

 いいことづくめだな。

 

 「おめでとう」

 「え? あ? ど、どうも」

 

 もう……無関係なのだ。 

 

 

 そういえば、あいつ、エルシィはどこに行ったのだろうか。

 

 「神様! 感服いたしました! やっぱりあなたは落とし神です! 私、神様についていきます! 早速手続きをして参りますので!!」とかなんとか言っていた。

 手続き? 何の手続きだ?

 

 「おいオタメガ! なんだあれ!」 

 「どこに隠してた! あんなの!」

 

 「本日転校してきました桂木エルシィです。お兄様の桂馬ともどもよろしくお願いいたします」

 

 ……もう驚かない。記憶の消去があるんだ。記憶をいじくることだってあるだろう。

 もう突っ込まない。俺は突っ込みキャラじゃない!

 だから――――俺の日常を返してくれ!!




台詞かなり変えたし、原作の大幅コピーにはならない気がする。
バタフライ効果を最初に出せと言われても無理でしょ。

アニメのテンポを悪いという人がいるが、だいぶうまくやってただろと思う。
自分の悪いところって案外自分でわかるからな……作者は頑張った。
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